7 矛盾だらけの人生デアル

2011.6.7


 捨てても捨ててもモノが減らない。現実には、そんなことはなく、捨てれば捨てただけ確実にモノは減っているはずなのに、どうにも「ちっとも減らない」というのが実感である。

 「本を減らす!」との決心のもと、電子書籍化を始めてからはや1年。何とか1600冊ほどを電子書籍化し、それ以外にも、約300冊ほどを古書店に売却し、さらには100冊以上を「紙ゴミ」として出したにもかかわらず、何だか「本が劇的に減った!」という実感がない。そればかりか、今まで書棚の2列目、3列目に入っていて今まで隠れて見えなかった本が、1列目にしゃしゃり出てきて、おやこんな本もあったのか、てな感じで、かえって増えたような気さえするのである。

 ほんとうに人間の、いやぼくの、所有欲というものはオソロシイもので、何でこんなに読みもしない本をせっせと買い込んだのだろうとため息一斗である。その昔、一世を風靡した渡部昇一の『知的生活の方法』で、「本をたくさん持っていればいるほど知的な人間である。」みたいな言葉に出会ってから、それを闇雲に信じたわけではないのに、いやむしろそれに猛然と反発したにもかかわらず、実際にはその言葉を信じたかのごとく、狂ったように本を買い込んできたのである。それもただひたすら自分が「知的な人間」であることを内外に(?)証明しようとしてのことだったのではなかったのかと、ひたすら反省させられる。

 本に囲まれていさえすれば知識人だ、と思っていたわけではないが、現実の行動は、そう思っていたとしか思えないようなもので、古書店に売り払った本も、その100分の1、いや1000分の1も読んではいなかったのだという事実は、なんともはや、オロカの極みではないか。

 けれども「本に囲まれた生活」は、ぼくにとっては数少ない楽しみであったわけで、それがあったからこそ、この歳になっても海外旅行ひとつしたことがなくても、なんの不満もなく過ごしてきたのである。けれども、その一方で、昔から無一物の隠遁生活のようなものにも憧れていたこともまた確かで、現実の行動にはそれはまるで反映されなかったけれども、いつも心のどこかで、本棚ひとつに数冊の本、あとは自然に囲まれて生活したいなんて思っていたのだ。

 ほんとうに、どうしようもない、矛盾だらけの人生である。


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