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「あ…あの…ブリギッド様…?」
 一頻り泣いた後、私は隣のベッドに彼ごと倒れこんだ。それまで我慢強く私の泣き止むのを待っていた彼もさすがに慌てている。起き上がろうとする彼と引きずり込もうとする私。互いの経験のなさが焦りとなって揉み合う形になる。それが幸いして彼をベッドに押し付ける事に成功した。
「…どうしてこんなことをするのか…どうしたいのか…わからない…でも…」
「私を必要として下さるのですね…」
 押さえ付けていた彼の二の腕が少し柔らかくなった。彼の顔にぽとりと雫が落ちた。
「あ…」
拭こうとした指を取られてあっという間に身体の上下が入れ替わった。しばらく見つめ合う。
 ずっとこのままでいいと思った。でも、月明かりに照らされた夜空のような瞳に吸い込まれそうで怖くもあった。何か言わないと…言葉を探して開いた唇は彼によって塞がれた。
「…!…」
 当然の展開なのに何を驚いているのだろう。私は目を見開いたまま硬直してしまった。それを解いてくれたのも彼の瞳だった。笑ったように瞬いたのにつられて私は瞳を閉じる。外界から隔絶したことで、この世に存在するのは私と彼だけになった。
 接するだけだった唇がやがて相手を求め出した。互いに応え合っているうちに両の手は背中をかき抱く。そのことに気付いた私達は唇を離して抱き締め合った。今日何度も顔を埋めた彼の胸。また鼻の奥がつんとしてきた。
 目尻に軽く口付けられ、泣いていたのだと気付く。そっと目を開けると、優しい光をたたえた彼の瞳が正面にあった。光の中に不安の影が明滅している。それは私―。
 思わず彼の顔に手を伸ばした。ひんやりしたその頬に同じ不安を共有していることを知る。これは衝動。誘ったのだから捨ててはいけないもの。火を付け損ねた彼の分まで…。
「あなたは…とても温かい…」
 初めて聞く声。少し掠れてくぐもったその声と吐息は私の耳を熱く溶かし、背筋を震わせる。腰の辺りが軽く痺れているような感覚が私を戸惑わせた。無意識に身を捩る。その時、露になった首筋に唇が触れた。全身の力が抜ける。
 今まで味わったことのない感覚に私は彼の肩を掴んだ。爪を立ててしまったようで、彼は一瞬眉根を寄せたが、首筋を指と唇で撫で続けた。触れられているところだけでなく、全身が反応する。
 その感覚が私を狂わせたのか、肩に置いていた手を首に回した。その結果、彼の頭は私の胸元に移動する。ボタンを外す指が小刻みに震えていた。まず手がぎこちないながらも大きく動き、舌が這った。
「あっ…」
 自分の口から出た声に自分が一番驚いた。あんな声…聞いたことはあるけど、自分が発するなんて。また出そうになり、口を塞ごうとした手は押し付けられた。少し腹が立って彼の顔を見たら…もうどうでもよくなった。この世界には二人だけ。
 彼の手と舌が触れなかった場所はないだろう。意味を知った右の大腿の痣は色を増していた。そこを何度も口付けられ、快感と共にもどかしさが私を襲う。でも、それが何なのか知らなかった私は何かを求めて腕を宙に伸ばした。
 熱い…。焼け付くような…痛みを持った熱さ。でも、痛みは一瞬のうちに熱が汗へと変えてしまった。そして全身が溶けていく…。

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一応…