− 2001.08.04 −_

　ふたりは『時間』の権化である。だから未来を知り、嘆くことができた。
　あるSF作家（名前失念）が時間には修復作用があるというパラドックス理論をうち立てている。時間は過去から未来と、一方向へ流れている。この直線コースから外れたものを、時間はあの手この手で歩むはずだった未来に向かって修復していくというものだ。
　途中、hyde が心変わりしようと、tetsu が運命に抗おうと、ken と yukihiro が「ホンマは死なせたくないんや」とかなんとか思いつつ約束された結末へと導いてしまう。回転ドアの場面を見よ。まるでここで刺されるべく ken と yukihiro が仕向けているようであろう。ひどい。よってたかって tetsu 殺しである。

◇　◇　◇　◇　◇　◇　◇　◇　◇　◇　◇　◇　◇　◇

　「Pieces」のクリップは、100年経ってなお圧倒的な所有欲を固持する貴族 hydeと、死してなお、その執着から逃れることができなかった使用人 tetsu の時空を超えたストーカー事件と、短剣が、かつて忠誠を誓った主の手に戻るまでの旅をスリリングに描いた「千夜一夜物語」だったのである。‥‥ほんまかいな。
　正解はこちら。「P.V. Story」をご覧下さい。まさか1999年５月頃のシングル発売プロモーション＝サイトが残っていようとは。まさか推理がここまで的から外れていようとは。
　遅れてきたファンにとっては己の洞察・推理力が頼りだ。だがたいしてアテにはならなかった。ガクリ。

◇　◇　◇　◇　◇　◇　◇　◇　◇　◇　◇　◇　◇　◇

　彼らのクリップの中でも、本作は抜きんでた印象がある。海外ロケということで一度限りの現地調達モデルを起用しているためだ。キャラクター性の高い登場人物に加えこのストーリー性。世間に知られていない役者を配した映画が高いリアリティを生み、作品世界に強く引き込まれていくのと同じ効果である。
　だから先端の映像技術を用いなくとも、メンバー自身がクリップにあるまじき脇役に回っていようとも、印象深い作品に仕上がっているのだ。リアリティは強し。

　おことわりを聞かずここまで読んでしまった、本作をまだご覧になっていない貴方。
　「Pieces」は現時点において、間違いなく彼らのキング＝オブ＝クリップです。今お読みになったことをお忘れになった頃、ぜひご覧になって下さい。

◇　◇　◇　◇　◇　◇　◇　◇　◇　◇　◇　◇　◇　◇

　疑問が残っていた。グッサリやる直前、執事は城主に何とささやき、hydeはtetsuの耳元で何とささやき返したのだろう？ きっと怖いセリフに違いない。
　発売当時「ズバリ当てましょうキャンペーン」など、やっていなかったのだろうか。

■ yukihiro攻略
■ ジャケットは口ほどに物を言い
■ バンド名なぞ知らずとも
■ 続・バンド名なぞ知らずとも
■ オレ達にクリスマスはない
■ 遅れてきたファンVer. ライブ！_
■ 正しいCD購入法
■ yukihiro攻略2
■ 見知らぬtetsu
■ この１曲を聴く作法
■ 見知らぬtetsu外伝
■ ストーリー＝テラーに挑戦
　　　‥‥‥‥（おことわり）
　　　‥‥‥‥（1）
　　　‥‥‥‥（2）
　　　‥‥‥‥（3）
　　　‥‥‥‥（4）
　　　‥‥‥‥（5）
■ 真実の音