1997/12/30
今こちらは雨期。昨晩から明け方までかなり雨が降っていたが、今朝目が覚めた時にはほとんど止んでいた。
庭に出ると小鳥達のさえずり声があちこちから聞こえてくる。ふと、中に聞き覚えのあるさえずり声、アッ!思い出した。これはバリの土産屋で売っている竹の風鈴の音と同じではないか。カッカラ、カッカラ、カッカラ、カッカラ(ソ・レド、ソ・レド、ソ・レド、ソ・レド)。なるほど、あれは鳥のさえずり声だったのだ!またバリで新たな発見だ。(何とこのさえずり声も「バリ音階」ではないか!{Part 1 8.「旅の恥はかき捨て」はみっともない、ナノダ!参照})
今朝も朝食でボイルドウオーターを注文し、ブルマンブレンドで二日酔いを吹き飛ばしたオジサン達は早速今日のダイビングの打ち合わせを開始。
昨日刺身作りに成功し味をしめた我々はもっと新鮮なうちに食べてしまおうと、ボートの上での刺身作りに挑戦することにした。これを昼食のおかずにしようという魂胆である。なにしろ此処は赤道に近い常夏の国。半日以上ボートの上に転がしておいた魚を生で食べるのはやはり怖い。日本の漁船のように船底に氷室があれば魚をしばらく寝かした方が旨いのだが、こちらのボートにそれを望んでも無理である。何しろ氷自体が飲用出来ない生水から作られているのだ。
朝食後早速各自の準備を開始。調理担当のYさんは包丁、他のメンバーはそれぞれ日本から持ってきたタレの材料をかき集めてくる。醤油、みりん、わさび、そして昨日購入したニンニクとショウガ、ペーパータオル、等々。
これらを迎えの車に積み込んで、イザ!ボートの待つビーチへ。ビーチを出発するボートの上でエナ社長が日本人の体験ダイビングのガイド役をしている姿を発見。トゥデに聞くと繁忙期でスタッフが足りず、社長自らが体験ダイビングのガイドをしているのだと言う。全くご苦労様である。
今日は昨晩の雨のせいか風があり波が出ている。コースを昨日とは逆のヌサペニダの右側から灯台を回ってKUNIO Pointへ向かう。
途中切り立った岸壁が延々と続き、新たに崩れ落ちた場所を何カ所か発見。激しい潮流が島の下部を削り、耐えきれなくなった地層が崩れ落ちた跡だ。沖には奇妙な形をした島が点々とあるが、潮流で穴が開いてしまった島もあり、潮の激しさを物語っている。
ボートははっきり潮目とわかる場所を幾つも越えて進むが、その度に減速。特に灯台沖は幾つも潮流がぶつかり合い、しかも海底の地形がそうとう複雑と見えて三角波やうず潮が巻いている。上手く潮流同士がぶつかり合っている場所を通れば大変静かなのだが、それが終わるとまた三角波が始まるのだ。
 
こんな船の上で、我々は刺身のタレ作りを開始。昨日一度作っているので要領は心得ている。まずニンニクの皮をむき(これが大変)、おおまかに潰しておく。つぎにショウガを細かく刻んで入れ、そこに醤油とみりんを加えてしばらく漬け込んでおく。食べる前にみりんを足して塩梅を調節すれば完成である。
ガイドのトゥデがニコニコしながら手伝ってくれた。彼の日本語は勉強中との事だがけっこう通じる。S2さんは今回のツアーのためにインドネシアの日常会話ガイドを持参してきたが、逆にトゥデにバリ語でどう言うのか質問責めにしていた。
しまいにトゥデが日本の歌を歌うと言い出し、「スキヤキソング」を日本語で我々に披露し始めたので、我々は手伝ったお礼の意味も込め日本の歌をもう1曲教えてあげた。彼は真剣にメモしながら教わっていたが、最後に「これは日本の女性の前で歌うな!」と言ったところようやく歌の内容が解ったようで、「これスケベな歌か?」と聞いてきた。我々はただニヤニヤしながらうなずいておいたが、喜んで繰り返し練習していた。全く陽気な青年である。
タレの準備もでき、ようやくKUNIO
Pointへ到着。今日こそは写真に専念と決めていた私はカメラを持ってダイブ。
ドロップオフを駆け降りる際、上から下へ流れ落ちる潮流を感じた。何となく深場へ引きずり込まれそうないやな潮流である。水深23mまで降下後、少しずつ浮上しながら被写体を模索し始める。今回もマクロ105mmを準備して来たから、壁に小さな生物でも見つけられれば面白い写真が撮れるはずである。しかし無いのだ。ドロップオフを昇るが、周りには潮流で折られたサンゴの死骸ばかり。砂地にはムチヤギがニョキニョキと姿を見せるが、被写体が見つからない。やはり潮流の激しい場所なのだ。
とうとうドロップオフを浮上する途中で被写体を見つけることが出来なかった。こうなれば浅瀬で被写体を見つけるしかない。しばらくサンゴに囲まれた浅瀬で模索を繰り返すうち、ツノダシが正面を向いた時に何となくキリンの顔を思い浮かべ、魚の正面からの顔をアップに撮ってみたくなった。
目的が決まればあとは出来るだけ被写体に近づき、シャッターを切るだけである。しかしこれがなかなか難しい。そっと近付きシャッターチャンスと思った瞬間、被写体は後ろを向いて一目散に私から逃げてしまう。こうなれば追いかけても無駄である。私よりも彼らの方が泳ぐスピードは格段に速い。
どうも昨日のスピアが悪かった。ついシャッターを切る瞬間に私から殺気が出てしまうようなのだ。彼らは非常に敏感だ。殺気を感じればただちに逃げるのが彼らの生存本能なのだからしかたがない。こうなれば根気比べである。私の殺気を消す集中力か彼らの殺気を感じる力か、どちらが勝るかである。
そして遂に被写体を捉えることが出来た。殺気が無くなれば彼らは非常に好奇心旺盛に近付いてくる。私の近くで優雅に泳ぐ彼らの姿は実に愛らしい。ようやくハンターの目から写真の目に切り替える事が出来たようだ。あとはこのまま近付いて来る被写体にシャッターを切るだけである。
 
1ダイブ終えてボートに上がると、Yさんが見事なカスミアジを上げて来た。丸々と太った脂の乗ったアジである。途中、サメに出くわしたが試しに水中ホーンを鳴らしてみたところスゴスゴと退散したそうだ。水中ホーンはサメの撃退にも役立つことを発見。
今日の昼食はこれの刺身である!早速Yさんが捌き始める。この人の包丁捌きは本当に見事だ。あっと言う間にたっぷりの刺身が出来上がってしまう。
これを先ほど作ったタレに浸して昼食のナシプチの上へ。脂が乗っていてとろりとした味は何とも格別である。皆ウマイウマイと言いながら、大量の刺身を全部食べてしまった。
食後にまたまた釣りを開始。相変わらずアカモンガラしか釣れないが、スタッフはまたお土産が出来ると喜んでいる。我々はスナッパを狙っているのだが、どうしてもアカモンガラに餌を捕られてしまい、スナッパは釣れないのだ。
ダ イ ビ ン グ ロ グ
1 ダ イ ブ |
エントリー |
11:15 |
エキジット |
12:00 |
潜水時間 |
00:45 |
最大水深 |
23.6m |
平均水深 |
10.7m |
水 温 |
29.1度C |
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