ノーベル賞・眞鍋淑郎氏の一次元モデル<New

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これが人為的地球温暖化の正体だ!
2021.09.06 井上雅夫
目次
1.IPCC第6次報告書の温度の観測値と衛星観測の温度
2.第6次報告書の温度の観測値の非連続性
3.ハイエイタス(温暖化の中断)
4.温度の観測値を書き換えて“人為的”地球温暖化をゲット!
5.衛星観測温度と相違する“ハイエイタス(温暖化の中断)なし”への書き換えは正しいか?(21.09.28 追記)

1.IPCC第6次報告書の温度の観測値と衛星観測の温度

図1aはIPCC第6次報告書第I作業部会図SPM.1bで、黒が世界平均表面温度の変化の観測値です。温度の観測値(黒)は1970年代から急上昇し、人間&自然要因のシミュレーション結果()と一致しています。
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図1bは人工衛星から計測した世界平均対流圏温度の変化の観測値で、青が月平均温度の変化赤がその13ヵ月移動平均線です(図の出典:Latest Global Temps ≪ Roy Spencer, PhD注1。衛星が利用可能になった1979年以降の観測値です。人工衛星から計測した温度の観測値()は1998年、2016年、2020年に同程度の高さのピークを形成しています。

第6次報告書(図1a)の温度の観測値(黒)と、衛星観測(図1b)の温度の観測値()はかなり違った特徴を持っているようです。
(注1)図1aは表面温度の変化で図1bは 対流圏温度の変化と違いますが、比較可能です。対流圏では高度が1km上がるごとに温度は約6.5℃下がります(小倉義光「一般気象学第2版」21頁参 照)。例えば、地表が20℃だったら高度1kmでは13.5℃、高度2kmでは7℃になります。地表が21℃に変化したら高度1kmでは14.5℃、高度 2kmでは8℃に変化します。温度の変化は地表では「21℃ー20℃=1.0℃」、高度1kmでは「14.5℃ー13.5℃=1.0℃」、高度2kmでは 「8℃ー7℃=1.0℃」となります。つまり表面温度の変化と、高度1km、2km、…の温度の変化(対流圏温度の変化)は同じなのです。したがって、両 者は比較可能です。
2.第6次報告書の温度の観測値の非連続性

図2aは、上記図1aの温度の観測値(黒)に、上記図1bの衛星で観測した温度の13ヵ月移動平均線()を重ねた図です注2図2aを見ると、1979-2000年は第6次報告書の温度の観測値(黒)と衛星による温度の観測値()は傾向が一致しています注3。しかし、2000年以降は第6次報告書の温度の観測値(黒)は衛星による温度の観測値()より高い傾向を示しています。
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図2bは、2000年以降の第6次報告書の温度の観測値(黒)と衛星による温度の観測値()を全体的に一致させるように重ねた図です。この場合は、1979-2000年は衛星の観測値()の方が第6次報告書(黒)より高い傾向を示します。この図2bは、もし1978以前の衛星データがあったとすれば、1850-2000年で衛星()の方が第6次報告書(黒)より高い傾向を示すことを示唆しています。これに対して、図2aは、もし1978以前の衛星データがあったとすれば、1850-2000年で第6次報告書(黒)と衛星()が一致していることを示唆しています。したがって、図2aのように、1979-2000年が全体的に一致するように重ねるのが、正しい重ね方だと思います。

図2a、図2bを見比べてみると、第6次報告書の温度の観測値(黒)は2000-2010年の辺りで、何か非連続なことが起こったのではないかと思わざるを得ません。
(注2)図2aでは、図1a,bの 不要なものは削除しています。図の重ね合わせは次のように行いました。JTrim(フリーソフト、透明化できれば他のソフトでもよい)を使って図の削除し たい部分を白に塗り、白の部分を透明化します。図SPM.1aを透明化すると目盛りが見えにくくなるので、縦軸横軸と目盛り以外を透明化した図とパワーポ イント上で重ね合わせグループ化しておきます。同様に、衛星の図(図1b)を透明化します。パワーポイント上に透明化した衛星の図を貼り付け、「位置とサ イズ」で「縦横比を固定する」のクリックを外し、「高さの倍率」と「幅の倍率」をそれぞれ変更して、透明化した衛星の図の縦軸横軸の目盛りの間隔を図 SPM.1aと合わせます。縦軸(温度)については、図によって基準となる温度が違うので、縦軸の目盛りの数値を一致させることはできません。そこで、横 軸(年)を一致させた後、図をカーソルキーで上下に動かして2つの曲線が全体的に一致するようにしています。ただし、図2a,bに示すように1979-2000年と2000-2020年についてはそれぞれ傾向を一致させることはできましたが、1979-2020年については傾向を一致させることはできませんでした。以上のやり方で誰でも重ねた図を再現できます。

(注3)第6次報告書(黒)より衛星観測(赤)の方が温度の変化の振幅が大きい点について。例えば、図1bの1998年のピークを見ると、月の温度()のピークは1998年4月です。13ヵ月移動平均線()のピークは1997年10月ー1998年10月までの月平均温度()の平均値です。その結果、13ヵ月移動平均線() は、ピークを中心とした山の高い部分をすべて取り込んだ平均になります。一方、第6次報告書は年平均温度なので、1998年1月ー12月の平均値です。そ の結果、1998年4月をピークとした山の1997年10月ー12月分は含まれず、山から降りた後の1998年11月ー12月分を含む平均値です。これが 衛星()の方が第6次(黒)より変化の振幅が大きくなる原因ではないかと思います。
3.ハイエイタス(温暖化の中断)

図3aは、2013年に発表されたIPCC第5次報告書第1作業部会の図SPM.1(a)の 表面温度の観測値です(3つのデータセットを色を変えて重ねているので3色)。図を見ると、1970年代から急速に温度が上昇し1998年にピークをつ け、その後2012年にかけて温度の急上昇が止まった時期があります。これを当時の温暖化の科学者たちはハイエイタス(地球温暖化の中断現象)と呼び、そ の原因を究明していたのです(地球温暖化の停滞現象(ハイエイタス)の要因究明 〜2000年代の気温変化の3割は自然の変動〜参照)。
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図3bは、図3aの第5次報告書の温度の観測値(3色)に衛星による温度の観測値()を重ねた図です注4図3bを見ると、1979ー2000年は第5次報告書の温度の観測値(3色)と衛星による温度の観測値()は傾向が一致しています。2000ー2012年の第5次報告書の温度の観測値(3色)はハイエイタスですが、衛星による温度の観測値()も2000-2015年は1998年のピークより温度が低く、衛星による温度の観測値()もハイエイタスです。

以上のように、第5次報告書の温度の観測値、当時の温暖化の科学者の研究活動、衛星による温度の観測値のどれにもハイエイタス(温暖化の中断)は存在していたのです。
(注4)衛星のグラフ()の縦軸、横軸の目盛りに第5次報告書のグラフの目盛りを合わせているので、図3aのグラフは縦方向に圧縮されています。
4.温度の観測値を書き換えて“人為的”地球温暖化をゲット!

図4aは、第6次報告書の温度の観測値(黒)に第5次報告書の温度の観測値(図3a)を比較しやすいようにに変色して重ねた図です。 図4aを見ると、1850年から1970年代までは、第6次と第5次の温度の観測値は基本的に同じであることがわかります。1970年代から2000年までについては、第6次では第5次の温度の観測値を少し温度が高い方に書き換えたことがわかります。

2000ー2012年については、第5次() ではハイエイタス(温暖化の中断)が記録されていましたが、第6次(黒)では温度が明確に高い方に書き換えられ、ハイエイタスは無かったことにされていま す。第6次の温度の観測値(黒)だけを見ていると、ハイエイタスがあったとは全く気づきませんが、前述のとおり、当時の温暖化の科学者たちがハイエイタの 原因を究明していたことは事実です。その後、第6次報告書の温度の観測値(黒)は急上昇しています。
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図4bは上記図2aと同じもので、第6次報告書の温度の観測値(黒)に衛星による温度の観測値()を重ねた図です。衛星による温度の観測値()については、前述のとおり、2000-2015年はハイエイタス(温暖化の中断)でした。その後、衛星の観測値()と第6次報告書の観測値(黒)はどちらも急上昇して2016年、2020年のピークを形成します。衛星による温度の観測値() はハイエイタス(温暖化の中断)からの急上昇なので、2016年、2020年のピークは1998年のピークとほぼ同じ高さです。これに対して、第6次報告 書の温度の観測値(黒)はハイエイタス(温暖化の中断)が無かったように書き換えられた高い温度からの急上昇なので、“人為的”地球温暖化をゲットするこ とができたのです。

以上が、IPCCが主張する人為的地球温暖化の正体です。すなわち、第6次報告書は、第5次報告書の温度の観測値を書き換えハイエイタス(温暖化の中断) が無かったことにして“人為的”地球温暖化をゲットしたのです。その結果、図1aに示すように、温度の観測値(黒)と、人間&自然要因のシミュレーション結果()とを一致させることができ、「人間の影響が大気、海洋及び陸域を温暖化させてきたことには疑う余地がない」(政策決定者向け要約 A.1参照)と記述することができたのです。

図4bを見ていると、1850年から20世紀中期までの温度の観測値(黒)の後に続くのは、第6次報告書が温度の観測値を書き換えてゲットした“人為的”地球温暖化(黒)よりも、衛星による温度の観測値()の方が自然につながるように見えるのではないでしょうか。そうだとすると、20世紀初頭からの緩やかな温暖化が、ときどき温暖化の中断を挟みながら、進んでいるということになります。今後については、IPCC第6次報告書の予測よりも、毎月月初に発表される衛星による温度の観測値が実際に上がるのか下がるのかが注目されます。

5.衛星観測温度と相違する“ハイエイタス(温暖化の中断)なし”への書き換えは正しいか?

図5aIPCC第6次報告書 第I作業部会(612頁)Cross-Chapter Box 2.3 図1(b)です。上記図4aで第5次報告書と第6次報告書の温度の観測値を重ねた図を示しましたが、第6次報告書自身に第5次報告書と第6次報告書の両方の温度の観測値を示したこの図が掲載されていました。しかし、この図には次に示す3つの間違いがあります。

(1)右上の凡例は間違いです。正しくは図に赤字で示したように、がAR6(第6次報告書)で、オレンジがAR5(第5次報告書)です。
(2)右下の「AR5-AR6」も間違いで、正しくは「AR6-AR5」です。右の縦軸の目盛りも赤字で示したように訂正すべきです。
(3)左の縦軸の「1850-1900」も間違いで、「1850-2020」が正しいのではないでしょうか。


この図があるCross-Chapter Box 2.3はわずか7頁ですが、冒頭には28名の寄稿者が名を連ねています(第6次報告書 464頁)。この28名の寄稿者がこの3つの間違いに気づかなかったというのは信じられないこ とです。第6次報告書を盲信するのは危険だと思います。
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図5aの2000ー2012年を見ると、第5次報告書(オレンジ)ではハイエイタス(温暖化の中断)が記録されていました。しかし第6次報告書()では温度の観測値が明確に高い方に書き換えられ、ハイエイタスは無かったことにされています。この書き換えを第6次報告書自身の図が示していたのです。ただし、第6次報告書は「温度の観測値の書き換え」という言葉は使わず、「データセットのイノベー ション」(第6次報告書 465頁)という言葉を使っています。

図5bは、図5aの間違いを訂正し、衛星による温度の観測値(上記図1b)の13ヵ月平均線()を重ねた図です。線の色は違いますが。図4bに関して述べたことが図5bに示したように同様に成り立ちます。衛星観測温度()は、前述のとおり、2000-2015年はハイエイタス(温暖化の中断)でした。その後、衛星観測温度()と第6次報告書の観測値()はどちらも急上昇します。衛星観測温度()はハイエイタスからの急上昇なので、2016年、2020年のピークは1998年のピークとほぼ同じ高さです。これに対して、第6次報告書の温度の観測値()はハイエイタスが無かったように書き換えられた高い温度からの急上昇なので、“人為的”地球温暖化をゲットすることができたのです。

各国は脱炭素政策を進めています。その根拠となるのがこのIPCC第6次報告書です。それが第5次報告書の温度の観測値を書き換えハイエイタス(温暖化の 中断)を無かったことにして“人為的”地球温暖化をゲットしていたのです。しかも、これは衛星観測温度とは相違しています。これをそのまま信じて、脱炭素 政策に邁進してもいいのでしょうか?

脱炭素は大きな国民負担を伴います。グリーン経済成長といわれるものは補助金づけ経済成長であり、一部の者を富ませるとしても、多くの国民は莫大な負担に苦しまなければなりません。各国の政策決定者はIPCC本稿英語版)を見せて、衛星観測温度と相違する“ハイエイタス(温暖化の中断)なし”への書き換えは本当に正しいかを問い合わせるべきです。そしてそれが証明されるまで、脱炭素は中断すべきです。


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