105 Nikon Zfcの功徳、あるいは「デキる人」
2023.8.19
書道の師匠、越智麗川先生とその仲間の先生のグループ展が今日から開幕。
ぼくは、作品集を毎回作っているので、作品の撮影をしていた。書作品の撮影というのは、案外難しく、露出の設定やらなにやらが野外で撮るときとは全然違う。会場は野外よりは暗いし、照明も、ムラがある。おまけに、蛍光灯やLEDライトによるフリッカー(撮影ムラ)が生じやすいのでその対策も必要。さらに、なるべく、四角い作品を四角のまま撮りたい。といっても、それはたとえ三脚を据えて撮ったとしても(ぼくは、三脚は使わない)、撮ったままで、ゆがまず四角い写真はまず撮れない。で、どうするかというと、現像ソフト(ぼくの場合は、lightroom)での補正機能を使う。これは超便利で、ほぼボタン一つで、平行四辺形やら台形やらに写った写真が、四角くなる。魔法のようだ。
撮影にあたっては、どのカメラにするかは、ちょっと迷う。なるべく高画質で撮るということなら、フルサイズのZ6がいいわけだが、小型の作品集なので、DX(APS-C)でも十分な画質が得られる。今回は、ちょっと迷ったが、Nikon Zfcにした。会場でこのカメラで撮るのは、ちょっとオシャレだと思ったからだ。
撮り始めて間もなく、一人の紳士が「カメラは何をお使いですか?」と声を掛けてきた。「あ、これです。Zfcです。」と答えると、「ああ、Nikonですか。Nikonは最近、大型の一眼レフは撤退したんじゃなかったですか?」と言うので、「いいえ、まだ一眼レフは作っていますよ。」「あ、製産は、日本ではやめた、ということでしたね。」などと、思いがけず話がつながる。これは、相当「デキる人」だと思って、話し続けたら、話題が尽きず、カメラ、レンズ、写真雑誌、写真の思想など、かれこれ1時間ほど話し込んでしまった。横須賀に住んでおられるとのことで、田浦時代の栄光学園のこと(というか長浦湾のこと。彼は、ずっと長浦湾をとり続けているとのこと。)、はては大学紛争のことにまで話が及び、興味が尽ず、楽しい時間だった。なんでも、年齢は、ぼくより2歳年上とのことだった。
この偶然の出会いのきっかけは、Zfcという、デジカメにしては珍しいレトロな外観を持ったカメラだった。これが当たり前のカメラだったら、きっと声を掛けられなかっただろう。Zfcを持って行ったのは正解だった。
ほとんどカメラや写真の話で終わってしまい、その人が何を専門としている人なのか分からずじまいで、きっと写真家で、書にも興味があって来られたのだろうぐらいに思っていたが、別れたあと、あの方はいったいどういう方ですかと、師匠に聞いたところ、(師匠も、その仲間も、ぼくが親しく話しているので、その人と知り合いなのか? って不思議に思っていたらしい。)、なんと、偉い書の先生だということだった。ああ、知らなくてよかった。知っていたら、緊張してしまって、あんなに親しくお話しなんかできなかっただろう。でも、なんか、ため口まではいかないけど、ずいぶんと失礼な話ぶりだったかもしれないなあと反省である。
写真についても「デキる人」だったが、書道に関しては「デキる人」どころじゃなかったわけである。