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4.オジサン達、新年をアンボンで迎える、ナノダ!


 年越しそばを済ませた我々がホテルに戻ってみると、岩手のパーティメンバーも戻っていた。いよいよニューイヤーパーティーの始まりである。

 このためにわざわざ岩手から餅と焼き海苔を持ってきたとの事で、早速ホテルの厨房を借用して餅を焼き始める。つもりだったが、餅焼き網がない。
 大変うかつであった。インドネシアに餅焼き網があるはずがない!ホテルのコックに相談してみると、これでどうかと持ってきたのが魚を焼く網であった。多少魚臭いが、これで餅を焼くことにする。

 次にタレであるが、もちろん今や世界的に有名になったショーユソースはインドネシアにもあるが、本日はわざわざ日本から持ってきたキッコーマン丸大豆醤油を使用する事にする。これにニンニクのすりおろしを加え、焼きたての餅にこのタレをジュッとつけ、程良くタレが乾燥しかけた所に焼き海苔をサッと巻く。海苔は再度あぶってパリパリにしておく。
 餅を焼く者、餅にタレを付ける者、海苔を巻く者、一同厨房で大騒ぎである。
 ふと見ると、ホテルのコック達がワイワイやっている我々に不思議そうな視線を向けている。彼らに「ジャパニースピザ」だと言って餅を食べさせたところ、口では「グッドテイスト」などとお世辞を言っているが、顔には困った表情を浮かべている。
 こちらの主食は日本と同じ米であるが、パサパサである。おそらく粘りのある食べ物を口にして、どう飲み込んだらよいか解らず困っていたのではないかと推測される。餅はインドネシア人には不評であった。

 海苔を巻いている一人が、「バクダンだ!」と言って餅の中にチリ(生の唐辛子)を一かけら仕込んだ。こちらの唐辛子は強烈に辛いので、これに当たった人は飛び回ること確実である。

 次に、まだ年越しそばを済ませていない連中が日本から持ってきたカップラーメンを持ち込んできた。この国では沸騰したお湯を使うことほとんどが無いらしく、いくら頼んでもぬるいお湯しか出てこないと聞いていたので、わざわざヒーターの付いた湯沸かしヤカンまで用意していた。

 これらの準備ができ、大晦日の宴たけなわの時、ついに先ほどのバクダンに当たった人物が現れた。Sさんである。
 この人は辛い物が大好きでラーメンにコショウをガバガバ入れてウマイウマイと言って食べる人であるが、、さすがに生のチリにはそうとうこたえたようである。最初平気で食べていたが、途中で「ウッ!」と声を上げたと思ったらサッとビールに手が伸び、一気に飲み干してしまった。
 しかし流石にSさん、その後何食わぬ顔で餅のお代わりをしていた。ただし、海苔の間に仕込まれたバクダンのチェックは事欠かなかった事は紛れもない事実である。

 そのうちビールでは物足りなくなった我々は、この地方独特の酒アラックを飲み始めた。これは香り付けにバナナの花の蕾みを原料とした焼酎で、口当たりはまろやかだが度数はかなり高い代物である。そのままストレートでも良いが、氷を入れレモンを添えるとさっぱりとしてなかなか良い。アッと言う間にボトル1本のアラックが無くなってしまった。

 そんなこんだでいよいよ1996年ともお別れの時がやってきた。こちらの新年の迎え方は誠に単純である。アジア地域で何処でもお目にかかる爆竹と打ち上げ花火。それとラッパである。
 このラッパがくせ者、ホテルで用意してくれていたようだが、一見クリスマスのクラッカーを長くした様な形と装飾だが、手作りらしく大きさはさまざま。このさまざまな形が微妙に音程をずらし、一斉に吹くと得もいえぬ不協和音の嵐となる。これを回り近所一斉に鳴らすのであるから、自称アマチュア音楽家の私の耳には強烈な一撃である。そしてラッパに飽きると爆竹、打ち上げ花火と続き、ついにカウントダウン。



1997/1/1

 5、4、3、2、1、Happy NewYear!
 その瞬間ラッパがあちこちから一斉に鳴り響く。
 こうしてアブナイオジサン達はアンボンでの新年を無事に迎えたのである。この後2次会となったが、1日でアンボンとサパルアをあの暴走海上タクシーで往復した私はすでに体力の限界となりグロッキー、速やかに床についてしまったのである。
 一方私と同じ行程を往復したサンドラーと大沼氏は、翌日のダイビングの打ち合わせの為遅くまで話し合っていたようである。誠にご苦労様。


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