3.アブナイオジサン4人組、屋台で大喝采を受ける、ナノダ!
ホテルへ戻って、アブナイオジサン4人組は早速いつもの「何か面白いこと無いか探検隊」の打ち合わせが始まる。今回はレストランではなく、屋台を見つけてそこでインドネシア人の一般的庶民的超平凡的食事の探求に出発する事となった。
とりあえず目的もなく夕方の町へ繰り出してみたが、あいにくとこの日は大晦日。アンボンでは住民の半分近くがクリスチャンとのことで、みんな教会へ新年のミサのために出かけてしまい、屋台らしきものは陰も形も見あたらない。
しばらく町中をぶらついていたが、ふと昨日レストランへ行く途中に屋台らしき物を見かけたのを思い出し行ってみる事にした。
すると、あったあった!露店の屋台ではないが、簡易食堂風の建物の前に屋台があり、そこで作った物を中の食堂でワシワシと食べさせているではないか。
しばらく屋台で作る材料と手際を観察していた我々は、ついにここへ突入することに決定。
入ってみてメニューを見ると、どんな料理なのか皆目見当がつかない。一応アルファベット文字なのでそれらしく読むことは出来るのだが、4人の知識を寄せ合わせて唯一知っている単語は、「ナシ」がご飯、「ミー」がソバ、「ゴレン」が炒めるぐらいのもの。おまけに1つの料理で何種類かバリエーションがあるようなのだ。
それではとりあえず何か注文してみれば解るだろうと、後ろのお兄ちゃんが頼んだのと同じ「ソトアヤム」なる料理の一番値段の高いバリエーションを2人前注文してみた。もちろんその前にビンタンビールを注文する事は我々の常識として忘れていない。(が、残念なことにアンカービールしか置いてなかった)
注文をする際、回りにいるアンボン人すべてが、我々にナンダコイツラ光線の入った視線をピシピシと投げかけてきているのに気が付く。つい我々も対抗してカメラのストロボ光線でバシャバシャと撮りまくって対抗したが、どうも我々の好奇心よりも彼らの好奇心の方が強いらしく、我々はスゴスゴと料理が来るのを待つことにした。
料理の作り方を覗いてみると、なぜか「味の素」をゴッソリとドンブリに入れている。そこに肉団子らしきものと春雨らしきものをいれてスープを注ぎ、ちまき(日本の端午の節句で食べるちまきと形がそっくり)と香辛料を入れ、香草を上からパラパラと乗せて出来上がりである。
食べてみると、スープはメチャクチャ辛いがコクのある鶏スープ、肉団子は鶏のつみれ団子、ちまきはうるち米の餅で、けっこう旨かった。店員が何か言ってきたので適当にうなずいておくと、ちまきのお代わりを持ってきた。どうやら九州ラーメンの替え玉と同じらしい。
こちらで郊外を移動すると、必ず鶏が道ばたを独占している。しかもその姿は日本のブヨブヨ白色レグホンと違い、シャモのような精悍な姿形、面構えをしている。おまけに木や屋根の上に飛び乗って鬨の声を上げたりしている野生児そのまんまなやつらである。それが道ばたの雑草をついばみながら野放しで育っているのだからマズいわけがない。
「味の素」は必要ない様に思うのだが、こちらでは文明の調味料をふんだんに使っている。何か素材の味を壊しているようでもったいない気がするが、これが彼らのやりかたなのだからツベコベ言わずに黙ってワシワシと食った。
どうも「ソト」とは春雨スープの事らしく、「アヤム」は鶏の事らしいというのが我々の結論である。
突然Sさんがナプキンにメニューを写し始めた。日本に帰ってから意味を調べてみると言い出したのだ。そして、メニューを1つづつ読み上げながら書いている内に、何か読み方を間違えたらしく、奥に座っていた女の子が急にケラケラと笑い出した。その雰囲気からして、どうもヤバイ言葉を発してしまったようだ。普段はかなり冷静なSさんがその瞬間アタフタと大声でメニューを読み直して、「オレ今やばいこと言っちゃったのかな〜」と心配顔を向けてきた。
日本に帰ってからSさんにこのメモについて問いただしてみると、メモはどこかに在るはずだが、未だ意味を調べていないとの事。とりあえず私が意味を調べたので以下に掲載する。
SOTO AYAM (鶏入りスープ)
- ISTIMEWA 2000Rp (特製)
- SUPEL 1500Rp (上)
- BIASA 1000Rp (並)
BAKSO ISTIMEWA 1000Rp(鶏ミートボール入り春雨スープ・特製)
{Sさんが読み間違えた!*}
MIE GOREN 1000Rp (インドネシア風焼きソバ)
MIE KUA 1000Rp (インドネシア風ソバ)
NASI GOREN 1000Rp (インドネシア風チャーハン)
NASI PUTHI 500Rp (ライス)
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(*最近インドネシア語字典を入手して調べたが、BAKSOは載っていなかった。バリでお世話になったENA
DIVE CENTERにメールで問い合わせてようやく意味が解ったしだいである。SさんはこれをBASKOと読んでしまい笑われたのだが、おそらくBASKOM{洗面器}と聞き取れ、「特製洗面器」なる言葉を言った為に笑われたのではないかと推測される。これならば「変な言葉」で済まされる。Sさん、ヤバイ言葉でなくて良かったね!)
次に、「ミーゴレン」は知っていたので、「ミークァ」なる物を注文してみた。
これはいわゆるソバで、ラーメンともうどんとも違う、強いて言えば「極ブト極シコ中華メン」といった独特の麺に先ほどの「ソトアヤム」を中辛にしたスープが入り、その上に鶏肉の細く裂いたものが載せてあるしろものだった。
これは我々の間では非常に評判が良く、ついもう1人前追加してしまった。が、中辛といえどもふだん我々が食べている辛さとは桁が違う。4人とも顔を真っ赤にし、汗をダラダラ流しながらワシワシと口の中へ。
そしてスープを飲む時には特に気合いを入れて一気にグビッと飲み、その後すかさずにビールをググーッとあおらないと、喉の奥がジリジリしてきてついケホケホと情けない咳が出てきてしまうのである。
ふと後ろで同じ物を食べている女性を見ると、鼻の頭にうっすらと汗を浮かせている程度で素知らぬ顔で食べている姿には、一同感心してしまった。
「ミークァ」は紛れもないインドネシアソバである。我々は、これで年越しそばの代用とする事にした。
これだけ食って飲んで、1人頭日本円で約200円程度で済んでしまったのには一同ビックリ。帰り際、よほど珍しがられたのだろう。何故か我々に対して店中大喝采が起こってしまった。
我々も悪い気分はせず、みんなに握手をしながら汗ダラダラ、シャツビショビショ状態のまま、厳かに退散したのである。
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