パーティーの前に今夜はバリのナイトマーケットを覗いて見る事にしたが、その前に調理用具が欲しいのでスーパーマーケットへ寄ってみた。欲しいのはまな板と水、そしてショウガおろしだが、日本のような気の利いた物は見つからない。ショウガおろしの代用にチーズおろしを見つけ、まな板は洋風の大きな卓球ラケットの様なカッティングボードを、水はミネラルウオーターの大きな瓶を購入した。これで今夜のパーティーで刺身を作るのに多少は不便を感じないで済むだろう。
  
そしてそのままナイトマーケットへ直行。野菜、果物、香辛料、肉、魚、穀類、その他あらゆる物が所狭しと並んでおり、その怪しげな雰囲気と活気に圧倒される。
魚を見るとさすがに日本のように新鮮な物は無いが、熱帯の気候の中を冷蔵設備無しで輸送しているのだから止む終えないだろう。
圧巻だったのはマグロのオイル漬けだ。石油缶の中に輪切りにされたマグロがそのままゴロリと入っており、オイル漬けにされている。もちろん加熱してあるので生ではないが、まるで巨大なシャケの缶詰のようだ。彼らの保存方法なのだろうが、石油缶という点が我々には何となくグロテスクに見える。
マーケットはそろそろ店じまいの時間らしく、大きな箱を重そうに背負って我々の横を通り過ぎる姿が目に付く。どうもこの大きな箱の中には店の道具一式が収まってしまっているようなのだが、重量はそうとうな物なのだろう。ものすごい形相をして運んでいる。すでに店じまいの済んだ所に出てみるとゴミの散らかったただの空き地と化しており、ベンチにはそのまま疲れて寝込んでしまったらしい人物の姿がある。雨が降らなければ良いがとつい昨日の大雨を思い浮かべたが、その時はどうにかするのだろう。
ホテルへ戻ると、わざわざエナ氏自身がが自家用車で我々を迎えに来てくれた。こちらの国では大変親しい人しか自宅へ招待しないそうなので、今回の招待は大変光栄な事なのである。
到着後さっそく魚を捌く準備をするが、何処で行うかで一問題。大きな家なので無理をすればキッチンで行えない事もないが、業務用と違いシンクが小さいので汚してしまう事が申し訳ない。いっその事、庭にベニヤ板でも用意してそこで行おうかと思うが、今度は水周りが上手くいかない。
結局キッチンで行う事にしたが、排水口が詰まってしまい困っていると、この家の主のエナ氏が何とエアガン付きのダイビングタンクをキッチンへ持ち込んで来たではないか。ダイビングセンターの社長とはいえ何でこんな物が自宅に置いてあるのか不思議だったが「これでノープロブレムね!」と言うやいなや排水口へエアガンを突っ込んでバルブを開けること暫く。詰まった排水口は見事に排水を開始したのである。きっと時々詰まるので置いてあるのかな?などとつい余計な詮索をしてしまったが、これでいよいよ刺身作りの開始である。今回は先ほど購入したショウガおろしとまな板を持って来たので作り易かった。アッという間に5皿の刺身が出来上がり。

刺身を食べるのに箸がない、と誰かが言い出すとエナ氏の娘の1人がさっさとバイクで箸を買いに行ってくれた。さっそく乾杯してみんなで我々の刺身とエナ氏の奥さんの手料理でパーティーの開始である。エナ氏の娘達(中学、高校、大学生の女の子3人)も刺身を喜んで食べている。
私はこの時のために日本から餅と海苔を持って来たので、キッチンで焼き始めた。昨年、餅焼き網が無く苦労した経験から焼き網も持って来たのだが、コンロの火が近すぎてすぐに焦げてしまい上手く焼けない。コンロのゴトクを2段重ねにして網を火から遠ざけて何とか焼き上げた。それにニンニクをすり下ろして醤油に混ぜたタレを付け、海苔に巻いて出来上がり。ニンニク醤油は我が家の直伝なのだが、皆さんも是非お試し下さい。ピリッとした辛さと香りが食欲をそそり、なかなか美味なのだ。(食卓用のガーリックパウダーを醤油に混ぜただけでもOK!)
今までインドネシアの人達にあまり評判が良くなかった日本の餅なのだが、エナ氏宅ではすこぶる評判が良かった。特に真ん中の娘は大変気に入ったらしくずいぶんとお代わりをしていた。刺身と餅と手料理でみんな満腹である。
 
そして恒例の新年ラッパであるが、ビービー、ブーブーとみんな盛大に鳴らして本日はお開きとなった。帰りの車が迎えに来る間、暫く外をぶらついていると近くで若者達が飲み物屋の前の道端でディスコを踊っている風景に出くわした。日本と違い娯楽の少ない国である。若者達はこうしてうさを晴らしているのだろう。
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