47 新年の抱負

2012.1.2


 去年は、新年の抱負などを確か書いたはずだなあと思って、去年の1月のエッセイを見たら、「書画に親しみ、創作もし、日本の近代文学や古典文学を楽しく読み、キリスト教と仏教に関しての本をひもとき、ときどき小旅行をしたり、映画を見たりする。これ以上のことは何も望まない。」なんて書いてある。

 書画に親しんだか。これはかなり親しんだといえる。見るほうより、実際に書く方で。書は、夏の現日書展への出品と、今年の2月末から3月初めにかけて開かれる現日選抜書展への出品が中心だったが、それ以外にも、先生から課題として与えられた空海の灌頂記の臨書にも取り組んだ。こっちの方は、いまだ臨書が終わっていないが、たまたま国立博物館で行われた空海展に出かけ、灌頂記の実物と対面できたことは何よりのことだった。画の方は、水墨画に手を染めるつもりが、未だに本格的にはなっていない。水彩画は、結局去年は1枚も書かずじまいだった。しかし、まあ、「書画に親しむ」という抱負は、それなりに実行されたといっていいだろう。

 日本の近代文学や古典文学を楽しく読んだか。近代文学のほうは、ほとんど読めなかった。電子書籍化した本で、葛西善蔵の小説や、南木佳士の小説を数編読んだくらいで、じっくり取り組むことができなかった。古典の方は、授業で源氏物語を扱ったので、詳しく読んだ。何度読んでもいいものだ。

 キリスト教と仏教に関しての本をひもといたか。去年は、特にキリスト教関係の本をかなり読んだような気がする。何を、というほど覚えていないが。仏教関係は手がまわらなかった。

 ときどき小旅行をしたか。高知へ納骨の旅に出かけたことはまだ記憶に新しい。本当は、もっと気楽な小旅行をと思っていたのに、とんでもない旅行になった。人生ままならぬものである。

 映画を見たか。結局映画館には行かなかったのではなかろうか。年末のテレビがあまりにバカバカしいバラエティーばかりなので、アップルテレビで、「それでもボクはやってない」「アンダルシア」「桜田門外ノ変」を見た。「それでもボクはやってない」はすごくよかったが、後の二本はイマイチ。特に「桜田門外ノ変」は、結局何を描きたいのかよく分からない映画だった。NHKの「龍馬伝」や「坂の上の雲」に完全に負けている。

 そういえば、映画より、去年は朝ドラの「おひさま」が最高に素晴らしかった。そしてその後にやっている「カーネーション」も素晴らしい。紅白で、椎名林檎が「カーネーション」の主題歌を歌っていたが、これもよかった。椎名林檎って、こんなに可愛い子だったのと、改めて認識。少女時代もよかったし。藤あや子が、実は民謡歌手出身だということも初めて知ったし、やっぱり美空ひばりの歌を完璧に近い形で歌えるのは天童よしみしかいないのだと実感したり、紅白は実り多かった。

 こう書いてくると、結局、テレビばっかり見ていた1年だったのかもしれないという気がする。

 さて、今年の抱負は? 

 昨日、妹夫婦とぼくの母が家にやってきて、飲んだのだが、妹の亭主(義理の弟)が、酔っ払って盛んに言っていたのは、「ぼくは、死ぬまで仕事します。」ということだった。趣味に生きるなんて言ったって、結局退屈するだけ。それなら、自分の仕事を死ぬまで続けるほうがずっといい生き方だ。それには仕事に対する覚悟が必要なんだ、ということだった。彼は自分の会社を持っているから、それも可能なのだが、会社を持たないぼくも、たとえ学校をやめても、それなりの覚悟をもって「仕事」を続けるべきだなあと、酔っ払いながら思った。はやくあらゆる「仕事」から足を洗って、悠々自適の境遇で趣味に没頭したいなんて思うときもあるのだが、やっぱりそれはぼくの道ではない。そのことを、年頭にあたって確認した。これをもって、今年の抱負としたい。


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