2009.08.22; 16.05.09  ↑UP    2015年の史上最高の暑さ等について江守正多様と議論<New   26%削減のパブコメに「地球温暖化はエセ科学」と意見提出 <オススメ

二酸化炭素は本当に地球温暖化の原因か?(その6)
井上雅夫
目次
36.NOAA漁業科学センタ発表「風が(米国)太平洋沿岸の温暖化を説明する」を翻訳(14.09.28; 10.05)
37.NASA発表「地球の深海は温暖化していない」を翻訳(14.10.09; 17)
38.「IPCC第5次報告書 統合報告書 政策決定者向け要約」を翻訳(14.11.03; 21)
 (訳注5)20世紀半ば以降の温暖化の原因は温室効果ガス。では20世紀前半は?(14.12.01) <オススメ
 (訳注6)環境省主催のシンポジュウムで江守正多様に質問(15.02.05)
 (訳注7)環境省のパブコメ募集に「IPCCの知見は誤りです」と意見提出(15.02.23) <オススメ
 (訳注9)26%削減目標のパブコメ募集に「地球温暖化はエセ科学」と意見提出(15.06.24; 07.05) <オススメ
39.2015年の史上最高の暑さ、CO2濃度飛躍的増加、CO2排出量横ばいについて江守正多様と議論(16.05.09) <New
1〜10(その1)へ 11〜20(その2)へ 21〜24(その3)へ 25〜28(その4)へ 26〜35(その5)へ  


36.NOAA漁業科学センタ発表「風が(米国)太平洋沿岸の温暖化を説明する」を翻訳(14.09.28; 10.05)

翻訳:井上雅夫[訳注1]
この米国海洋大気庁(NOAA)南西漁業科学センタの発表文の英文原本はこちらです。
この発表の元になった論文のアブストラクトの翻訳文はこちらです。

南西漁業科学センタ<Southwest Fisheries Science Center>
米国海洋大気庁漁業局<NOAA Fisheries Service>
 漁業エコロジー部門<Fisheries Ecology Division>

変化する風が(米国)太平洋沿岸の温暖化の大部分を説明する
 漁業エコロジー部門、2014年9月22日午後12:06:18

Proceedings of the National Academy of Sciences [訳注2]に発表された新しい分析によると、東太平洋上の風の変化が前世紀の北アメリカの西海岸の温暖化傾向の大部分を説明する<explain>。

同様な大気の変化<shifts>が太平洋十年規模振動(PDO)(長い間認識されてきたシーソーのような海洋温度のパターン)の形の数十年にわたる太平洋の気候変動を駆動していることが知られている。この新しい研究は、地域的な気圧および風の同様な変化が1世紀またはそれ以上にわたる海表面温度および沿岸の気温の傾向も駆動することができることを示している。

この研究では、既に十分に裏付けらている北東太平洋およびその近くの陸域における約0.5〜1℃の増加を確認するために、1900年から2012年までの独立して観測された陸海表面気温の記録を使用した。この研究の特に興味深く新規な点は、循環の変化が1900年以降の北東太平洋および西海岸の州[注3]の年、10年および世紀の期間の表面温度の変化のほぼ全ての原因であることを、前世紀の独立して観測された大気の海水面気圧が示していることである。

最新のIPCCの報告書で使われた気候モデルシミュレーションのある評価<An evaluation>は、113年(訳注:1900〜2012年の113年間と考えられる)の温暖化傾向の大部分の原因となる大気の変化が、自然起源および人為起源強制力の両方を含む過去の放射の変化の結果として生じたとは予測されなかったことを確認している<finds>。1900年以降の西海岸の温暖化の大部分は1910年と1940年の間に起こったことも注目すべきことである。これらの事実が、地域的な気候力学<regional climate dynamics>においては気温の傾向の大部分は自然の変化<natural changes>によって起こっている可能性が高いことを示していると、この新しい研究は結論している。

「表面の風および風に駆動された海流が北東太平洋およびその周辺の温度に大きな影響を及ぼしている;それらが全体の温度変化を支配し温暖化傾向の大部分の原因にもなっている」と、Jim Johnstone(前ワシントン大学NOAA合同大気海洋研究所、この研究の筆頭著者)は言う。「西海岸の海表面温度および沿岸の気温は大気の気圧および風の変化パターンと歩調をそろえて進んできた」。

この新しい研究は、東太平洋の過去の海水面気圧、風および温度に関する地域的な気候研究であり、世界規模の気候変動については、いかなる結論も導かない。この研究は、世界の気候システムに作用する、より大きな力を、地域規模の気候変動が少なくとも一時的にどれくらい覆い隠すかもしれないかを理解することの重要性を示している。

温室効果ガスは上部大気に熱を閉じ込めるが、下部大気のプロセス(特に表面の風に関連する熱移動)が北東太平洋沿岸における海の温度変化を支配していると、Johnstoneは言う。海上の風は大規模なパターンで変化し、蒸発による冷却および表面の海流を調整する。北東太平洋の風がより低気圧性(反時計回り)の傾向を持つと、沿岸の蒸発が減少し、より暖かい海流が支配し、海表面温度は上昇する。新しい分析は、北東太平洋の風の1世紀間の低気圧性の傾向が沿岸の海表面の温暖化の大部分を駆動していることを示す傾向を確認している。

西海岸の州の陸域の気温も近くの海の気候の跡をぴったりと追っている。

「人々は自分の近くの気候に何が起こっているのかを知りたがっているが、西海岸について、それを言うのは本当に挑戦なのだ、なぜなら何が起ころうとも今までどおり次の数十年にわたる自然変動<natural variability>によって支配される可能性が高いからである」と、Nate Mantua(NOAA漁業局南西漁業科学センター地表エコロジーチームのリーダー、この研究の共著者)は言う。

「背景として地球規模の気候変動が起こっているとしても、我々が述べるような地域的な変化は我々が住んでいる気候を支配し続けている」と、Mantuaは言う。彼は1966年に太平洋十年規模振動を最初に発見した科学者グループの一員である。「局地的および地域的な規模で、我々は自然変動を、人間の影響から予期される強制された気候変動から区別するために、なすべき多くの仕事を持っている」。

この研究は、20世紀にわたって北カリフォルニアの沿岸の赤色木材<redwood>地域における夏の霧の頻度の30%の減少を発見した2010年の研究から発展したものである。この新しい研究において、JohnstoneとMantuaは、霧の頻度に影響する同じ沿岸の温度が沖合の大気の変化によって調整されていることを発見した。

海面の与えられた区域の上の大気の重さを示す気圧計によって単純に計測された海水面気圧が、複数の日、複数の月または、エルニーニョおよび太平洋十年規模振動のように複数の年の時間スケールで、そして、この新しい研究が示すように1世紀またはそれ以上のより長いスケールで、地域的な大気の変動をとらえる<capture>。北太平洋高気圧<the North Pacific High>の弱まり、それに伴う風の弱まりが、北東太平洋の海表面温度、およびワシントン、オレゴン、北カリフォルニアを含む太平洋北西沿岸の気温の1900年から2012年の温暖化傾向の80%以上の原因であることをこの研究は発見した。

同じ要因が南カリフォルニアの温暖化傾向の約60%の原因であるが、他の要因もこの地域の気温に影響を及ぼしていることを示している。

年輪の研究も、人為的温室効果ガスが影響する前に、世紀の期間の気温の傾向が西海岸に沿って生じていることを証明している。これは、大気循環の変化および風の影響が太平洋の気候の昔からの要因であることの証拠である。

「我々はこれらの変動は10年スケールにわたって作用していることは知っていたが、我々が今理解しつつあるのは世紀スケールにも拡張できることである」と、Johnstoneは言い、Mantuaは「以前の研究が、同じような強い循環がカリフォルニアのSierrasの雪の融解のタイミング、およびワシントンとオレゴンのカスケード山脈の春の積雪傾向を調整していることを発見していた。このように、気温および海流に加えて、風のパターンの変化は我々が多くの異なった形で経験する気候の種類において重要な役割を演じている。我々は、この研究がこの地域の最近の気候変動の原因の理解を進歩させると考えている。また我々は、この研究が将来の気候を予測するために使用されるモデルの改良のための努力、また有史以前の気候について人々に知らせるために使用される古気候データの解釈を助けるための努力にも活気を与えるだろうことを希望している」と付け加えた。
北東太平洋研究地域における地域的な海表面温度(SST)の観測値と再現値の比較。我々のモデルによる海表面温度の変化の再現は月次の海水面気圧(SLP)の変化に基づいている。
36_f1.jpg
赤の曲線は地域的に平均化された北東太平洋の海表面温度の長期間の平均からの偏差の月次の観測値を示す。青の曲線は我々の海水面気圧に基づくモデルによる同じ地域の月次の海表面温度の偏差の再現値を示す。「r」値は月次の時系列の再現値と観測値の相関係数である。

我々の研究は1900年から2012年の観測値に焦点を合わせている。このグラフの右端の薄いグレーの影は、観測された海水面気圧を使った2013年から2014年8月までのモデルの再現値(青の曲線)と月次の海表面温度の観測値(赤の曲線)を、強調している。最近の月次の北東太平洋の温度は、我々の単純なモデルによる再現よりなおさら、かなり温暖化していることに注意。

この研究は本質的に何を言っているのですか?

この研究は1900年から2012年まで、風が、月〜世紀の期間の海表面温度(SST)偏差および北東太平洋沿岸の変化の主要な原因であることを示しています。(地域的な海水面気圧の指標によって表される)風の強制力が過去のSSTの変動および変化の観測値を高い正確さ(〜0.8の相関関係)で再現することできます。

これらの発見の意義は何ですか?

これらの結果は、最近の地域的な気候変動の原因に関して重要な再解釈を提案すると共に、風と気圧のパターンが前世紀にわたって相当変わったことを示しています。またこの研究は、地域的な風、気圧および温度の変化が(土地利用、温室効果ガスおよびエアロゾル濃度の変化による)人為起源の原因や(太陽または火山噴火の変化による)自然起源放射強制力に関連していそうにないことも示しています。

風がどのように海の温度に影響を与えているのですか?

北東太平洋において、風は大規模なパターンで変化し、蒸発率および海の上部の海流を調整しています。地域的な海水面気圧がいつもと違って低い時は、低気圧性(反時計回り)の風の傾向となります。沿岸の風速、蒸発率、および南に向かう海岸流は弱まり、北アメリカ沿岸に沿って広範囲の温暖化を導きます。この研究は、1世紀の期間の海水面気圧の減少を強調し、1900〜2012年の沿岸の温暖化が低気圧性の風の増加傾向によって引き起こされたことを示しています。

これは、人為起源の温暖化は西海岸/東太平洋に影響を及ぼしていないことを意味するのですか?

この研究は、大気循環の変化(特に風の変化)が1900年から2012年までの西海岸/北東太平洋の温度の変化のかなり正確な原因であったことを示しています。もし人為的影響が1900年から2012年までの北東太平洋/西海岸の温暖化に重要であったとすれば、それは現在の全球気候モデルではうまくシミュレートできない間接的な循環路を通して生じた可能性が高いと思われます。この研究で議論された地域的な気候力学を我々が理解すればするほど、どのように地域的な気候力学が人為起源の気候変動と相互作用し得るか、そして地域の気候に対する結合された影響が何であるだろうか、を我々はよりよく理解できます。

人為起源の気候変動が、この研究で温暖化傾向に責任があるされた風の減少傾向を作り出せないと、どうして言えるのですか?

1850年から2005年までの再現に使われた全球気候モデルでは、観測された沿岸の温暖化傾向のキーとなる駆動要素として我々が特定した観測された風の減少のようなものを、生成することはできません。

さらに、この地域の温暖化と寒冷化の期間のタイミングは、温室効果ガス濃度の相対的に高い傾向と低い傾向のタイミングと一致しません。例えば、1980年から2012年までの地域的な気候変動では、風が強まり沿岸の海は寒冷化しましたが、温室効果ガス濃度は急激に上昇しました。最も大きな風の減少と最も大きな地域的温暖化は、温室効果ガスの増加が相対的に控え目だった、〜1910年から1940年までに起こっています。

球気候モデルがこのような基本的な影響力を再現できないとしたら、全球気候モデルの正確さに疑問が生じるのですか?

全球気候モデルが地域的な気候変動をシミュレートする能力に疑問が生じますが、これは既に知られた全球気候モデルの短所の一つです。モデルの強さと弱さのよりよい理解が将来の研究の努力をガイドするかもしれません。

南カリフォルニアが人為起源温室効果ガス強制力に(訳注:西海岸の中で)最も影響を受けやすい<most vulnerable>ことを意味しているのですか?

必ずしもそうではありません。南カリフォルニアの温暖化に役割を演ずる(例えば、陸上の循環を含む)循環の変化の他のパターンがあるかもしれません。これは更なる研究の根拠となるテーマです。

地域の気候要素の方が勝っているとしても、我々は人為起源の地球規模の気候変動を心配すべきですか?

もちろんです。地域規模および地球規模の気候は自然起源および人為起源の要因の結合に影響を受けています。今回の研究は、これらの要因を特定し区分しようとする時に注意が必要であることを示しています。1世紀の期間にわたる地域的な温暖化傾向が人為的原因によって支配されていると決めてかかるのは安全ではないかもしれませんし、関連するプロセスを全球気候モデルが忠実に再現すると決めてかかるのも安全ではないかもしれません。この研究が循環の変化およびそれらの全体的な気候変動における役割に関する更なる研究に刺激を与えるだろうことを我々は希望します。

では、この研究は我々をどのように助けるのですか?

この研究は、(西海岸の温度変化に重要であると知られていた)変化する気象パターンがこの地域の気候の世紀の期間の傾向に如何に貢献し得るかを示しています。この研究が、1900年以降の西海岸/北東太平洋の温暖化のかなり正確な原因に関する比較的簡単な説明と共に、過去の気候変動に対する価値ある洞察を与えると我々は考えています。この研究は世紀の期間の気候変動のメカニズムに関して新しい問題を開きます。

問い合わせ先:
  James Johnstone (Independent Climate Researcher)
  Nate Mantua (SWFSC Fisheries Ecology Division, Landscape Ecology Team)
  報道関係者の問い合わせ先: Michael Milstein (NOAA Fisheries West Coast Region, Communications and External Affairs Office)

(2014年9月22日)


この米国海洋大気庁(NOAA)南西漁業科学センタの発表の元になった論文のアブストラクトの翻訳文 (14.10.01)
論文のアブストラクトの英文原本はこちらです[訳注2]

Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America

1900〜2012年の北東太平洋の温度変動および変化への大気の支配

James A. Johnstone、Nathan J. Mantua
 
意義
1900年以降の北東太平洋沿岸の温暖化はしばしば人為起源の温室効果強制力が原因であるとされる一方で、数十年の温度変化は一般に地域的大気力学に応答する太平洋十年規模振動(PDO)の枠組の中で説明される。この研究はいくつかの独立したデータ源を使用して、北東太平洋周縁部近くの世紀の期間の温暖化が、数十年変動のように、主に大気循環の変化が原因でありうることを示す。この研究は、最近の地域的な気候変動の原因に関して重要な再解釈を提案すると共に、風と気圧のパターンが前世紀にわたって相当変わったこと、これらの変化が過去の人為起源および自然起源の放射強制力に関連していそうにないこと、および、年々の温度変化および数十年の温度変動の動的なメカニズムが観測された世紀の期間の傾向にも適用できることを示す。

アブストラクト
前世紀にわたって、北東太平洋沿岸の海表面温度(SST)と陸表面気温(SAT)は、〜0.5から1℃の温暖化傾向に加えて、太平洋十年規模振動に関連した数十年の変動を示している。この研究では、海水面気圧(SLP)、SST、およびSATの独立した記録を使い、北アメリカ沿岸地域に重点をおき、1900年から2012年までの北東太平洋の大気−海洋結合変動を精査している。我々は、線形確率時系列モデル<a linear stochastic time series model>を使って、北東太平洋沿岸近くのSSTの変化が、地域的な大気強制力と海の持続性<ocean persistence>の結合によって、特定の季節にかかわりない<nonseasonal>月次SST変動の63%(r=0.79)および年平均変化の73%(r=0.86)を、説明できることを示す。我々は、SLPの減少およびそれに関連する大気強制力が1910−1920年から1940年までの北東太平洋周縁部の世紀の期間の温暖化をもたらしたことを示す。北東太平洋の循環の変化が、北東太平洋沿岸SSTおよび米国太平洋北西部(ワシントン、オレゴン、および北カリフォルニア)SATの1900〜2012年の線形温暖化<linear warming>の80%以上の原因であると推定される。同一の過去の放射強制力に基づく気候モデル・シミュレーションのアンサンブル(集合)は、観測された地域的な循環傾向を再現するのに失敗している。これらの結果が、自然に内部的に生成された大気循環の変化が1900年から2012年までの北東太平洋沿岸の温暖化の主要な原因であったことを示しており、より一般的には、年々の温度変動および数十年の温度変動の地域的メカニズムを世紀の時間スケールにも拡張できることを証明している。


訳注
(訳注1)この米国海洋大気庁(NOAA)南西漁業科学センタの発表の英文原文はこちらで公開されています。翻訳文中の< >内は原文です。翻訳はできる限り正確に行っているつもりですが、翻訳文に誤訳およびその他の誤りがあったとしても翻訳者(井上雅夫)はいかなる責任も負いません。この翻訳文は自己責任でご利用ください。なお、私はツイッター上では「井上雅夫(IPCC報告書研究家)」を名乗っています。私の経歴等はこちらをご覧ください。
  ご意見や誤訳のご指摘は井上雅夫(el_conditions_i.JPG )までお願いいたします。

(訳注2)この米国海洋大気庁(NOAA)南西漁業科学センターの発表の元になった論文のアブストラクトの英文原本はこちらです。論文の全文は有料です。Visa、MasterCard、American Expressであれば、円建てのクレジットカードでも購入できます(「アメリカドルで表示されている商品を日本のクレジットカードで購入できますか?」参照)。以下に論文の購入方法を記載します。
1)英文のアブストラクトのページで「PDFアイコン」タブをクリック。
2)下の方に記載されている「Purchase this Article<この論文を購入>」をクリック。
3)論文名を確認し、「Purchase Access to this Article for 2 days for US$10.00<この論文の2日間のアクセスを10ドルで購入>」が選択されていることを確認し、電子メールアドレスを入力して、「Continue<続ける>」をクリック。
4)確認画面でもう一度内容を確認して、「Click here to Purchase<ここをクリックして購入>」をクリック。
5)Visa、MasterCard、American Expressのいずれかを選択し、Card Number<カード番号>とExp Date<有効期間>を入力して、「Continue<続ける>」をクリック。
6)表示された内容を確認し、CSC<セキュリティコード>を入力し(「クレジットカードのセキュリティコード」参照)、Name<名前>をアルファベットで入力し、Zip Code<米国郵便番号>に米国外の「001」を入力し、「Authorize this transaction<この取引を許可する>」をクリック。
7)確認画面が表示されたら、「Continue to content<内容に続ける>」をクリックすると、論文のpdfが表示されます。論文のpdfの上の方にポインタを移動するといくつかのアイコンが表示され、フロッピーディスクのアイコンをクリックすると、論文のpdfファイルをダウンロードできます。
8)その後は、英文のアブストラクトのページで「PDFアイコン」タブをクリックするか、送られてきた確認メールのurlをクリックすると2日間アクセスできます。クレジットカードからの料金の引き落としは「HIGHWIRE PRESS」名で行われるとのこと。
9)英文のアブストラクトのページで、「SI」タブをクリックすると、Supporting Information<補足情報>が表示され、「Download Supporting Information (PDF) <補足情報(PDF)のダウンロード>」をクリックすれば補足情報のPDFファイルを表示、ダウンロードできます。また、「Download Dataset_S01 (XLSX)<データセット_S1(XLSX)のダウンロード> 」をクリックするエクセルのデータセットがダウンロードできます。なお、英文のアブストラクトのページで、「PDFアイコン+SI」タブをクリックすると、論文の全文と補足情報が一緒になったPDFファイルを表示、ダウンロードできます。
10)英文のアブストラクトのページで、「Related Content<関連資料>」タブをクリックすると、Semantically Related Articles<意味的に(?)関連する論文>が表示され、各論文の例えば「Full Text(PDF)」をクリックすると、その論文の全文のPDFファイルが表示され、ダウンロードもできます。これらもダウンロードして10ドル(1100円)なら安いと思います。
 なお、有料の論文を翻訳して公開することは、著作権法上できません。

(訳注3)米国の西海岸は北東太平洋に面しています。



37.NASA発表「地球の深海は温暖化していない」を翻訳(14.10.09; 17)

翻訳:井上雅夫[訳注1]
このNASAの発表文の英文原本はこちらです。
このNASAの発表を報道したニュースはこちらです。
この発表の元になった論文のアブストラクトの翻訳文はこちらです。


NASA
2014年10月6日
リリース 14-272
NASAの研究が地球の深海は温暖化していないことを確認した


37_f1.jpg NASAの新しい研究によると、2005年以降、地球の深い海の冷たい水は測定可能な温暖化はしておらず、近年の地球温暖化が減速したように見える謎は解決されないままである。

カリフォルニア州パサデナにあるNASAジェット推進研究所(JPL)の科学者らは2005年から2013年の人工衛星および直接の海の温度データを分析し、1.24マイル(1,995m[訳注2])以下の深海は測定可能な温暖化はしていないことを確認した。研究の共著者であるJPLのJosh Willisは、これらの発見は気候変動自体に疑問を投げかけるものではないと言う。

「海面は依然として上昇している」と、Willisは強調した。「我々は核心に触れる詳細を理解しようと正に試みているところだ。」

20世紀と全く同じように、21世紀においても温室効果ガスは大気中に蓄積され続けているが、世界平均地上気温は温室効果ガスと並んで上昇するのを停止している。世界の海の上半分(1.24マイル(1,995m[訳注2])以上)の温度は依然として上昇しているが、失速した気温を説明するのに十分な早さではない。

「行方不明の」熱<the "missing" heat>がどうなっているのかを説明するために、陸、大気および海における多くのプロセスが呼び出されてきた<invoked>。最も卓越したアイディアの一つは、海の下半分が不足分を受け持っている<taking up the slack>というものであるが、それを支持する証拠は乏しい。この最新の研究は、海の上部の直接的な温度測定だけでなく人工衛星の観測を使ったアイディアに先鞭をつけるものである。科学者は2005年以降、アルゴアレイ<the Argo array>と呼ばれる3,000の浮動する温度測定装置のネットワークを使って海の上半分の温度を直接的に得てきた[訳注3]

「海の深い部分は測定がより難しい」と、JPLのWilliam Llovel(Nature Climate Change誌に日曜日に発行された研究の筆頭著者)は言う。「海面上昇が深い海の温暖化にどれだけ依存しているのかを人工衛星と直接の温度データの結合が見せてくれる。答えは−−多くない。」

この研究は暖まると水が膨張する事実を利用する。海面はこの膨張および氷河や氷床の融解により追加される水によって上昇する。

結論に到達するために、JPLの科学者らは、2005年から2013年までのアルゴブイのデータ、NASAのJason-1、Jason-2衛星、およびGravity Recovery and Climate Experiment(GRACE)衛星を使って、そのまま減算した。彼らは、海面水位上昇の全量から、海の上部の膨張による上昇量と融解水の追加による上昇量を減算した。残りが深い海の温暖化による海面水位上昇量を表している。

その残りは本質的にゼロであった。深い海の温暖化はこの期間の海面水位上昇に事実上何も貢献していなかった。

共著者であるJPLのFelix Landererは、同じ期間の海の上半分の温暖化は衰えずに続いており、これは我々の惑星が加熱されている明白なしるしであると強調する。深い海の温暖化を報告しているいくつかの最近の研究は、実際には、海の一番上の層(深さ約0.4マイル(700m)まで)を除いた上半分(訳注:700m〜2000m)の温暖化について述べている。

またLandererは、同じ雑誌の1970−2005年(訳注:正しくは1970−2004年)の南半球の海の温暖化に関する他の論文の共著者でもある。アルゴフロートが配備される以前は、南氷洋<the Southern Ocean>における温度測定はせいぜいまだらなものであった。人工衛星の測定と全世界の海面変動の気候シミュレーションを使い、その新しい研究は35年間(訳注:1970−2004年の35年間)に世界の海は以前に考えられたより遙かに多くの熱(初期の推定より24〜58%も多くの熱)を吸収したことを確認した。

両方の論文は新しく組織されたNASAの海面水位変動チーム(NASAの人工衛星データを使って海面水位変動の現在および将来の推定の正確さおよび大きさを改善することを任務とした学際的なグループ)の研究の結果である。南半球の論文はカリフォルニア州リバモアにあるローレンス・リバモア国立研究所の3名の科学者によりもたらされたものである。

NASAは、人工衛星群および野心的な空中と地上の観測作戦で、陸、大気および宇宙からの地球のバイタルサイン<Earth's vital signs>をモニターしている。NASAは、長期間のデータの記録および我々の惑星がどのように変化しているのかをよりよく知るためのコンピュータ分析ツールと共に、地球の相互に接続されたシステムを観測し研究する新しい方法を開発している。NASAは、この類いのない知識を世界のコミュニティと分かち合い、我々の母星<our home planet>を理解し守るために貢献する合衆国および全世界の研究所と共に研究している。

2014年のNASAの地球化学活動についての更なる情報は:
http://www.nasa…

宇宙からの海面地形図<ocean surface topography>に関する更なる情報は:
http://sealevel.jpl…

NASAのGRACE衛星に関する更なる情報は:
http://grace.jpl.nasa.…

アルゴアレイに関する更なる情報は:
http://www.arg…
−おわり−
Steve Cole
Headquarters, Washington
202-358-0918
stephen.e.cole@nasa.gov

Alan Buis
Jet Propulsion Laboratory, Pasadena, Calif.
818-354-0474
Alan.Buis@jpl.nasa.gov


このNASAの発表の元になった論文のアブストラクトの翻訳文 (14.10.10)
論文のアブストラクトの英文原本はこちらです。

Nature Climate Change | アーティクル

海面水位およびエネルギー収支への深海の寄与はこの十年にわたって探知できない

W. Llovel、J. K. Willis、F. W. Landerer、I. Fukumori
2014年6月27日受付、2014年8月26日受理、2014年10月5日オンライン出版

アブストラクト
世界の海は、気候システムにおける熱吸収の支配的な貯蔵庫として、地球の気候変動の決定的な量<a critical measure>を与える。我々は本稿で2005年1月〜2013年12月における全球海面水位上昇関連の深海の温暖化と地球のエネルギー収支に関して述べる。深さ2,000mより上の海の温暖化の直接の測定値によって全球平均海面水位上昇の観測された年率の約32%が説明される。水柱全体にわたる海の温暖化の独立した推定値は海面水位上昇に0.77±0.28mm y−1寄与しており、推定の不確実性の範囲内で海の上部の推定値と一致する。追加的な可能性のあるシステマティックな不確実性はあるが<Accounting for>、深海(2000m以下)は全球海面水位に−0.13±0.72mm y−1寄与し、地球のエネルギー収支に−0.08±0.43W m−2寄与している。海の正味の温暖化は、2005年〜2013年の0.64±0.44W m−2の地球のエネルギー収支を意味する。[訳注4]
 37_f2.jpg  

訳注
(訳注1)このNASAの発表の英文原文はこちらで公開されています。翻訳文中の< >内は原文です。翻訳はできる限り正確に行っているつもりですが、翻訳文に誤訳およびその他の誤りがあったとしても翻訳者(井上雅夫)はいかなる責任も負いません。この翻訳文は自己責任でご利用ください。なお、私はツイッター上では「井上雅夫(IPCC報告書研究家)」を名乗っています。私の経歴等はこちらをご覧ください。
  ご意見や誤訳のご指摘は井上雅夫(el_conditions_i.JPG )までお願いいたします。

(訳注2)「1995m」という半端な数字が記載されていますが、この発表の元になった論文のアブストラクト(翻訳文英文原本)では「2000m」です。恐らく、これをNASAの広報担当者が1.24マイルと換算して、さらにこれを1,995mに換算したので、端数の影響で誤差が出たのだろうと推測します。正しくは「1.24マイル(2,000m)」です。

(訳注3)アルゴアレイは水深2000mから海面までの水温と塩分を測定できます(ウィキペディア:ARGO計画参照)。この論文には「2005年以降、アルゴアレイと呼ばれる3,000の浮動する温度測定装置のネットワークを使って海の上半分の温度を直接的に得てきた」と記載されています。そこで、以下にアルゴフロートの分布(2002年6月、2002年末、2003年末、2004年末、2005年末、2006年末、2014年9月)を示します。最初の6枚は、岡英太郎先生の「気候変動を予測するための全球リアルタイム海洋観測」の「3.Argo計画」に小さく表示されている図を拡大し並べ替えたもので、最後の1枚は「Argo Information Center」の「Latest Maps」の図です。2003年末までは偏在していますが、2004年末には世界中の海にアルゴフロートがほぼ均一に分布していることがわかります。
37_f3.jpg
37_f4.jpg
(訳注4)このNASA発表「地球の深海は温暖化していない」の元になった論文のアブストラクトの図1、2について解説します。右にアブストラクトの図1、2を示します。横軸は年、縦軸は海面水位です。

図1の青線は、ジェイソン衛星に搭載されたレーダ高度計で測った海面水位偏差です(ウィキペディア:ジェイソン1参照、ジェイソン1衛星が運用停止後は、ジェイソン2衛星が引き継いでいます)。

図1の黒線は、GRACE衛星で測った海の質量の変化(陸上の氷河・氷床が解けて海に追加された水の量)による海面水位偏差です。GRACE衛星は「トム」と「ジェリー」と呼ばれる2つの人工衛星のペアで、海やその他の質量の変化を測定します(ウィキペディア:GRACE(人工衛星)参照)。

図1の赤線は、その場観測によるステリック[訳注5]な海面水位偏差、つまりアルゴフロート([訳注3]参照)が海の中で直接測った0〜2000mの水温に基づく熱膨張による海面水位偏差です。

図1の点線は、「点線=青線(高度計で測った海面水位偏差)−黒線(陸上の氷河・氷床が解けて海に追加された水の量による海面水位偏差)」です。つまり、図1の点線は0m〜海底の水温に基づく熱膨張による海面水位偏差の推定値です。なぜなら、「高度計で測った海面水位偏差=陸上の氷河・氷床が解けて海に追加された水の量による海面水位偏差+0m〜海底の水温に基づく熱膨張による海面水位偏差」だからです。図1から「点線≒赤線」であることがわかります。

図2の点線は、「図2の点線=図1の点線(0m〜海底の水温に基づく熱膨張による海面水位偏差の推定値)−図1の赤線(0〜2000mの水温に基づく熱膨張による海面水位偏差)」です。つまり、図2の点線は2000m以下の深海の水温に基づく熱膨張による海面水位偏差の推定値です。なぜなら、「0m〜海底の水温の基づく熱膨張による海面水位偏差の推定値=0〜2000mの水温に基づく熱膨張による海面水位偏差+2000m以下の深海の水温に基づく熱膨張による海面水位偏差の推定値」だからです。

「図1の点線≒図1の赤線」なので当然ですが、図2の点線はほぼ横ばいです。したがって、2000m以下の深海の水温に基づく熱膨張がほとんどないのですから、2000m以下の深海は水温に変化がなく温暖化していないという結論になります。

図2の赤線は図1の赤線と同じグラフで、0〜2000mの水温に基づく熱膨張による海面水位偏差です(縦軸の目盛が図1の倍に拡大しています)。緑線は0〜700m、青は700〜2000mの内訳です。これらは全てアルゴフロートによる観測値に基づくものです。

なお、図1、2は海面水位「偏差」のグラフなので、縦軸の海面水位の「絶対値」は意味ありません。見やすいように上下の位置をずらして示されています。

アルゴフロートがほぼ均一に分布した2005年以降([訳注3]参照)、0〜2000mの水温が直接観測できるようになったので、アルゴフロートの観測値と人工衛星のデータを巧みに使って、直接観測できない2000m以下の深海の水温の変化を推定したのが、この研究です。

もっとも、やっていることは単純な引き算「2000m以下の熱膨張による海面水位偏差=高度計で測った海面水位偏差−陸上の氷河・氷床が解けて海に追加された水の量による海面水位偏差−0〜2000mの熱膨張による海面水位偏差」なので、中学理科の問題にも使えそうな単純なアイディアです。ただし、答えを知ってしまえば簡単でも、オリジナルでこのアイディアに辿り着くのは、そう簡単にできることではないと思います。

(訳注5)「ステリック<steric>」を辞書で引くと「立体の」「空間的」等の訳語が記載されていて、最初は何のことか全くわかりませんでした。調べてみると、ステリックな海面水位偏差とは、水温と塩分濃度の変化に起因する海面水位偏差という意味でした。それでも、何でステリックというのかという疑問が残りましたが、海の質量変化(陸上の氷河・氷床が解けて海に追加された水の量)による海面水位偏差の反対語であることに気がついて、ようやく納得できました。つまり、陸上の氷が解けて海に水が追加されると海の質量が変わるのに対して、海の温度が上がり熱膨張で海面水位が変わる場合は質量は変化せず体積だけが変化するからステリックと呼ばれるのではないかと思います。


38.「IPCC第5次報告書 統合報告書 政策決定者向け要約」を翻訳(14.11.03; 21)

 「IPCC第5次報告書 統合報告書 政策決定者向け要約」を翻訳しました。以下のリンクをクリックしてください。

  「IPCC第5次報告書 統合報告書 政策決定者向け要約」の日本語訳

 この要約の原文はIPCCのサイトのこちらで入手できます



39.2015年の史上最高の暑さ、CO2濃度飛躍的増加、CO2排出量横ばいについて江守正多様と議論(16.05.09) <New
江守様の記事1   私のコメント1
江守様の記事2   私のコメント2   私のコメント3
江守様からのメール   私の返信メール

 地球温暖化の専門家として著名な江守正多様はyahoo!ニュースに個人のページを持っておられます。

 2016年3月15日、江守様は記事1『温暖化対策計画 2050年80%削減は可能? 「分煙革命」を参考に考える「脱炭素革命」の意味』の中で次のように述べておられます。
 地球温暖化も同様に、CO2などの温室効果ガスの排出が気候変動をもたらし、それが社会や生態系に悪影響を及ぼすという科学的な知見が積み重ねられ、IPCC(気候変動に関する政府間パネル)の報告書に代表される形で、証拠として提示されてきた。
 
2016年3月19日、私(井上雅夫)は江守様の記事1に次のコメント1を投稿しました。
『世界の大気中CO2、2015年飛躍的に上昇』
http://goo.gl/krZQaM
『世界のCO2排出量、15年は横ばい IEA発表』
http://goo.gl/xI79DL
 以上の2つのニュースから、大気中CO2濃度とCO2排出量は無関係であり、人為起源CO2が地球温暖化の原因ではないことがわかります。
 したがって、『CO2などの温室効果ガスの排出が気候変動をもたらし、それが社会や生態系に悪影響を及ぼすという科学的な知見が積み重ねられ』て作成されたIPCC報告書の知見は誤りであり、IPCCの知見に基づく『「脱炭素革命」という国際アジェンダ』も誤りであることがわかります。

 なお、『CO2などの温室効果ガスの排出が気候変動をもたらし』はこれ自体、科学的に誤りです。CO2温暖化説が正しいと仮定しても、気候変動に影響を及ぼすのは大気中CO2濃度であり、CO2の排出自体が気候変動に影響するはずはないからです。


 2016年3月21日、
江守様は私のコメント1に関して記事2『大気中CO2濃度が去年は飛躍的に増加 世界のCO2排出量は横ばいなのに、なぜ?』を書いてくださいました。この中で江守様は次のように述べておられます。
大気中のCO2の収支
 大気中に蓄えられているCO2の量は、人間活動によるCO2排出の分だけ増加し、海洋と陸上生態系に吸収される分だけ減少するので、濃度変化はその差し引きで決まる。
 図は、国際的な専門家のグループGlobal Carbon Projectが毎年発表しているCarbon Budgetの2015年版に掲載されているCO2の収支のグラフである。
 お金の収支に例えると、大気中CO2濃度が「残高」の指標で、人間活動による排出は「収入」、海洋と陸上生態系による吸収は「支出」だ。収入が横ばいでも、支出が急激に減れば、残高が急激に増えるのは誰にでも理解できるだろう。
39_f1_550.jpg
 グラフの上側が「収入」の部である。大部分がエネルギー・産業起源の排出(灰色:Fossil fuels and industry)で、長期的な増加傾向にある。もう一つは森林伐採などの土地利用変化による排出(黄土色:Land-use change)だが、長期的にはほぼ横ばいで、近年の総排出量に占める割合は1割程度だ。
 グラフの下側は、3割程度の陸上生態系による吸収(緑:Land sink)、2割5分程度の海洋による吸収(青:Ocean sink)が「支出」の部、残った4割5分程度が、「当期収支差額」である大気中CO2の増加(水色:Atmosphere)だ。

 陸上生態系による吸収は年々の変動が激しく、人間活動による排出および海洋による吸収は変化が比較的なめらかなのがわかる。結果的に、大気中CO2の増加は陸上生態系による吸収の変動を反映して激しく変動する。


原因はエルニーニョと人間活動
 陸上生態系による吸収の変動は主に気候の自然変動によって生じる。
 去年から今年のような強いエルニーニョが起きると、高温による植物の呼吸の増加や土壌有機物の分解の増加、森林火災の増加、地域によっては少雨による植物の成長阻害が起きて、陸上生態系によるCO2の吸収が弱まると考えられる。
 図は2014年までしかデータが無く、去年の変化を見ることはできないが、以前に強いエルニーニョが起きた1997〜98年ごろを見ると、陸上生態系によるCO2吸収がほぼゼロまで弱まっていたことがわかる。

 そういうわけで、去年のCO2濃度の増加が(たとえば一昨年と比べて)急激だったことの直接的な原因は自然変動、特にエルニーニョである。しかし、人間活動によるCO2排出量は長期的に増加が続いているので、以前に強いエルニーニョが起きた1997〜98年ごろと比べても、3割以上増加しているのだ。


 2016年3月23日、私は江守様の記事2に次のコメント2を投稿しました。
 前の記事への私のコメントにご回答ありがとうございます。
 2015年に関しては次のニュースもあります。
『2015年は観測史上最高の暑さ 米機関』
http://goo.gl/E4wmsa
 このニュースによると、2015年の観測史上最高の暑さの「原因は主に、強いエルニーニョ現象によって太平洋の海水温が高くなり、熱が大気に放出されて世界の気温を押し上げたことにある」。

 江守様によると、「去年から今年のような強いエルニーニョが起きると、高温による植物の呼吸の増加や土壌有機物の分解の増加、森林火災の増加、地域によっては少雨による植物の成長阻害が起きて、陸上生態系によるCO2の吸収が弱まると考えられる。…そういうわけで、去年のCO2濃度の増加が(たとえば一昨年と比べて)急激だったことの直接的な原因は自然変動、特にエルニーニョである」。


 そうすると、自然変動である強いエルニーニョが観測史上最高の暑さの主な原因であり、その観測史上最高の暑さが大気中CO2濃度の飛躍的増加の直接的な原因ということになります。

 2015年は、大気中CO2濃度増加が気温上昇の原因とするCO2温暖化説とは原因と結果が逆の現象が起きた年といえるのではないでしょうか。
 
 2016年3月30日、私は江守様の記事2にさらに次のコメント3を投稿しました。
 記事の中の「大気中CO2の収支」の図の古いバージョンがIPCC第5次報告書 第1作業部会 技術要約51頁(pdfの25/100)の図TS.4下図に掲載されています。
http://goo.gl/6RDP3K (次の図)
  39_f2_550.jpg
 この図の説明によると、「エネルギー・産業起源の排出」(灰色)、「土地利用変化による排出」(黄土色)、「大気中CO2の増加」(水色)、「海洋による吸収」(青)については、データやモデル等によって得られたものです。

 ところが、肝心の「陸上生態系による吸収」(緑)については、「他の要素の残りから計算した」と記載されています。

 つまり、「陸上生態系による吸収」(緑)は、データやモデル等によって得られたものではなく、他の要素の残りを「陸上生態系による吸収」にして辻褄合わせしたものであり、信頼性は低いのではないでしょうか。
 「大気中CO2の増加は陸上生態系による吸収の変動を反映して激しく変動する」のではなく、逆に、「大気中CO2の増加」(水色)の変動の辻褄合わせで「陸上生態系による吸収」(緑)が激しく変動していることにされていることになります。

 「強いエルニーニョが起きると、高温による植物の呼吸の増加や土壌有機物の分解の増加、森林火災の増加、地域によっては少雨による植物の成長阻害が起きて、陸上生態系によるCO2の吸収が弱まる」ことによって、「陸上生態系による吸収」が図の緑の領域のように激しく変動するとは常識的には考えられないように私には思えます。


『気温上昇に伴う植物のCO2排出増「想定以下」』
http://goo.gl/QH4GX6
 このニュースによると、「気温上昇に伴う(植物の呼吸による)CO2排出量の増加ペースは、あらゆる地域で予測可能な形で鈍化することが分かった。新たに定義された曲線では、推定呼吸量がとりわけ最も寒冷な地域で急激に落ち込むという」。
 このニュースは、「陸上生態系による吸収」(緑)を辻褄合わせに使うことの妥当性を大きく傷つけるのではないでしょうか。

 「陸上生態系による吸収」(緑)をデータやモデル等によって得て、それで、もしCO2の全体の収支が合わなければ、各要素のデータやモデル等を見直して、真の原因を探究するのが科学的方法ではないのでしょうか。


 2016年4月6日、この私のコメント3に関して江守様から次のメールをいただきました。
国立環境研究所の江守です。
yahoo!ニュースの記事にコメントを頂きありがとうございました。
新たな記事を起こして解説するかどうか迷うところなのですが、メールアドレスを存じ上げていたので、さしあたって僕の認識をお伝えしておきます。

Global Carbon ProjectによるCarbon Budget 2015の資料
http://goo.gl/JAnZq1
で62ページめをご覧ください。(次の図)
  39_f3_600.jpg
他の要素の残差で求められる吸収量(this carbon budget)が、複数の陸域生態系モデルによる見積もり(individual land models)や、大気中CO2濃度分布から逆算して求めた吸収量(atmospheric inversions)と年々の変動を含めて概ね一致していることがおわかり頂けます。

つまり、ここでは陸上生態系の吸収を残差で求めていますが、それは残差で求める以外に推定の手法が無いからではなく、収支をぴったり閉じさせるためにそうしているのでしょう。
モデルや観測データで独立に推定しても、収支は推定誤差の範囲内で閉じるといえます。

また、『気温上昇に伴う植物のCO2排出増「想定以下」』の記事の論文
http://goo.gl/DgKBYc
ですが、これは気温が大幅に上昇したときの葉の呼吸量の外挿曲線について論じたもので、現在の気候の年々変動における陸上生態系の応答(気温上昇による呼吸の増加)についての理解を覆すものではないと思います。

とはいえ、ご指摘のポイントはたいへん鋭かったと思います。
今後ともご議論のほどよろしくお願いします。

 2016年5月9日、メールをいただいた江守様に次の返信メールをお送りしました。
 井上雅夫です。メールをありがとうございました。メールをいただいた翌日にパソコンが壊れ新パソコンへの移行に時間がかかり、ご返事が遅くなり申し訳ありませんでした。

 私としては、
(1)「強いエルニーニョ→海水温上昇→気温上昇→植物の呼吸の増加+土壌有機物の分解の増加+森林火災の増加+少雨による植物の成長阻害→陸上生態系によるCO2吸収の低下→2015年の大気中CO2濃度の飛躍的増加」という長く複雑な経路より、

(2)「強いエルニーニョ→海水温上昇→海のCO2溶解度低下→海洋によるCO2吸収の低下→2015年の大気中CO2濃度の飛躍的増加」という短く単純な経路の方が、真実に近いのではないかと思っていました。

 しかし、ご指摘の図を拝見して、証拠は(1)の経路を支持していることがわかりました。ありがとうございました。

 今回の記事、コメント、メールによる江守様との議論を、私のウェブサイトに掲載させていただきました。ご了承をお願いいたします。

http://goo.gl/VmpU95

 今後ともよろしくお願いいたします。





トップページhttp://www.venus.dti.ne.jp/~inoue-m/ 利用条件  (その1)へ (その2)へ (その3)へ (その4)へ (その5)へ 

since 2009.08.22
(その6)