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デュシェンヌ型筋ジストロフィー

    筋ジストロフィー症の中で最も頻度が高く、症状も重い疾患である。伴性劣性遺伝形式をとり殆どが男子例である。
    最近患者のX染色体の一部に欠失が証明されジストロフィンと呼ばれる蛋白質の欠損が病因であることが解明された。

<臨床症状>

    乳幼児期:歩行開始はさほど遅れることなく、殆どの症例が1歳6ヶ月までに歩き始めている。
         しかし、転びやすい、走れないなどの運動発達の遅れがあり3歳までに病院を訪れことが多い。
         筋力低下はあっても、筋の萎縮は目立たず、仮性肥大があるのでガッチリした体格に見える。
         4−5歳を過ぎると腰部と下肢の筋力が低下してアキレス腱の短縮が見られ、
         体を後ろへ反らせて、つま先立ちの姿勢をとるようになる。
         小学校入学前は病気の進行よりも生理的な運動発達が上回るために運動機能は
         あまり低下しない。
 小学校入学以後:低学年より次第に運動機能の低下と筋萎縮が目立ってくる。
         床からの立ち上がりも腕の力で膝、股関節を次々と伸展を助けてたつ、登はん性起立を示す。
         また歩行中にバランスを失って崩れるように転倒したり、
         肩周囲の筋力低下のために脇を支えて抱き上げることが難しくなる。
         高学年で歩行不能となり、車椅子での生活となる。
         前腕から手指にかけては長く筋力が保たれ書字や工作、
         ワードプロッセッサーなどの細かい仕事は可能である。
         知的には個人差があるが、大学生活を送り就職した例もある。
         10歳代半ばから呼吸機能や感染症、心臓機能について医学的配慮必要となる。

<診断>

   血液検査:CPK、筋病理(ジストロフィン欠損)、遺伝子検査


                                [文献提供 (財団法人) 神奈川県予防医学協会 三杉信子先生]



ベッカー型筋ジストロフィー

         デュシェンヌ型と同じ初発症状、血液所見、遺伝形式を示すが、症状が軽く進行が緩やかである。
         ジストロフィンの部分欠損が証明されている。





福山型筋ジストロフィー

         デュシェンヌ型についで日本に多い乳児期発症の筋疾患で常染色体劣性遺伝である。

   臨床症状:発症が早く9ヶ月以前に全身の筋力低下があり顔面筋も侵されているため表情に乏しい。
        早期に関節拘縮が現れる。てんかん発作や著しい知能低下がある。
        関節拘縮と筋力低下のため歩行できる例はきわめて少なく、
        殆どは、いざり移動までで、寝たきりの重症例もある。
        10歳以後に筋力がさらに低下し、15歳頃には感染症に対する注意が必要となる。





非福山型筋ジストロフィー

   臨床症状:乳児期より筋の発達が悪く、関節は緩く、手、肘、膝、足関節は過度に伸展、屈曲ができる。
        筋性斜頚、股関節脱臼を合併する例もある。
        知的には全く正常で中枢神経にも異常はない。
        歩行開始は2−3歳と遅く、10歳前後に車椅子使用となる。


                                [文献提供 (財団法人) 神奈川県予防医学協会 三杉信子先生]



筋緊張性ジストロフィー

   臨床症状:生来筋力が弱く軽い知能の遅れや発音がはっきりしないなどの症状で
        特殊学級で教育を受けている例があるが、軽症例では本人が気づかずに暮らしていることもあり
        症例によって症状が異なり多彩である。常染色体優性遺伝疾患である。
        全身の軽度の筋力低下と、手を握ってグーを作り急にぱっと開かせると
        すぐには開くことができない、拇指球を叩くと拇指が内側へ曲がる、といった
        筋の弛緩がすぐにはできないミオトニア症状が特徴である。
        新生児期に呼吸障害、哺乳障害があって濃厚治療が必要であった例が
        先天性筋緊張ジストロフィーと診断されることがあり、その時は母親が同疾患である。

        新生児期の危機を脱すると次第に筋力も付き、早ければ小学校低学年、
        軽い場合は10歳代初期には筋力低下とミオトニア症状が著明となってくるが、
        症状は軽く日常生活には不自由なく過ごすことが出来る。
        中等度の知的障害を伴う事が多いので養護学級にかよう例がある。
        筋力低下、筋萎縮、著しい筋緊張症状(ミオトニア)例えば急に動作が始められない、
        極端な例では前もって足踏みをしておかなければバスに乗り込めないといった生活障害が現れてくるのは
        40歳代なので社会適応は出来ている場合はが多い。


                                [文献提供 (財団法人) 神奈川県予防医学協会 三杉信子先生]



脊髄性筋萎縮症

        脊髄神経を侵す疾患で常染色体劣性遺伝形式をとる。





     重症乳児期発症型(Werdnig-Hoffmannウエルドニヒ.ホフマン病)

        胎生期、または乳児期に発症し、急速に全身の筋力低下が進行して呼吸不全を起こす。


     軽症若年型(良性ウエルドニヒ.ホフマン病)

        6ヶ月から1歳頃までに筋力低下が現れるが顔面筋侵されないのが特徴である。
        運動障害のみで、知的発達は正常である。歩行のできる例もあり車椅子や歩行器の補助で日常の生活?
        症状は進行しないか、しても緩やかなので、
        脊柱の変形や呼吸器感染などに気をつければ知的に充実した生活をおくれる。


     遅発良性型(Kugelberg-Welanderクーゲルベルク.ベランダー病)

        幼児から成人の幅広い年齢から発症し、経過は比較的良く、生命に関する予後はよい。
        顔面筋をのぞく全身の筋力低下があるが関節の変形を予防したり簡単な補助具を使用したり、
        自家用車の運転などの補助で自立している例が多い。


                                [文献提供 (財団法人) 神奈川県予防医学協会 三杉信子先生]



その他の筋疾患

     多発性筋炎

     ミトコンドリア病

     糖原病

     先天性ミオパチー

     遺伝性運動感覚性ニューロパチー(シャルコマリートウース病)


                                [文献提供 (財団法人) 神奈川県予防医学協会:医学博士 三杉信子先生]




   筋疾患の医療及び福祉

       
  1. 精密検査による診断の確定    
  2. 病気と予後についての本人、家族への説明,同意    
  3. ケースワーカーによる公費負担、障害者手帳などの福祉施策の導入    
  4. 保育園、幼稚園 学校などの選択(本人、家族、医師、教育者による協議)    
  5. リハビリテーション    
  6. 定期的な検診、かかりつけ医    
  7. 緊急時の対応方法    
  8. 親の会、患者会    
  9. パソコン、インターネットによる交流、情報    


          上記の文献は、神奈川県予防医学協会 三杉先生から提供して頂きました。





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