煙が目にしみる
87年に鈴鹿に来たときはヘアピン西ゲートの前はただの広場だった。そこでキャンプしながら8耐を観戦したのが最初のこと。以来、駐車場やゴルフ練習場、そして南コースなどでキャンプを繰り返してきた。そして今年、昨年まで3年間続いた南コースからモトクロスコースのあとにできたオートキャンプフィールドへとその場を移すことになった。サイトの予約はとれた。テントその他の装備も10年間の蓄積がある。なにもかもが完璧だった。ただ一つ、天気を除いては...。
西日本各地で猛威をふるった台風9号の影響により鈴鹿は土曜日の午前中から激しい雨に見舞われ、4時間耐久は3時間に短縮、スペシャルステージを含む土曜午後の予定はすべてキャンセルとなった。いつもの8耐ならばスペシャルステージで盛り上がり、買い物遠征に行き、アクアフォレストで泳ぐという展開なのだが、今年はテントに閉じこもってラジオで台風情報を聞きながらトランプである。
いつもの8耐ならば土曜の晩は焼き肉大会である。しかしこの雨では炭火をおこすわけにもいかない。仕方がないのでテントの前室を使ってガスのストーヴとフライパンでむりやり肉を焼くことになった。そこで買い出し&調理担当が取り出したのが松坂様こと松坂牛である。これがくせものでテントの中にもうもうと煙が充満する。向こう側にすわっている人の顔が見えなくなるくらい(やや誇張)である。しかも息苦しい;-) 危ない! このままでは松坂牛を食べずして窒息してしまう。と、その時、換気担当が猛然とうちわを振り回して換気を始め、ようやく視界がクリアになった。
すったもんだの晩飯の間も雨は降り続いた。後片付けを終えたわれわれはクアガーデン(オートキャンプの客は1,500円のところを500円で入れた)で疲れを癒すのであった。果たして雨はやむのだろうか...。
決勝の朝
決勝の朝、雨はやまない。スタートまで雨が残っていた91年以来の雨中の8耐である。この雨ではS字の自由席は足元が悪すぎて駄目だろうということで急遽B2,D,Fのエリア共通券を購入。10年間で初めての有料席である。スタート間際にB2に陣取り、これまた10年間で初めてル・マン式スタートを生で見れることに感動する。おおっ、走っとる走っとる;-)
有料席のいいところはサーキットビジョンがしっかり設置してあること。コース上のすべての展開がいながらにしてわかるのだ。
イトシン、トップを奪う
午前11時30分、雨の中ル・マン式スタートで20回目の8耐が始まった。ホールショットを奪ったのは#17
マールボロ・ヤマハ・レーシング・チームの芳賀健輔。これを雨に強い#78 ウルトラマンホンダの青木拓磨、#100 チーム国光 WITH HSCの加藤大治郎、#33
ホリプロ ホンダ with HARTの伊藤真一らが追いかける。拓磨はすぐにトップを奪うがこれをコシンスキーがかわして2位以下との差を広げにかかる。これについていったのが伊藤だった。
問題の8周目、まずは芳賀健輔がデグナーで転倒!さらにコシンスキーもピットインしてなにやらシールドをたたいている(曇り止めをしたらしい、そんなもん最初からしとけ;-)これで伊藤真一がトップに立った。誰知ろう、このあと伊藤/宇川組の前を走るマシンは1台としてなかったのである。
- #19 NTTモリワキレーシングの新井秀也
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マシントラブルでピットイン、すぐに復帰したがその後もピットインを繰り返すことになる
- #8 ラッキーストライク・スズキの藤原克昭
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逆バンクで転倒しふらふらになりながらピットイン
- #7 カワサキレーシングチームのテリー・ライマー
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デグナーで転倒
転倒続出
トップの伊藤にかわった宇川は他のマシンより数秒速いラップを刻みながら安定した走りを見せた。この宇川の快走でトップと同一周回を走るマシンはわずか5台となっていった。ライダーは再び伊藤にかわり他のマシンが転倒を喫するなかホリプロホンダの独走は続く。
- #41 チームイワキK'Sガレージの辻本聡
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スプーンで転倒!
- #2 ラッキーストライク・カワサキの梁明
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予定外のピットイン
- #8 ラッキーストライク・スズキの秋吉弘亮
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最終コーナーで転倒
- #100 チーム国光 WITH HSCの加藤大治郎
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ヘアピンで転倒!
- #78 ウルトラマンホンダの青木拓磨
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第2コーナーで転倒!
- #78 ウルトラマンホンダの青木宣篤
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ダンロップで転倒!
- #41 チームイワキK'Sガレージの辻本聡
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スプーンで2度目の転倒!
- #22 ヤマハ・レーシング・チームのスコット・ラッセル
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スローパンクチャーでピットイン
- #12 ヨシムラ・スズキ・GP1プラスの芹沢太麻樹
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松ちゃん(ヘアピン先の200R)で派手にクラッシュ
逃げろ、梁!
5時30分になったところで早くも薄暗くなってきた鈴鹿にライトオンのサインが出された。トップは依然として伊藤/宇川組、2番手にコシンスキー/バロス組、終盤に向けて激しくなってきた3位争いはヤマハのラッセル/コーサー組とスズキのゴダード/ポーレン組、そしてカワサキの梁/武石組となった。
残り30分を切ったところでポーレンがガスチャージでピットインして脱落。3位ラッセルを梁が急追する形となった。梁は残り15分の時点でついにラッセルをかわして3位に浮上したが、逆に暗闇の中でラッセルの猛チャージを受けることになってしまった。百戦練磨のラッセルから逃げ切れるのか梁! 伊藤/宇川組の独走でやや興味を削がれた感のあった今年の8耐だったが最後の最後に手に汗握るシーンが展開されたのだった。そして8時間が経過し、トップの宇川が最後まで危なげない走りでチェっカーを受けた。
優勝は伊藤真一/宇川徹組 186周、2位ジョン・コシンスキー/アレッシャンドレ・バロス組 186周、3位に梁明/武石伸也組 186周。
伊藤真一−1966年12月7日生まれ、30歳
88-91年:全日本GP500参戦
90年:全日本GP500チャンピオン
92-96年:世界GP500cc参戦
95年:世界GP500ccランキング5位
97年:全日本スーパーバイク参戦中
8耐
88年:予選10位/決勝7位 with 田口益充
91年:予選2位/決勝7位 with ダリル・ビーティー
92年:予選4位/決勝196周でリタイア with 辻本聡
94年:予選2位/決勝3位 with 武石伸也
95年:予選6位/決勝2位 with 辻本聡
96年:予選2位/決勝11位 with 辻本聡
宇川徹−1973年5月18日生まれ、24歳
93-94年:全日本GP250チャンピオン
96年-:世界GP250cc参戦中
96年:世界GP250ccランキング5位
8耐
94年:予選38位/決勝不出場 with 岡田忠之
95年:予選2位/決勝37周でリタイア with 武石伸也
96年:予選12位/決勝8位 with ミゲール・デュハメル
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