捕った魚は後でスタッフがホテルに持って来る事となり、我々は早速ビール片手に打ち合わせを開始。魚を何処でどうやって調理するかが問題である。日本風に魚を捌くには大きなまな板と多量の水、冷蔵保存設備が必要なのだ。しかしこちらの生水はそのままでは飲めない。道具を何とかしたとして、今度は場所がない。
昨年アンボンではホテルのコックに頼み込んで業務用設備を借りられたが、今回のホテルではそれほどの設備と広さがあるとは思えない。
ダイブセンター、エナ社長の自宅などいろいろ考えたがあまり迷惑はかけたくない。結局ホテルの調理場を借りる手配を行い、一件落着。我々オジサン達はいつもの屋台探しに出かけたのだ。
時間が早過ぎるのか、ホテルの周りには屋台が見当たらない。トウモロコシ売りやナシゴレンの屋台は時々見かけるのだが、我々が探すのはスープ鍋の付いたソバ屋の屋台である。
いいかげん諦めた頃、お土産屋の前に1台の屋台を発見。もしかしてと近付いてみると目的のスープ鍋が付いている。丁度店の女の子が注文している所だったので作り方を覗いてみると、小さめのドンブリにハルサメを入れて2種類の調味料を加え、そこにスープ鍋から蒸し上がった肉団子をドンブリへ。そしてそこへスープを注ぎ、薬味を加えて出来上がりである。
屋台の側面には「BAK WAN」と書いてある。昨年アンボンの食堂風屋台でSさんが読み間違えた「BAKSO」と何となく共通するのではないかと思ったが、我々はこれを注文。食べていると、先に注文していた女の子が「BAK
WAN GOOD?」と問いかけてきた。我々はグッド、グッドと適当に答えておいたが、昨年アンボンで食べた「SOTO AYAM」や「MIE
KUA」ほど美味しくなかった。簡単な屋台設備だけではこんな物かもしれない。こちらでは仕事の途中でちょっと小腹が空いたときにこれらを食べるのだろうが、1杯2000ルピアの料金は高い。おそらく観光客用の値段設定だったのだろうと思う。
目的を遂げ、オジサン達がホテルに戻るとすでに魚が到着していた。今回レストランの厨房を借りるに当たりエナ氏からホテルに交渉をしてもらったのだが、エナ氏の親戚のコックまでが来ていてすでに何種類か調理を済ませている。あとは我々の作る刺身が出来上がれば今夜のパーティーの準備は完成である。
まずは刺身のタレ作りであるが、用意したのは日本から持ってきた醤油とみりん。それに現地で調達したニンニクとショウガである。わさびも持ってきたが、こちらの気候にはあまり合わないと判断して使わなかった。
 
最初にニンニクの皮を剥いて潰すのだが、こちらのニンニクは粒が小さく生乾きの為剥くのに一苦労。全員必死の形相でニンニクの皮剥きに専念。ニンニクは摺りおろしてしまうと粘りが出てしまうので適当に潰すだけにしておく。これはたっぷりと用意。次にショウガだが、これは皮を剥いて出来れば摺りおろしたい所だがおろし金がない。細かく切って潰しておいた。それらを醤油とみりんを混ぜたタレに漬け込んでしばらく放置。
次に刺身だが、達人Yさんが日本から持って来た出刃と柳刃で捌いて行く。今回は水を使えずまな板が小さく汚い為、ペーパータオルを下に敷いてウロコも取らずにそのまま身だけをおろして行く。「かなり無駄な作り方だが、水が使えないので仕方がない。身はそぎ切りで包丁以外には一切触れないように作るから大丈夫!」と真剣な顔で捌いて行く。熱帯の気候では食中毒が一番心配だが、さすがYさん、心得たものだ。
最後に柳刃で刺身に仕上げるのだが、ウロコと皮を付けたままの身をそのままそぎながら刺身に仕上げていった。誠に見事な包丁捌きである。大皿に4枚の見事な刺身が完成した。出来た刺身は厨房の冷蔵庫でしばらく冷蔵。十分に冷えたところで急いでダイブセンターへ運ぼうという段取りである。
 
料理の準備が整い車で ダイブセンターへ到着すると、すでにテーブルが並びエナ氏と家族、スタッフが待っていてくれた。料理を並べてパーティーの始まりである。
普段はビールを口にする姿を見た事の無いエナ氏なのだが、乾杯の時には初めて我々にビールを飲む姿を見せてくれた。
料理は、エナ氏の親戚のコックが作ってくれたスープ、魚のフライ、そして丸ごと炭で焼いた大きなアジ、そして我々の刺身である。
今回の刺身は現地の人たちにも結構評判が良く、何度か日本へ来て慣れているエナ氏以外でも、最初はおそるおそるだが最後には美味しそうに食べてくれた。今回のタレをわさびにせず、ニンニクとショウガで作ったことが正解だったようだ。
こちらの気候では魚を生で食べる事自体が難しいだろうし、生魚を食べる習慣も少ないだろうと思うが、魚は豊富な国である。慣れればそれほど抵抗は無いのかもしれない。
皆魚を食べるだけ食べ、最後にナシプチが出て来たがみんな満腹で手が出ない。大きな魚3匹と刺身を大盛り4皿を平らげたのだから当然かもしれないが、今夜はこれでお開き。明日のダイビングに備え、ホテルへ戻って寝ることにした。
おやすみなさい!
|