東北再訪 (1)

Nord Express - 8月13日

炎暑
暦のめぐり合わせで三年ぶりに一週間の休みが取れた。絶対に行かなければならない場所があるわけではなかったが、かといってどこでもいいというわけでもない。漠然と、しかし迷うこともなく「北」を目指したのは、夏のはじめから記録的な熱波がすっぽりと日本列島を覆っていたせいかもしれない。
使うことになるのかどうか迷いながらもキャンプ道具をバッグに詰めこみ、新調したウエストバッグにはメモがわりの携帯端末と『深夜特急』の文庫本を放り込んで、すでに早朝とはいえない京都をあとにする。出発時間が遅くなるのが最近の悪い癖だ。

昨年の夏は限定解除の夏だった。一年越しの懸案をようやっと片づけたときにはすでに夏は半分過ぎ去っていた。紆余曲折を経ておよそ必要以上の馬力と重量をもつ新たな愛機を手にしたときには夏はとうに終わっていた。ロングを走ることなく二年が過ぎようとしていた。

とにかく東北と名の付く土地の入り口までは走ってしまおう。すべてはそれからだ。

水
高速はあいかわらず渋滞していた。暑い。じりじりと照りつける太陽から身を隠すこともできず、いったいどれほどの水分を搾り取られたのだろうか。干物になるのも時間の問題かと思われ出した有磯海サービスエリア。何度目かの水分補給をしている時、ふとポカリスエットのキャッチコピーが目に入った。