製茶の心得


手揉みする鈴木猛史

茶園手前半分刈り採り済 煎茶の製造の基本は手揉みにあり、機械はその動作を
まねています。その機械を初めて造った方々も見事で、
造り出した当初と今とでも、その構造はほとんど変化がありません。
そして機械を操作するには手揉みの原理を身につける事。
手揉みではお茶になるまでずっと接するので
その変化を文字通り体で覚えます。
そのコツを活かして、替わりに機械にやってもらいます。
どちらも同じ4時間から5時間。
手揉みは一回につき生葉で3〜4kgくらい、機械なら120kg。
左上写真は 「葉ぶるい」 といって、最初の水分をとばします。
機械のない頃は5月から7月まで毎日3回揉んだそうです
私は年間10回程度ですから、とても追いつきませんが、
おじいさん方の技に少しでも近づくように、精進して参ります。

みなさんもご自分でお茶を揉んでみませんか


手揉み

 まんぱちというボイラーで蒸します。ゴーゴーと立ち上る蒸気の金網の上でふたをして、あふれる香りをかぎながら、途中竹の箸でかき混ぜて蒸します。

葉ふるい(7k) 葉ぶるいは手と指でお茶を持ち上げて落とす事で乾かしながらしんなりさせます。簡単に見えますが、手先を細かく動かす重労働です。なにせ1時間から1時間30分行いますから。軸の部分にしわが寄ると次の工程です。(機械の葉打機)

軽回転(7k) お茶を大きく右に左に転がしながら乾かす軽回転。次第に力を入れて小さく転がす重回転に移っていきます。はじめはこすってしまってなかなか転がりませんでした。下からの熱でお茶は人肌くらいに温まります。転がして出てきた水分は、蒸発していきます。このとき力を加えすぎて水分が多く出過ぎると蒸れてしまいます。また乾きすぎると表面だけ水分がなくなって内部の水分が閉じ込められてしまい、中の水分がなかなかでずに残ってしまいます。そして苦くなります。ちょうどいい加減があります。(粗揉機と揉捻機)
玉解き 玉解き。重回転で水分がでなくなってくると、いくつかの塊になりやすくなります。特に葉の先端の芽の部分はやわらかいので、丸まりやすいです。それで、手をくまでのようにして、ささっと横に振ります。これにより玉に固まった部分がほどけます。そして中上げ、一度平らな竹篭に茶葉を移します。その間にホイロの台の上についた茶渋をとります。(揉捻機)。
このあと、揉みきり(揉捻機と中揉機)、でんぐり、こくり(精揉機)がありますが、今回は写真がありません。

乾燥(3k) 乾燥させます。時々かきまぜないと焦げますので注意が必要です。(乾燥機)
針のような手揉み茶(4k) できたお茶は針のようになります。投げたお茶が障子に刺さるくらいでないといけないといわれます。


機械揉み

生葉 生葉(なまは)は摘採機(てきさいき)で、摘んできます。一袋に10−20キログラム入っていますが、だいたい2分くらいで採れます。同じ芽を手で摘むと早い人でも1日かかります。
 摘み取った生葉は工場ではコンテナに入れておきます。ただ積み込んでおくと、呼吸の際出る熱で熱くなり、蒸れて赤くなってしまいます。そこで下から湿気のある空気を送って冷まします。
蒸した状態(6k) 蒸し機(むしき)
 一番重要な工程です。ここで出来るお茶が決まってしまうといっても過言ではありません。蒸気をあて、攪拌させて回転しながらでてきます。ボイラーで山から涌き出た水を沸騰させ、蒸気の量や圧力そして蒸気にあたる時間や回転数を調節します。生葉の様子によって変えていきます。山のお茶は葉が厚く、茎もしっかりしているので、ある程度よく蒸します。
葉打機から出てきた状態 葉打機(はうちき)
 熱風を当てながらお茶を持ち上げて落とすことで、お茶の表面の余分な水分を飛ばしながらしんなりとさせます。揉みこまないことが大事です。熱風を利用するのは、量が多いため空気を充分入れかえる必要があるからです。上がって落ちることでお茶が柔らかくなってきます。水分も少し出てきます。軸にしわがよってくる頃がころあいです。
粗揉機 粗揉機(そじゅうき)
 ここから揉み込みます。葉や茎の中にある水分を出しながら、熱風に当てて乾かします。少しずつ回転や風量を調節していきます。バランスが狂うと、表面だけ乾きます。すると苦くなる上に、茎の中の方の水分が出られなくなってしまいます。逆に乾かずぐしゃつくと蒸れた味や臭いがついてしまいます。バランス良くある程度の水分を保持しながら(しとり という)、揉むことが大切です。
揉捻機後 揉捻機(じゅうねんき)
 重しをかけてお茶どうしで押し合いながら茎の内部の水分を出したり全体の水分のバランスを均一化させます。この時には熱や風を当てません。この工程の前に乾きすぎると粉々になり、水分が多いとすべってしまいます。適度の水分があることで葉と葉が程よくこすれあい、また内部の水分もうまく外ににじみ出てきます。
中揉み機後 中揉機(なかもみき)
 軽く揉みながら、揉捻機ででた水分をとばします。熱風は少なめです。でも大変効率良く乾きます。余分な水分を早く飛ばすことで色が良くなります。
中揉機後 中揉機(ちゅうじゅうき)
 やはり軽く揉みながら、さらに弱くした熱風で乾かします。このまま乾かすとまがったお茶になります。
精揉機後 精揉機(せいじゅうき)は残った水分を熱い板の上で乾かしながら、お茶を長く伸びるように形を作ります。お茶の一本一本を揃えて、丸く長くなるように工夫された面白い動きをします。いきなり力を加えると固まってしまいますから、乾くにつれて力を加えて、最後の水分を出していきます。完全に乾く前に逆に力を弱めていきます。これは乾きすぎると、滑って揉めなくなるのと、せっかく伸ばした茶を痛めたり扁平にしないようにするためで、このタイミングも重要です。

そして乾燥して 荒茶 のできあがり


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