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10.大晦日、カニを食べに入った店は大失敗!

 今日は日本の大晦日。ダイビングを終えた我々は、大沼氏が美味しい店を知っているというのでカニを食べに行く事になった。
 カニと聞いて私は日本海で採れるズワイガニを思い浮かべてしまい、何で熱帯のバリにズワイガニあるのか不思議に思ったがとにかく付いて行く事にした。

 町の中心を抜け、反対側へ車で約1時間半、途中でたしかこの辺のはずだがと車を止めては店を探しまわり、ようやく見付けたが店は改装されていてカニは置いていない。事情を聞くとバリを牛耳るチャイニーズの連中の溜まり場となり、他の客が来なくなってしまい商売上がったり。しかたなく商売替えをしたのだと言う。

 せっかくここまで来たのだから何とかカニを置いてある店を探そうとあちこち探し回った末、ようやく置いてある店を発見。いわゆる高級中華料理店だ。

 早速お目当てのカニの注文だが、生きたカニの中から好きなカニを選んで料理して貰うシステムのようだ。私はてっきりズワイガニと思い込んでいたので、生きたカニの姿を見て納得。こちらのカニはガザミ、つまりワタリガニの事だったのだ。我々は注文をカニの選択に慣れている大沼氏にまかせて早速ビールで乾杯、のつもりだったが出て来たビールジョッキに全員目が点になってしまった。
 一時日本でも流行った保冷材入りのプラスチックのビールジョッキ、しかも冷凍していないので保冷材はただの水同然に中で揺れているだけなのだ。「オマエラな!使い方も知らないでこんな物偉そうに客に出すなよナ!」と言いたいところだが、これもバリのご愛嬌と受け止めてとにかく乾杯する事にした。

 しばらくして待ちに待ったカニが出てきた。なかなか美味しそうに甲羅が赤く色付いている。カニは卵を持つ雌の方が旨いので、全員ひっくり返しては卵を持ったカニを手に入れようと必死である。何とか騒動も収まっていよいよカニに挑戦。カニで一番美味しい部分は甲羅に付いたミソである。先ほどまで元気に這いずり回っていた新鮮なカニである。当然ミソも新鮮でさぞかし美味だろうと、そっと甲羅を剥がしてみてまたもや目が点。何だこりゃ、ミソが無い!

 どうも見た目が高級なだけで、きちんとした料理法を知らない店に飛び込んでしまったようだ。本来ワタリガニは蒸し上げたうえで調理するのだが、この店は甲羅を外した状態でボイルしてしまったようなのだ。大事なミソは茹で汁に溶けてしまい、跡形も無くなってしまっている。そしてやけに味がしつこく口の中に残る。この味は化学調味料のしつこさだ。味の素をごっそりと加えているに違いない。せっかく新鮮なカニなのに何とももったいない事だ。

 次にフカヒレスープを注文したが、フカヒレはお印程度に入っているだけ。そしてスープの味は先ほど食べたカニよりももっとカニの味がする。きっとミソとカニのエキスが溶け出した、先ほどのカニの茹で汁をスープベースに使ってしまったのだろう。本末転倒とはこの事だ。

 アンボンで食べたお気に入りのミークワを追求する私は、最後の仕上げにこの店でもミークワを注文してみた。麺はアンボンで食べたのと同じである。しかしここでも麺を茹でずに炒めてしまっているようだ。麺がやたらと脂っこい。しかもこれにもドッサリと味の素が入っているのだから、炒めた油っこさと化学調味料のしつこさで麺と具を食べるのが精一杯。スープは1口飲んだだけで嫌気がさしてしまった。これなら昨日屋台で食べたミークワの方がはるかに旨いではないか。

 こんなカルチャーショック満載の店だったが、料金は高級料理店並に高い料金を請求された。はっきり言って東京新宿のボッタくりバーと同じではないかと思ったが、きっとこんな店に来る現地の客はブルジョアの金持ちしかいないだろう。金持ちから盗み、貧乏人に分け与えた大泥棒、ネズミ小僧次郎吉に免じて許す事にした。

 大失敗の店だったが、ホテルへ戻った我々は口直しにビールとアラックで再度乾杯。明日はダイビングの予定が無いので(あっても同じだが)思い切り飲んで新年を迎える事にした。

そろそろロレツが回ららくらってきたド!おやふみなヒャ〜い・・・!


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