39 ああ、オリンパス……

2011.11.12


 機械が好きだから、それを作っているメーカーにも、特別な思い入れがある。

 別に機械に限ったことではない。例えば、ビールならやはりキリンが好きだ。結婚したてのころ、生麦(正確には岸谷)に住んでいてことがあって、近くにはキリンの工場があった。風向きによって、生臭いビール酵母の匂い(?)に悩まされたけれど、それでもビールはやっぱり横浜のキリンだ。ペンキ屋だった我が家にとっても、キリンはお得意様だったようだ。というのは、ビール工場の塗装を請け負っていた時期があったのだ。めっぽう酒に弱い職人がいて、工場の煙突(と聞いたが、ダクトだったのではないだろうか?)の内側を塗っていて、それだけで酔っ払ってしまったなんて話を聞いたことがある。

 車は何といっても日産だ。これも追浜工場があって、いわば地元産業だ。最近では本社が横浜に移ったこともあって、ますます馴染みが深くなった。初めて乗った車は、ホンダのシビックだったが、その後は、わずかな例外はあるが日産車に乗り続けている。横浜でトヨタ車やマツダ車に乗っているなんて裏切り者だ、なんて言いかねないところがあって、ふるさとなんか都会人にはないのだなんて言ってるくせに、どうも矛盾している。やっぱりそれなりの郷土愛みたいなものがあるのだろうか。

 テレビは、どういうわけか、ずっとナショナル、パナソニックだ。地場産業というなら東芝だろうということになるが、これはどうも譲れない。パナソニックのテレビがいちばんいいんだと信じている。結婚した時に買ったソニーのテレビがあっという間に壊れてしまってから、ソニーはどうも好きになれない。もちろん、ウオークマンは買ったけれど。

 パソコンはアップル。これは、さんざん書いてきたから、もう言わなくてもいいだろう。アップルのものなら、iPodもiPadもiPhoneも全部好き。「愛郷心」とか「愛国心」とかといった立場なら、ソニーとか富士通とかを応援しそうなものだが、どうも一貫性がないなあ。

 もっとも、パソコンにいく前にワープロを使っていた頃は、ぼくは富士通のワープロ「オアシス」の熱狂的な「信者」だった。オアシスが搭載していた「親指シフトキーボード」の熱烈なファンだったからだ。このキーボードの優秀性については今でも信じて疑わないが、残念ながらマックとの相性の関係で、捨てざるをえなかった。

 で、カメラだが、これはもう、ニコンだ。ただ、最初に買ってもらったカメラは、エボニーカメラ(?)だったと記憶している。小学校の2〜3年生頃のことだ。その後に、「フジペット35」というカメラを買ってもらい、その後、中学に入った頃に、「オリンパスペン」を買ってもらって、これを長いこと使っていた。ニコンの一眼レフカメラ「ニコンF」を使ったのは高校生になった頃のことで、父が大枚はたいて買ったものを貸してもらって使っていた。それ以来、カメラはニコンということになった。デジタルカメラになっても、一眼はニコンだ。なぜか、ライバルのキャノンには敵意すら感じる。

 オリンパスは、ぼくにとっては、カメラよりは顕微鏡だ。小学生のころ、父に買ってもらった顕微鏡が「オリンパスミック」というもので、このことについても既に書いてきた。(L1L2L3)この「オリンパスミック」という顕微鏡は、本当に素晴らしい顕微鏡だった。(実は、まだ捨てられずにとってある。ついでに言うと、最初に買ったワープロの「オアシスライト」も物置にある。捨てられないのだ。)「オリンパスミック」に「オリンパスペン」をくっつけて、顕微鏡写真をとることを思いつき、ずいぶん熱中したものだ。その頃の楽しさを思い返すと、オリンパスというメーカーには、ただただ感謝するばかりだ。

 それなのに、今、オリンパスは、まれに見るひどい粉飾決算とかで、会社そのものが消えてしまいかねない状況にあるらしい。会社という組織のことはよく知らないが、現場の苦労をよそに、上のものが勝手なことをし放題という構図は、いつの世でも、どの組織にもあるものらしい。悲しいことである。


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