故国へ還る日

あとがき




この物語を、ここまで読んでくださり、本当にありがとうございました。
長編を書き上げるといつも思うのですが、今回も、思います。
いままでに、これほどまで思い入れを込めて書いた作品はない、と(笑)
あとがきが長くなる傾向にある私ですが、今回は、言葉が浮かびません。
ですから、やっぱり、ここまで、お付き合いいただきありがとう、と。
そう申し上げます。

2005/07/23 佳月拝


とかいいつつ、やっちゃいます。ルヴァ探偵シリーズ恒例(でもないか)
完全ネタバレ解説!
今回は伏線の解説と、関連作品の紹介がメインです。「言われなくてもわかってたよ!」っていうのがほとんどかと思いますが、「気づかなかった!」ってのがあったら、それもご一興。
再読のきっかけになれば何よりです。
あと、後半部分はあとがきみたいな戯言も混じってます…。

長いです。興味のない方は → ◇ 「彩雲の本棚」へ ◇

【1) くちづけ小道】

■「アルカディアと呼ばれる場所で、かつて幼かった少年が驚くほどに大人びて私の前に現れた時」
「爪紅(つまくれない)の花 」での出来事。
もっとも彼らは当初、それぞれに別に思いを寄せる人物がいたわけで、すぐに恋に落ちたわけではないと、思われる。

■「目の下の黥」
ティムカの目の下の水色のアレは、額のビンディとちがい化粧ではなく刺青なので取れない。
(レーザ治療で取ることは可能)

■「ふたりの年上の幼馴染」
ドラマCD「虹の記憶」やゲームエトワールに登場する、イシュトとサーリアである。念のため(笑)
『若君』という呼称は、ドラマCD内でイシュトがティムカを呼んでいた呼称。
…… イイネ。『若君』 …v


【2)絵葉書】
■「私とて、己の名を聞かれれば今でも ロザリア・デ・カタルヘナ そう答えるだろう」
この物語のカップリングがロザリアでないと書けない理由その1。
彼女で物語を書くばあい、その器をすてて、ひとりの少女や女性として、一人の男性に惹かれる、というパターンも素敵だが、相手がジュリアスやティムカの場合、その矜持の高さこそが相手を理解するための重要な要素となると思っている。

■「過去の偉大な発明家サカキ博士によって開発された『ミルキー・ウェイ』という名の空間移転装置」
サカキ博士とは、もちろん、クリス・サカキ。
「赤い花、白い花(第3章)」内で彼が言っている 「今僕が研究してる全く新しい宇宙空間移動システム」の完成版が『ミルキー・ウェイ』だ。
「赤い花、白い花」の時点では、開発費用協力をウォンに頼むかセティンバーに頼むか悩んでいるが、以降の展開を見るに、チャーリーのいなくなってしまったウォンより、マコやんのいるセティンバーを選んだらしい。
ちなみに、この章を書いている時点で、ミルキー・ウェイがここまで重要な役割を果たすとは思っていなかった。クリスの名を出す、コネタ程度だったのだ。
けっこう、行き当たりばったりな私。

■「夜、いつになく激しく」
下世話で申し訳ないが、この夜が「10)家族」の展開の伏線だ。(コラ)

■「二ヶ月ほどが過ぎた頃、それはやってきた」
ユーイの訪問、という意味もあるが、妊娠の発覚、という意味の方が実は強い。


【3) 一陣の風】
■「柳 桃花」
「それぞれの夜明けへ」「蒼穹の空を見上げて」のある意味での結末。
時間と、空間と、シリーズさえ(笑)飛び越えてようやく平穏を得たふたつの魂の話 ―― かもしれない。
真実は、誰にも、わからない。
(平穏、というのも語弊がありそうだし)

■「こいつが身重だろ?」
身重の場合、宇宙船は危険という伏線。4)でロザリアが、ミルキー・ウェイでの移動にこだわった理由がここにある。

■「白亜の惑星は確か。藍方石の産地ではなかったか」
公式では、白亜の惑星は「希少金属」の産地となっており、自然を守るためティムカがその乱開発を禁じたということになっている。話の都合上、鉱石に変更した。
また、カムランが禁じた時の話は 「青い羽の行方」が該当。

■「例がないではなかったが」
かなりどうでもいいネタ。 1)で語られている、三代前の女王の恋の相手が、聖地を訪れた理由が、大政の譲位だったりする。

■「国王の崩御」
「赤い花、白い花(第4章)」で、「白亜の十六歳の国王崩御」と、新聞で報じられるシーンを書いた。
エルンストあたりなら「行方不明」で済みそうだし、セイランも常に行方不明みたいなもんだし。
ヴィクトールは極秘任務でどこかへ、とか。
メルは「事情で主星へ」。チャーリーも家業に飽いて行商の旅とか(笑)
結局は、ティムカだけが、中途半端な行方不明ではすまされない立場にあったのだ。

■「顔色がわるいみたいだぞ、大丈夫か?」
考え込んで、という意味もあるが、つわりで多少、調子が悪い。

■「案ずるより産むが安しって、じいちゃんも言ってた」「え?」
ユーイは、何処までを感づいて、この言葉を言ったのか。意外と侮れない男である(笑)

■「ある二択」
産むべきか、産まざるべきか。の、二択。
ちなみに、現代の日本の法律では、身体的にも、経済的にも都合が悪くない彼女の場合、生まないという選択は法律違反…だよね?

【4) 神々の宝石でできた星】
■「宇宙船は慣れてなくて苦手だからこれでよかったのだと、そう答えておいた」
本当の理由は、先に述べたとおり。

■「タリサム王の時代」「国太師であった賢者ラグラン」
「赤い花、白い花」参照。他にも数箇所話題に上っている。
ラグランに関し、彼の当サイト初登場は98年作の 「風花に五白という猫弔いたる日のこと」だ。

■「私はひどく久しぶりに、彼の声を聞いたような」
コネタ。この夕方のシーンまで、ティムカの台詞は鍵括弧なしで、すべてロザリアの伝聞形式で書いていた。
うまく読者に伝わったかどうかは不明^^;;


【5) 伝説の賢君と青い宝玉】
■「国庫の備蓄金と、とある人物からの寄付でまかなわれたはずです」
超マニアック・クイズ1)『とある人物』が誰であるか。その理由と、そのことが推測できる創作のファイル名は?
ちょっとやそっとじゃ、わかりません。きっと ^^;;


【6) 団欒の肖像】
■「それこそ、僕は彼を兄のように思っていたのかもしれない」
ティムカの一人称、筆者が間違えたわけではありませヌ。

■「中の良い、兄弟でしたのね」
すみません、掲載後に、一部エピソードを移動&追加しました。
8)で語られた謎解きの鍵の一部です。


【7) 隠し通路】
■「あの頃、まとまった量を採取できる採掘地を保有していたのはセティンバー社だけ」
このことについても「青い羽の行方」である程度語られている。

■「その口調で気づくべきだったのかもしれないけれど」
直前のティムカの口調がタメ口。「言っておこうかな」


【8)血族】
■「昔、丁度あの場所にカードが差し込める溝があって」
正直、この部分はあとからしくじったと思った。
物語の構成からすれば、このエピソードは扉を開ける前、たとえば地下通路を歩いている間などに語らせるべきであった ……。
そんなわけで…… 数日後、改稿してあります。ごめんなさい。


【9:解決編) 過去からの伝言】
■「少し細めで下がり気味の目と眉が愛らしい」
何世代後の子孫かわからないが、ルヴァ様似(笑)

■「『私は ―― 魔法使いではありません』何故か、憮然としている。」
超マニアック・クイズ2)何故憮然としているのか。その理由と、そのことが推測できる創作のファイル名は?
さきほどの1とあわせて共に正解した方。
神鳥、聖獣の守護聖+マコやん、カティス、カムラン、船長さん、のうち、お好きなキャラの甘系SSプレゼントします(笑)

■「今からでも遅くないから、あの男はやめておけ」
察しの良い方は(良くなくても?)このシリーズのエンジュとのカップリングが誰なのか、わかったかもしれない。

■「あの時九つだった娘が、今は十七ですから」
計算すると、クリスは三十代半ば。けっこういい年こいていて、言動と違和感があるかもしれないが、まあ、そういう性格なのだろう^^;;

■「…… う、おほん、げほん」
カムラン、お嫁に貰った当人だけに、気まずかったらしい。

■「…… ティムカさん、きっと、もうサングラスはいりませんよ」
「赤い花、白い花(第5章)」でも、クリスがティムカのサングラス関連で変な反応をするシーンがある。
クリスがサングラスにこだわるのは、彼の父(ダグラス)が、義眼を隠すために親しい人以外のまえではサングラスを着用することが多いから。
…… マニアックすぎて、ごめんなさい。

■「『あなたが手に入れた、幸せの青い鳥の名を』」
この物語のカップリングがロザリアでないと書けない理由その2。
このネタを使うための候補として、青い瞳のコレットも当然候補に上がったがやはり青といえばロザリアか。
ただしティムコレでも、何処か別の場所で使う可能盛大。

■『砂鏡』
しつこいですが、「青い羽の行方」で既出。

■「『それを安寧へと導く ―― 鳳仙の名を戴く尊い方が。
その方が、きっとこの国をも見守ってくださるであろうことを』」
この物語のカップリングがロザリアでないと書けない理由その3。
コレットだと、残念ながらあくまでも聖獣の女王であって、白亜を見守っているのは、リモかロザリアでしかありえない。
ティムリモはいつか書きたいネタのひとつだが、今回の話は性格的にやはりロザリアの方がしっくりくる。
以上三点が、このカップリングとなった理由。

■「あなた以外にも知りたがっている人がいたら」
作者の趣味の関係上ティムカがメインになってしまったこのシリーズだが、やはり根底はこの師弟にある。
かつて故郷に置いてきた弟の姿や、聖地で別れた弟のような彼の存在があるからこそ、その投影としてルヴァはここまでこの白亜の兄弟に肩入れするのだ。
激からせんべいのエピソードは「爪紅の花」と「赤い花、白い花」両方に出てくる。


【10) 家族】
真の、解決編。


【挿話) 小道に名も無き頃】
おなじみ筆者の自己満足的章。もうしわけない。
タリサム、ラグラン、宰相、そして王妃の関係は「赤い花、白い花(第2章)」で百日紅のエピーソードとして語られている。

■「『―― 誰一人傷つけることなく国を導こうなどとお思いにならないことだ』」
タリサムを試すために言った言葉だけではなく、彼の本心でもある。

■「『この宇宙を導く方々もまた。多くの想いを抱える ―― 人間であるということを』」
彼は、253代女王の悲劇を知っており、宇宙の崩壊が近いことも察している。
それだけではなく、254代女王と己の友人の想いも知っている。
だから、万が一それが原因で世界が滅びることがあっても、許して欲しい、と、暗に言っている。
ちなみに、前女王アンジェは255代で、ロザリアは256代。


【後日談) 賢者の石】
やはりどうしても、ゼフェルを出したかった。
そんな、理由でかかれた章。連載開始時、アウインがここまで重要な役割を果たすとは思っていなかった。実は。
賢者の石ときくと、皆さんはハリーポッターを思い浮かべるのだろうか?
私の場合、アトリエシリーズの影響と思われる(苦笑)

それと、ティムカを政治家にするのは多少抵抗もあった…

■「『そうかもしれませんし、そうでもないかもしれません。きっと、どちらでもいいことなんですよ』」
どちらでもいい、とは薄情なようで。
ルヴァとゼフェルの絆があれば、どちらでもいいことなのだと、
愛情を信じていれば、カムランの真意がどうであれ何も憂うことなどなかったのだということを知った、彼が言える言葉。

■「この国で『賢者』と言えばふたりの人物を指すことを」
念のため。ラグランと、ルヴァのことだ。


【エピローグ) くちづけ小道】
「海鳴りが聞こえる」で故郷を去った彼に。
あの時と同じ海が迎えた、というイメージでもある。


以上!
いつもながら、蛇足にお付き合いいただきありがとうございました!

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