2013.10.02; 15.01.31  ↑UP   温暖化ツイッター小説第7集[二酸化炭素犯人説の嘘]<イチオシ   IPCC第5次報告書 統合報告書 政策決定者向け要約 日本語訳<New

IPCC第5次報告書 第1作業部会 政策決定者向け要約 日本語訳
Working Group I Contribution to the IPCC Fifth Assessment Report Summary for Policymakersの翻訳文(訳注1)
翻訳:井上雅夫 2013.10.02 - 10.17
10.18 (訳注11) 階段グラフで演出された温暖化 <オススメ
10.21 (訳注12) 気温上昇の半分未満は人為起源ではない
10.23 (訳注13) 科学者による「人為起源」の気温変動 <オススメ
10.25 (訳注14) クイズ:最近の気温の横ばいを隠蔽したトリックは? <オススメ
10.30 (訳注15) 宇宙旅行2100 「灼熱地獄の地球を救え!」 (フィクションです)
11.05 (訳注16) 気候感度の最良の推定値が合意できなかった理由を完全解明
11.11 (訳注17) 測器による気候感度2.4℃で21世紀末の気温を予測してみた
11.17 (訳注18) 気温下降中を上昇中に見せかけるIPCCの執念 <オススメ
11.25 (訳注19) IPCCが隠蔽した「エアロゾル等強制力のみ」の気温変化を復元 <オススメ
12.03 (訳注20) 「21世紀末温暖化加速のカラクリ」および「気候モデルの正体」 <オススメ
12.11 (訳注21) 「エアロゾル等強制力=0」のパソコン気候モデルシミュレーション <オススメ
14.02.28 (訳注22)グリーンピース共同創設者の一人が人為起源の地球温暖化を否定
14.03.06 (訳注23) 「climate change」の日本語訳は「気候変動」? それとも「気候変化」?
14.03.12 (訳注24) 「気候変動の不可避性」は地球の公約ではなく、IPCCの公約です
 目  次
執筆者
政策決定者向け要約
 A.序
 B.気候システムにおける観測された変化
  B.1 大気
  
B.2 海洋
  B.3 雪氷圏
  B.4 海面水位
  B.5 炭素および他の生物地球化学循環
 C.気候変動の駆動要素
 D.気候システムおよびその最近の変動の理解
  D.1 気候モデルの評価
  D.2 気候システムの応答の定量化
  D.3 気候変動の検出および原因特定
 E.将来の世界および地域の気候変動
  E.1 大気:気温
  E.2 大気:水循環
  E.3 大気:大気の質
  E.4 海洋
  E.5 雪氷圏
  E.6 海面水位
  E.7 炭素および他の生物地球化学循環
  E.8 気候の安定化、気候変動の不可避性と不可逆性
 ボックスSPM.1:代表的濃度経路(RCP)

 (訳注11) 階段グラフで演出された温暖化

 (訳注12) 気温上昇の半分未満は人為起源ではない
 (訳注13) 科学者による「人為起源」の気温変動
 (訳注14) クイズ:最近の気温の横ばいを隠蔽したトリックは?
 (訳注15) 宇宙旅行2100 「灼熱地獄の地球を救え!」 (フィクションです)
 (訳注16) 気候感度の最良の推定値が合意できなかった理由を完全解明
 (訳注17) 測器による気候感度2.4℃で21世紀末の気温を予測してみた
 (訳注18) 気温下降中を上昇中に見せかけるIPCCの執念
 (訳注19) IPCCが隠蔽した「エアロゾル等強制力のみ」の気温変化を復元
 (訳注20) 「21世紀末温暖化加速のカラクリ」および「気候モデルの正体」
 (訳注21) 「エアロゾル等強制力=0」のパソコン気候モデルシミュレーション
 (訳注22)グリーンピース共同創設者の一人が人為起源の地球温暖化を否定
 (訳注23) 「climate change」の日本語訳は「気候変動」? それとも「気候変化」?
 (訳注24) 「気候変動の不可避性」は地球の公約ではなく、IPCCの公約です


第1作業部会第12セッション          承認された政策決定者向け要約
2013年9月27日


政策決定者向け要約

原稿執筆者: Lisa Alexander (Australia), Simon Allen (Switzerland/New Zealand), Nathaniel L. Bindoff (Australia), Francois-Marie Breon (France), John Church (Australia), Ulrich Cubasch (Germany), Seita Emori (Japan), Piers Forster (UK), Pierre Friedlingstein (UK/Belgium), Nathan Gillett (Canada), Jonathan Gregory (UK), Dennis Hartmann (USA), Eystein Jansen (Norway), Ben Kirtman (USA), Reto Knutti (Switzerland), Krishna Kumar Kanikicharla (India), Peter Lemke (Germany), Jochem Marotzke (Germany), Valerie Masson-Delmotte (France), Gerald Meehl (USA), Igor Mokhov (Russia), Shilong Piao (China), Gian-Kasper Plattner (Switzerland), Qin Dahe (China), Venkatachalam Ramaswamy (USA), David Randall (USA), Monika Rhein (Germany), Maisa Rojas (Chile), Christopher Sabine (USA), Drew Shindell (USA), Thomas F. Stocker (Switzerland), Lynne Talley (USA), David Vaughan (UK), Shang-Ping Xie (USA)

原稿執筆協力者: Myles Allen (UK), Olivier Boucher (France), Don Chambers (USA), Jens Hesselbjerg Christensen (Denmark), Philippe Ciais (France), Peter Clark (USA), Matthew Collins (UK), Josefino Comiso (USA), Viviane Vasconcellos de Menezes (Australia/Brazil), Richard Feely (USA), Thierry Fichefet (Belgium), Arlene Fiore (USA), Gregory Flato (Canada), Jan Fuglestvedt (Norway), Gabriele Hegerl (UK/Germany), Paul Hezel (Belgium/USA), Gregory Johnson (USA), Georg Kaser (Austria/Italy), Vladimir Kattsov (Russia), John Kennedy (UK), Albert Klein Tank (Netherlands), Corinne Le Quere (UK/France), , Gunnar Myhre (Norway), Tim Osborn (UK), Antony Payne (UK), Judith Perlwitz (USA/Germany), Scott Power (Australia), Michael Prather (USA), Stephen Rintoul (Australia), Joeri Rogelj (Switzerland), Matilde Rusticucci (Argentina), Michael Schulz (Germany), Jan Sedla.ek (Switzerland), Peter Stott (UK), Rowan Sutton (UK), Peter Thorne (USA/Norway/UK), Donald Wuebbles (USA)



IPCC 第5次評価報告書 第1作業部会報告書

気候変動2013:自然科学的根拠

政策決定者向け要約

A.序

IPCC第5次報告書(AR5)の第1作業部会の報告は、気候システムの観測、古気候の記録、気候プロセスの理論的研究、および気候モデルを使ったシミュレーションからの多くの独立した科学的分析に基づいた気候変動<climate change>(訳注23)の新しい証拠を考慮している。その証拠はIPCC第4次報告書(AR4)の第1作業部会報告書の上に築かれ、その後の新しい知見を合体している。第5次評価サイクルの構成要素として、気候変動への適応推進に向けた極端現象および災害のリスク管理に関するIPCC特別報告書(SREX)は、変化している極端な気象・気候に関する情報のための重要な基礎である。

この政策決定者向け要約(SPM)は第1作業部会報告書の構成に従っている。説明は、まとめられた簡潔な要約を提供する一連の中心的な強調された結論によって支持されている。主な節は、評価の方法論的な基礎を概説する概要段落を有している。

この評価報告書における主要な知見の確実さの程度は、執筆者チームの基礎をなす科学的理解の評価に基づいており、確信度<confidence>(訳注2)の質的レベル(非常に低いから非常に高いまで<from very low to very high>)として、および、可能であれば、定量化された可能性(ほぼあり得ないからほぼ確実まで<from exceptionally unlikely to virtually certain>)と共に確率的に表現されている。知見の確実性における確信度は、証拠(例えば、データ、機械論的な理解、理論、モデル、専門家の判断)のタイプ、量、質、および一貫性、ならびに一致の程度(注1)に基づいている。知見における不確実性の定量的計測の確率的評価は、観測および/またはモデルの結果の統計的分析、および専門家の判断(注2)に基づいている。また、適切な場合は、知見は不確実性修飾語を使うことなしに事実の陳述として述べられる。(不確実性を伝えるためにIPCCが使用する特別な用語についての詳細は第1章およびボックスTS.1参照)

この政策決定者向け要約における実質的な段落<substantive paragraphs>の基礎は、この要約の基礎となる報告書(第5次報告書本体)の章節および技術要約の中で見つけることができる。これらの参照は{ }内に与えられる。


(注1)この政策決定者向け要約において、利用可能な証拠を記述するために次の簡潔な用語が使用され:限定的、中程度、または確実<limited, medium, or robust>;また合意の程度のために次の簡潔な用語が使用される:低い、中程度の、または高い<low, medium, or high>。確信度<confidence>のレベルは5つの修飾語(非常に低い、低い、中程度の、高い、および非常に高い<very low, low, medium, high, and very high>)ならびにイタリック体(例えば、中程度の確信度)を使用して表現される(訳注3)。与えられた証拠および合意の記述のために、異なった確信度のレベルが割り当てられることがあるが、証拠のレベルおよび合意の程度の増大は確信度の増大と相関関係がある(詳細は第1章およびボックスTS.1参照)。
(注2)この政策決定者向け要約において、次の用語は、成果または結果の評価された可能性<likelihood>を示すために使用されてきた:ほぼ確実<virtually certain>99〜100%の可能性、可能性が非常に高い<very likely>90〜100%、可能性が高い<likely>66〜100%、どちらも同程度<about as likely as not>33〜66%、可能性が低い<unlikely>0〜33%、可能性が非常に低い<very unlikely>0〜10 %、ほぼあり得ない<exceptionally unlikely>0〜1%。追加的用語(可能性が極めて高い<extremely likely>95〜100%、どちらかと言えば<more likely than not>50〜100%、極めてあり得ない<extremely unlikely>0.5%)も適切な場合は使われるかもしれない(訳注3)。評価された可能性はイタリック体で記載される、例えば、可能性が非常に高い(詳細は第1章およびボックスTS.1参照)。



B.気候システムにおける観測された変化

気候システムの観測は直接の測定と衛星や他の基盤からのリモートセンシングに基づいている。計器時代からの地球規模の観測は19世紀半ばにおいて気温および他の変数について始まり、1950年以降の期間はより包括的かつ多様な一連の観測が利用可能である。古気候の復元は数百年から数百万年に遡る記録に及んでいる。それらが一緒になって大気、海洋、雪氷圏、および地表における変わりやすさ<variability>および長期の変化の包括的な見解を提供する。
気候システムの温暖化は明白であり<unequivocal>(訳注4)、1950年代以降、多くの観測された変化は数十年から数千年にわたって前例のないものである。大気および海洋は温暖化し、雪氷の量は減少し、海面水位は上昇し、温室効果ガスの濃度は増加してきた(図SPM.1, SPM.2, SPM.3 およびSPM.4参照)。 {2.2, 2.4, 3.2, 3.7, 4.2.4.7, 5.2, 5.3, 5.5.5.6, 6.2, 13.2}


B.1 大気

最近の3つの10年間のそれぞれは1850年以来のどのそれ以前の10年間よりも、地球表面において継続的に温暖化してきた(図SPM.1参照)。北半球において、1983〜2012年は最近の1400年の最も暖かい30年であった可能性が高い中程度の確信度)。 {2.4, 5.3}
ar5_f_spm1.jpg
図SPM.1:(a)3つのデータセットによる1850年〜2012年の観測された世界平均地上気温(訳注9)偏差。上図:年平均値、下図:一つのデータセット(黒)のための不確実性の評価を含む10年平均値。偏差は1961〜1990年の平均に対して。(訳注11)  (訳注18) (b)一つのデータセット(図(a)のオレンジの線)から線形回帰<linear regression>によって決定された気温の傾向に由来する1901年〜2012年の観測された地上気温変化の地図。傾向は、データの利用が確実な評価<a robust estimate>を許す場合(すなわち、70%以上の完全な記録を有しかつ期間の最初と最後の10%において20%以上のデータが利用可能なグリッドボックスに対してのみ)に計算された。他の地域は白。傾向が10%レベルで有意であるグリッドボックスは+サインで示されている。データセットのリストおよび更なる技術的詳細は技術要約補足資料参照。 {Figures 2.19-2.21; Figure TS.2}

線形傾向<linear trend>で計算された世界平均地上気温(訳注9)偏差データは、多数の独立して作成されたデータセットが存在する1880〜2012年で、0.85[0.65〜1.06]℃(注3)の温暖化を示している(訳注13)。1850〜1900年と2003〜2012年の平均値間の全体の増加は、利用可能な一つの最長のデータセット{2.4}に基づいて、0.78[0.72〜0.85]℃である(注4)。(図SPM.1a


地域的傾向の計算が十分に完全である最長の期間(1901〜2012年)について、ほとんど全世界が表面温暖化を経験してきた。(図SPM.1b) {2.4}

数十年の確実な温暖化に加えて、世界地上気温は実質的に10年変化および経年変化を示している(図SPM.1参照)。自然の変化により、短い記録に基づく傾向は最初と最後のデータに非常に敏感であり、一般的に長期間の気候の傾向を反映しない。一つの例として、(強いエルニーニョで始まる)過去15年にわたる温暖化率(1998〜2012年;0.05[−0.05〜+0.15]℃/10年)は、1951年から計算された率(1951〜2012年;0.12[0.08〜0.14]℃/10年)より小さい(注5)。 {2.4}

大陸規模の地表気温復元は、高い確信度で、いくつかの地域において20世紀末と同様に温暖であった中世の気候異変(950〜1250年)の多数の10年間を示している。これらの地域的温暖期は、20世紀末の温暖化のように地域をまたがってまとまって起こってはいない(高い確信度)。 {5.5}

・ 20世紀半ばから世界的に対流圏が温暖化してきたことはほぼ確実virtually certain>である。より完全な観測が、他の地域よりも、温帯の北半球における対流圏の気温変化の評価において、より大きな確信度を与える。北半球の温帯の対流圏における温暖化率およびその鉛直方向の構造には中程度の確信度があり、他の地域では低い確信度である。 {2.4}

・ 1901年からの世界陸地平均降水量の確信度は、1951年以前は低く、以後は中程度である。北半球の中緯度の陸地平均降水量は1901年から増加してきている(1951年以前は中程度の確信度、以後は高い確信度)。他の緯度の地域で平均した長期間の正または負の傾向は低い確信度である(図SPM.2参照)。 図TS TFE.1, 図2, 2.5}

ar5_f_spm2
図SPM.2:1つのデータセットに基づく1901〜2010年および1951〜2010年の観測された降水量の変化の地図(傾向は図SPM.1bと同じ基準を使って計算された)。更なる技術的詳細は、技術要約補足資料参照。 {Figure TS.X; Figure 2.29} [FIGURE TO BE COPYEDITED AND MADE CONSISTENT WITH FIGURE SPM.1b] 参照。

・ 多くの極端な気象・気候事象における変化は1950年頃から観測されてきた(詳細は表SPM.1参照)。世界規模において、寒い昼夜の数が減少し暖かい昼夜が増加した可能性が非常に高い(注6)。熱波の頻度がヨーロッパ、アジアおよびオーストラリアの広い範囲で増加した可能性が高い。より多くの陸域で激しい降水事象の数が増加した可能性が高い。激しい降水事象の頻度または強度は北アメリカおよびヨーロッパで増加した可能性が高い。他の大陸では、激しい降水事象の変化における確信度はせいぜい中程度である。 {2.6}

 表SPM.1
傾向の現象と方向
変化が起こったことの評価
(他の方法の表記がない限り典型的には1950年以降)

観測された変化に対する人間の寄与の評価
更なる変化の可能性
21世紀早期
21世紀末期
ほとんどの陸域において、より温暖および/またはより寒い昼夜
可能性が非常に高い {2.6}
可能性が非常に高い
可能性が非常に高い
可能性が非常に高い {10.6}
可能性が高い
可能性が高い
可能性が高い {11.3}


ほぼ確実 {12.4}
ほぼ確実
ほぼ確実
ほとんどの陸域において
より温暖および/または
より頻度の高い暑い昼夜
可能性が非常に高い {2.6}
可能性が非常に高い

可能性が非常に高い
可能性が非常に高い {10.6}
可能性高い
可能性が高い(夜だけ)
可能性が高い {11.3}


ほぼ確実 {12.4}
ほぼ確実
ほぼ確実
温暖な期間/熱波。
ほとんどの陸域で頻度および/または期間が増加
世界規模で中程度の確信度
ヨーロッパ、アジアおよびオーストラリアの広い範囲で可能性が高い {2.6}
(全てではなく)多くの地域で中程度の確信度
可能性が高い
可能性が高い(a) {10.6}
以前は評価されなかった
どちらかと言えば
公式に評価されていない(b) {11.3}


可能性が非常に高い {12.4}
可能性が非常に高い
可能性が非常に高い

激しい降水事象。
激しい降水の頻度、強度、および/または量の増加
より多くの陸域で減少より増加の可能性が高い(c) {2.6}
より多くの陸域で減少より増加の可能性が高い
ほとんどの陸域で可能性が高い
中程度の確信度 {7.6, 10.6}
中程度の確信度
どちらかと言えば

多くの陸域で可能性が高い {11.3}


中緯度の陸の大部分および多雨の熱帯地域で能性が非常に高い {12.4}
多くの地域で可能性が高い
ほとんどの陸域で可能性が非常に高い
干ばつの強度および/または期間の増加
世界規模で低い確信度
いくつかの地域で変化している可能性が高い(d) {2.6}
いくつかの地域で中程度の可能性
多くの地域で可能性が高い、1970年以降(e)
低い確信度 {10.6}
中程度の確信度(f)
どちらかと言えば
低い確信度(g) {11.3}


世界規模の地域で可能性が高い中程度の確信度(h) {12.4}
いくつかの地域で中程度の確信度
可能性が高い(e)
強い熱帯低気圧活動の増加
長期間(100年の)変化は低い確信度
1970年以降北大西洋でほぼ確実 {2.6}
低い確信度
可能性が高い(いくつかの地域、1970以降)
低い確信度(i) {10.6}
中程度の確信度
どちらかと言えば

低い確信度 {11.3}


北太平洋および北大西洋でどちらかと言えば(j) {14.6}
いくつかの内湾でどちらかと言えば
可能性が高い
極端に高い海面水位の発生率および/または大きさの増加
可能性が高い(1970年以降) {3.7}
可能性が高い(20世紀末)
可能性が高い
可能性が高い(k) {3.7}
可能性が高い(k)
どちらかと言えば(k)
可能性が高い(l) {13.7}


可能性が非常に高い(l) {13.7}
可能性が非常に高い(m)
可能性が高い
表SPM.1:極端な気象・気候事象:最近の観測された変化の世界規模の評価、その変化に対する人間の寄与、および21世紀の早期(2016〜2035年)および末期(2081〜2100)における予想される更なる変化。太字は、第5次報告書(黒)がSREX()または第4次報告書()から改訂された(*)世界規模の評価を提供している場合を示す。以前の報告書では21世紀の早期の予測は提供されなかった。第5次報告書の予測は1986〜2005年の参照期間に対するものであり、また別な方法が特定されていない限り新しい代表的濃度経路(RCP)シナリオ(ボックスSPM.1参照)を使用している。the Glossary for definitions of extreme weather and climate events参照。

*複数の報告書間の評価知見の直接的な比較は困難である。いくつかの気候変数について、異なった面が評価されてきた、また不確実性に関して改訂された指導注解<the revised guidance note>がSREXと第5次報告書で使用された。新しい情報の利用可能性、進歩した科学的理解、データおよびモデルの継続する分析、および方法論における特定の相違が評価研究において適用された、全てが改訂された評価知見に寄与している。

注:
(a)原因特定<Attribution>は利用可能なケーススタディに基づいている。いくつかの場所で、人間の影響がいくつかの観測された熱波の発生の確率を倍以上にしている可能性が高い
(b)複数のモデルが近い将来の熱波および温暖な期間の長さ、強度および空間的広がりの増加を予想している。
(c)ほとんどの大陸において、傾向の確信度は、季節および/または地域により強い降水の頻度または強度のいずれかが増加している可能性が高い北アメリカおよびヨーロッパを除き、中程度より高くない。北アメリカ中部において増加している可能性が非常に高い
(d)干ばつの頻度および強度は、地中海および西アフリカにおいて増加している可能性が高く、北アメリカ中部および北西オーストラリアにおいて減少している可能性が高い
(e)第4次報告書は干ばつによって影響を受けている地域を評価している。
(f)SREXは、人間の影響が20世紀後半に観測された干ばつのパターンのいくつかの変化に寄与していることを、降水および気温変化に対する人間の影響に基づいて、中程度の確信度と評価している。SREXは複数の単独の地域のレベルで干ばつの原因特定<attribution>について低い確信度と評価している。
(g)土壌の水分について予想された変化は低い確信度である。
(h)予想された土壌の水分の地域規模から世界規模までの減少および農業の干ばつの増加は、RCP8.5シナリオにおいて今世紀末までに、現在の乾燥した地域において、可能性が高い中程度の確信度)。地中海、南西USおよびアフリカの南部地域における土壌の水分の乾燥化は、ハドレー循環および増加する地表気温の予想された変化と一貫しているから、RCP8.5シナリオにおいて今世紀末までにこれらの地域において表面の乾燥化の可能性が高いことに高い確信度がある。
(i)北大西洋上のエアロゾル強制力の削減が、この地域の1970年代以降の熱帯低気圧活動の観測された増加の少なくとも一部に寄与したことに中程度の確信度がある。
(j)SRES A1B(または同様な)シナリオを使った専門家の判断および予想の評価に基づく。
(k)属性は、極端な海面水位と平均海面水位の観測され変化間の密接な関係に基づいている。
(l)この極端に高い海面水位の増加は主に平均海面水位の増加の結果であるだろうことに高い確信度がある。暴風雨および関連する高潮の地域特有の予想については低い確信度である。
(m)SREXは、平均海面水位の上昇が極端に高い沿岸水位の将来の上昇傾向に寄与する可能性が非常に高いと評価した。


(注3)この第5次報告書の第1作業部会報告において、不確実性<uncertainty>は、別な方法が述べられていない限り、90%信頼区間<90% uncertainty intervals>を使って定量化されている。90%信頼区間は、[ ]の中に示され、評価された値をカバーする90%の可能性を有することが期待される区間である。信頼区間は、対応する最良評価値に関して必ずしも対称的ではない。その値の最良評価も利用可能な場合は与えられる。
(注4)この・に示された両方の方法は第4次報告書においても使用されていた。第1の方法は1880年〜2012年の全ての点の最適線形傾向を使って差を計算する。第2の方法は1850年〜1900年の平均値と2003年〜2012年の平均値の差を計算する。それゆえ、両方法による結果の値および90%信頼区間は直接比較することはできない(2.4)。
(注5)1995年、1996年、および1997年にスタートする15年間の傾向は、それぞれ、0.13[0.02〜0.24]、0.14[0.03〜0.24]、0.07[−0.02〜0.18]℃/10年である。
(注6)寒い昼夜<cold days / cold nights>、暖かい昼夜<warm days / warm nights>、熱波<heat waves>の用語の定義は用語集<Glossary>参照。

B.2 海洋
海洋の温暖化は、気候システムに蓄積されたエネルギーの増加において優位を占めており、1971〜2010年に蓄積されたエネルギーの90%以上を占めている(高い確信度)。海洋の上部(0〜700m)が1971〜2010年に温暖化したことはほぼ確実virtually certain>であり(図SPM.3参照)、1870年代〜1971年は温暖化した可能性が高い。 {3.2, Box 3.1}
・ 世界規模で、海洋の温暖化は表面近くが最も大きく、上部75mは1971〜2010年で10年当たり0.11[0.09〜0.13]℃温暖化した。第4次報告書以来、上部海洋温度の測定器の偏りが特定され減少され、変化の評価における確信度が向上した。 {3.2}

・ 海洋が1957〜2009年に700〜2000mで温暖化した可能性が高い。2000m以下の温度変化の全世界評価について1992〜2005年の期間で十分な観測が利用可能である。この期間において2000〜3000mについては意味のある観測温度傾向はない可能性が高い。この期間において3000m〜海底については海洋は温暖化し、南氷洋<the Southern Ocean>において観測された温暖化が最も大きい可能性が高い。 {3.2}

・ 気候システムにおける正味のエネルギー増加の60%以上が、比較的よくサンプリングされた1971〜2010年の40年間において、上部海洋(0〜700m)に蓄積されており、約30%が700m以下の海洋に蓄積されている。線形傾向で評価されたこの期間の上部海洋貯熱量の増加は17[15〜19]×1022Jである可能性が高い(注7)図SPM.3参照)。 {3.2, Box 3.1}

・ 0〜700mの海洋貯熱量は1993〜2002年の期間より2003〜2010年の期間の方がゆっくり増加した可能性はどちらも同程度(訳注:33〜66%の可能性)である(図SPM.3参照)。経年変化が少ない700〜2000mの海洋の熱の取り込みは1993〜2009年に衰えずに続いていた可能性が高い。 {3.2, Box 9.2}

・ 1950年代以来、蒸発が優位な高塩分の領域はより塩分が高くなり、降水が優位な低塩分の領域では淡水化してきた可能性が非常に高い。これらの海洋の塩分の地域的傾向は海洋において蒸発および降水が変化したことの直接的な証拠である(中程度の確信度)。 {2.5, 3.3, 3.5}

・ 大西洋深層循環<the Atlantic Meridional Overturning Circulation>(AMOC)の傾向については、完全なAMOCの10年の記録および個々のAMOC構成要素のより長期の記録に基づいて、観測された証拠はない。 {3.6}


(注7)1年間に1W m−2の率で海洋表面を通した熱の継続する供給は1.1×1022Jだけ海洋貯熱量を増加させるであろう。


B.3 雪氷圏
最近の20年間にわたって、グリーンランドと南極の氷床は質量を減少させ、氷河はほとんど全世界で縮み続け、北極の海氷および北半球の春の積雪面積は減り続けてきた(高い確信度)(図SPM.3参照)。

・ 世界中の氷河からの平均的な氷の減少率(注8)は、氷床(注9)の周辺部の氷河を除き、1971〜2009年の期間にわたって226[91〜361]Gt yr−1である可能性が非常に高い(注10)。 {4.3}

・ グリーンランドの氷床からの平均的な氷の減少率は1992〜2001年の34[−6〜74]Gt yr−1から2002〜2011年の215[157〜274]Gt yr−1へ実質的に増加した可能性が非常に高い。 {4.4}

・ 南極の氷床からの平均的な氷の減少率は1992〜2001年の30[−37〜97]Gt yr−1から2002〜2011年の147[72〜221]Gt yr−1へ増加した可能性が高いこれらの減少は主に南極半島北部<the northern Antarctic Peninsula>と西南極大陸のアムンゼン海セクター<the Amundsen Sea sector>(訳注5)からであることには非常に高い確信度がある。 {4.4}

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図SPM.3:変化する世界の気候の多数の観測された指標:(a)北半球3〜4月(春)の平均積雪面積、(b)北極の7〜8〜9月(夏)の平均海氷面積、(c)2006〜2010年にそろえた、1971年全データセット平均に対する世界の上部海洋(0〜700m)貯熱量、(d)全てのデータセットを衛星高度データの最初の年である1993年の同じ値にそろえた、最も長期のデータセットの1900〜1905年平均に対する世界の平均海面水位。全ての時系列(色のついた線は異なったデータセットを示す)は年値を表し、不確実性は、評価された場合、色のついた陰影で示している。データセットのリストは技術要約補足資料参照。 {Figures 3.2, 3.13, 4.19, and 4.3; FAQ 2.1, Figure 2; Figure TS.1}

・ 年平均の北極の海氷面積は1979〜2012年にわたって減少し、その減少率は、10年当たり3.5〜4.1%(10年当たり0.45〜0.51百万km)の範囲である可能性が非常に高く、夏の海氷の最小値(永続的な海氷)については10年当たり9.4〜13.6%(10年当たり0.73〜1.07百万km)の範囲である可能性が非常に高い。北極の海氷の10年間の平均面積の平均的な減少は夏に最も急速であった(高い確信度);空間的面積は各季節で、また1979年以来の連続する各10年において、減少した(高い確信度)(図SPM.3参照)。過去の3つの10年間にわたって、北極の夏の海氷の後退は前例のないものであり、海洋表面温度は少なくとも最近の1,450年において例外的に高いことについて中程度の確信度がある。 {4.2, 5.5}

・ 年平均の南極の海氷面積が1979〜2012年に10年当たり1.2〜1.8%(10年当たり0.13〜0.20百万km)の率で増加した可能性が非常に高い。年の率については大きな地域的な相違があり、いくつかの地域で増加し他の地域では減少していることについて高い確信度がある。 {4.2}

・北半球の積雪面積が20世紀半ば以来、減少してきていることに非常に高い確信度がある(図SPM.3参照)。北半球の積雪面積は、1967〜2012年にわたって、3月と4月については10年当たり1.6[0.8〜2.4]%、6月については10年当たり11.7[8.8〜14.6]%減少している。この期間において、北半球の積雪面積はどの月においても統計的に意味のある増加は示さなかった。 {4.5}

・ 永久凍土の温度がほとんどの地域で1980年代の早期から増加していることについて高い確信度がある。観測された温暖化は北アラスカの複数の地域においては3℃まで(1980年代早期〜2000年代)、ロシアのヨーロッパの北部の複数の地域においては2℃まで(1971〜2010年)温暖化した。後者の地域において、1975〜2005年にわたって永久凍土の厚さおよび面積のかなりの減少が観測された(中程度の確信度)。 {4.7}

・ 多数の証拠が20世紀半ばから非常に大きな北極の温暖化を支持している。 {Box 5.1, 10.3}


(注8)『氷の減少』または『質量の減少』の全ての言及は、正味の氷の減少、蓄積 − 溶解、および氷山の分離を指している。
(注9)方法論的な理由のため、南極およびグリーンランドの氷床の氷の減少のこの評価は、周辺部の氷河の変化を含んでいる。これらの周辺部の氷河はそれゆえ氷河として与えられる値から除外されている。
(注10)100Gt yr−1の氷の減少は世界平均海面水位上昇の約0.28mm yr−1と等価である。



B.4 海面水位
19世紀半ば以降の海面水位上昇率はそれ以前の二千年の平均よりも大きかった(高い確信度)。1901〜2010年に、世界平均海面水位は0.19[0.17〜0.21]m上昇した(図SPM.3参照)。 {3.7, 5.6, 13.2}
・ 代替データおよび測定器による海面水位データは19世紀末から20世紀初期に、それ以前の二千年にわたる比較的低い平均上昇率から、より高い上昇率へ遷移があったことを示している(高い確信度)。世界平均海面水位の上昇率は20世紀初期以降増加し続けている可能性が高い。 {3.7, 5.6, 13.2}

・ 世界平均海面水位上昇率は、1901〜2010年では1.7[1.5〜1.9]mm yr−1、1971〜2010年では2.0[1.7〜2.3]mm yr−1、1993〜2010年では3.2[2.8〜3.6]mm yr−1であった可能性が非常に高い。潮位計および衛星高度計データは最近の期間の率がより高いことに関して首尾一貫している。同様な高い率が1920〜1950年に起こった可能性が高い。 {3.7}

・ 1970年代の初期以降、氷河の質量の減少と温暖化による海洋の熱膨張を合わせると観測された世界平均海面水位上昇の約75%が説明できる(高い確信度)。1993〜2010年の世界平均海面水位上昇は、高い確信度で、温暖化による海洋の熱膨張(1.1[0.8〜1.4]mm yr−1)、氷河(0.76[0.39〜1.13]mm yr−1)、グリーンランドの氷床(0.33[0.25〜0.41]mm yr−1)、南極の氷床(0.27[0.16〜0.38]mm yr−1)、および陸の水の貯蔵(0.38[0.26〜0.49]mm yr−1)における変化の観測された寄与の合計と首尾一貫している。これらの寄与の合計は2.8[2.3〜3.4]mm yr−1である。 {13.3}

・ 最後の間氷期(12万9千年〜11万6千年前)の最大の世界平均海面水位が、数千年間、現在より少なくとも5m高かったことに非常に高い確信度があり、現在より10mを超えることはなかったことに高い確信度がある。最後の間氷期において、グリーンランドの氷床が世界平均海面水位の高さに、中程度の確信度の南極の氷床からの追加的な寄与を含み、1.4〜4.3m寄与した可能性が非常に高い。海面水位のこの変化は異なった軌道強制力<orbital forcing>の環境の中で起こり、数千年にわたって平均化された高緯度の地上気温は現在より少なくとも2℃温暖であった(高い確信度)。 {5.3, 5.6}



B.5
炭素および他の生物地球化学循環
二酸化炭素(CO)、メタン、および一酸化二窒素の大気中濃度は少なくとも最近の80万年で前例のないレベルに増加した。CO濃度は、第一に化石燃料排出により、第二に正味の土地利用変化により、工業化前の時代から40%増加した。海洋が排出された人為起源の二酸化炭素の約30%を吸収し、海洋の酸性化がもたらされた(図SPM.4参照)。 {2.2, 3.8, 5.2, 6.2, 6.3}

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図SPM.4:変化している世界炭素循環の多数の観測された指標:(a)1958年以降のマウナロア<Mauna Loa> (北緯19°32’西経155°34’−赤)と南極(南緯89°59’西経 24°48’−黒)の二酸化炭素(CO)の大気中濃度;(b)海洋表面に解けたCOの分圧(青の曲線)(訳注6)および海洋水の酸性度の測定in situ pH(緑の曲線)(訳注7)。測定は大西洋(北緯29°10’西経15°30’−暗青色/暗緑色;北緯31°40’西経64°10’−青/緑)および太平洋(北緯22°45’西経158°00’−明青色/明緑色)から。ここに示されたデータセットの完全な詳細は基礎となる報告書の技術要約補足資料で提供されている。 {Figures 2.1 and 3.18; Figure TS.5}

・ 温室効果ガスである二酸化炭素(CO)、メタン(CH)、および一酸化二窒素(NO)の全ての大気中濃度は人間活動により1750年以来増加してきた。2011年には、これらの温室効果ガスの濃度はそれぞれ391ppm(注11)、1803ppb、324ppbであり、工業化前のレベルをそれぞれ約40%、150%、20%超えている。 {2.2, 5.2, 6.1, 6.2}

・ 現在のCO、CH、およびNOの濃度は過去80万年間の氷床コアに記録された最も高い濃度を十分に超えている。前世紀の大気中濃度の平均増加率は、非常に高い確信度で、過去2万2千年において前例のないものである。 {5.2, 6.1, 6.2}

・ 化石燃料燃焼およびセメント生産からの年間のCO排出は2002〜2011年の平均で8.3[7.6〜9.0]GtC(注12) yr−1であり(高い確信度)、2011年では9.5[8.7〜10.3]GtC yr−1で、1990年を54%超えていた。人間の土地利用変化からの年間の正味のCO排出は2002〜2011年の平均で0.9[0.1〜1.7]GtC yr−1であった(高い確信度)。 {6.3}

・ 1750〜2011年において、化石燃料燃焼およびセメント生産からのCO排出は大気に対して375[345〜405]GtC排出した、一方、森林伐採および他の土地利用変化は180[100〜260]GtC排出したと見積もられている。その結果、555[470〜640]GtCの累積人為的排出となる。 {6.3}

・ これらの累積人為的CO排出のうち、240[230〜250]GtCは大気中に蓄積され、155[125〜185]GtCは海洋によって取り込まれ、160[70〜250]GtCは自然の陸のエコシステム(残りの陸上吸収源<cumulative residual land sink>参照)において蓄積された。 {Figure TS.4, 3.8, 6.3}

・ 海洋の酸性化はpH(注13)の減少で定量化される。海洋表面水のpHは工業化時代の初め以降0.1減少し(高い確信度)、これは水素イオン濃度の26%の増加に対応する(図SPM.4参照)。 {3.8., Box 3.2}


(注11)ppm(百万に対する割合)またはppb(十億に対する割合、十億=1000百万)は乾燥した空気分子の全数に対するガス分子の数の比率。例えば、300ppmは百万個の乾燥した空気分子に対する300個のガス分子を意味する。
(注12)1ギガトンの炭素=1GtC=1015グラムの炭素=1ペタグラムの炭素=1PgC。これは3.67GtCOに対応する。
(注13)pHは、logスケールを使った酸性度の計量法:pHの1単位の減少は水素イオン濃度または酸性度の10倍の増加に対応する。


C.気候変動の駆動要素

地球のエネルギー収支を変える自然起源および人為起源の物質およびプロセスが気候変動の駆動要素<drivers>である。放射強制力<Radiative forcing>(注14)(RF)は、他の方法が示されていない限り、1750年に対する2011年のこれらの駆動要素の変化に起因するエネルギーフラックスの変化の量を定める。正の放射強制力は表面の温暖化を導き、負の放射強制力は表面の寒冷化を導く。放射強制力はその場のまたは遠隔の観測、温室効果ガスおよびエアロゾル<aerosols>の特性、および観測されたプロセスを意味する数値モデルを使った計算に基づいて推定される。ある排出された化合物が他の物質の大気中濃度に影響を与える。放射強制力はそれぞれの物質の濃度変化に基づいて報告される(注15)。あるいは、化合物の排出ベースの放射強制力が報告されることもでき、それは人間活動への直接の結びつきを提供し、その排出によって影響された全ての物質からの寄与を含む。全人為起源放射強制力のこの2つのアプローチは全ての駆動要素を考慮するとき一致する。この要約の中で両方のアプローチが使用されるが、排出ベースの放射強制力が強調されている。
全放射強制力は正であり、気候システムによるエネルギーの取り込みを導く。全放射強制力への最大の寄与は1975年以来COの大気中濃度の増加による(図SPM.5参照)。 {3.2, Box 3.1, 8.3, 8.5}

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図SPM.5:気候変動の主な駆動要素の1750年に対する2011年の放射強制力の推定値および総計した推定幅。値は、駆動要素の組み合わせを結果としてもたらす排出された化合物またはプロセスにより区分された世界平均の放射強制力(RF(注15))である(訳注:「CH」の行の2番目は不鮮明ですが「Hstr」(成層圏の水蒸気)です)。正味の放射強制力の最良の推定値は「・」で、対応する推定幅と共に示されている;数値は、図の右に、正味の強制力の確信度(VH−非常に高いvery high>、H−高いhigh>、M−中程度のmedium>、L−低いlow>、VL−非常に低いvery low>)と共に、示されている。雪氷上のブラックカーボン(黒色炭素)に起因するアルベド強制力はブラックカーボン・エアロゾルの棒グラフに含まれている。飛行機雲(0.05W m−2、飛行機雲に誘発された巻雲を含む)、およびHFCs、PFCおよびSF(合計0.03W m−2)に起因する小さな強制力は示されていない。ガスの濃度ベース放射強制力は同様な色の棒グラフを合計することにより得ることができる。火山による強制力は、その一時的な性質が他の強制力メカニズムと比較するのが困難であるから、含まれていない。全人為起源放射強制力は1750年に対する3つの異なった年について示されている。個々の化合物とプロセスに関連する推定幅を含む、更なる技術的詳細は、技術要約補足資料参照。 {8.5; Figures 8.14.8.18; Figures TS.6 and TS.7}

・ 1750年に対する2011年の全人為起源放射強制力は2.29[1.13〜3.33]W m−2であり(図SPM.5参照)、1970年以降それ以前のいくつかの10年間よりも急速に増加している。2011年の全人為起源放射強制力の最良の推定値は第4次報告書で報告した2005年の値より43%高い。これは、ほとんどの温室効果ガス濃度の継続する増大および従来より弱い正味の冷却効果(負の放射強制力)を示すエアロゾルによる放射強制力の改良された推定値の組み合わせにより生じたものである。 {8.5}

・ 1750年に対する2011年の十分に混合した温室効果ガス<well-mixed greenhouse gases>(CO、CH、NO、およびハロカーボン)の排出による放射強制力は3.00[2.22〜3.78] W m−2である(表SPM.5参照)。これらのガス濃度の変化による放射強制力は2.83[2.26〜3.40]W m−2である。 {8.5}

・ COの排出だけで1.68[1.33〜2.03]W m−2の放射強制力の原因となった(図SPM.5参照)。CO濃度の増加に寄与する他の炭素を含むガスの排出を含めると、COの放射強制力は1.82[1.46〜2.18]W m−2である。 {8.3, 8.5}

・ CHの排出だけで 0.97[0.74〜1.20]W m−2の放射強制力の原因となった(図SPM.5参照)。これは、0.48[0.38〜0.58]W m−2(第4次報告書から変化なし)の濃度ベースの推定値よりも遙かに大きい。この推定値の相違は、CHによるオゾンおよび成層圏の水蒸気の濃度変化ならびにCHに間接的に影響を及ぼす他の排出によって生じたものである。 {8.3, 8.5}

・ 成層圏のオゾンを減少させるハロカーボンの排出は0.18[0.01〜0.35]W m−2の正の正味の放射強制力の原因となった(図SPM.5参照)。それら自身の正の放射強制力がそれらが引き起こすオゾンの減少による負の放射強制力に勝っている。CFCsによる放射強制力は減少したが、それらの代替物の多くによる放射強制力は増加し、全ハロカーボンからの正の放射強制力は第4次報告書の値と同様である。 {8.3, 8.5}

・ 短期滞在ガス<short-lived gases>の排出は全人為起源放射強制力に寄与している。一酸化炭素の排出は正の放射強制力を引き起こすことはほぼ確実であり、一方、窒素酸化物(NOx)は負の正味の放射強制力を引き起こす可能性が高い図SPM.5参照)。 {8.3, 8.5}

・ エアロゾルによる雲調整を含む大気中の全エアロゾル効果の放射強制力は−0.9[−1.9〜−0.1]W m−2であり(中程度の確信度)、これはほとんどのエアロゾルの負の強制力およびブラックカーボン(黒色炭素)による太陽放射の吸収による正の寄与の結果である。エアロゾルおよびその雲との相互作用は、十分に混合した温室効果ガスの世界平均強制力のかなりの部分を相殺していることに高い確信度がある。これらは全放射強制力の最大の不確実性に寄与し続けている。 {7.5, 8.3, 8.5}

・ 成層圏の火山性エアロゾルの強制力は、火山噴火の後の数年間の気候に大きなインパクトを与える。いくつかの小さな爆発は、2008〜2011年に−0.11[−0.15〜−0.08]W m−2の放射強制力(1999〜2002年の約2倍の強さ)の原因になった。 {8.4}

・ 太陽放射照度の変化による放射強制力は0.05[0.00〜0.10]W m−2である。1978〜2011年の全太陽放射照度の変化の衛星観測は、最後の太陽活動極小期<solar minimum>が前2回より低かったことを示している。これにより、2008年の最も最近の極小期と1986年の極小期の間に−0.04[−0.08〜0.00]W m−2の放射強制力が生じた。 {8.4}

・ 太陽放射照度の変化および成層圏の火山性エアロゾルからなる全自然起源放射強制力は、大きな火山の爆発後の短い期間を除き、前世紀をとおして正味の放射強制力への寄与はほんのわずかであった。 {8.5}



(注14)駆動要素の強さは、以前の評価報告書と同様に平方メートル当たりのワット(W m−2)の単位の放射強制力(RF)として定量化されている。放射強制力は駆動要素によって引き起こされるエネルギーフラックスの変化であり、対流圏界面あるいは大気の上面で計算される。以前のIPCC報告書で使われた伝統的な放射強制力の概念においては、全ての表面および対流圏の条件は固定され続ける。この報告書における十分に混合した温室効果ガスおよびエアロゾルの放射強制力の計算においては、海洋および海氷を除き、物理変数は摂動に対して急速な調整で応答することが許されている。結果の強制力は、この要約の基礎となる報告書(訳注:第5次報告書本体)において有効放射強制力(ERF)と呼ばれている。この変更は、以前の評価報告書からの科学的進歩を反映しており、これらの駆動要素のための結果として起こる気温応答のより良い指示<indication>をもたらす。十分に混合した温室効果ガスおよびエアロゾル以外の全ての駆動要素については、急速な調整は良い特徴付けというほどでもなく、小さいものと仮定され、それゆえ伝統的な放射強制力が使用されている。 {8.1}
(注15)このアプローチは第4次報告書の政策決定者向け要約において使用された。



D.気候システムおよびその最近の変動の理解

気候システムにおける最近の変動の理解は、観測、フィードバックプロセスの研究、およびモデルシミュレーションの組み合わせの結果として生じる。最近の変動をシミュレートする気候モデルの能力の評価には、シミュレーションの開始における全てのモデル化された気候システムの構成要素の状態およびそのモデルを駆動するために使用される自然および人為起源の強制力の検討を必要とする。第4次報告書と比較して、より詳細でより長い観測および改良された気候モデルが今や、より多くの気候システム構成要素において検出された変化に対する人間の寄与の原因特定<the attribution of a human contributionを可能する。
気候システムへの人間の影響は明らか<clear>である。これは、増加している大気中の温室効果ガス濃度、正の放射強制力、観測された温暖化および気候システムの理解から明白<evident>である。 {2.14}


D.1 気候モデルの評価
気候モデルは第4次報告書以降進歩した。モデルは、20世紀半ば以降のより急速な温暖化および大きな火山噴火直後の寒冷化を含めて、観測された大陸規模の地表気温パターンおよび多数の10年間の傾向を再現している(非常に高い確信度(訳注20)。 {9.4, 9.6, 9.8}
・ 長期の気候モデルシミュレーションは、1951〜2012年の観測された傾向と一致する世界平均地上気温の傾向を示している(非常に高い確信度)。しかしながら、10〜15年間(例えば、1998〜2012年)のような短い期間については、シミュレートされた傾向と観測された傾向の間に相違がある。 {9.4, Box 9.2}

・ 1951〜2012年と比較して、1998〜2012年の地上温暖化傾向に観測された縮小<The observed reduction in surface warming trend over the period 1998-2012>は、ほぼ同じ割合で、放射強制力の減少傾向および海洋内で起こりうる熱の再分配を含む内部変動<internal variability>からの冷却の寄与に帰因する(中程度の確信度)。放射強制力の減少傾向は主に火山噴火および11年の太陽活動サイクル<the 11-year solar cycle>の下向きの期間のタイミングによる。しかしながら、減少する温暖化傾向を引き起こす放射強制力の変化の役割を定量化することについては低い確信度である。10年規模の内部動変が観測とシミュレーションのかなりの程度の相違を引き起こすことについては中程度の確信度である;後者については内部変動のタイミングを再現することは期待されていない。強制力の不備<forcing inadequacies>および、いくつかのモデルでは、増加している温室効果ガスおよび他の人為起源の強制力(主にエアロゾルの効果)への応答の過大評価からの寄与もあるかもしれない。 {9.4, Box 9.2, 10.3, Box 10.2, 11.3}

・ 地域規模では、地上気温をシミュレートするモデルの能力についての確信度は、より規模の大きい場合より少ない。しかしながら、地域規模の地上気温は第4次報告書の時より良くシミュレートされていることに高い確信度がある。 {9.4, 9.6}

・ 第4次報告書以降、極端な気象・気候事象の評価におけるかなりの進歩があった。20世紀後半の極端に暑いおよび寒い日々の頻度におけるシミュレートされた世界平均傾向は全体として観測と一致している。 {9.5}

・ 第4次報告書以降、大陸規模の降水量のパターンのシミュレーションにおいていくらかの改善があった。地域規模では、降水量は良くシミュレートできておらず、評価は観測の不確実性によって妨げられている。 {9.4, 9.6}

・ いくつかの気候現象は現在ではモデルによってより良く再現されている。マルチモデルシミュレーション<multi-model simulations>に基づくモンスーンおよびエルニーニョ−南方振動(ENSO)の統計データが第4次報告書以降改善したことに高い確信度がある。 {9.5}

・ 気候モデルは、第4次報告書の時よりも、現在はより多くの雲およびエアロゾル・プロセスおよびそれらの相互作用を含んでいるが、モデル中のこれらのプロセスの表現および定量化については低い確信度にとどまる。 {7.3, 7.6, 9.4, 9.7}

・ 1979年以降の北極の夏の海氷面積における下向き傾向は、第4次報告書の時よりも現在はより多くのモデルで再現されており、モデルの約1/4は観測された傾向と同じ大きさの、あるいはより大きい、傾向を示していることに確実な証拠がある。大きなモデル間の相違はあるものの、ほとんどのモデルは南極の海氷面積の小さな下向き傾向をシミュレートしており、これは観測された小さな上向き傾向とは対照的である。 {9.4}

・ 多くのモデルは1961〜2005年の上部海洋貯熱量(0〜700m)の観測された変化を、ほとんどの期間の利用可能な観測に基づく推定値の範囲以内に入るマルチモデル平均時系列<the multi-model mean time series>で、再現している(高い確信度)。 {9.4}

・ 炭素循環を含む気候モデル(地球システムモデル<Earth System Models>)は、熱帯におけるガス放出および中緯度および高緯度における取り込みと共に、海洋−大気COフラックスの全世界パターンをシミュレートしている。これらのモデルの大部分において、20世紀の後半のシミュレートされた全陸海炭素吸収源<carbon sinks>の大きさは観測された推定値の範囲内に入っている。 {9.4}



D.2 気候システムの応答の定量化
気温変化の観測およびモデル研究、気候フィードバックおよび地球のエネルギー収支の変化が一緒になって過去および将来の強制力に応答する地球温暖化の大きさについて確信を与える。 {Box 12.2, Box 13.1}
・ 水蒸気の変化の複合効果からの正味のフィードバック、および大気と地上の温暖化の差<differences between atmospheric and surface warming>は正である可能性が極めて高くextremely likely>、それゆえ気候変動を増幅する。結合された全ての雲のタイプによる正味の放射フィードバックは正である可能性が高い。雲フィードバックの符合と大きさの不確実性は、主に低い雲に関する温暖化の影響の不確実性が続いていることによる。 {7.2}

・ 平衡気候感度<equilibrium climate sensitivity>は、多数の世紀の時間スケールで一定の放射強制力への気候システムの応答を定量化する。それは、大気中CO濃度が2倍になった場合の平衡状態における世界平均地上気温の変化として定義される。平衡気候感度は、1.5℃〜4.5℃の範囲内である可能性が高く高い確信度)、1℃より小さいことは極めてあり得ずextremely unlikely>(高い確信度)、6℃より大きい可能性は非常に低いvery unlikely>(中程度の確信度(注16) (訳注16)。それゆえ可能性が高い範囲の下限温度は第4次報告書の2℃より小さいが、上限温度は同じである。この評価は改善された理解、大気および海洋における拡張された気温記録、および放射強制力の新しい推定値を反映している。 {TFE6.1, Figure 1; Box 12.2}

・ 世界気候変動のペースと大きさは放射強制力、気候フィードバックおよび気候システムによるエネルギーの蓄積により決定される。最近の数十年間のこれらの量の推定値は評価された平衡気候感度の可能性の高い範囲と評価された不確実性内で一貫しており、人為起源の気候変動の我々の理解に強い証拠を提供している。 {Box 12.2, Box 13.1}

・ 過渡的気候応答<transient climate response>は、10年から世紀の時間スケールにおける増加する放射強制力に対する気候システムの応答の量を定める。1年に1%で増加する濃度のシナリオで大気中CO濃度が2倍になったときの世界平均地上気温の変化として定義される。過渡的気候応答は1.0〜2.5℃の範囲内である可能性が高く高い確信度)、3℃よりも大きいことは極めてあり得ないextremely unlikely>。 {Box 12.2}

・ 関連する量として累積炭素放出への過渡的気候応答(TCRE)がある。これは累積炭素放出に対する気候システムの過渡的応答を定量化する(Section E.8参照)。TCREは、大気中に排出された1000GtCに対する世界平均地上気温変化として定義される。TCREは1000GtCに対して0.8℃〜2.5℃の範囲内である可能性が高く、時間的な気温のピークまで約2000GtCまでの累積排出に対して適用される。(図SPM.9参照(訳注:「図SPM.10参照」の誤記と考えられる))。 {12.5, Box 12.2}

・様々な測定法が異なった物質の排出の気候変動への寄与を比較するために使用することができる。最も適切な計量法および対象期間<time horizon>は、気候変動のどのような面が特定の適用に対して最も重要であると考えられるかによるだろう。異なった放出の全ての結果を正確に比較することができる唯一の測定法はなく、全てが限界と不確実性を有している。地球温暖化係数<Global Warming Potential>は、特定の対象期間の累積放射強制力に基づいており、地球気温変化係数<Global Temperature change Potential>は、選択された時点での世界平均地上気温における変化に基づいている。アップデートされた値がこの報告書で提供されている。 {8.7}


(注16)証拠と研究の評価分野を越えた<across assessed lines>値の合意ができていないので、現在、平衡気候感度の最良の推定値を示すことができない。(訳注:第4次報告書には、「平衡気候感度は、2〜4.5℃の範囲(最良の推定値は約3℃)である可能性が高い」と記載されており、第4次報告書では最良の推定値として「約3℃」が合意されていた。) (訳注16)

D.3 気候変動の検出および原因特定
大気および海洋の温暖化において、世界の水循環の変化において、雪氷の減少において、世界平均海面水位の上昇において、いくつかの極端気候の変化において、人間の影響が検出されてきた(図SPM.6および表SPM.1参照)。この人間の影響の証拠は第4次報告書以降増大した。人間の影響が20世紀半ば以降に観測された温暖化の支配的な原因<the dominant cause>であった可能性が極めて高い(訳注12) (訳注22)。 {10.3-10.6, 10.9}

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図SPM.6 (訳注14) (訳注19):大気、雪氷圏および海洋における3つの大規模な指標に基づいた観測およびシミュレートされた気候変動の比較:大陸の地表気温(黄色い図)、北極および南極の9月の海氷面積(白い図)、および主な海盆<ocean basins>(訳注8)の上部海洋貯熱量(青い図(訳注:非常に薄い青なので白と区別がつきません、文字が青い図です)。世界平均の変化も示す。1880〜1919年に対する気温の偏差、1960〜1980年に対する海洋貯熱量の偏差、および1979〜1999年に対する海氷の偏差を示す。全ての時系列は10年平均であり、10年間の中央にプロットされている。気温の図では、観測値の破線は調査された地域の空間的カバー範囲が50%以下の場合である。海洋貯熱量および海氷の図では実線はデータのカバー範囲が良く質が高い場合であり、破線はデータのカバー範囲が十分なだけで、それゆえ不確実性が大きい場合である。示されたモデルの結果は、第5期結合モデル相互比較計画(CMIP5)マルチモデル全体の結果であり、陰影の幅は5〜95%の信頼区間を示している。地域の定義を含む更なる技術的詳細は、技術要約補足資料参照。 {Figure 10.21; Figure TS.12}

・ 1951〜2010年の世界平均地上気温の観測された上昇の半分以上<more than half of the observed increase>が温室効果ガス濃度の人為起源の増加と他の人為起源強制力が合わさって生じた可能性が極めて高いextremely likely>。温暖化に対する人間が誘発した寄与の最良の推定値はこの期間の観測された温暖化に類似している<similar to>。 {10.3} (訳注:{Figure 10.5})

・ 世界平均表面温暖化に寄与した温室効果ガスは1951〜2010年で0.5℃〜1.3℃の範囲内である可能性が高くエアロゾルの冷却効果を含む他の人為起源の強制力は−0.6℃〜0.1℃の範囲内である可能性が高い。自然起源の強制力の寄与は−0.1℃〜0.1℃の範囲内である可能性が高く、内部変動の寄与は−0.1℃〜0.1℃の範囲内である可能性が高いこれらの評価された寄与を合わせると、この期間の約0.6℃〜0.7℃の観測された温暖化と矛盾しない<consistent with>。 {10.3}

・ 南極大陸を除く各大陸地域において、人為起源の強制力が20世紀半ば以降の地上気温上昇にかなり寄与した可能性が高い図SPM.6参照)。南極大陸については、大きな観測の不確実性が、利用可能な基地で平均化した観測された温暖化に人為起源の強制力が寄与していることに低い確信度をもたらしている。20世紀半ば以来、北極の非常に大きな<very substantial>温暖化に人為起源の寄与があった可能性が高い。 {2.4, 10.3}

・ 人為起源の影響、特に温室効果ガスおよび成層圏のオゾンの減少が、1961年以降、対流圏の温暖化および対応する下部成層圏の寒冷化という検出可能な観測されたパターンをもたらした可能性が非常に高い。 {2.4, 9.4, 10.3}

・ 人為起源の強制力が、1970年代以降、世界の上部海洋貯熱量(0〜700m)の増加にかなりの寄与をした可能性が非常に高い図SPM.6参照)。 いくつかの個別の海盆(訳注8)において人間の影響の証拠がある。 {3.2, 10.4}

・ 人為起源の影響が1960年以降の世界の水循環に影響を与えた可能性が高い。人為起源の影響が大気中の大気水分含有量<atmospheric moisture content>の観測された増加に寄与し(中程度の確信度)、陸地の降水パターンの世界規模の変化に寄与し(中程度の確信度)、データが十分な陸域の激しい降水の激化に寄与し(中程度の確信度)、水面および水面下の海洋の塩分の変化に寄与した(可能性が非常に高い)。 {2.5, 2.6, 3.3, 7.6, 10.3, 10.4}

・ SREX以降、極端な気温に対する人間の影響の証拠の更なる増強がなされてきた。現在、人間の影響が20世紀半ば以降の日々の極端な気温の頻度と強度の観測された世界規模の変化に寄与した可能性が非常に高く、人間の影響がいくつかの場所における熱波発生の可能性を2倍以上にした可能性が高い表SPM.1参照)。 {10.6}

・ 人為起源の影響が1979以降の北極の海氷の喪失に寄与した可能性が非常に高い。南極の海氷面積の観測された小さな増加の科学的理解は、変化の原因の不完全かつ競い合う科学的説明およびその地域の内部変動の評価の低い確信度により、低い確信度である。(図SPM.6参照) {10.5}

・ 人為起源の影響は、1960年代以降の氷河の退行および1993年以降のグリーンランド氷床の表面質量喪失の増加に寄与した可能性が高い。科学的理解の低いレベルにより、過去20年間の南極氷床の観測された質量の喪失の原因特定は低い確信度である。 {4.3, 10.5}

・ 1970年以降の北半球の春の積雪面積の観測された減少に人為起源の寄与があった可能性が高い。 {10.5}

・ 1970年代以降の世界平均海面水位の上昇にかなりの人為起源の寄与があった可能性が非常に高い。これは、海面水位への2つの最大の寄与、すなわち熱膨張および氷河の質量喪失に対する人為起源の影響における高い確信度に基づいている。 {10.4, 10.5, 13.3}

・ 全太陽放射照度の直接衛星測定に基づき、全太陽放射照度の変化が1986〜2008年の世界平均地上気温の増加に寄与しなかったことに高い信頼度がある。11年サイクルの太陽の変わりやすさが、いくつかの地域の10年間の気候に影響を与えたことについて中程度の確信度がある。宇宙線と雲量の変化に確実な関係は確認されなかった。 {7.4, 10.3, Box 10.2}



E.将来の世界および地域の気候変動


気候システムの変動の予測は、単純な気候モデルから、中程度に複雑なモデルへ、包括的な気候モデル<comprehensive climate models>へ、および地球システムモデル<Earth System Models>と並べられた気候モデルの階層を使用してなされる。これらのモデルシミュレーションは人為起源強制力のシナリオに基づいて変わる。新しいシナリオ、代表的濃度経路(RCP)は、世界気候研究プログラム<World Climate Research Programme>の第5期結合モデル相互比較計画<Coupled Model Intercomparison Project Phase 5 >(CMIP5)の枠組みに基づいてなされる新しい気候モデルシミュレーションにおいて使用された。全てのRCPにおいて、2100年における大気中CO濃度は、21世紀中の大気へのCOの累積排出の更なる増加の結果として、現在と比較して高い(ボックスSPM.1参照)。この政策決定者向け要約における予測は、他の方法が述べられない限り、1986〜2005年と比較して与えられる21世紀末(2081〜2100年)のものである。そのような予測を過去の状況<historical context>の中で位置づけるために、異なった期間の観測された変化を検討する必要がある。利用可能な最も長い世界地上気温データセットに基づくと、1850〜1900年の期間と第5次報告書の参照期間<the AR5 reference period>の間の観測された変化は0.61[0.55〜0.67]℃である。しかしながら、温暖化は第5次報告書の参照期間の平均を越えて起こった。よって、これは現在への過去の温暖化の推定値ではない(第2章参照)。
温室効果ガスの継続する排出は気候システムの全ての構成要素において更なる温暖化および変動の原因になるだろう。気候変動を限定するために、かなりのかつ持続した温室効果ガス排出の削減が必要とされるだろう。 {Chapters 6, 11, 12, 13, 14}
次の数十年の予測は、21世紀末期に予測されたものと類似しているが量的には小さい気候変動の空間的パターンを示している。内部変動は、特に近い将来および地域規模で、気候に対して主要な影響を与え続けるだろう。21世紀半ばまで、予測された変化の大きさは排出シナリオの選択によってかなり影響を受ける(ボックスSPM.1)。 {11.3, Box 11.1, Annex I}

RCPに基づく予測された気候変動は、シナリオの相違を考慮すれば<after accounting for scenario differences>、パターンと大きさの両方で第4次報告書と類似している。高いRCPの予測の全体のバラツキ<The overall spread>は、第4次報告書で使用された類似のシナリオよりも狭い、なぜなら第4次報告書で使用されたSRES排出シナリオとは対照的に、第5次報告書で使用されたRCPは濃度経路<concentration pathways>として定義され、それゆえ大気中CO濃度に影響する炭素循環の不確実性はCMIP5シミュレーションを駆動する<driven CMIP5 simulations>濃度においては考慮されないからである。海面水位の上昇の予測は、主に陸氷の改良されたモデリングのため、第4次報告書よりも大きい。 {11.3, 12.3, 12.4, 13.4, 13.5}

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図SPM.7:CMIP5マルチモデルシミュレーション時系列、(a)1986〜2005年に対する世界年平均地上気温変化(他の参照期間<other reference periods>は表SPM.2参照) (訳注17) (訳注21)、(b)北半球の7月の海氷面積(5年連続平均<5 year running mean>)および(c)世界平均海洋表面pH。予測の時系列および不確実性の限度(陰影)がシナリオRCP2.6(青)およびRCP8.5(赤)について示されている。黒(灰色の陰影)は過去の再現された<historical reconstructed>強制力を使ったモデル化された過去の変化である。2081〜2100年で平均化された平均値および関連する不確実性が色塗りされた縦方向のバーで全てのRCPシナリオについて与えられている。マルチモデル平均を計算するために使用されたCMIP5モデルの数が示されている。海氷面積(b)については、気候の平均状態および北極の海氷の1979〜2012年の傾向を最もぴったりと再現するモデルのサブセットの予測された平均および不確実性(最小−最大の範囲)を示す(モデルの数をかっこ内に示す)。完全性のため、CMIP5マルチモデル平均も点線で示す。破線はほとんど氷のない状態(すなわち、少なくとも5年連続で海氷面積が106kmより少なくなった時)を示す。更なる技術的詳細は技術要約補足資料 {Figures 6.28, 12.5, and 12.28.12.31; Figures TS.15, TS.17, and TS.20}参照。
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図SPM.8:2081〜2100年のRCP2.6およびPCP8.5シナリオのCMIP5マルチモデル平均結果、(a)年平均地上気温変化、(b)年平均降水量の平均%変化、(c)北半球の7月の海氷面積および(d)海洋表面pHの変化。(a)、(b)および(d)の図の変化は1986〜2005年に対して示している。マルチモデル平均を計算するために用いられたCMIP5モデルの数は各図の右上の隅に示している。図(a)(b)については、ハッチングは内部変動に対してマルチモデル平均が小さい地域(すなわち、20年平均の内部変動の1標準偏差よりも少ない)を示している。点はマルチモデル平均が内部変動に対して大きい地域(20年平均の内部変動の2標準偏差より大きい)を示しており、モデルの90%は変化の符合が一致している(ボックス12.1参照)。図(c)において、線は1986〜2005年のモデルの平均;塗りつぶされた領域は世紀末である。白はCMIP5マルチモデル平均、明青色は気候の平均状態および北極の海氷の1979〜2012年の傾向を最もぴったりと再現するモデルのサブセット(モデルの数はかっこ内に示す)による予測された平均海氷面積。更なる技術的詳細は技術要約補足資料参照。 {Figures 6.28, 12.11, 12.22, and 12.29; Figures TS.15, TS.16, TS.17, and TS.20}
表SPM.2


2046−2065 2081−2100
    変    数
シナリオ
平均値 可能性が高い範囲(c)
平均値 可能性が高い範囲(c)
世界平均地上気温(℃)(a)
RCP2.6
RCP4.5
RCP6.0
RCP8.5
 1.0    0.4〜1.6
 1.4    0.9〜2.0
 1.3    0.8〜1.8
 2.0    1.4〜2.6
 1.0    0.3〜1.7
 1.8    1.1〜2.6
 2.2    1.4〜3.1
 3.7    2.6〜4.8


平均値 可能性が高い範囲(d)
平均値 可能性が高い範囲(d)
世界平均海面水位上昇(m)(b)
RCP2.6
RCP4.5
RCP6.0
RCP8.5
 0.24   0.17〜0.32
 0.26   0.19〜0.33
 0.25   0.18〜0.32
 0.30   0.22〜0.38
 0.40   0.26〜0.55
 0.47   0.32〜0.63
 0.48   0.33〜0.63
 0.63   0.45〜0.82
表SPM.2:参照期間1986〜2005年に対する21世紀半ばおよび末期の世界平均地上気温の予測された変化(訳注21)および世界平均海面水位上昇。 {12.4; Table 12.2, Table 13.5}

注:
(a)CMIP5全体に基づく;1986〜2005年に関して計算された偏差。HadCRUT4およびその不確実性の推定(5−95%信頼区間)を使用、参照期間1986〜2005年に対する観測された温暖化は1850〜1900年で0.61[0.55〜0.67]℃、第4次報告書の参照期間1980〜1999年で0.11[0.09〜0.13]℃である<the observed warming to the reference period 1986-2005 is 0.61 [0.55 to 0.67] °C for 1850-1900, and 0.11 [0.09 to 0.13] °C for 1980-1999, the AR4 reference period for projections.>。より早期の参照期間に関しては可能性が高い範囲はここでは推定されていない。なぜなら、モデルおよび観測の不確実性を組み合わせる方法が文献において一般的に利用可能ではないからである。予測された変化および観測された変化を加えることは、観測に対するモデルの癖の潜在的可能性、および観測の参照期間の間の内部変動を説明しない<Adding projected and observed changes does not account for potential effects of model biases compared to observations, and for internal variability during the observational reference period>。 {2.4; 11.2; Tables 12.2 and 12.3}
(b)21のCMIP5モデルに基づく;1986〜2005年に関して計算された偏差。CMIP5の結果が特定のAOGCMおよびシナリオに利用可能ではない場合は、第13章の表13.5で説明されたように推定された。氷床の急速でダイナミックな変化および人為起源の陸の水の貯蔵からの寄与は、均一な確率分布を持つように、かつ概ねシナリオに独立であるように扱われた。この扱いは、関係する寄与が、従っているシナリオに依存しないことは意味しない、知識の現在の状態がその依存性の定量的評価を許さないだけである。現在の理解に基づくと、南極の氷床の海を基部とする部分<marine-based sectors of the Antarctic Ice Sheet>の急激な崩壊だけが、もしそれが引き起こされたとしたら、21世紀中の可能性が高い範囲を超えて世界平均海面水位をかなり上昇させる原因になりうるだろう。この追加的な寄与は21世紀中に海面水位上昇の数十センチメートルを超ないであろうことに中程度の確信度がある。
(c)5−95%モデル範囲<5-95% model ranges>として予測から計算された。これらの範囲はモデルにおける追加的な不確実性または異なった確信度のレベルを考慮した後に可能性が高い範囲として評価された。2046〜2065年の世界平均地上温度変化の予測については確信度は中程度である。なぜなら、内部変動の相対的重要性、ならびに非温室効果ガスの強制力および応答が、2081〜2100年よりも大きいからである。2046〜2065年の可能性が高い範囲は、5−95%モデル範囲より低い近い将来(2016〜2035年)の世界平均地上気温の評価範囲に導く要素の可能な影響力を考慮に入れていない。なぜなら、より長期間予測におけるこれらの要素の影響は、十分な科学的理解による定量化がなされていないからである。 {11.3}
(d)5−95%モデル範囲として予測から計算された。これらの範囲はモデルにおける追加的な不確実性または異なった確信度のレベルを考慮した後に可能性が高い範囲として評価された。世界平均海面水位上昇の予測については、確信度は両方の対象期間で中程度である。



E.1 大気:気温
21世紀末の世界地上気温の変化は、RCP2.6以外の全てのRCPシナリオで、1850〜1900年と比較して1.5℃を超える可能性が高い。RCP6.0およびRCP8.5℃では2℃を超える可能性が高く、RCP4.5ではどちらかと言えば2℃を超える可能性がある(訳注20)。温暖化は、RCP2.6以外の全てのRCPで、2100年を超えて続くだろう。温暖化は複数年〜10年の変わりやすさを示し続け地域的に一様ではないだろう(図SPM.7図SPM.8参照)。 {11.3, 12.3, 12.4, 14.8}
・ 1986〜2005年に対する2016〜2035年の世界平均地上気温の変化は0.3〜0.7℃の範囲内である可能性が高いだろう(中程度の確信度)。この評価は多数の証拠に基づいたものであり、かつ大きな火山爆発または全太陽放射照度の長期的な変化がないことを仮定している。自然の内部変動に関連して、季節平均および年平均の気温の近い将来の増加が、中緯度よりも熱帯および亜熱帯において大きいと予期されている(高い確信度)。 {11.3}

・ 1986〜2005年に対する2081〜2100年の世界平均地上気温の上昇は、濃度駆動CMIP5モデルシミュレーションから得られた範囲、すなわち0.3℃〜1.7℃(RCP2.6)、1.1℃〜2.6℃(RCP4.5)、1.4℃〜3.1℃(RCP6.0)、2.6℃〜4.8℃(RCP8.5)の範囲内である可能性が高いと予測されている。北極地域は世界平均より急速に温暖化し、陸の平均の温暖化は海洋より大きいだろう(非常に高い確信度)(図SPM.7図SPM.8表SPM.2参照)。 {12.4, 14.8}

・ 21世紀末までの世界地上気温の変化は、RCP4.5、RCP6.0およびRCP8.5では、1850〜1900年の平均に対して1.5℃を超える可能性が高いと予測されている(高い確信度)。温暖化はRCP6.0およびRCP8.5では2℃を超える可能性が高く高い確信度)、RCP4.5ではどちらかと言えば2℃を超える可能性があるが(高い確信度)、RCP2.6では2℃を超える可能性は低い中程度の確信度)。温暖化はRCP2.6、RCP4.5およびRCP6.0では4℃を超える可能性は低く高い確信度)、RCP8.5では4℃を超えるかどうかはどちらも同程度である(中程度の確信度)。 {12.4}

・ 世界平均気温の上昇につれて、ほとんどの陸域で、日および季節の時間スケールで、極端に暑い気温の頻度が多くなり極端に寒い気温の頻度が少なくなるだろうことはほぼ確実である。熱波がより頻度が高くなりより期間が長くなるだろう可能性が非常に高い。たまに起こる極端に寒い冬が起こり続けるだろう(表SPM.1参照)。 {12.4}



E.2 大気:水循環
21世紀にわたる温暖化の応答としての世界の水循環の変化は一様ではないだろう。地域的な例外はあるかもしれないが、湿潤地域と乾燥地域のコントラストおよび湿潤な季節と乾燥した季節のコントラストが増加するだろう(図SPM.8参照)。 {12.4, 14.3}
・ 次の数十年の水循環の予測された変化は世紀末に向かう大規模パターンと同様であるが、程度は小さい。近い将来の変化および地域規模の変化は、自然の内部変動によって強く影響を受けるだろうし、人為起源のエアロゾルの排出によって影響されるかもしれない。 {11.3}

・ 高緯度および赤道付近の太平洋はRCP8.5シナリオに基づくと今世紀末までに年間平均降水量の増加を経験する可能性が高い。RCP8.5シナリオに基づくと、多くの中緯度および亜熱帯の乾燥地域においては平均降水量は減少する可能性が高く、多くの中緯度の湿潤地域においては平均降水量は今世紀末までに増加する可能性が高いだろう(図SPM.8参照)。 {7.6, 12.4, 14.3}

・ 平均地上気温の上昇につれて、中緯度の陸域の大部分および湿潤な熱帯地域の極端な降水事象が今世紀末までにより激しくより頻度が多くなる可能性が非常に高いだろう。(表SPM.1参照)。 {7.6, 12.4}

・ 世界的に、モンスーン地域が21世紀にわたって増加するだろう可能性が高い。モンスーンによる風は弱まる可能性が高いが、モンスーンによる降水は、大気中の水分の増加により、強まる可能性が高い。モンスーンの開始日は早くなるか大きくは変化しない可能性が高い。多くの地域でモンスーンの季節の長期化により、モンスーンの終了日は遅れる可能性が高いだろう。 {14.2}

・ エルニーニョ南方振動(ENSO)は、21世紀において世界的な影響を与えながら、熱帯太平洋の内部変動の支配的なモードであり続けるだろう可能性が高い。水分の増加により、地域規模のENSO関連の降水の変わりやすさが強まる可能性が高いだろう。ENSOの振幅および空間パターンの自然の変わりやすさは大きく、それゆえ21世のENSOおよび関連する地域現象の特定の予測された変化の確信度は低い。 {5.4, 14.4}



E.3 大気:大気の質

・ 大気の質(地上近くの空気のオゾンおよびPM2.5(注17))の予測の範囲は、物理的な気候変動によるよりも、主に排出(CHを含む)によって決まる(中程度の確信度)。世界的に、温暖化がバックグラウンドの地上のオゾンを減少させていることに高い確信度がある。CHの変化の少ないシナリオ(RCP4.5、RCP6.0)と比較して、高いCHレベル(RCP8.5)はこの減少を相殺し、2100年までにバックグラウンドの地上のオゾンを、平均で約8ppb(現在のレベルの25%)上昇させ得る(高い確信度)。 {11.3}

・ 他が全て同じ場合、汚染された地域における局所的に高い地上気温は、オゾンとPM2.5のピークレベルを高める化学および局所的排出の地域的フィードバックの引き金を引くだろうことを観測およびモデルの証拠が示している(中程度の確信度)。PM2.5について、気候変動は、降水による除去だけでなく、自然のエアロゾル源を変えるかもしれないが、PM2.5の分布に対する気候変動の全体の影響についてはいかなる確信度のレベルもつけられない。 {11.3}


(注17)PM2.5は直径2.5μm(大気中エアロゾル濃度の単位)以下の微粒子物質を指す。


E.4 海洋
世界の海洋は21世紀を通して温暖化し続けるだろう。熱は表面から深層の海洋に浸透し、海洋循環に影響を及ぼすだろう。 {11.3, 12.4}
・ 海洋の最も強い温暖化は熱帯および北半球の亜熱帯地域の表面であると予測されている。より深い場所については、温暖化は南極海で最も顕著だろう(高い確信度)。今世紀末までの上部100mの海洋の温暖化の最も良い予測は約0.6℃(RCP2.6)〜2.0℃(RCP8.5)であり、約1000mの深さでは約0.3℃(RCP2.6)〜0.6℃(RCP8.5)である。 {12.4, 14.3}

・ 大西洋深層循環(AMOC)が21世紀にわたって弱まるだろう可能性が非常に高い。CMIP5からの縮小の最もよい推定および範囲(注18)はRCP2.6で11%(1〜24%)、RCP8.5で34%(12〜54%)である。2050年まではAMOCにいくらかの衰えがあるだろうが、大きな内部変動によりAMOCが増大するいくつかの10年があるかもしれない可能性が高い。 {11.3, 12.4}

・ 検討されたシナリオでは、21世紀にAMOCが突然に遷移または崩壊する可能性は非常に低い。21世紀を超えたAMOCの変化の評価は、限られた数の分析およびあいまいな結果のため、低い確信度である。しかしながら、21世紀の先の崩壊は、大きな持続する温暖化のため排除することはできない。 {12.5}


(注18)この段落では、範囲はCMIP5モデルのバラツキを示す。


E.5 雪氷圏
世界平均地上気温の上昇につれて、21世紀中、北極の海氷は面積が縮み厚さは薄くなり続け、北半球の春の積雪面積は減少するだろう可能性が非常に高い。世界の氷河の量は更に減少するだろう。 {12.4, 13.4}
・ 北極の海氷面積の一年中の減少は21世紀末までマルチモデル平均により予測されている。これらの減少の範囲は9月で43%(RCP2.6)〜94%(RCP8.5)、2月で8%(RCP2.6)〜34%(RCP8.5)である(中程度の確信度)(図SPM.7図SPM.8参照)。 {12.4}

・ 気候の平均状態および北極の海氷の1979〜2012年の傾向を最もぴったりと再現するモデルのサブセットの評価に基づくと、今世紀半ば前のほとんど氷のない9月の北極海(注19)はRCP8.5では可能性が高い中程度の確信度)(図SPM.7図SPM.8参照)。他のシナリオでは、21世紀において北極海で9月にほとんど氷がなくなる時期の確信度のある予測は行われていない。 {11.3, 12.4, 12.5}

・ 南極圏では、世界平均地上温度の上昇につれて、21世紀末の海氷面積および堆積の減少が低い確信度で予測されている。 {12.4}

・ 21世紀末までに、世界の氷河の量は、南極大陸周辺の氷河は除き、15〜55%(RCP2.6)、35〜85%(RCP8.5)減少すると予測されている(中程度の確信度)。 {13.4, 13.5}

・ 北半球の春の積雪面積はモデル平均で21世紀末までに7%(RCP2.6)および25%(RCP8.5)まで減少すると予測されている。 {12.4}

・高北緯度の地表近くの永久凍土の面積は、世界平均地上気温の上昇につれて、減少するだろうことはほぼ確実である。21世紀末までに、地表近くの(上部3.5m)永久凍土の面積はモデル平均で37%(RCP2.6)〜81%(RCP8.5)減少すると予測されている。 {12.4}


(注19)ほとんど氷がないとして言及される北極海の状態は、少なくとも5年連続で海氷面積が106kmより少なくなった時である。


E.6 海面水位
世界平均海面水位は21世紀を通して上昇し続けるだろう(図SPM.9参照)。全てのRCPにおいて、海面水位上昇率は、増大する海洋の温暖化および増大する氷河と氷床の質量喪失のために、1971〜2010年に観測されたものを超える可能性が非常に高いだろう。 {13.3-13.5}
世界平均海面水位上昇の予測の確信度は第4次報告書より増大している。海面水位の構成要素の物理的理解が改善し、プロセスベースのモデルと観測の一致が改善し、氷床の動的な変化を含めたからである。 {13.3-13.5}

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図SPM.9
:CMIP5全体とプロセスベースのモデルの組み合わせによるRCP2.6およびRCP8.5についての1986〜2005年に対する21世紀の世界平均海面水位上昇の予測。評価された可能性が高い範囲を陰影の幅で示す。全てのRCPシナリオについて2081〜2100年の平均の評価された可能性が高い範囲を色がついた縦方向のバーで示し、対応する中央値を水平線で示す。更なる技術的詳細は技術要約補足資料 {Table 13.5, Figures13.10 and 13.11; Figures TS.21 and TS.22}


1986〜2005年に対する2081〜2100年の世界平均海面水位上昇は0.26〜0.55m(RCP2.6)、0.32〜0.63m(RCP4.5)、0.33〜 0.63m(RCP6.0)、0.45〜0.82m(RCP8.5)の範囲内である可能性が高いだろう(中程度の確信度)。RCP8.5については、2100年までの世界平均海面水位上昇は0.52〜0.98mであり、2081〜2100年の上昇率は8〜16mm yr−1である(中程度の確信度)。これらの範囲はCMIP5気候予測、プロセスベースのモデルおよび氷河および氷床の寄与についての文献の評価から得られたものである。(図SPM.9表SPM.2参照)。 {13.5}

RCP予測において、熱膨張が21世紀の世界平均海面水位上昇の原因の30〜55%であり、氷河が15〜35%である。グリーンランドの氷床の表面溶解の増加は降雪による増加を上回り、表面質量のバランスの変化から将来の海面水位へ正の寄与がもたされるだろう(高い確信度)。南極の氷床については、表面溶解は少ないままで、積雪の増加が予期されており(中程度の確信度)、結果として表面質量バランスの変化から将来の海面水位へ負の寄与がもたらされる。両方の氷床の組み合わせからの流出の変化が2081〜2100年までに0.03〜0.20mの範囲内の寄与をする可能性が高いだろう(中程度の確信度)。 {13.3.13.5}

現在の理解に基づくと、南極の氷床の海を基部とする部分<marine-based sectors of the Antarctic ice sheet>の急激な崩壊だけが、もしそれが引き起こされたとしたら、21世紀中の可能性の高い範囲を超えて世界平均海面水位をかなり上昇させる原因になりうるだろう。しかしながら、この追加的な海面水位上昇への寄与は21世紀中には数十センチメートルを超ないであろうことに中程度の確信度がある。 {13.4, 13.5}

21世紀の世界平均海面水位上昇のより高い予測の根拠が検討されてきたが、評価された可能性が高い範囲を超える特定の水位の確率を評価する現時点の十分な証拠はないと結論された。多くの半経験的なモデルの世界平均海面水位上昇の予測はプロセスベースのモデルの予測よりも高いが(約2倍まで大きい)、それらの信頼性について科学コミュニティーのいかなるコンセンサス<no consensus>もなく、それゆえそれらの予測は低い確信度である。 {13.5}

海面水位上昇は一様ではないだろう。21世紀末までに、海面レベルは海洋面積の約95%以上において上昇するだろう。世界中の海岸線の約70%が、世界平均海面水位変化の20%以内<within 20%>の海面水位変化を経験することが予測されている。 {13.1, 13.6}



E.7 炭素および他の生物地球化学循環
気候変動は炭素循環プロセスに影響を与え、大気中のCOの増加を悪化させるだろう(高い確信度)。海洋による炭素の更なる取り込みは海洋の酸性化を増大させるだろう。{6.4}
・ 4つ全てのRCPについて、人為起源のCOの海洋の取り込みは、より高い濃度経路のためより高い取り込みが2100年まで続く(非常に高い確信度)。陸の炭素取り込みの将来の変化はより少ない確かさである。大部分のモデルは全てのRCPで陸の炭素取り込みが続くと予測しているが、いくつかのモデルは気候変動および土地利用の変化の複合効果により陸の炭素喪失をシミュレートしている。 {6.4}

・ 地球システムモデル<Earth System Models>によると、気候と炭素循環のフィードバックが21世紀において正である;すなわち、大気中のCOの上昇による陸および海の炭素吸収源の増加を気候変動が部分的に相殺するだろうことに高い確信度がある。結果として、排出された人間起源のCOのより多くが大気中に残るだろう。世紀から千年の時間スケールで気候と炭素循環の正のフィードバックは古気候の観測およびモデルによって支持されている。 {6.2, 6.4}

・ 地球システムモデルは全てのRCPシナリオで海洋の酸性化の世界的な増加を予測している。対応する21世紀末までの海洋表面pH(注13)の減少は0.06〜0.07(RCP2.6)、0.14〜0.15(RCP4.5)、0.20〜0.21(RCP6.0)および0.30〜0.32(RCP8.5)の範囲内である(図SPM.7図SPM.8参照)。 {6.4}

RCPの大気中CO濃度と一致する2012〜2100年の累積CO排出量(注20)は、15の地球システムモデルによると、140〜410GtC(RCP2.6)、595〜1005GtC(RCP4.5)、840〜1250GtC(RCP6.0)、および1415〜1910GtC(RCP8.5)である(表SPM.3)。 {6.4}

表SPM.3
 シナリオ
 累積CO排出量 2012−2100(GtC(注12)
 平均値
 範囲
 RCP2.6
 270
 140〜410
 RCP4.5
 780
 595〜1005
 RCP6.0
 1060
 840〜1250
 RCP8.5
 1685
 1415〜1910
表SPM.3:地球システムモデルでシミュレートされたRCPの大気中CO濃度と一致する2012〜2100年の累積CO排出量。 {6.4, Table 6.12}

2050年まで、RCP2.6に従う地球システムモデルから得られた年間CO排出量は1990年の排出量より(14%〜96%だけ)少ない(Figure TS.19参照)。21世紀末まで、約半分のモデルがゼロのわずかに上の排出量を予測し、他の半分は大気から正味のCOの除去を予測している。 {6.4}

21世紀にわたって炭素を貯蔵する永久凍土の溶解から大気に放出されるCOおよびCHはRCP8.5で50〜250GtCと評価されている(低い確信度) {6.4}


(注20)化石燃料、セメント、鉱床、および廃棄物セクターから。


E.8 気候の安定化、気候変動の不可避性(訳注24)と不可逆性
主としてCOの累積排出量が21世紀末までおよびそれを超えて世界平均地上温暖化を決める(図SPM.10参照)。気候変動のほとんどの特徴は、CO排出が停止されたとしても、多くの世紀にわたって持続するだろう。これは、過去、現在および将来のCO排出による、かなりの程度の複数世紀にわたる気候変動の不可避性<climate change commitment>(訳注24)を表している。 {12.5}

ar5_f_spm10.jpg
図SPM.10:複数の証拠からの累積全世界CO排出量の関数としての世界平均地上気温上昇。2100年まで各RCPの気候−炭素循環モデルの階層からのマルチモデルの結果が色線および10年平均(点)で示されている。いくつかの10年平均には明確化のために年を示す(例えば、2050年は2041〜2050年の10年間を示す)。過去(1880〜2010年)のモデルの結果は黒で示す。色のついた羽根飾りのような領域<coloured plume>は4つのRCPシナリオでのマルチモデルのバラツキを示し、RCP8.5で利用可能なモデルの数の減少にしたがって色があせている。1%/年のCO増加(1%/年COシミュレーション)によって強制されたCMIP5モデルによってシミュレートされたマルチモデルの平均値および範囲は、薄い黒線および灰色領域で与えられる。累積CO排出量の特定の量のために、1%/年シミュレーションは、非CO駆動要因を含むRCPによって駆動されたものより低い温暖化を示す。全ての値は1861〜1880年の基準期間に対して与えられている。10年平均は直線で接続されている。 {Figure 12.45; TFE.8, Figure 1}

・ COの累積全排出量と世界平均地上気温応答は、ほぼリニアな関係(比例関係)である(図SPM.10参照)。ある与えられた温暖化のレベルは累積CO排出量(注21)の範囲と関連しており、したがって、例えば、より早い10年のより高い排出は、より遅い10年のより少ない排出量を含意している。 {12.5}

人為起源のCO排出量だけによって温暖化を1861〜1880年(注22)以降2℃より低い>33%、>50%、および>66%の可能性に限定するためには、全ての人為起源の排出源からの累積CO排出量を、その期間以降それぞれ、0〜約1570GtC、0〜約1210GtC、および0〜約1000GtCにとどまらせる必要があるだろ。これらの上限は、RCP2.6のように非CO強制力を計算に入れる時は、それぞれ約900GtC、820GtC、および790GtCに引き下げられる(注23)。515[445〜585]GtCの量は2011年までに既に排出されている。 {12.5}

より低い温暖化の目標、あるいは特定の温暖化の目標より低くとどまらせるより高い可能性は、より低いCO排出量を要求するだろう。非CO温室効果ガスの増加、エアロゾルの減少、または永久凍土からの温室効果ガスの放出の温暖化効果を計算に入れると、特定の温暖化の目標のために、累積CO排出量は更に引き下げられるだろう(図SPM.10参照)。 {12.5}

・ CO排出に起因する人為起源の気候変動の大部分は、持続的な期間にわたる大気中からCOの大きな正味の除去の場合を除き、数世紀から千年の時間スケールで不可逆的である。地上気温は、正味の人為的CO排出の完全な中止後数世紀の間、高いレベルのほぼ一定値にとどまるだろう。海洋表面から深い所への熱移動の長い時間スケールのため、海洋の温暖化は数世紀の間続くだろう。シナリオにより、排出されたCOの約15〜40%が1000年以上長く大気中にとどまるだろう。 {Box 6.1, 12.4,12.5}

・ 世界平均海面水位上昇は、何世紀も続く熱膨張による海面上昇により、2100年を超えて続くだろうことはほぼ確実である。2100年を超えて実行される少数の利用可能なモデルの結果は、シナリオRCP2.6のようにピークをつけた後減少し500ppm以下になるCO濃度に対応する放射強制力により、2300年までに工業化前のレベルに対して1mより少ない世界平均海面水位上昇を示している。シナリオ8.5のように700ppm以上で1500ppm以下のCO濃度に対応する放射強制力の場合は、予測された海面水位上昇は1m〜3m以上である(中程度の確信度)。 {13.5}

・ 氷床による持続的な質量喪失は大きな海面上昇の原因となり、質量喪失のある部分は不可逆的であり得るかもしれない。あるしきい値を超える気温上昇が持続すると、千年あるいはさらに長期間をかけたグリーンランド氷床のほぼ完全な損失を招いて、7 mに達する世界平均海面上昇をもたらすだろうということの確信度は高い。現在の評価は、その閾値が約1℃よりも大きいが(低い確信度)約4℃よりも小さい(中程度の確信度)工業化前からの世界平均温暖化であることを示している。気候強制力に応答する南極氷床の海を基部とする部分の潜在的不安定性から突然かつ不可逆的な氷の喪失があり得るが、現在の証拠および理解は定量的評価を行うには不十分である。 {5.8, 13.4, 13.5}

気候変動に対抗するために気候システムを計画的に改造することを目的とする地球工学<geoengineering>と名付けられた方法が提案されてきた。証拠が限定されているため、太陽放射管理<Solar Radiation Management>(SRM)および二酸化炭素除去<Carbon Dioxide Removal>(CDR)の両方および気候システムに対するそれらの影響の包括的な定量的評価は不可能である。CDR法は世界規模の可能性に関して生物地球科学的および技術的制限を有している。1世紀の時間スケールでCDRによってどれだけのCO排出量が部分的に相殺され得るかを定量化する知識が十分ではない。SRM法は、もし実現可能なら、世界気温上昇を十分に相殺する可能性を有しているが、世界水循環も改造するであろうし、海洋酸性化を減少することはできないであろうことをモデルは示している。もしSRMが何らかの理由で終了すると、世界地上気温は温室効果ガスの強制力と一致する値に非常に急速に上昇するであろう。CDRおよびSRM法は地球規模での副作用および長期間の結果をもたらす。 {6.5, 7.7}


(注21)CO排出量のこの範囲の定量化には非CO駆動要素を考慮に入れることが必要とされる。
(注22)最初の20年間がモデルから利用可能である。
(注23)これはthe Transient Climate Response to Cumulative Carbon Emissions(TCRE)の評価に基づいている(セクションD.2参照)



ボックスSPM.1:代表的濃度経路(RCP)

第1作業部会の気候変動予測には、温室効果ガス、エアロゾルおよびその他の気候駆動因子の将来の排出濃度についての情報が必要である。この情報はしばしばこの報告書では評価されない人間活動のシナリオとして表現される。IPCC第1作業部会のシナリオは人為起源の排出に焦点を合わせ、太陽または火山強制力または自然の放出(例えばCHおよびNO)のような自然の駆動要素の変化は含まない。

IPCC第5次報告書のために、科学コミュニティが代表的濃度経路と名付けられた4つの新しいシナリオのセットを定義した(RCPs, see Glossary)。それらは1750年に対して2100年におけるほぼ全ての放射強制力によって特定される:RCP2.6は2.6W m−2、RCP4.5は4.5W m−2、RCP6.0は6.0W m−2およびRCP8.5は8.5W m−2。第5期結合モデル相互比較計画(CMIP5)の結果にとっては、これらの値は表示だけとして理解されるべきである。全ての駆動要素からの結果である気候強制力は特定のモデルの特徴および短期滞在気候強制因子の扱いによりモデル間で変わるからである。これらの4つのRCPは、非常に低い強制力のレベルを導く1つの緩和シナリオ(RCP2.6)、2つの安定シナリオ(RCP4.5およびRCP6)、および非常に高い温室効果ガス排出を有する1つのシナリオ(RCP8.5)を有している。それゆえ、RCPは、第3次報告書および第4次報告書で使用された排出シナリオに関する特別報告書<Special Report on Emissions Scenarios>(SRES)の気候政策なし<no-climate-policy>と比較して、21世紀の気候政策の範囲<a range of 21st century climate policies>を表すことができる。RCP6.0およびRCP8.5では放射強制力は2100年までピークにならない;RCP2.6ではピークとなり減少する;およびRCP4.5では2100年までに安定させる。各RCPは、土地利用変化およびセクターベースの空気汚染物質の排出量の空間的に区分されたデータセットを提供し、また2100までの年間の温室効果ガス濃度および人為起源の排出を特定している。RCPは、統合評価モデル、単純な気候モデル、大気科学および地球炭素循環モデルの組み合わせに基づいている。RCPは全強制力の値の幅広い範囲に及んでいるが、特にエアロゾルの文献中<in the literature>の排出量の全範囲をカバーしてはいない。

CMIP5および地球システムモデル(ESM)シミュレーションの大部分は、2100年までに421ppm(RCP2.6)、538ppm(RCP4.5)、670ppm(RCP6.0)、および936ppm(RCP8.5)に達するCO濃度で実行された。CHおよびNOの濃度も含む、一体化したCO等価物濃度は475ppm(RCP2.6)、630ppm(RCP4.5)、800ppm(RCP6.0)、および1313ppm(RCP8.5)である。RCP8.5では、追加的なCMIP5 ESMシミュレーションが統合評価モデルによって提供されたCO排出量で実行された。全てのRCPで、追加的な計算が、アップデートされた大気化学データおよび(CMIP5の大気化学および気候構成要素を含む)モデルで、RCPで規定された化学反応性ガス(CH、NO、HFCs、NOx、CO、NMVOC)の排出量を使って、行われた。これらのシミュレーションが炭素循環フィードバックおよび大気の化学に関連した不確実性研究を可能にした。


《以上が「IPCC 第5次報告書 第1作業部会 政策決定者向け要約」の全文の翻訳です。以下は訳注です。(訳注10)



訳注
(訳注1)原文はIPCCのサイトで公開されています。IPCC(気候変動に関する政府間パネル)から、この翻訳文を公開することについて許諾を受けてはいませんが、誰にでも無料で広告なしにインターネット上で公開された英文の著作物を日本語に翻訳して、誰にでも無料で広告なしにインターネット上で公開することは著作権法上問題ないものと考えます。例えば、アメリカの著作権法のようにフェアユースの規定がある場合は、フェアユースに該当すると考えます。日本ではフェアユースは検討はされているようですが、まだ日本の著作権法にフェアユースの規定はありません。しかし、この翻訳文のインターネット上の公開はIPCCのいかなる財産権もいささかも損なっておらず、著作人格権にも十分に配慮しているので、日本の著作権法においても問題ないと考えます。
 翻訳はできる限り正確に行っているつもりですが、翻訳文に誤訳およびその他の誤りがあったとしても翻訳者(井上雅夫)はいかなる責任も負いません。この翻訳文は自己責任でご利用ください。
 私(井上雅夫)は温暖化懐疑派ですが、翻訳は私見をまじえず客観的に行っていますので、温暖化脅威派の方も安心してご利用ください。ただし、(訳注10)以降では私見を述べることがありますので、温暖化脅威派の方はご注意ください。
 なお、私はツイッター上では「井上雅夫(IPCC報告書研究家)」を名乗っています。私の経歴等はこちらをご覧ください。
 ご意見や誤訳のご指摘は井上雅夫(el_conditions_i )までお願いいたします。

「IPCC 第5次報告書 第1作業部会」は、この政策決定者向け要約<Summary for Policymakers>と、技術要約<Technical Summary>と、報告書本体、とからなります。技術要約と報告書本体はIPCCのサイトで英語版を入手できます。報告書本体の各章のタイトルは次のとおりです。


第1章:序<Introduction>
第2章:観測:大気および陸上<Observations: Atmosphere and Surface>
第3章:観測:海洋<Observations: Ocean>
第4章:観測:雪氷圏<Observations: Cryosphere>
第5章:古気候の記録からの情報<Information from Paleoclimate Archives>
第6章:炭素および他の炭素および他の生物地球化学循環<Carbon and Other Biogeochemical Cycles>
第7章:雲およびエアロゾル<Clouds and Aerosolst>
第8章:人為起源および自然起源放射強制力<Anthropogenic and Natural Radiative Forcing>
第9章:気候モデルの評価<Evaluation of Climate Models>
第10章:気候変動の検出および原因特定:世界から地域へ<Detection and Attribution of Climate Change: from Global to Regional>
第11章:短期の気候変動:予測および予報<Near-term Climate Change: Projections and Predictability>
第12章:長期の気候変動:予測、気候の安定化、不可避性および不可逆性<Long-term Climate Change: Projections, Commitments and Irreversibility>
第13章:海面水位の変動<Sea Level Change>
第14章:気候事象およびその将来の地域の気候変動との関連<Climate Phenomena and their Relevance for Future Regional Climate Change>
添付資料I:世界および地域の気候予測の地図<Atlas of Global and Regional Climate Projections>
添付資料II:気候システムシナリオ・テーブル<Climate System Scenario Tables>
添付資料III:用語集<Glossary>
添付資料IV:略語集<Acronyms>
添付資料V:IPCC第5次報告書第1作業部会報告書への貢献者<Contributors to the IPCC WGI Fifth Assessment Report>
添付資料VI:IPCC第5次報告書第1作業部会報告書の専門家査読者<Expert Reviewers of the IPCC WGI Fifth Assessment Report>

 また、この政策決定者向け要約の文章の末尾に記載されている  {  }  は技術要約や報告書本体の参照箇所を示しています。例えば、{Figures 2.19; Figure TS.2} は「第2章の図2.19; 技術要約の図TS.2参照」という意味で、{2.4} は「第2章のセクション2.4参照」という意味です。この政策決定者向け要約を索引代わりにして報告書原本にアクセスすると便利です。

(訳注2)< >内に原文を示します。日本語と英語の対応関係を示したい場合や翻訳に自信がない場合に< >内に原文を示します。

(訳注3)これらの用語の訳語は、気象庁等のサイトに掲載されている文部科学省・経済産業省・気象庁・環境省連名の報道発表資料に合わせました。これらの訳語は文部科学省・経済産業省・気象庁・環境省によるIPCC第4次報告書の翻訳でも使われた訳語です。

(訳注4)原文の「Warming of the climate system is unequivocal」を私は「気候システムの温暖化は明白である」と訳しました。第4次報告書には同じ「unequivocal」が使われており、文部科学省・経済産業省・気象庁・環境省による第4次報告書の翻訳では「疑う余地がない」と訳されていました。「疑う余地がない」は100%の可能性を意味し、強すぎる表現だと思います。また、「疑う余地がない」を英訳すると「There is no room for doubt」であり、このような表現は原文では使用されていません((注2)参照)。「unequivocal」の訳として、英和辞典に記載されている「明白である」を採用しました。

(訳注5)「セクター<sector>」とは、南極点を頂点とする扇形。

(訳注6) 図SPM.4(b)の縦軸のpCOは海洋表面に解けたCOの分圧で、海水と平衡するガス相の二酸化炭素分圧。単位の「μatm」は100万分の1気圧。詳しくは、気象庁のサイトの「1.4 海洋の温室効果ガス」の「(3)海洋の二酸化炭素の観測方法と二酸化炭素濃度の単位」参照。

(訳注7)in situ pH」は、サンプルを採集するのではなく、その場で測定したpH。

(訳注8)第4次報告書の気象庁訳に合わせて、「ocean basins」を、例えば北太平洋全体のように、陸地で囲まれたひとまとまりの海域という意味で「海盆」と訳しました。


(訳注9) 気象庁等のサイトに掲載されている文部科学省・経済産業省・気象庁・環境省連名の報道発表資料によれば、気象庁は原文の「global mean combined land and ocean surface temperature」を「世界平均地上気温」と訳すようですので、それに合わせました。この資料には「世界平均地上気温」の注として「陸域の気温と海面水温を併せて解析した気温。海面水温の変化は、広域的・長期的には海面の直上の気温の変化と同じであるとみなせることが確かめられている。」と記載されています。昔は、海の気温は船舶の上で空気の温度を測っていたはずですが、現在の衛星やブイによる観測では水温の方が測定しやすいので、水温を測ってそれを海の気温とするようになったのではないかと推測します。海面水温と気温が同じであるということは、海面直下の海水から海面直上の空気に「伝導」で熱が伝わっているということになります。

(訳注10)2013年10月2日にその時点で翻訳済み部分の公表を始め、ほぼ毎日更新し、今日(10月17日)全文の翻訳を公表することができました。私の翻訳はリンクが張ってあることと原文を< >内に示しているので利用価値があるのではないかと思います。
 今後、これ以降の訳注で、この政策決定者向け要約の問題点を指摘していきます。是非、今後以下に記載します問題点の指摘をお読みいただき、地球温暖化とは何かをお考えいただければ幸いです。


(訳注11) 階段グラフで演出された温暖化
 y11_f1.jpg
図Y11.1図SPM.1(a)に、傾向を示す赤い矢印を加えたものです。上図(年平均)では20世紀末にかけて急激に気温が上昇した後、気温は横ばいとなり、赤い矢印は横を向きます。温暖化が停止したような印象を受けます。実際、この要約のセクションD.1には「1998〜2012年の地上温暖化傾向に観測された縮小<The observed reduction in surface warming trend over the period 1998-2012>」と記載されていて、IPCC自身が最近10〜15年の温暖化の縮小を認めています。したがって、気温のグラフとしては上図(年平均)だけでよかったはずです。ところが、IPCCはその直ぐ下にわざわざ下図(10年平均)を示しています。

下図(10年平均)の階段グラフを見ると、赤い直線の矢印のように、気温急上昇中の印象を受けます。上図(年平均)の最近の横ばい傾向はよく見なければわかりません。一方、下図(10年平均)の階段グラフは、一見して、1975年頃から最近(2012年)まで一貫して急上昇中の印象を受けます。

年平均気温のグラフは科学的に意味があります。なぜなら、1年で季節が巡り、気温も1年周期で変わるからです。一方、10年平均気温は科学的に意味がありません。10年周期で気温が変わる理由がないからです。この階段グラフは、政策決定者(政治家、官僚)に、温暖化の縮小に気づかせず、気温急上昇中と思い込ませるための演出であるとしか考えられません。特に、政治家は細かいところまで読みませんから、この階段グラフとセクションDのオレンジ色で強調した部分の「温暖化は明白(気象庁訳では「疑う余地がない」)」の記載から急激な温暖化が進行中と思い込み、多額の研究費と多くの人員を温暖化の科学者に割り振るよう官僚に指示することになるはずです。

この要約には日本から原稿執筆者として国立環境研究所の江守正多さんが参加しておられます。しかし、この階段グラフをつくったのは江守さんではありません。なぜなら、日本語には10年を表す単語がないので、日本人には10年で区切るこの階段グラフは発想できないからです。一方、英語には「decade」という10年を意味する単語があり、この要約にはこの単語が多数使われています。したがって、この階段グラフによる温暖化の演出を考え出したのは、英語あるいは10年を1語で表す他の言語を使う科学者ということになります。
 y11_f2.jpg
ところで、図SPM.1(a)の上の部分には「1850−2012」と記載されています。上図(年平均)はその記載のとおり1850〜2012年のグラフです。しかし、下図(10年平均)は、例えば最後の3つのステップは1980年代(1980〜1989年)、1990年代(1990〜1999年)、2000年代(2000〜2009年)を表しているので、1850〜2009年のグラフということになります。したがって、図SPM.1(a)に「1850−2012」と記載したのは虚偽記載ということになります。

そこで、図Y11.2では、「1850−2012」の記載に合うように、下図(10年平均)に「2010年代早期(2010〜2012年)」のステップ(赤色)を付け加えて見ました。2010年代早期のステップの上下方向の幅(不確実性の幅)は2000年代と同じとしました。このように2010年代早期のステップを付け加えれば2000年代のステップとほぼ同じ高さとなり、温暖化の縮小がバレてしまいます。それでは、せっかくの階段グラフによる温暖化の演出が台無しになるので、IPCCは「2010年代早期(2010〜2012年)」のステップは書かないことにしたのだと推測します。

第3次報告書ではホッケースティックの図が有名になりましたが、第5次報告書ではこの階段グラフが有名になりそうです。クライメートゲート事件を経験しても、温暖化の縮小を経験しても、IPCCとそれに結集する科学者達のやり方は変わることはなかったということです。 (13.10.18)


(この訳注に関連する「(訳注18) 気温下降中を上昇中に見せかけるIPCCの執念」もお読みいただければと思います。)


(訳注12) 気温上昇の半分未満は人為起源ではない

今回の政策決定者向け要約が発表された9月27日の毎日新聞は、第5次報告書は『人間の活動が温暖化の主要な原因である可能性を「極めて高い」(95%以上)とし、2007年の第4次報告書の「90%以上」より表現を強めた』と報道しました。第5次についての記載は、セクションD.3のオレンジ色の強調部分の「人間の影響が観測された温暖化の支配的な原因<the dominant cause>であった可能性が極めて高い」に基づいていると考えられます。「極めて高い」は毎日新聞の記事のとおり95%以上を意味します。

原文の「dominant」を辞書で引くと、「支配的な」、「最も有力な」、「主要な」等の訳語があります。「the dominant party 第一党」という例が記載されていますので、第二党以下もあり、過半数でなくてもよいことになります。IPCCは温暖化の原因を人為起源と自然起源と内部変動に分けているので、セクションD.3の上記の「人間の影響が観測された温暖化の支配的な原因<the dominant cause>であった可能性が極めて高い」は、温暖化の原因は、人為起源、自然起源、内部変動のうちで、人為起源の原因が最も有力であった可能性が95〜100%であるという意味と考えられます。(2015.01.31これまで「dominant cause」の訳語として「最も有力な原因」を使用してきましたが、今後は、気象庁訳に合わせて「支配的な原因」を使用させていただきます。)

毎日新聞の上記記事の後半の『2007年の第4次報告書の「90%以上」より表現を強めた』は、実は正しくありません。なぜなら、第4次報告書が「90%以上」(可能性が非常に高い)としたのは、後記するように「気温の上昇」についてだからです。これに対して、上記記事の前半の第5次報告書に関する『人間の活動が温暖化の主要な原因である可能性を「極めて高い」(95%以上)とし』は、「温暖化」についてであり、この温暖化には気温の上昇だけでなく、海洋の熱蓄積等も含まれていると考えられます。したがって、異なったものを同列で比較してしまったのですから誤報ということになります。この政策決定者向け要約の言葉巧みな記載に引っかかって間違ったことを報道したことになります。以下、この政策決定者向け要約における「気温の上昇」に関する記載について検討します。


セクションD.3の第1段落には、「1951〜2010年の世界平均地上気温の観測された上昇の半分以上<more than half of the observed increase>が温室効果ガス濃度の人為起源の増加と他の人為起源強制力が合わさって生じた可能性が極めて高い」と記載されています。これに対応する文章は技術要約やこの部分に対応する報告書第10章「気候変動の検出および原因特定」にも記載されています。例えば、報告書第10章3頁には、「1951〜2010年の世界平均地上気温の観測された上昇の半分以上<more than half of the observed increase>が人間の活動<human activities>が原因である可能性が極めて高い」と記載されています。これは、観測された気温上昇の半分以上が人為起源である可能性が95〜100%であるという意味です。したがって、観測された気温上昇の残りの半分未満(気温上昇の50%未満)は人為起源ではない可能性があることをIPCCが認めたことになります。

一方、第4次報告書では「20世紀半ば以降に観測された世界平均気温の上昇のほとんどは、人為起源の温室効果ガスの観測された増加によってもたらされた可能性が非常に高い」と記載されていました。これは、観測された気温上昇のほぼ100%が人為起源である可能性が90〜100%であるということです。第4次では、観測された気温上昇のうち人為起源ではない可能性がある部分は(100%−ほとんど)、つまり、ほとんどないということです。そうすると、第4次では観測された気温上昇のうち人為起源ではない可能性のある部分は、ほとんどなかったのに、第5次では、半分未満(気温上昇の50%未満)については人為起源ではない可能性があるということになったのです。上記の毎日新聞やその他のマスコミの報道とは逆に、第5次報告書は観測された気温上昇のうちの半分未満(気温上昇の50%未満)は人為起源ではない可能性があることを認めたのです。

セクションD.1には、「1998〜2012年の地上温暖化傾向に観測された縮小<The observed reduction in surface warming trend over the period 1998-2012>は、ほぼ同じ割合で、放射強制力の減少傾向および海洋内で起こりうる熱の再分配を含む内部変動<internal variability>からの冷却の寄与に帰因する」と記載されています。また、セクションD.1には、「強制力の不備<forcing inadequacies>および、いくつかのモデルでは、増加している温室効果ガスおよび他の人為起源の強制力(主にエアロゾルの効果)への応答の過大評価からの寄与もあるかもしれない」とも記載されています。結局、IPCCは、最近10〜15年に観測された気温上昇の縮小を気候モデルで再現できないため、観測された気温上昇のうちの半分未満(気温上昇の50%未満)は気候モデルの不備や内部変動によると言わざるを得なくなったものと考えられます。


セクションD.3に戻ります。先ほどの「半分以上」の文章の直ぐ後の第1段落の後半には「温暖化に対する人間が誘発した寄与の最良の推定値はこの期間の観測された温暖化に類似している<similar to>」と記載されています。この文章からは温暖化の人為起源の可能性がほぼ100%のような印象を受け、上記の「半分以上」とは異なっているようにもみえます。

セクションD.3の第2段落によると、温室効果ガスの寄与は0.5℃〜1.3℃、エアロゾル等の冷却効果の寄与は−0.6℃〜0.1℃ですので、上限下限を加算して人為起源の寄与は−0.1℃〜1.4℃ということになります。自然起源の寄与は−0.1℃〜0.1℃、内部変動の寄与は−0.1℃〜0.1℃です。そして、この段落の最後には「これらの評価された寄与を合わせると、この期間の約0.6℃〜0.7℃の観測された温暖化と矛盾しない<consistent with>」と記載されています。

人為起源と自然起源と内部変動の寄与を全部合わせると、−0.3℃〜1.6℃で、これは上記の第2段落の最後の記載どおり、観測値0.6℃〜0.7℃と矛盾しません。自然起源と内部変動はどちらも0℃前後なので影響なしと考えこれらを無視して、人為起源の寄与−0.1℃〜1.4℃だけにしても、観測値0.6℃〜0.7℃と矛盾しません。ただし、人為起源の寄与の幅が広すぎるので、無関係ともいえる数値でもあります。

つまり気候モデルによる推定の数値範囲が余りにも広いので、この広い数値範囲の中に正解(観測値)があったとしても、その気候モデルの評価が正しいといえるのか? という疑問です。工業化前に対して2℃以下でなければ地球は大変なことになると国際的に合意されているのに、人為起源の寄与の上限と下限の差1.5℃の範囲内に正解(観測値)があったとしても、そんな気候モデルの推定や予測を信頼して地球を救うことができるのでしょうか?

人為起源の寄与−0.1℃〜1.4℃の上限と下限の平均値は0.65℃で、これは観測値の0.6℃〜0.7℃の範囲内であり、この平均値は最良の推定値と類似していると考えられますので、これが、第1段落の後半の「温暖化に対する人間が誘発した寄与の最良の推定値<The best estimate>はこの期間の観測された温暖化に類似している<similar to>」の意味ではないかと推測しています。

以上、政策決定者向け要約の極めてわかりにくい文章を何とかつじつまが合うように解釈してみました。恐らく気候モデルを扱っている科学者達は、観測された気温上昇の半分未満(気温上昇の50%未満)は人為起源ではない可能性があり、それは気候モデルの不備や内部変動による可能性があると言いたかったのではないかと推測します。しかし、それでは第4次から後退しますので、IPCCとしては、人為起源の可能性が高まったかのような文章を混ぜ合わせて、マスコミが第5次では第4次より人為起源の可能性が高まったと報道するように仕向けたのではないかと推測します。

来年の10月に統合報告書とその政策決定者向け要約が公表されますが、その時は、恐らく、「半分以上」を含む文章は削除され、人為起源の可能性が高まったかのような文章だけが残るのではないかと推測しています。 (13.10.21)


(訳注13) 科学者による「人為起源」の気温変動
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図Y13は第4次報告書の気温の図に第5次報告書の気温の図(図SPM.1(a)上図)を重ねた図です。見やすいように第5次は赤色に変更しています。小さな白丸が第4次の各年の気温、赤色折れ線グラフの頂点が第5次の各年の気温です。第4次は1850〜2006年、第5次は1850〜2012年なので、第5次では2007〜2012年の気温データが追加されています。

しかし、1850〜2006年の気温データは過去の気温データなのですから、第4次でも第5次でも同じはずですよね。でも、よく見ると、第4次の気温(白丸)と第5次の気温(赤色折れ線グラフの頂点)は必ずしも一致していません。本来変動するはずのない過去の気温データが変動しているのです!

実は、過去の気温データは、科学者が頻繁に推定方法を変えるので、頻繁に変わっているのです。第1次、第3次、第4次報告書を重ねた気温の図を見れば過去の気温データが頻繁に変わっていることがわかります。過去から現在に至る気温変動には、科学者による気温データの推定方法の変更という「人為起源」の気温変動が含まれているのです。

前回の第4次報告書では、第4次の過去100年当たりの気温上昇0.74℃が、第3次の過去100年当たりの気温上昇0.6℃よりも大きいことを根拠の一つとして、「温暖化には疑う余地がない」と結論していました。しかし、これも科学者による「人為起源」の気温上昇や1910年の一時的な低温によるものでした(温暖化ツイッター小説第12集[IPCCの非科学性]参照)。第5次報告書でも、第3次、第4次と同様に100年当たりの気温上昇を記載すると、最近10〜15年の気温の横ばいにより、第4次より気温上昇が小さくなってしまうはずです。そんなデータはIPCCとしては絶対に出せません。

図Y13で、1880〜1910年頃の気温データに注目すると、第4次の気温(白丸)より第5次の気温(赤色折れ線グラフの頂点)の方が低くなっています。100年以上も前の気温データを現在の科学者が下方修正したのです。権力者による歴史の書き換えに似てるかもしれません。第5次報告書では、この下方修正した1880〜1910年頃の気温データを含めるために、過去100年間ではなく、過去133年間にして、1880〜2012年で0.85℃の温暖化と記載したのだろうと推測します。古い時代の気温データを下方修正すれば気温上昇が大きくなるというトリックを使ったわけです。

また、図Y13で、1878年に当時としては高温のデータがあり、これを下方修正できていないので、それを含めないために開始年は1879年以降でなければならないのです。古い時代に高温のデータがあると気温上昇が小さくなってしまうからです。もちろん、IPCCとしては本音は書けませんので、「多数の独立して作成されたデータセットが存在する1880〜2012年で」と記載したのだろうと推測しています。

IPCCは以上のようにして、何が何でも第4次よりも大きな気温上昇を第5次報告書に記載したのだろうと推測しますが、残念ながら、第5次の133年当たり0.85℃の上昇は、100年当たりに換算すると0.64℃の上昇なので、第4次の100年当たり0.74℃の上昇より小さいのです。 (13.10.23)



(訳注14) クイズ:最近の気温の横ばいを隠蔽したトリックは?
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図Y14.1は、図SPM.6の下中央の図(世界平均地上気温)を拡大した図です。黒の線が気温の観測値、グレーの陰影は自然起源強制力のみを使ったモデルでシミュレートされた気温、ピンクの陰影は自然起源および人為起源強制力の両方を使ったモデルでシミュレートされた気温です。グレーとピンクの陰影の幅は5〜95%の信頼区間を示しています。

なんと、気温の観測値(黒の線)は1975年頃から現在まで直線的に急上昇中で、セクションD.1にも記載された「1998〜2012年の地上温暖化傾向に観測された縮小」は完全に隠蔽されています。しかも、自然起源および人為起源強制力の両方を使ったモデルでシミュレートされた気温(ピンクの陰影)と良く一致しています。IPCCがどんなトリックを使ったかわかりますか?

私は図SPM.6を見てビックリしました。何しろ、よく知られた最近10〜15年の気温の横ばいがなく、気温は急上昇中で、しかも、シミュレーションと一致しているからです。最初は昔のデータを使ってごまかしたのかと思いました。しかし、注意深く読んだら、トリックのタネは図の説明に記載されていました「全ての時系列は10年平均であり、10年間の中央にプロットされている」と。

図Y14.1の観測値(黒の線)は10年平均をプロットした線なのですから、1975年頃から最近に至る気温急上昇を示す直線は、(訳注11)の図Y11.1の下図に私が書いた赤色の直線の矢印と同じ直線なのです。しかも、10年間の中央にプロットしているので、観測値を示す黒の直線の右端は2000年代(2000〜2009年)の中央の2005年なのです。ピンクとグレーの陰影で示されたシミュレーションの右端も2005年です。最近10〜15年の気温の横ばいを完璧に隠蔽し、1975年頃から現在に至るまで気温急上昇中と見せかけ、観測値とシミュレーションの結果が一致しているように見せかける一石三鳥のトリックなのです。IPCCに結集する科学者達は科学者をやめて、マジシャンになれば大成功するかもしれませんね。
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図Y14.2は、図SPM.6の下中央の図(世界平均地上気温)に、図SPM.1(a)上図(世界平均地上気温)を重ねた図です。図SPM.1(a)上図は見やすいように青色に変更しています。

図Y14.2を見れば、IPCCのトリックの絶妙さに驚嘆していただけると思います。上記のように黒の線とピンクとグレーの陰影は2005年までですが、ちょうどその頃から気温の観測値(青色の折れ線グラフ)は上昇傾向から外れて横ばいになっています。しかも、ピンクの陰影のシミュレーション結果を外挿すると2012年頃にピンクの陰影の幅(5〜95%の信頼区間)の下限から観測値(青色の折れ線グラフ)が外れるのではないかと推測できます。

しかし、実際に政策決定者向け要約に記載された図Y14.1を見ただけでは、このような絶妙なトリックが仕掛けてられているとは誰も気がつきません。世界中の政策決定者(政治家、官僚)を観客としたマジックショーは大成功ですね。政治家や官僚に、この絶妙なトリックが見破れるはずありませんから。

もしかすると、IPCCは「世界中の政策決定者(政治家、官僚)向けのマジックショーではない。図が小さいから10年平均値しか描くことができなかったのだ。」と言い逃れるかもしれません。しかし、以下の図Y14.3の下中央の世界平均地上気温の図のように、最近10〜15年の気温の横ばいがわかるように図を描くことはできるのです、もしIPCCがほんのわずかでも誠実さを持っているとすれば。

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図Y14.3には、世界平均地上気温だけでなく、大陸全体や各大陸の気温の図(黄色い図)も示されています。南極大陸を除き、大陸全体および各大陸の気温は1975年頃から現在に至るまで急上昇しているように見えますが、これもこれまで説明してきた下中央の世界平均地上気温の図と同じトリックが使われているからです。 (13.10.25)

(この訳注に関連する『(訳注19)IPCCが隠蔽した「エアロゾル等強制力のみ」の気温変化を復元』もお読みいただければと思います。)


(訳注15) 宇宙旅行2100 「灼熱地獄の地球を救え!」 (フィクションです)

西暦2100年、宇宙船コズミック号は太陽系から10万光年の宇宙を航行中。
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船長、たいへんです!  何事だ。  モニタ(図Y15.1図SPM.8(a)右図)をご覧ください。   な、なんだこれは、地球が火の海ではないか。

地球からは、IPCC帝国総統による「愚かな地球人どもが、二酸化炭素を増やし続けたため、IPCC帝国の掟(注1)により、地球は灼熱地獄と化したのだ、ワッハッハッハ」というビデオメッセージが全宇宙に向けて発信されております。

で、では、人類は…。  恐らく、人類だけでなく、地球上の全ての動物も、植物も、…。

何とか、灼熱地獄の地球を救ってくれ、ミスター・グリーン!  わかりました、やってみます。

カタカタカタ、カタカタカタ、カタカタカタ。  IPCC帝国のコンピュータシステムに侵入成功。  でかした!

カタカタカタ。  う〜む。  カタカタカタ。  なるほど、気候感度が3.2℃に設定(注2)されていたのか。  気候感度って何だ?  後ほどご説明いたします。

カタカタカタ。  気候感度を1.0℃に強制設定してリターン。

ミスター・グリーン、大変だ、地球が消えていく…。  ご安心ください、しばらくお待ちを…。

  ……
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船長、モニタ(図Y15.2)をご覧ください。  お、青い地球に戻っているではないか。

船長、ミスター・グリーン、地球との回線が復活しました、どうやら、地球では何事もなかったようです。

ミスター・グリーン、これはどうしたことだ。  先ほどまで我々がモニタ上で見させられていた灼熱地獄の地球は、IPCC帝国のコンピュータシステム上の気候モデルシミュレーション映像だったのです。  そうだったのか。

IPCC帝国の気候モデルでは、気候感度の設定可能範囲は1.5℃〜4.5℃で、1.0℃以下の設定は禁止されていました。  で、どうした?

気候感度が3.2℃に設定(注2)されていたので灼熱地獄になっていたのですが、私が設定禁止の1.0℃に強制設定した結果、IPCC帝国のコンピュータシステムが暴走し、ダウンしたのです。

それで、IPCC帝国の地球乗っ取りが解消され、モニタ(図Y15.2)に本物の地球が表示されるようになったのか。  その通りでございます。

で、気候感度って何だ?  それについては私がご説明するよりも、「 (訳注16) 気候感度の最良の推定値が合意できなかった理由を完全解明」と「(訳注17) 測器による気候感度2.4℃で21世紀末の気温を予測してみた」をお読みいただいた方がよさそうです。

おわり。

(というわけで、フィクションはこの(訳注15)だけで、他の(訳注)はフィクションではありません。)

(注1)気候変動枠組条約前文第3段落参照。
(注2)「気候感度が3.2℃に設定」と記載した根拠は、報告書第12章の「ボックス12.2: 平衡気候感度および過渡的気候応答<
Box 12.2: Equilibrium Climate Sensitivity and Transient Climate Response>」の「第5期結合モデル相互比較計画モデル平均3.2℃<the CMIP5 model mean at 3.2°C>」の記載。 (13.10.29; 14.02.02)


(訳注16) 気候感度の最良の推定値が合意できなかった理由を完全解明

気候感度は二酸化炭素の濃度が2倍になったら気温が何℃上昇するかという値です。セクションD.2には「平衡気候感度は…大気中CO濃度が2倍になった場合の平衡状態における世界平均地上気温の変化として定義される」と記載されています。この「平衡気候感度」は、一般には単に「気候感度」といわれていますので、ここでも気候感度を使います。気候感度が高ければ、二酸化炭素濃度の少しの上昇でも大きな気温上昇が予測され、気候感度が低ければ、二酸化炭素濃度の大きな上昇でもそれほど気温は上昇しないことになります。したがって、気候感度は温暖化の分野において極めて重要な指標です。

前回の第4次報告書には、「平衡気候感度は、2〜4.5℃の範囲(最良の推定値は約3℃)である可能性が高い。この上昇量が1.5℃未満である可能性は非常に低い。」と記載されていました。今回の第5次報告書ではセクションD.2に、「平衡気候感度は、1.5℃〜4.5℃の範囲内である可能性が高く(高い確信度)、1℃より小さいことは極めてあり得ず(高い確信度)、」と記載されています。

両者を比較すると、可能性の高い範囲の上限は4.5℃で変わりませんが、下限は第4次の2℃から第5次の1.5℃に0.5℃下がりました。また、第4次の「1.5℃未満である可能性は非常に低い」は、第5次では「1℃未満である可能性は極めてあり得ない」に変わりました。第5次では可能性が高い範囲の下限が1.5℃に下がったのですから、第4次の「1.5℃未満である可能性は非常に低い」を撤回したのは当然のことです。

最も重要な変化は、第4次では「最良の推定値は約3℃」と記載されていたのに、今回の第5次では、(注16)に「証拠と研究の評価分野を越えた値の合意ができていないので、現在、平衡気候感度の最良の推定値を示すことができない」と記載されていることです。前回は、最良の推定値が約3℃で合意されていましたので、二酸化炭素濃度が2倍になれば、3℃ぐらい気温が上がりそうだと推測することができました。実際、前回の第4次報告書の統合報告書の政策決定者向け要約には、気候感度3℃を用いた図と表が掲載されていました。

しかし、今回の第5次報告書では、最良の推定値は合意されなかったので、二酸化炭素濃度が2倍になったとき、1.5℃〜4.5℃ぐらい気温が上がりそうだという推測しかできません。1.5℃と4.5℃では気温上昇が3倍も違います。「気温上昇を工業化前から2度以下にする」という国際合意がありますが、もし気候感度が4.5℃なら、この国際合意より遙かに大きな気温上昇ですから、二酸化炭素濃度の増加を徹底的に抑える必要があるかもしれません。しかし、もし気候感度が1.5℃なら、二酸化炭素濃度が2倍になったとしても、1880〜2012年の0.85℃を加えて工業化前から2.35℃の気温上昇でしかなく、無理して二酸化炭素濃度の増加を抑えなくても、なんとかなりそうな気がします。

したがって、第5次報告書で気候感度の最良の推定値が合意できなかったということは、IPCCとしては大失敗です。以下、気候感度の最良の推定値が合意できなかった理由を、報告書本体の図を使って、完全解明します。
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図Y16は、報告書第10章「気候変動の検出および原因特定:世界〜地域」の図10.20bと第12章「長期的気候変動:予測、不可避性および不可逆性」のボックス12.2図1を組み合わせた図です。図の右側に、前者の図には赤色矢印、後者の図には緑色矢印をつけています。図の一番下に「平衡気候感度(℃)」と記載されていますように、横軸は気候感度です。左端は気候感度0℃で、この場合は二酸化炭素濃度が2倍になっても気温は変わりません。右端は気候感度10℃で、この場合は二酸化炭素濃度が2倍になると気温が10℃上昇することになります。

グレーの陰影の左端は1.5℃、右端は4.5℃で、この第5次報告書で気候感度がこの範囲に入る可能性が高いとした範囲を示しています。左側のグレーの実線は1.0℃で、気候感度がこれより小さいことは極めてあり得ないとした境界を示しています。右側のグレーの破線は6.0℃で、気候感度がこれより大きい可能性は非常に低いとした境界を示しています。

図Y16の一番上の図に「測器<Instrumental>」と記載されています。この図に記載された多数の曲線は何らかの計測器で測定したデータに基づいて推定された気候感度の確率分布関数<probability density functions:PDF>です。気候感度が0℃〜10℃のどこにある確率(可能性)が高いのかを示すグラフです。色は右に記載されている著者の論文からのデータであることを示します。同じ色の実線や破線や一点鎖線は同じ著者による別のデータです。

図Y16の2番目の図も「測器」と記載されています。この図では、丸の位置が推定された気候感度の中央値<median values>で、水平方向のバーは5〜95%範囲を示しています。1番目の図と2番目の図は同じデータを異なった表現方法で示したものです。色と線種(実線、点線、一点鎖線)が一致していれば同じデータです。

例えば、図Y16の1番目の図で最も高いピークを持つオレンジ色の確率分布関数は、2番目の図の上から5番目のオレンジ色の短いバーと1.6℃の中央値(オレンジ色の丸)に対応します。この著者の測器による推定方法では、気候感度は1.6℃の近くにあることがかなりはっきりしています。一方、2番目の図の一番下の紫色の長いバーと5.0℃の中央値(紫色の丸)は、1番目の図の紫色の広くて低い確率分布関数に対応しています。中央値は5.0℃と高いのですが、1番目の図の紫色の広くて低い確率分布関数を見れば、この著者による推定方法は、極めて広い範囲のどこかに気候感度があるだろうという非常に曖昧な推定であることがわかります。

しかし、「測器」のどのデータが信頼できるのかわかりませんので、それぞれの中央値(丸)の中央値を出してみました。「測器」の中央値(丸)は18個で、その中央値の気候感度は2.4℃です。この2.4℃を図Y16の上部にオレンジ色の矢印で示しています。

図Y16の3番目の図には「気候モデル<Raw model range>」と記載されています。この図の棒グラフが気候モデルによる気候感度の確率分布関数です。色は右に記載されている気候モデル比較計画を示します。例えば、CMIP5は第5期結合モデル相互比較計画です。図Y16の4番目の図は気候モデルによる推定値の5〜95%範囲(バー)と平均値(バーの中央付近の丸)です。茶色のバーと丸が前回の第4次報告書で使用された第3期結合モデル相互比較計画(CMIP3)による気候感度の5〜95%範囲と平均値です。暗青色のバーと丸がこの第5次報告書で使用された第5期結合モデル相互比較計画(CMIP5)による気候感度の5〜95%範囲と平均値です。

第5次報告書の気候モデルの気候感度の平均値(暗青色の丸)は、第4次報告書の気候モデルの気候感度の平均値(茶色の丸)より、ほんのわずか低温側にずれています。第12章の「ボックス12.2:平衡気候感度および過渡的気候応答」には「第5期結合モデル相互比較計画モデル平均3.2℃<the CMIP5 model mean at 3.2°C>」と記載されていますので、第5次報告書で使用された気候モデルの気候感度の平均値は3.2℃です。図Y16の暗青色の丸も3.2℃で一致しています。この3.2℃を図Y16の上部に暗青色の矢印で示しています。

図Y16の5番目と6番目の「古気候<Palaeoclimate>」の図は温度計がなかった頃の気候による気候感度の推定です。木の年輪や南極の氷床などにより、過去の気温や二酸化炭素濃度を復元し、それに基づいて気候感度を推定しています。その次の「組み合わせ<Combination>」は複数の方法を組み合わせた気候感度の推定です。曲線や丸やバーの意味は「測器」で説明したのと同じです。「古気候」の中央値(丸)は7個で、その中央値の気候感度は2.7℃です。「組み合わせ」の中央値(丸)は6個で、その中央値の気候感度は2.8℃です。測器の2.4℃も、古気候の2.7℃も、組み合わせの2.8℃も、気候モデルによる気候感度3.2℃より低い値です。

報告書第10章の図10.20b(図16Yの右に赤色矢印をつけた図の元の図)には、「測器」、「古気候」、「組み合わせ」の確信度が記載されています。それを表にしたのが表Y16です。
表Y16:

期間中同様な気候的基礎状態であるかどうか
2倍のCOで同様なフィードバックが働いているかどうか
観測された変化が平衡に近いかどうか
プロットされた証拠の全ての系列の間で不確実性が相対的に完全に説明されているかどうか
証拠全体の系列の科学的理解のレベルを要約しているかどうか
測器
高い確信度
高い確信度
低い確信度
中程度の確信度
高い確信度
古気候
低い確信度
低い確信度
高い確信度
中程度の確信度
中程度の確信度
組み合わせ



中程度の確信度
中程度の確信度
表Y16によると、「古気候」と「組み合わせ」は確信度が低く信頼できそうもありません。「測器」は、「高い確信度」が三つ、「中程度の確信度」が一つ、「低い確信度」が一つですので、かなり信頼できるのではないでしょうか。低い確信度とされた「平衡に近いかどうか」とは、二酸化炭素を2倍すれば気温が上昇しますが、上がりきって一定の気温(平衡状態)になっているかどうかということです。これの確信度が低いということは、まだ気温が上がりきっていない可能性があるということで、低めの気候感度が推定されている可能性はあるかもしれません。

図Y16を見ていただければ、今回の第5次報告書で気候感度の最良の推定値が合意されなかったのは当然だということがお分かりいただけると思います。前回の第4次報告書では、気候モデルの平均値(茶色の丸)は3.3℃でした。したがって、第4次の気候感度の最良の推定値の約3℃は、気候モデルによる推定値とほぼ同じであったわけです。

しかし、今回の第5次報告書では、図Y16の上部に示すように測器の推定値(中央値)は2.4℃で、気候モデルの推定値(平均値)3.2℃と大きな開きがあります。そして、気候モデルの平均値3.2℃より低温側には、測器の明確なピークを持つ確率分布関数のピークの全てがあり、3.2℃より高温側には、ピークがあるかどうかわからないような小数の確率分布関数と低温側に明確なピークを持つ確率分布関数の高温側の低くて長い裾野があるだけです。このような状況では、最良の推定値が合意できないのは当然のことです。また、可能性が高い範囲の下限を第4次の2℃から1.5℃に下げざるを得ず、さらに、第4次の「1.5℃未満である可能性は非常に低い」も撤回せざるを得なかったのです。

これまでは、気候モデル分野の科学者達が、高い気候感度を持った気候モデルを、超高級お絵かきソフトとして使い、灼熱地獄の地球を描くことに没頭しているだけでした。しかし、第5次報告書では、測器を使って地球から科学的真理を引き出そうとする科学者達が、ある程度、影響力を及ぼしていることがわかります。ほんのわずかですが、よい方向に進んでいるのかもしれません。 (13.11.05; 15)


(この訳注に関連する「(訳注17)測器による気候感度2.4℃で21世紀末の気温を予測してみた」もお読みいただければと思います。)


(訳注17) 測器による気候感度2.4℃で21世紀末の気温を予測してみた

(訳注16)で解明しましたように、気候モデルによる気候感度の推定値(平均値)は3.2℃であるのに対して、測器(計測器)による気候感度の推定値(中央値)は2.4℃です。その結果、気候感度の最良の推定値は合意されませんでした。では、例えば、図SPM.7等の将来の気温やその他の予測は、どの気候感度を使った予測なのでしょうか? 図SPM.7等の将来の予測は、第5期結合モデル相互比較計画(CMIP5)で行われたものです。したがって、その計画で使われた気候モデルによる気候感度の推定値3.2℃で、将来の気温やその他の予測が行われたことになります。

しかし、最良の推定値が合意されなかったのに、気候モデルによる気候感度3.2℃だけを使って予測を行うのは妥当であるとはいえません。そこで、筆者が、測器による気候感度2.4℃を使ってパソコン気候モデルシミュレーションを行いました。その結果を、図Y17(B)に示します。
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図Y17(A)は、図SPM.7(a)をコピーしたもので、気候モデルによる気候感度3.2℃を使ったIPCCの予測です。1986〜2005年に対する世界年平均地上気温の変化を示しています。RCP2.6、RCP4.5、RCP6.0、RCP8.5は、今後の温室効果ガス等の濃度変化の4つのシナリオです(ボックスSPM.1参照)。グラフの右端は2100年ですが、その横の縦方向のバーは2081〜2100年の平均値なので、グラフの右端とバーは一致しません。気候モデルはコンピュータソフトですが、そのソフトを1000億円のスパコン上で実行して気候モデルシミュレーションを行います。(A)は世界各国の気候モデルシミュレーションによる予測の平均値(図内の「39」等の数字は平均値を得るために使用された気候モデルの数)ですから、(A)はとてつもない研究費を使って作成された図です。

図Y17(B)は、測器による気候感度2.4℃を使った将来の気温の予測です。この予測は、パソコンを使って(A)の図の縦方向を、(測器による気候感度/気候モデルによる気候感度=2.4℃/3.2℃=0.75)倍に縮小して行ったものです。研究費はゼロです。

図Y17の縦方向のバーを表にしたのが次の表Y17.1で、1986〜2005年に対する2081〜2100年の世界平均地上気温の変化を示しています。(A)は気候モデルによる気候感度3.2℃を使ったIPCCの予測で、表SPM.2の数値と同じです。(B)は測器による気候感度2.4℃を使った予測で、(A)の数値を0.75倍に縮小したものです。

表Y17.1


1986〜2005年に対する2081〜2100年の世界年平均地上気温(℃)の変化
(A)気候モデルによる気候感度3.2℃を使った予測
表SPM.2参照)
(B)測器による気候感度2.4℃を使った予測
シナリオ
    平均値   可能性が高い範囲
    平均値   可能性が高い範囲
RCP2.6
    1.0     0.3〜1.7
    0.8     0.2〜1.3
RCP4.5
    1.8     1.1〜2.6
    1.4     0.8〜2.0
RCP6.0
    2.2     1.4〜3.1
    1.7     1.1〜2.3
RCP8.5
    3.7     2.6〜4.8
    2.8     2.0〜3.6

気候感度の最良の推定値が合意されなかったのですから、IPCCは少なくとも、図Y17表Y17.1のように、(A)気候モデルによる気候感度3.2℃を使った予測と(B)測器による気候感度2.4℃を使った予測の両方を併記すべきだったのではないでしょうか? しかし、IPCCは気候モデルによる気候感度3.2℃だけを使って将来の気温やその他の予測を行い、測器による気候感度2.4℃は無視したのです。

一般に、通常の自然科学の分野では、実験と理論が一致しない場合は、実験が優先されます。理論家は実験に合う理論を考え出すしかないのです。なぜなら、自然科学は自然界をつかさどる自然法則を探求するものですので、人間が頭で考えた理論は実験に合わなければ何の価値もないからです。

気候の分野では反復可能な実験を行うことはできません。実際の地球で二酸化炭素濃度を2倍したり、1/2にしたりして実験を行うことはできないのです。気候の分野では日々の観測が一回限りの実験ということになります。したがって、測器による観測に基づいた気候感度の推定値2.4℃は、通常の自然科学の実験に基づいた推定値に対応します。

一方、気候モデルシミュレーションは通常の自然科学における理論に対応します。なぜなら、気候モデルは人間が頭で考え出したコンピュータソフトだからです。もしかるすと、気候モデル分野の科学者達は、気候モデルシミュレーションこそ、実験ができない気候の分野における実験であると主張するかもしれません。実際、報告書第9章「気候モデルの評価<Evaluation of Climate Models>」のセクション9.3.2のタイトルは「CMIP5のための実験戦略<Experimental Strategy for CMIP5>」ですから、IPCCに結集する気候モデル分野の科学者達はコンピュータシミュレーションを「実験」と錯覚している可能性があります。

気候モデルの詳細は公開されないのでわかりませんが、実際に気候モデルを扱っておられる国立環境研究所の江守正多さんは『地球温暖化の予測は「正しい」か?』の108頁で、「気候モデルの開発にアートの部分、職人芸的な部分があることを、僕は否定しません」と書いておられます。アート感覚や職人芸でチューニングされた気候モデルによるシミュレーションが通常の自然科学の実験に対応するはずはなく、せいぜい、通常の自然科学の理論に対応するものであることは明らかです。

通常の自然科学であれば、実験に対応する測器による気候感度の推定値2.4℃が、理論に対応する気候モデルによる気候感度の推定値3.2℃に優先すると考えられます。しかし、温暖化の分野では、通常の自然科学とは正反対に、実験に対応する測器による気候感度の推定値2.4℃は無視され、アート感覚や職人芸でチューニングされた気候モデルによる気候感度の推定値3.2℃によって将来の気温やその他の予測が行われるのです。IPCCの第1作業部会は「自然科学的根拠」に関する作業部会ですが、この「自然科学的」は、通常の自然科学とは全く異質なものなのです。 (13.11.11)


追記
表Y17.1に(A)気候感度3.2℃のIPCCの予測と(B)気候感度2.4℃の予測を示しましたが、パソコン気候モデルシミュレーションは研究費ゼロですので、他の気候感度についてもシミュレーションを行いました。表Y17.2がその結果です。

表Y17.2


1986〜2005年に対する2081〜2100年の世界年平均地上気温(℃)の変化
(C)気候感度1.0℃
これ未満は極めてあり得ない
(D)気候感度1.5℃
可能性の高い範囲の下限
(E)気候感度4.5℃
可能性の高い範囲の上限
シナリオ
 平均値 可能性が高い範囲 平均値 可能性が高い範囲
平均値 可能性が高い範囲
RCP2.6
 0.3   0.1〜0.5
 0.5   0.1〜0.8
 1.4   0.4〜2.4
RCP4.5
 0.6   0.3〜0.8
 0.8   0.5〜1.2
 2.5   1.5〜3.7
RCP6.0
 0.7   0.4〜1.0
 1.0   0.7〜1.5
 3.1   2.0〜4.4
RCP8.5
 1.2   0.8〜1.5
 1.7   1.2〜2.3 
 5.2   3.7〜6.8

表17.2(C)の気候感度1.0℃は第5次報告書がこれ未満は極めてあり得ないとした気候感度、(D)の気候感度1.5℃は可能性の高い範囲の下限の気候感度、(E)の気候感度4.5℃は可能性の高い範囲の上限の気候感度です。この(C)、(D)、(E)は、それぞれ、図Y16の気候感度の図の左側のグレーの直線、グレーの陰影の左端、グレーの陰影の右端に対応しています。

今回の報告書が発表された時にマスコミが報道した21世紀末の気温上昇は表Y17.1(A)の右下の最も気温上昇が大きい4.8℃(RCP8.5の可能性が高い範囲の上限)でした。このマスコミの選択基準を採用すると、21世紀末の気温上昇は、表Y17.2(C)の気候感度1.0℃では1.5℃で、これなら特に二酸化炭素を減らさなくてもどうにかなりそうです。(D)の気候感度1.5℃では2.3℃で、これなら二酸化炭素を減らした方がよいかもしれません。(E)の気候感度4.5℃では6.8℃で、これは地球の危機! このように気候感度が変われば、状況は大きく変わるのです。ところが、この大事な気候感度の最良の推定値が、今回の第5次報告書では合意することができなかったのです((訳注16)参照)。地球の危機かもしれませんが、何でもないかもしれないのです。

今回の第5次報告書でシナリオを変えてしまったので、前回の第4次報告書と正確な比較はできませんが、第4次報告書が発表された当時マスコミが報道したのは第4次で最も気温上昇が大きかった6.4℃でした。したがって、今回の第5次で報道された4.8℃は前回の第4次の時に報道された6.4℃より1.6℃も下がっているので、地球の危機は多少は遠のいたのかもしれません。 (13.11.15)



(訳注18) 気温下降中を上昇中に見せかけるIPCCの執念

(訳注11)で明らかにしましたように、政策決定者向け要約では、10年平均の階段グラフで温暖化継続中の演出を行っていました。しかし、これまでの報告書では10年平均の階段グラフではなく、10年平均の平滑化曲線が使われてきました。
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そこで、報告書本体には10年平均値滑化曲線があるだろうと探して見つけたのが、図Y18(A)に示す報告書第2章のボックス2.2図1(b)です。オレンジ色の折れ線グラフの頂点が年平均値、黒の実線の曲線は平滑化曲線<Smoothing Spline>、黒の点線の曲線は90%信頼区間です。この図Y18(A)の黒の平滑化曲線を見ると、気温は依然として上昇中という印象を受けます。

図Y18(C)は前回の第4次報告書の政策決定者向け要約に掲載された世界平均気温です。小丸が年平均値、黒の実線の曲線は10年平均平滑化曲線<Smoothed curves represent decadal average values>、青の範囲は不確実性の幅です。第4次報告書本体では、このおどろおどろしい図自体は使われていませんが、これに対応する図やその他の図で10年平均平滑化曲線が多数使われていました。これまでのIPCCの報告書では、平滑化曲線は10年平均平滑化曲線が当たり前だったのです。

図Y18の(A)と(C)の黒の平滑化曲線を比較すると、(C)の10年平均平滑化曲線はかなり凹凸があるのに、(A)の平滑化曲線は凹凸がほとんどなく、極めてなめらかです。したがって、図Y18(A)の第5次報告書の気温の平滑化曲線は、これまで当たり前であった10年平均平滑化曲線ではなく、超強力な平滑化が行われていることがわかります。

そこで、図Y18(A)で使われたHadCRUT4のデータセットをMet Office Hadley Centreのサイトからダウンロードして作成したのが図Y18(B)です。オレンジ色の折れ線グラフの頂点が世界平均地上気温<Global (NH+SH)/2>の年平均値<annual>、黒の実線の曲線は10年平均平滑化曲線<decadally smoothed>、黒の点線の曲線は95%信頼区間<95% confidence interval>です。なお、図Y18の(B)と(C)で、本来同じであるはずの過去の10年平均平滑化曲線が微妙に違っていますが、この点については(訳注13)ご参照ください。

図Y18の(A)と(B)を比較すると、オレンジ色の折れ線グラフ(年平均値)は同じデータなので同じグラフですが、黒の実線の平滑化曲線から受ける印象は全く違います。図Y18(A)の第5次報告書の平滑化曲線では気温は依然として上昇中ですが、(B)の10年平均平滑化曲線では最近は気温が下降中です。IPCCとしては、これまでと同様に10年平均平滑化曲線を掲載したのでは、気温が下降中であることがわかってしまうため、超強力な平滑化を行って気温上昇中に見せかけたわけです。

慣例に従えば、第5次報告書に掲載されるべき気温の図は図Y18(A)ではなく(B)であったはずです。筆者自身、不覚にも、図Y18(A)の平滑化曲線は10年平均平滑化だと思い込んでいました。IPCCが慣例を破るとは思っていなかったからです。しかも、これまでの報告書では図の説明中に10年平均平滑化であることがわかる記載が必ずありました。ところが、今回の第5次報告書では単に「平滑化曲線<Smoothing Spline>」と記載されているだけで、どんな平滑化手法を用いたのかは開示されていません。IPCCは、平滑化手法を隠蔽してしまえば、読者は慣例どおり10年平均平滑化だと錯誤するにちがいないと期待したのかもしれません。IPCCに批判的な筆者ですら、図Y18(A)を見て10年平均平滑化をすると依然として気温上昇中なんだと思い込んでいましたから。

政策決定者向け要約で10年平均階段グラフを使って政策決定者(政治家、官僚)に気温上昇中と錯覚させて、多くの研究費や人員を得ようとする((訳注11)参照)のは、わからないではありません。もし、政治家に気温下降中を気づかれてしまったら、研究費が削減されるだけでなく研究者としての職を失うリスクがあり、さらに温暖化関連の官僚も予算と人員を失い、IPCCも大きな打撃を受けるからです。

しかし、報告書本体を読むのは専門家ぐらいです。IPCCは、これまで使い慣れた10年平均平滑化曲線をやめて新開発の超強力な平滑化曲線をわざわざ使って、専門家に対してまで、気温下降中を上昇中に見せかけています。IPCCの執念は恐るべきものです。 (13.11.17)



(訳注19) IPCCが隠蔽した「エアロゾル等強制力のみ」の気温変化を復元
環境省のパブコメ募集に以下の内容を含む意見を提出しました(「26%削減目標のパブコメ募集に「地球温暖化はエセ科学」と意見提出」参照)(2015.06.24追加)
政策決定者向け要約の図SPM.6には、(訳注14)で明らかにしましたように、最近の気温の横ばいを隠蔽し、気温急上昇中で、観測値とシミュレーションが一致しているように見せかける一石三鳥のトリックが仕組まれていました。しかし、さすがに技術要約にはこのようなトリックが仕組まれていない図がありました。
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図Y19.1に技術要約の図TS.9を示します。横軸は年、縦軸は1880〜1919年に対する気温の偏差です。黒は観測値で、図Y19.1(b)中の図に示す3つのデータセットを合わせたものです。赤の曲線はCMIP5(第5期結合モデル相互比較計画)で、第5次報告書で使われた気候モデルシミュレーション結果の平均値です。薄黄色の細線群はCMIP5の各気候モデルのシミュレーション結果です。青の曲線(赤からズレた部分だけ見える)はCMIP3(第3期結合モデル相互比較計画)で、第4次報告書で使われた気候モデルシミュレーション結果の平均値です。薄青色(グレーに見える)の細線群はCMIP3の各気候モデルのシミュレーション結果です。

図Y19.1(a)の赤(第5次:CMIP5)と青(第4次:CMIP3)のシミュレーション結果は、人為起源強制力と自然起源強制力の両方を使ったものです。「強制力<forcing>」とは、気温を強制的に変化させる力です。シミュレーション結果(赤、青)はどちらも2005年頃までは観測値(黒)と極めて一致しています。しかし、2005年以降は観測値(黒)は横ばいないし下降であるのに対して、シミュレーション結果(赤、青)は気温が高い方に外れています。青(第4次:CMIP3)より赤(第5次:CMIP5)の方が外れ方が少ないのは、内部変動のパラメータを導入したからではないかと推測します。

図Y19.1(b)は自然起源強制力のみを使ったシミュレーション結果です。自然起源強制力は太陽光照度の変化ですが、これは火山噴火により影響を受けます。大きな火山噴火によって噴出物が成層圏に達し太陽光照度が低下するからです。しかし、数年で噴出物が下降するので、気温変化は負のインパルスとなります。観測値(黒)は様々な要因が混ざってわかりにくいですが、よく見ると同じ時期に負のインパルスの気温低下があります。

図Y19.1(c)は温室効果ガス強制力のみを使ったシミュレーション結果です。1960年頃までは、赤(平均値)も薄黄色(バラツキの範囲)も観測値(黒)と整合しているように見えます。しかし、1970〜2005年頃では観測値(黒)より赤(平均値)は0.2〜0.4℃程度高く、観測値(黒)は薄黄色(バラツキ)の下限ギリギリです。2005年頃以降は観測値(黒)は横ばいないし下降なので、赤(平均値)も薄黄色(バラツキ)も非常に大きく外れています。

図Y19.1(a)〜(c)の1970〜2005年頃を見比べると、(b)と(c)を足し合わせると(a)になるような気がします。しかし、(b)は負のインパルスであるのに対して、(c)は0.2〜0.4℃程度の正方向の外れなので、(a)≠(b)+(c)であることがわかります。つまり、図Y19.1(a)〜(c)では完結していないのです。

セクションD.3の第2段落には、「温室効果ガスは1951〜2010年で0.5℃〜1.3℃の範囲内である可能性が高く、エアロゾルの冷却効果を含む他の人為起源の強制力は−0.6℃〜0.1℃の範囲内である可能性が高い」と記載されています(「エアロゾル」は気象庁訳では「エーロゾル」)。つまり、図Y19.1にはこの「エアロゾルの冷却効果を含む他の人為起源の強制力」が抜けていたのです。「他の人為起源強制力」には、エアロゾルの他に「土地利用によるアルベドの変化」が含まれますが、大部分はエアロゾルなので、以下、「エアロゾル等強制力」と記します。

ガスは気体ですが、エアロゾルは微粒子です。中国の大気汚染で話題のPM2.5は2.5μm以下のエアロゾル(微粒子)です。次の図Y19.2で、この「エアロゾル等強制力」を復元します。
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図Y19.2(A)は、図Y19.1の(a)に、(b)の「自然起源強制力のみ」を黄緑色に修正して重ね、更に(c)の「温室効果ガス強制力のみ」をオレンジ色に修正して重ねたものです。図Y19.2(B)は(A)に、復元した「エアロゾル等強制力のみ」を青色で加えたものです。

図Y19.2(B)を見ると、自然起源強制力のみ(黄緑)は0℃前後なので、温室効果ガス強制力のみ(オレンジ)の正方向のズレを、0℃以下で負方向に増大するエアロゾル等強制力のみ(青)で打ち消すことによって、人為および自然起源強制力(赤)を観測値(黒)に一致させていることがわかります。

図Y19.2(B)の「エアロゾル等強制力のみ」(青)の復元方法は次のとおりです。「人為および自然起源強制力(赤)=温室効果ガス強制力(オレンジ)+エアロゾル等強制力(青)+自然起源強制力(黄緑)」なので、「エアロゾル等強制力(青)=人為および自然起源強制力(赤)−温室効果ガス強制力(オレンジ)−自然起源強制力(黄緑)」となります。そこで、図Y19.1(A)の赤、オレンジ、黄緑の位置をパワーポイント上で測定し、目盛りの位置から温度に換算して、上記の式を使って、エアロゾル等強制力(青)を計算したのです。横軸(年)の目盛り(5年毎)の位置で測定したので、5年毎の折れ線グラフになっています。

実は、図Y19.2(B)には、エアロゾル等強制力(青)の折れ線グラフだけでなく、観測値(黒)、人為および自然起源強制力(赤)、温室効果ガス強制力(オレンジ)、自然起源強制力(黄緑)の折れ線グラフも重ねています。オレンジはなだらかなのでオレンジの折れ線グラフが重なっていることがわからないくらいですが、黄緑は負のインパルスの部分で黄緑の折れ線グラフとのズレがわかります。エアロゾル等強制力(青)の折れ線グラフに凹凸がありますが、これは負のインパルス部分での測定誤差によるもので、実際にはオレンジと同様になだらかな曲線であると考えます。

図Y19.2(B)をバラして図Y19.1と同じ形式にしたのが図Y19.3です。図Y19.3の(a)〜(c)は図Y19.1の(a)〜(c)と同じですが、(d)は(a)〜(c)から復元した「エアロゾル等強制力のみ」の気温の変化です。
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IPCCは、完結していない図Y19.1ではなく、完結した図Y19.3を掲載すべきでした。では、なぜIPCCは図Y19.3(d)を隠蔽したのでしょうか?

国立環境研究所理事長の住明正氏は「さらに進む地球温暖化」17〜19頁で、エアロゾルについて次のように述べておられます。
 …1990年前半頃には、人間活動による地球温暖化論は危機に瀕していたように思います。理由は、その当時の大気中の二酸化炭素濃度、さらに、メタンなどの他の温室効果気体の効果を加えると…有意な温度上昇が観測されてしかるべきであったのに、実際の観測データからは有意な温度上昇が見出されていなかったからです。この危機を救ったのが、英国のハドレーセンターのシミュレーション計算結果であったと思います。そこでは、大気中のエアロゾルの直接効果による冷却効果を導入して、現実の観測された温度とシミュレーションの温度変化の矛盾を回避したのでした。…
 今から考えると、この時に用いたエアロゾルの直接効果は非常に大きい値でしたので、温度の観測データに合うようにパラメータを導入したと勘ぐられても仕方がないような印象を拭い去ることができません。「なんとしても、人間活動による地球温暖化の旗を守る」という英国の決意を感じるのは、筆者の勘ぐりでしょうか? …エアロゾルによる冷却効果などは、昔からよく知られており、格別新しい概念ではありません。ただ、「それが重要だ。それを入れれば、それでいける」という判断をしたのはさすがだと思います。
 この第二次報告書は、初めて「人間活動による地球の温暖化」に言及したこともあり、産業界を中心に、経済的利益のために温暖化対策に反対する人々の反撃もすごいものでした。…
実際、図Y19.3(c)の1990年前半頃を見ると、住明正氏のおっしゃる通り、人間活動による地球温暖化論が危機に瀕していたことがよくわかります。しかし、図Y19.3(d)を導入することによって、図Y19.3(a)のように、現実の観測された温度とシミュレーションの温度変化の矛盾を回避し、「人間活動による地球温暖化の旗を守る」ことができたのです。

もし、第2次報告書が公表された当時、図Y19.3住明正氏の証言の両方がセットで、「経済的利益のために温暖化対策に反対する人々」の手に渡っていたら、大変なことになっていたかもしれませんね。なお、筆者は経済的利益のためにIPCC報告書の研究をやっているのではなく、地球温暖化の真実が知りたいためにやっているだけです。

図Y19.3(d)のエアロゾル等強制力を導入せずに、図Y19.3(c)の温室効果ガス強制力を小さくして観測値に合わせても同じことではないか?と思われる方もおられるかもしません。しかし、同じではないのです。図Y19.3(c)の温室効果ガス強制力で気温をできるだけ高く維持しておいて、それを図Y19.3(d)のエアロゾル等強制力で打ち消して、図Y19.3(a)の人為および自然起源強制力(赤)を観測値(黒)に合わせることによって、21世紀末の温暖化を、より大きくすることができるのです。そのからくりを次の『(訳注20) 「21世紀末温暖化加速のカラクリ」および「気候モデルの正体」』で明らかにしますので、是非お読みください。 (13.11.25; 12.12)



(訳注20) 21世紀末温暖化加速のカラクリ」および「気候モデルの正体
環境省のパブコメ募集に以下の内容を含む意見を提出しました(「26%削減目標のパブコメ募集に「地球温暖化はエセ科学」と意見提出」参照)(2015.06.24追加)
(a) 21世紀末温暖化加速のカラクリ
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図Y20(A)は図Y19.2(B)と同じ図ですので詳細は(訳注19)をご参照ください。横軸は年、縦軸は1880〜1919年に対する気温の偏差、黒は観測値です。その他は気候モデルシミュレーションの結果で、オレンジは温室効果ガス強制力による気温変化、黄緑は自然起源強制力による気温変化、青はエアロゾル等強制力による気温変化、赤はそれらを合わせた人為および自然起源強制力による気温変化です。2005年頃までは、人為および自然起源強制力(赤)が観測値(黒)に良く一致しています。

なお、「人為および自然起源強制力(赤)=人為起源強制力+自然起源強制力(黄緑)」で、「人為起源強制力=温室効果ガス強制力(オレンジ)+エアロゾル等強制力(青)」です。

図Y20(A)を見ると、自然起源強制力(黄緑)は0℃前後なので、(人為起源の)温室効果ガス強制力(オレンジ)を(人為起源の)エアロゾル等強制力(青)で打ち消して、人為および自然起源強制力(赤)を観測値(黒)に合わせていることがよくわかります。住明正「さらに進む地球温暖化」によれば、1990年前半頃に人間活動による地球温暖化論が危機に瀕していたのを、エアロゾルを導入して、現実の観測された温度とシミュレーションの温度変化の矛盾を回避したということですが、これは図Y20(A)とピッタリ一致しています。

セクションD.3には「エアロゾルの冷却効果を含む他の人為起源の強制力は−0.6℃〜0.1℃の範囲内である可能性が高い」と記載されています。図Y20(A)の2010年のエアロゾル等強制力(青)の値は−0.47℃ですから可能性の高い範囲内に収まっています。一方、−0.6℃〜0.1℃の可能性の高い範囲内には0℃も含まれているので、「エアロゾル等強制力=0℃」である可能性も高いのです。つまり、エアロゾル(公害物質)は大気全体に一様に分布しているわけではないので、地球規模の地球温暖化には無関係である可能性も高いのです。

もし、「エアロゾル等強制力=0℃」(エアロゾルは地球温暖化に無関係)だとすると、図Y20(A)のエアロゾル等強制力(青)が0.0℃の水平の直線になります。この場合は、温室効果ガス強制力(オレンジ)をほぼ観測値(黒)に近い気温に下げ、人為および自然起源強制力(赤)を観測値(黒)に合わせることになります。

気候モデルはソフトで、これを1000億円のスパコン上で実行してシミュレーションを行います。気候モデルシミュレーションによる将来の温暖化の予測は次のように行います。図Y20(A)のように、過去から現在までのシミュレーションを行い、人為および自然起源強制力(赤)が観測値(黒)に合うように多数のパラメータを、国立環境研究所の江守さんによると、アート感覚や職人芸でチューニングします。そして、チューニングが終わった気候モデルに将来の温室効果ガス強制力やエアロゾル強制力のシナリオ(RCP)を入力して将来のシミュレーションを行い、シミュレーション結果の人為および自然起源強制力(赤)の気温変化が将来の気温変化の予測値となります。

このように、人為および自然起源強制力(赤)で将来の温暖化を予測しますので、図Y20(A)のように、温室効果ガス強制力(オレンジ)をエアロゾル等強制力(青)で打ち消して人為および自然起源強制力(赤)を観測値(黒)に合わせても、エアロゾル等強制力(青)をゼロとして、温室効果ガス強制力(オレンジ)を下げて人為および自然起源強制力(赤)を観測値(黒)に合わせても、どちらでも同じではないかと思えるかもしれません。しかし、同じではないのです。

図Y20(B)は「IPCC第5次報告書 第1作業部会」の第8章の図8.22です。横軸は年ですが、左端は1850年、右端は2100年(21世紀末)です。過去から現在までの分について図Y20(A)と横軸の目盛りの位置を合わせています。縦軸は、十分に混合した温室効果ガス、オゾン、エアロゾルの強制力(有効放射強制力)です。

図Y20(B)の十分に混合した温室効果ガス(一点鎖線)は、ほぼ図Y20(A)の温室効果ガス強制力(オレンジ)に対応します。オゾン(長い破線に□)は十分に混合していない温室効果ガスですが、わずかなので無視します。以下では、「十分に混合した温出効果ガス」を単に「温室効果ガス」と記します。また、図Y20(B)のエアロゾル(短い破線に◇)は、ほぼ図Y20(A)のエアロゾル等強制力(青)に対応します。図Y20(B)の正味(人為起源強制力の総和:実線に○)は、前述のとおり自然起源強制力が0℃前後なので、ほぼ図Y20(A)の人為および自然起源強制力(赤)に対応します。

図Y20(B)の色はRCP(シナリオ)を示しています。温室効果ガス(一点鎖線)は最大のRCP8.5(赤)と最小のRCP2.6(暗青色)だけ、エアロゾル(短い破線に◇)は最大のRCP8.5(赤)だけしか示されていませんが、正味(実線に○)はRCP8.5(赤)、RCP6.0(オレンジ)、RCP4.5(明青色)、RCP2.6(暗青色)の全てが示されています。

図Y20(B)のエアロゾル(短い破線に◇)を見ると、現在(2000〜2010年頃)が負方向に最も大きく、2100年(21世紀末)にはほとんどゼロに戻ります。エアロゾルは公害物質なので、公害対策が進んだ日本ではわずかしか排出しません。一方、公害対策がなされていない中国では大量に排出されます。しかし、中国でも今後は公害対策が進むでしょうから、21世紀末にかけてエアロゾル強制力はゼロに近づくのです。図Y20(B)には最大のRCP8.5(赤)の場合しか示されていませんが、エアロゾル(公害物質)は温室効果ガスに伴って排出されることが多いので、温室効果ガスの排出を削減するRCP6.0〜2.6のシナリオでは、より早くゼロに戻るはずです。

図Y20(A)(B)を見比べると、図Y20(A)に示すように、温室効果ガス強制力(オレンジ)をエアゾル等強制力(青)で打ち消して、人為および自然起源強制力(赤)を観測値(黒)に合わせた理由がご理解いただけると思います。現時点で、温室効果ガス強制力(オレンジ)を高く維持しておいて負のエアゾル等強制力(青)で打ち消して、人為および自然起源強制力(赤)が観測値(黒)に合うように気候モデルのチューニングを行えば、21世紀末にはエアゾル等強制力(青)はほぼゼロになるので、21世紀末の温暖化の予測を、より大きくすることができるのです。つまり、21世紀末の気温を、人為および自然起源強制力(赤)の延長線上ではなく、それより高い温室効果ガス強制力(オレンジ)の延長線上とすることができるのです。これが、「21世紀末温暖化加速のカラクリ」なのです。

このことは、図Y20(B)だけからもわかります。現在(2000〜2010年頃)は、正の温室効果ガス(一点鎖線)を負のエアロゾル(短い破線に◇)が打ち消しているので、正味(実線に○)は温室効果ガス(一点鎖線)よりかなり低い値になっています。ところが、2100年(21世紀末)では、エアロゾル(短い破線に◇)がほぼゼロになるので、最大のRCP8.5(赤)でも最小のRCP2.6(暗青色)でも、正味(実線に○)は温室効果ガス(一点鎖線)とほぼ同じ値になっています。正味(実線に○)のRCP8.5(赤)は温室効果ガス(一点鎖線)より高いですが、その差はオゾン(長い破線に□)の分です。

前述のように、第5次報告書自身が「エアロゾル強制力=0℃」(エアロゾルは地球温暖化に無関係)を可能性の高い範囲に含めていますが、これを採用してしまうと、図Y20(A)ではエアロゾル等強制力(青)は0.0℃の水平の直線、(B)ではエアロゾル強制力(短い破線に◇)は0W/mの水平の直線になるので、前述の「21世紀末温暖化加速のカラクリ」が働きません。そうすると21世紀末の温暖化は小さくなってしまい、人間活動による地球温暖化の旗を下ろさなければならないかもしれません。だからこそ、IPCCは第5次報告書に、「エアロゾル強制力=0℃」(エアロゾルは地球温暖化に無関係)の場合のシミュレーション結果は掲載せず、図Y20(A)(B)のみを掲載して、人間活動による地球温暖化の旗を守っているのだろうと推測します。

(b) 気候モデルの正体

さらに、図Y20の(A)と(B)を見比べると、驚くべき事実がわかります。図Y20(A)の縦軸は気温偏差(℃)で、この図の温室効果ガス強制力(オレンジ)、自然起源強制力(黄緑)、エアロゾル等強制力(青)、人為および自然起源強制力(赤)は気候モデルの出力データ(シミュレーション結果)です。一方、図Y20(B)の縦軸は強制力(W/m)で、この図の温室効果ガス(一点鎖線)、オゾン(長い破線に□)、エアロゾル(短い破線に◇)、正味(実線に○)は気候モデルの入力データ(シナリオ:RCP)です。

過去から現在までの図Y20(B)の入力データ[温室効果ガス(一点鎖線)、エアロゾル(短い破線に◇)]と、図Y20(A)の出力データ[温室効果ガス強制力(オレンジ)、エアロゾル等強制力(青)]を見比べてみると、出力データが入力データにほぼ比例していることがわかります。実際、入力データの単位(W/m)と出力データの単位(℃)からみて、気候モデルが行っていることは「1m当たり何Wで加熱したら何℃になるか」ですから、出力データが入力データに比例するのは当然です。そうすると、気候モデルは次の単純な数式と等価であるということになります。

1990年前半頃以前のエアロゾル導入前の気候モデルは次の(式1)と等価であると考えられます。自然起源強制力はわずなかので無視しています。
気温=大きな比例係数×温室効果ガス強制力…(式1) エアロゾル導入前
1990年前半頃以前は、過去から現在まで(式1)で計算した気温(シミュレーション値)と観測された気温が等しくなるように比例係数を定めると「大きな比例係数」が求められたはずです(パラメータのチューニング)。その「大きな比例係数」を使って将来の温室効果ガス強制力のシナリオで(式1)を計算すると、21世紀末の気温は大きな値(大きな気温上昇の予測値)になったはずです。

実際の気候モデルに組み込まれている数式群は公表されないので本当のことはわかりませんが、様々な高度な物理学の数式が組み込まれていると推測されます。しかし、それらの高度な物理学の数式による計算は平均化され打ち消し合い、結果的に、(式1)による単純なシミュレーションと同じになるのではないでしょうか。

住明正「さらに進む地球温暖化」によれば、1990年前半頃には地球温暖化論は危機に瀕していたがエアロゾルを導入して現実の観測された温度とシミュレーションの温度変化の矛盾を回避したということですので、エアロゾル導入以後の気候モデルは次の(式2)と等価と考えられます。つまり、(式2)が「気候モデルの正体」です。
気温=大きな比例係数×(温室効果ガス強制力+エアロゾル強制力)…(式2) エアロゾル導入後
1990年前半頃には(式1)で計算した気温は観測された気温と一致しなくなったので、(式2)を導入したということになります。エアロゾル強制力は負なので、カッコ内は小さな値となり、「大きな比例係数」のままでも、計算結果の気温を観測値に合わせることができたのです。しかし、21世紀末にはエアロゾル強制力はほぼゼロになるので、21世紀末では(式2)の計算結果が(式1)の計算結果とほぼ等しくなり、21世紀末の気温は大きな値(大きな気温上昇の予測値)となるのです。つまり、前述の「21世紀末温暖化加速のカラクリ」は(式2)において有効です。

前述のように、第5次報告書が可能性の高い範囲に含めている「エアロゾル強制力=0℃」(エアロゾルは地球温暖化に無関係)を採用した気候モデルは次の(式3)と等価ということになります。
気温=小さな比例係数×温室効果ガス強制力…(式3) 「エアロゾル=0℃」の場合
(式3)は式としては(式1)と同じです。しかし、「小さな比例係数」を使って計算結果の気温を小さくして、観測値の気温と合わせることになります。そうすると、比例係数が小さいので、21世紀末の気温上昇も小さなものとなってしまいます。したがって、前述の「21世紀末温暖化加速のカラクリ」は(式3)では無効です。

(式3)も第5次報告書による可能性が高い範囲内の式なのですから、(式3)による21世紀末の気温上昇が現実の21世紀末の気温上昇である可能性も高いはずです。しかし、IPCCは、「エアロゾル=0℃」(エアロゾルは地球温暖化に無関係)のシナリオは認めておらず、図Y20(B)のシナリオ(RCP)しか認めていません。したがって、気候モデルシミュレーションを行っている世界中の研究所は(式2)と等価な気候モデルによって21世紀末の大きな温暖化を予測しているはずです。

そこで、次の『
(訳注21) 「エアロゾル等強制力=0」のパソコン気候モデルシミュレーション』で、パソコン気候モデルを「エアロゾル=0℃」(エアロゾルは地球温暖化に無関係)にチューニングして、つまり、(式3)と等価なパソコン気候モデルによって21世紀末の気温上昇の予測を行いましたので、是非お読みください。 (13.12.03; 12)


(訳注21) 「エアロゾル等強制力=0」のパソコン気候モデルシミュレーション

「エアロゾル等強制力=0」、つまりエアロゾル(公害物質)は地球規模の地球温暖化には影響を及ぼさないという条件で、パソコン気候モデルシミュレーションを行いました。「エアロゾル」は気象庁訳では「エーロゾル」です。「チューニング」についてはこちらをご参照ください。
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図Y21.1(A)は、図Y19.2(B)と同じ図ですので詳細は(訳注19)をご参照ください。図Y21.1(A)は、IPCC第5次報告書第1作業部会の技術要約の図TS.9(図Y19.1)の(a)に(b)(c)を重ねた図に、更に、それらを目盛り(5年毎)の位置で測定した折れ線グラフと、それに基づいて復元したエアロゾル等強制力(青)の折れ線グラフを重ねた図です。図Y21.1(A)の気候感度は3.2℃です。気候感度については(訳注16)をご参照ください。

図Y21.1において、「人為および自然起源強制力(赤)=温室効果ガス強制力(オレンジ)+エアロゾル等強制力(青)+自然起源強制力(黄緑)」の関係があります。図Y21.1(A)を見ると、自然起源強制力(黄緑)は0℃前後なので、温室効果ガス強制力(オレンジ)をエアロゾル等強制力(青)で打ち消して、人為および自然起源強制力(赤)を観測値(黒)に合わせていることがよくわかります。21世紀末にはエアロゾル(公害物質)はほぼゼロになりますので(図Y20(B)参照)、21世紀末の気温は、人為および自然起源強制力(赤)の延長線上ではなく、これより高い温室効果ガス強制力(オレンジ)の延長線上となります。この「21世紀末温暖化加速のカラクリ」((訳注20)参照)により、「人間活動による地球温暖化の旗を守る」(住明正「さらに進む地球温暖化」参照)ことができたのです。

図Y21.1(B)は、「エアロゾル等強制力=0」(エアロゾルは地球温暖化に無関係)の条件でチューニングしたパソコン気候モデルによる図です。図Y21.1(A)の目盛り(5年毎)の位置で測定した折れ線グラフに基づいているので、図Y21.1(B)は5年毎の折れ線グラフになっています。横軸は年、縦軸は1880〜1919年に対する気温の偏差、黒は観測値です。その他はパソコン気候モデルシミュレーションの結果で、オレンジは温室効果ガス強制力による気温変化、黄緑は自然起源強制力による気温変化、青はエアロゾル等強制力による気温変化、赤はそれらを合わせた人為および自然起源強制力による気温変化です。

図Y21.1(B)のパソコン気候モデルでは、「エアロゾル等強制力=0」(エアロゾルは地球温暖化に無関係)の条件で行っているので、エアロゾル等強制力(青)は0.0℃の水平の直線になります。「エアロゾル等強制力=0」(エアロゾルは地球温暖化に無関係)の条件でも自然起源強制力は変わりませんから、図Y21.1(B)の自然起源強制力(黄緑)は図Y21.1(A)と同じです。そして、「人為および自然起源強制力(赤)=温室効果ガス強制力(オレンジ)+エアロゾル等強制力(青)+自然起源強制力(黄緑)」の関係に基づいて、温室効果ガス強制力(オレンジ)を調整して、人為および自然起源強制力(赤)を観測値(黒)に合わせることにより、パソコン気候モデルのチューニングを行いました。

図Y21.1(B)では、温室効果ガス強制力(オレンジ)による気温変化は、気候感度に比例すると仮定しました(気候感度については(訳注16)参照)。パソコン気候モデルの気候感度をいろいろ変えて、人為および自然起源強制力(赤)が最も良く観測値(黒)に合った図が図Y21.1(B)です。この時の気候感度が1.8℃です。これでパソコン気候モデルのチューニングは完了です。

(訳注20)の後半で、気候モデルは1行の数式と等価であることを明らかにしました。図Y21.1(A)を作成するために用いられた気候モデルは以下の(式2)と等価です。これに対して、図Y21.1(B)を作成するために用いられた「エアロゾル=0℃」のパソコン気候モデルは以下の(式3)と等価です。(式2)(式3)では、自然起源強制力はわずかなので無視しています。
気温=大きな比例係数×(温室効果ガス強制力+エアロゾル強制力)…(式2) 図Y21.1(A)参照
気温=小さな比例係数×温室効果ガス強制力…(式3) 図Y21.1(B)参照
大きな比例係数(式2):小さな比例係数(式3)=3.2℃:1.8℃…(式4)
図Y21.1(A)の気候感度は3.2℃で、(B)の気候感度は1.8℃なので、(式4)のように、(式2)の「大きな比例係数」と(式3)の「小さな比例係数」の比は、それぞれの気候感度の比、つまり3.2℃:1.8℃となります。したがって、「エアロゾル等強制力=0」(エアロゾルは地球温暖化に無関係)の条件でチューニングしたパソコン気候モデルによる21世紀末の気温上昇の予測はかなり低くなることになります。
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図Y21.2(A)はIPCC第5次報告書に掲載された気温の予測の図(図SPM.7(a))です。これの気候感度は3.2℃ですので、「エアロゾル等強制力=0℃」(エアロゾルは地球温暖化に無関係)のパソコン気候モデルの気候感度1.8℃では、縦方向を(1.8℃/3.2℃=0.5625)倍に縮小した図Y21.2(B)になります。

図Y21.2(B)のグラフは、現在〜21世紀中期については正確ではありません。なぜなら、図Y21.2(A)は「エアロゾル等強制力≠0」(エアロゾルは地球温暖化に関係あり)なので、これを単に縮小した図Y21.2(B)は「エアロゾル等強制力=0」(エアロゾルは地球温暖化に無関係)の予測とは言えないからです。しかし、図の右端や図の右側の2081〜2100年の平均については、図Y21.2(A)も「エアロゾル等強制力≒0」なので(図Y20(B)参照)、図Y21.2(B)はほぼ正確であるということになります。ここで、「ほぼ正確」とは、図Y21.2(B)が実際の21世紀末の気温のほぼ正確な予測という意味ではなく、1000億円スパコン気候モデルで「エアロゾル等強制力=0」の条件でシミュレーションを行っても、図Y21.2(B)とほぼ同じ結果を出力するはずだという意味です。

表Y21.1


1986〜2005年に対する2081〜2100年の世界年平均地上気温(℃)の変化
(A)気候モデル(気候感度3.2℃)による予測
表SPM.2参照)
(B)パソコン気候モデル(気候感度1.8℃)による予測
シナリオ
    平均値   可能性が高い範囲
    平均値   可能性が高い範囲
RCP2.6
    1.0     0.3〜1.7
    0.6     0.2〜1.0
RCP4.5
    1.8     1.1〜2.6
    1.0     0.6〜1.5
RCP6.0
    2.2     1.4〜3.1
    1.2     0.8〜1.7
RCP8.5
    3.7     2.6〜4.8
    2.1     1.5〜2.7

表Y21.1(A)(B)は、図Y21.2(A)(B)の右側の鉛直方向のバーが示す2081〜2100年の平均を表にしたものです。シナリオのRCPについてはボックスSPM.1をご参照ください。表Y21.1(A)はIPCC第5次報告書の予測(表SPM.2参照)で、気候感度は3.2℃です。表Y21.1(B)は、「エアロゾル等強制力=0」(エアロゾルは地球温暖化と無関係)のパソコン気候モデルのシミュレーションによる21世紀末の気温上昇で、気候感度は1.8℃です。前述のように、1000億円スパコン気候モデルで「エアロゾル等強制力=0」(エアロゾルは地球温暖化と無関係)の条件でシミュレーションを行っても、表Y21.1(B)とほぼ同じ結果が得られるはずです。

IPCC第5次報告書第1作業部会が公表された時に、マスコミが報じた21世紀末の気温上昇は表Y21.1(A)の右下の最大値4.8℃でした。これには前述の「21世紀末温暖化加速のカラクリ」が働いています。一方、「エアロゾル等強制力=0」(エアロゾルは地球温暖化と無関係)の条件にすると、表Y21.1(B)の右下のように最大値は2.7℃に下がります。「21世紀末温暖化加速のカラクリ」が働いていないからです。

「工業化前からの気温上昇を2℃以下におさえる」という国際合意があります。しかし、これは、あくまで「2℃以下」であり「2.0℃以下」ではないので、各国による解釈の入る余地があります。「2℃以下」の国際合意は「2.0℃以下」の意味であると主張する国もあるかもしれません。しかし、「2.5℃未満」なら四捨五入して「2℃以下」なので、「2.5℃未満」でもよいのだと主張する国もあるかもしれません。「3.0℃未満」でも小数点以下を切り捨てれは「2℃以下」なので、これを主張する国もあるかもしれません。

表Y21.2


工業化前(1880年)に対する2081〜2100年の世界年平均地上気温(℃)の変化
(A)気候モデル(気候感度3.2℃)による予測
(B)パソコン気候モデル(気候感度1.8℃)による予測
シナリオ
    平均値   可能性が高い範囲
    平均値   可能性が高い範囲
RCP2.6
    1.9     1.22.6
    1.4     1.01.8
RCP4.5
    2.7     2.03.5
    1.9     1.52.3
RCP6.0
    3.1     2.34.0
    2.1     1.62.6
RCP8.5
    4.6     3.55.7
    2.9     2.33.6
2.0℃以下  2.0℃超2.5℃未満  2.5℃以上3.0℃未満  3.0℃以上

IPCCの定義では「工業化前」は1750年です。1750年からの気温のデータは入手できませんが、セクションB.1には「1880〜2012年で、0.85[0.65〜1.06]℃の温暖化を示している」と記載されていますので、大雑把ですが、表Y21.1に0.85℃を加算して、工業化前(1880年)からの気温上昇であるとして、表Y21.2を作成しました。(A)はIPCCの予測、(B)は「エアロゾル等強制力=0」(エアロゾルは地球温暖化と無関係)の予測です。「2.0℃以下」「2.0℃超2.5℃未満」「2.5℃以上3.0℃未満」「3.0℃以上」で色分けしています。

図Y21.2(A)を見ると、国際合意の「2℃以下」を達成するには、温室効果ガスを徹底的に削減するRCP2.6以外の選択肢はありません。しかし、図Y21.2(B)を見ると、「2℃以下」を「2.0℃以下」と厳格に解釈したとしても、RCP4.5で何とかなりそうです。「2.5℃未満」なら四捨五入して「2℃以下」という解釈をすれば、少しだけ温室効果ガスを削減するRCP6.0でも良さそうです。「3.0℃以下」でも小数点以下を切り捨てれは「2℃以下」という解釈をすれば、温室効果ガスを排出し放題のRCP8.5でも何とかなりそうです。

したがって、前述の「21世紀末温暖化加速のカラクリ」を使うIPCCの気候モデルが実際の地球の正しいモデルなのか、それとも、「21世紀末温暖化加速のカラクリ」を使わない「エアロゾル等強制力=0」(エアロゾルは地球温暖化と無関係)のパソコン気候モデルの方が実際の地球の正しいモデルなのか、は極めて重大な問題です。そこで、これについて以下検討します。

図Y21.1の温室効果ガス強制力(オレンジ)は主に二酸化炭素によります。二酸化炭素は植物の光合成で吸収されますので、その濃度は季節や地域によって多少変動しますが、その変動はわずかであり、基本的には二酸化炭素濃度は大気中至る所で均一です。高度が高くなれば気圧が下がりますが、他の空気分子の単位体積あたりの密度の減少と同じ割合で減少するので、二酸化炭素濃度は高度が上がり気圧が下がっても変わりません。

したがって、大気中至る所で均一な二酸化炭素をメインとする温室効果ガス強制力が、地球規模の地球温暖化に影響を及ぼしている可能性は十分に考えられます。ただし、地球上の1点で観測した二酸化炭素濃度を大気全体に適用して、簡単に論文を書いたりシミュレーションしたりできるので、二酸化炭素は冤罪を着せられやすいかもしれませんが…。

図Y21.1の自然起源強制力(黄緑)は太陽光照度によります。図Y21.1(B)を見ると、自然起源強制力(黄緑)は全体的にはわずかに正であることがわかります。「強制力<forcing>」は気温を強制的に変化させる力ですが、強制力の値は工業化前(1750年)との差として定義されています。したがって、IPCCは、太陽光照度が工業化前よりもわずかに大きくなっていると推定しているようです。

図Y21.1(A)を見ると、自然起源強制力(黄緑)には、いくつかの負のインパルスがあります。これは大規模な火山噴火があると、噴煙が成層圏にまで達し噴出物が偏西風に乗って地球を周回するので、それにより太陽光照度が落ち、寒冷化するからです。噴出物は数年で下降するので、負のインパルスになるわけです。このように、大規模な火山噴火は地球規模の地球温暖化に影響を及ぼしています。しかし、小規模な火山噴火では噴煙は成層圏にまで達せず噴出物は火山の周辺に下降するので、その地域の気候には影響を及ぼすとしても、地球規模の地球温暖化にはほとんど影響しないのです。

都市がヒートアイランド現象で温暖化していることは誰もが認めますし、多くの人が実感しています。ヒートアイランド現象は人間が都市をつくったからであり、人為起源の温暖化です。ところが、IPCCはヒートアイランド現象は地球規模の地球温暖化とは無関係だとしています。ヒートアイランド現象は地域限定の温暖化であり、地球規模の地球温暖化には影響を及ぼさないとIPCCは考えているのだと推測されます。

図Y21.1のエアロゾル等強制力(青)は主にエアロゾルによります。エアロゾルとは大気中の微粒子であり公害物質です。国立環境研究所理事長の住明正氏は、1990年前半頃には、人間活動による地球温暖化論は危機に瀕していたが、エアロゾルの直接効果による冷却効果を導入して現実の観測された温度とシミュレーションの温度変化の矛盾を回避した、この時に用いたエアロゾルの直接効果は非常に大きい値でしたので、温度の観測データに合うようにパラメータを導入したと勘ぐられても仕方がないような印象を拭い去ることができない旨述べておられます。

住明正氏がおっしゃるように、また図Y21.1(A)を見ても明らかなように、温室効果ガス強制力(オレンジ)による気温が高すぎるのを、エアロゾル等強制力(青)の冷却効果を導入して、現実の観測された温度(黒)とシミュレーションの温度変化(赤)の矛盾を回避したのです。図Y21.1(A)の左側(1860〜1940年頃)のエアロゾルの観測データなどあるはずがないので、エアロゾル等強制力(青)は、単に、温室効果ガス強制力(オレンジ)による気温を高く維持したまま、それを打ち消すためのパラメータとして、打ち消すのにちょうどいい大きさで導入されたことは明らかです。

住明正氏がおっしゃる「エアロゾルの直接効果」とは、エアロゾル(微粒子)が太陽光を反射して、地表に達する太陽光を減らす効果です。その後、直接効果の他に、「エアロゾルによる雲調整」が追加されました。これは、エアロゾル(微粒子)を核として水蒸気が水滴になり雲やスモッグを形成し、これが地表に達する太陽光を減らす効果です。話題の中国のPM2.5は2.5μm以下のエアロゾル(微粒子)ですが、これにより北京がスモックに覆われている映像をよく見ます。スモッグが太陽光をさえぎるのは明らかなので、この「エアロゾルによる雲調整」が負の強制力を持っていることはよくわかります。

最初は「エアロゾルの直接効果」の1つのパラメータだけでしたので、そのパラメータの値は住明正氏がおっしゃるように「非常に大きい値」だったのでしょう。現在は「エアロゾルの直接効果」と「エアロゾルによる雲調整」の2つのパラメータに分けたので、それぞれのパラメータの値は小さくすることができたはずです。しかし、2つのパラメータを加算すれば、最初の「非常に大きい値」と同じ値になることは、図Y21.1(A)のエアロゾル等強制力(青)を見れば明らかです。

前述のように、二酸化炭素濃度は大気中至る所で均一です。これに対して、エアロゾル濃度は均一ではありません。日本は公害防止技術が進んでいるのでエアロゾル(公害物質)の排出はわずかですが、中国は公害防止を行っていないので大量のエアロゾル(公害物質)を排出しています。中国発のエアロゾル(例えば、PM2.5)は西日本にも多少は飛来しますが、西日本を北京のようなスモッグで覆うほどの濃度ではありません。中国がどれほど大量にエアロゾル(公害物質)を排出しようとも、エアロゾルは成層圏には達しないので、偏西風に乗って地球を周回することはありません。大気中のエアロゾルは雨と共に降下したりして消滅します。これも、どんどん累積する二酸化炭素とは全く異なった性質です。

図Y21.1(A)の温室効果ガス強制力(オレンジ)は正方向にどんどん増加しています。一方、エアロゾル等強制力(青)は逆に負方向にどんどん増加しています。エアロゾル等強制力(青)を復元(訳注19参照)する前は、エアロゾル等強制力(青)は負の一定の値を維持しているだろうと予想していました。なぜなら、二酸化炭素は大気中から簡単にはなくならず二酸化炭素濃度は累積するので、二酸化炭素をメインとする温室効果ガス強制力(オレンジ)は正方向にどんどん増加しますが、エアロゾルは排出後しばらくたつと大気中から消滅しエアロゾル濃度は累積しないと考えていたので、エアロゾルをメインとするエアロゾル等強制力(青)が負方向にどんどん増加するとは予想できなかったからです。

ところがエアロゾル等強制力(青)を復元(訳注19参照)してみると、図Y21.1(A)のように、負方向にどんどん増加しているので、たいへん驚きました。エアロゾル(公害物質)は温室効果ガスに伴って排出されることが多いので、毎年の温室効果ガスの排出量とエアロゾルの排出量はほぼ比例しているはずです。それなのに、累積する性質の温室効果ガス強制力(オレンジ)の正方向の増加をちょうど打ち消すように、累積しない性質のエアロゾル等強制力(青)が負方向に増加しているのは不自然です。このことからみても、エアロゾル等強制力(青)は、正方向にどんどん増加する温室効果ガス強制力(オレンジ)を打ち消すために、打ち消すのに必要な大きさで導入された単なるパラメータではないでしょうか。

前述の火山噴火による噴出物もエアロゾルです。IPCCの報告書に記載された「温室効果ガス」や「エアロゾル」は人為起源のものだけに限られるので、火山の噴出物(自然起源エアロゾル)は図Y21.1のエアロゾル等強制力(青)には含まれません。大規模な火山噴火で成層圏に達した噴出物(自然起源エアロゾル)は偏西風に乗って地球を周回するので、図Y21.1(A)の自然起源強制力(黄緑)の負のインパルスとして地球規模の地球温暖化に影響を及ぼします。しかし、小規模の火山噴火による噴出物(自然起源エアロゾル)はその周辺に降下するので、地球規模の地球温暖化にはほとんど影響を及ぼしません。

人為起源エアロゾル(公害物質)も成層圏に達することなく排出源の近くで消滅します。これは小規模の火山噴火による噴出物(自然起源エアロゾル)と同じ状況ではないでしょうか。それにもかかわらず、IPCCは、図Y21.1(A)に示すように、人為起源エアロゾル(公害物質)が大きな負のエアロゾル等強制力(青)を持つとして、正方向に外れた温室効果ガス強制力(オレンジ)を打ち消す役割を与え、前述の「21世紀末温暖化加速のカラクリ」によって、21世紀末の大きな温暖化を得ているのです。これは科学的成果というよりも、「なんとしても、人間活動による地球温暖化の旗を守る」(住明正「さらに進む地球温暖化」参照)ためではないでしょうか。

図Y21.1図Y21.2表Y21.1表Y21.2の(A)はIPCC第5次報告書に記載された1000億円スパコン気候モデルによるもので、前述の「21世紀末温暖化加速のカラクリ」が有効です。一方、(B)は「エアロゾル等強制力=0」(エアロゾルは地球温暖化に無関係)の条件でチューニングしたパソコン気候モデルによるもので、「21世紀末温暖化加速のカラクリ」は無効です。

1000億円スパコン気候モデルでは、とてつもなく複雑な計算が行われているはずです。その成果により、例えば灼熱地獄の地球を描くことができます。研究費ゼロのパソコン気候モデルでは灼熱地獄の地球を描くのは不可能です。しかし、表Y21.1表Y21.2の(A)(B)では、1000億円スパコン気候モデルも、研究費ゼロのパソコン気候モデルも、ほぼ対等です。1000億円スパコン気候モデルでも、「エアロゾル等強制力=0」(エアロゾルは地球温暖化に無関係)の条件でチューニングすれば、表Y21.1表Y21.2の(B)とほほ同じデータを出力するはずだからです。

問題は、図Y21.1(A)のように現時点で温室効果ガス強制力(オレンジ)をエアロゾル等強制力(青)で打ち消しておいて、エアロゾル(公害物質)がほぼゼロになる21世紀末に大きな温暖化を得る「21世紀末温暖化加速のカラクリ」を有効にした気候モデルが現実の地球の正しいモデルとなっているのか、それとも図Y21.1(B)のように「エアロゾル等強制力=0」として、「21世紀末温暖化加速のカラクリ」を無効にした気候モデルの方が現実の地球の正しいモデルとなっているのかということです。

成層圏に達せず偏西風に乗って地球を周回をすることがない人為起源エアロゾル(公害物質)は、同じく成層圏に達せず偏西風に乗って地球を周回をすることがない小規模の火山噴火の噴出物(自然起源エアロゾル)と同様に、地球規模の地球温暖化にはほとんど影響しないと考える方が納得がいくのではないでしょうか。そうだとすると、図Y21.1図Y21.2表Y21.1表Y21.2の(B)の「エアロゾル等強制力=0」(エアロゾルは地球温暖化に無関係)の条件でチューニングしたパソコン気候モデルの方が、現実の地球のモデルとして、より正しいといえるのではないでしょうか。 (13.12.11; 13)



(訳注22)グリーンピース共同創設者の一人が人為起源の地球温暖化を否定

2014年2月27日の『Mail Online』に、「グリーンピースの共同創設者の一人が、地球温暖化は人間のせいではないと証言、彼によれば、気候変動が人為起源であることを示す『科学的証拠』は全くない」という見出しの記事が掲載されました。グリーピースは世界規模の環境問題に取り組む温暖化脅威派の国際環境NGOです。

この記事は、グリーンピースの共同創設者の一人であるパトリック・ムーア博士<Ph.D Patrick Moore>が米国上院で、人為起源の地球温暖化を否定する証言を行ったことを伝えています。ムーア博士は自分が創設したグリーンピースの温暖化に関する活動を否定する証言を行ったことになります。記事の前半でムーア博士の人為起源の地球温暖化を否定する証言を紹介し、記事の後半では温暖化脅威派による反論を紹介しています。記事の右下のオレンジ色の囲み部分はムーア博士の米国上院での証言の抜粋ですので、以下その囲み部分を翻訳して示します。

なお、ムーア博士の証言の全文の翻訳はこちらです。
Patrick Moore 地球温暖化のホットな話題について

「二酸化炭素(CO2)の人為起源の排出物<emissions>が過去100年間の地球大気のわずかな温暖化<the minor warming >の支配的な原因<the dominant cause>であることに科学的証拠は全くありません<no scientific proof>」。もしそのような証拠があったとすれば、みんなに理解できるように書き留められたでしょう。科学的に理解できる実際の証拠は全く存在しません。」

「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)は次のように記述しています:『人間の影響が20世紀半ば以降に観測された温暖化の支配的な原因であった可能性が極めて高い<extremely likely>。』(私(訳注:ムーア博士)による強調)(訳注:この引用部分はセクションD.3のオレンジ色部分の最後の文です)
『可能性が極めて高い』は科学的用語ではなく、むしろ法廷におけるような判断<a judgment>なのです。IPCCは『可能性が極めて高い』を『95〜100%の可能性』と定義しています。」

「しかし更に調べてみると、これらの数字が数学的計算や統計分析の結果でないことが明らかです。これらは、IPCCの協力者によって決められた『専門家の判断』をIPCC報告書の中に表現するための構成概念<a construct>として『発明』されたものです。」

「5億年以上前に現代風の生命が進化した時、CO2は現在より10倍高かったのですが、その時期に生命は繁栄していました。その後、現在より10倍CO2が高かった4億5千万年前は氷河時代でした。」

「多少の相関関係はありますが<some correlation>、この数千年間(訳注:5億年前〜4億5千年前の数千年間)を通してCO2と地球の気温の直接的な因果関係を支持する証拠はほとんどありません<little evidence>。現在よりCO2排出物が10倍高い時代に、より高温な時代と氷河時代の両方があったという事実は、人間起源のCO2排出物が地球温暖化の最も有力であることの確実さ<the certainty>を根本的に否定しています。」

「現在、我々は地球の生命の歴史において非常に寒冷な時代<an unusually cold period >に生きています、より温暖な気候が人類と他の大半の種にとって有益以外のものであると信じる理由はありません。気候の急激な寒冷化が人類の文明にとって悲惨な結果をもたらすだろうと信じる十分な理由があります。」

「IPCCは、『20世紀半ば以降』(すなわち1950年以降)人間が温暖化の支配的な原因であると記述しています。1910年から1940年までの30年間、世界平均気温は0.5℃上昇しました。その後、1970年まで30年間の「休止<pause>」がありました。」

「これに続いて、1970年から2000年までの30年間、0.57℃上昇しています。その後、世界気温は上昇せず、恐らくわずかに下降しています。これ自体がコンピュータモデルの有効性<validity>を否定する結果につながっています、なぜならCO2排出物はこの時期に増加し続けていたからです。」

「1910〜1940年の気温上昇は1970〜2000年の上昇とほとんど同じです。しかし、IPCCは1910年から1940年の上昇の原因を『人間の影響』とはしていません。」


(訳注23) 「climate change」の日本語訳は「気候変動」? それとも「気候変化」?

私は「climate change」を「気候変動」と翻訳してきましたが、気象予報士の方から、「climate change」の訳は「気候変化」であり、「climate variability」の訳が「気候変動」であるというご意見をいただきました。確かに、気象の分野ではそのように訳すようです。IPCC報告書は英語が原本ですが、要約についてはIPCCが国連の公用語の翻訳文(アラビア語、中国語、フランス語、ロシア語、スペイン語)を作成します。
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日本語は国連の公用語ではないので、文科省、経産省、気象庁、環境省が要約の日本訳を作成し(以下、「省庁訳」と記載します)、ネットで公開すると共に、書籍としても出版しています。右に示したのがIPCC第4次報告書の要約の省庁訳の書籍の表紙の一部です。原文(英語)のタイトルは、右下に斜めに記載されていますように、「Climate Change 2007」でサブタイトルが「The Fourth Assessment Report of the IPCC」ですが、日本語訳はタイトルが「IPCC地球温暖化第四次レポート」でサブタイトルが「気候変動2007」です。

このように、原文と省庁訳ではタイトルが全く違います。日本語のタイトルの「地球温暖化」は原文のタイトルにはありません。恐らく、地球温暖化の恐怖を演出するために、わざわざ原文にない「地球温暖化」をタイトルに入れたのだろうと推測します。地球温暖化の恐怖を煽れば煽るほど、各省庁の予算と役職が増えるからです。一方、原文のメインタイトル「Climate Change 2007」は、日本語訳ではサブタイトルとなり、「気候変動2007」と訳しています。

岩波国語辞典には、「変化:ある状態・位置から、他の状態・位置に変わること。」、「変動:変わり動くこと。転じて、世の中のさわぎ。事変。」とあります。「変化」は単なる変化に過ぎませんが、「変動」は世の中の騒ぎや事変の意味を含みます。省庁訳には気象庁もからんでいるので、気象用語としては「climate change」を「気候変化」と訳すべきであることは知っていたはずです。

しかし、「気候変化」では凄みがないので、世の中の騒ぎや事変の意味を含む「気候変動」と訳したものと推測します。世の中の騒ぎや事変は人間が起こすものですから、「気候変動」に「人為的」地球温暖化の意味も込めたのかもしれません。

省庁訳により、世の中の騒ぎや事変の意味を含む「気候変動」が一般に使われていますので、私としても、「climate change」を「気候変動」と今後も訳すつもりです。人為的地球温暖化が嘘であることが一般に知られるようになり、「climate change」を「気候変化」と訳すことができる日が一刻も早く来ることを望みます。

驚いたことに、これを書き終わった後に、気象庁のIPCC第5次報告書 第1作業部会の政策決定者向け要約の気象庁訳(暫定版)をリンクしようとしたら、気象庁訳(確定版)が公表されていました。しかも、その訳注Aに、『なお、気象学では長期的に一方向の変化を「気候変化」と呼んで、「気候変動」と区別することもある。また、気候学では長期の変化・変動の総称を「気候変化」とする場合がある。』と記載されていました。「climate change」を「気候変動」と訳した意図についても訳注に書いていただければ、さらに良かったのですが…。

なお、気象庁訳をお読みになられた方も、是非、この私の日本語訳の訳注も合わせてお読みただければと思います。IPCC第5次報告書には、様々な演出や隠蔽や見せかけがあることをご理解いただけます。


(訳注24) 「気候変動の不可避性」は地球の公約ではなく、IPCCの公約です

これまで、原文の「climate change commitment」の訳語としては、第4次報告書の気象庁訳の「既定的気候変動」を使ってきましたが、第5次報告書の気象庁訳(確定版)では、訳語を「気候変動の不可避性」に変更しましたので、私の日本語訳でもこれに合わせて変更しました。

気象庁訳(確定版)の「気候変動の不可避性」の訳注には次のように記載されています。
【訳注L】 原文では“climate change commitment”と記されている。この用語は、気候変動研究の分野で、ある時点までに人為的に排出された温室効果ガスによってそれ以後必ずもたらされる気候の変化を指すものとして使用されている。言い換えると、過去の温室効果ガス排出の影響は、現在までにどれだけが現われているかによらず、将来において確実に現れることを示している。これは以下の2つの理由による:(1)長寿命温室果ガス、特に人為起源の二酸化炭素については、一旦排出されると非常に長い期間にわたって大気・海洋・生態系を循環しつつ、炭素の総量はほとんど減少せず、一定部分が大気中に残り、放射強制力が持続する。(2)地球の気候システムには海洋の大きな熱的慣性並びに雪氷圏及び地表面におけるゆっくりとした調整過程があるため、気候システムが大気中の温室効果ガス濃度(放射強制力)に対応した状態に安定するまで長期間を要する。…
要するに、人為起源の二酸化炭素は長期間大気中に残り放射強制力が持続するから、現時点で気温が上昇していなくても、どこかに熱が蓄積され、いずれ気温が上昇するのは不可避である、ということです。セクションD.1に記載された「1998〜2012年の地上温暖化傾向に観測された縮小」という事実があっても、人為的地球温暖化は進んでいると主張するために、IPCCが考え出した用語が「気候変動の不可避性<climate change commitment>」ではないでしょうか。

英和辞典で「commitment」を引くと、「公約」、「義務」、「責務」等の訳語はありますが、「不可避性」の訳語はありません。したがって、「climate change commitment」の訳語としては、「気候変動の公約」の方が適切であると考えます。では、誰に対する誰の公約でしょうか?

地球が人類に対して人為的地球温暖化を公約することは不可能です。では、誰の公約? 正解は、世界中の国々に対するIPCCの公約<commitment>です。

1990年に公表されたIPCC第1次報告書には次のように記載されています。
人間活動に起因する排出によって…温室効果ガスの大気中濃度は著しく増加し…温室効果を強めるため…地球表面に一層の温暖化をもたらすだろう。
  …
枠組み条約についての国際交渉は…可能なかぎり早く開始されるべきである。
1992年に締結された気候変動枠組条約の前文には次のように記載されています。
締約国は…人間活動が大気中の温室効果ガスの濃度を著しく増加させてきていること、その増加が自然の温室効果を増大させていること並びにこのことが、地表及び地球の大気を全体として追加的に温暖化することとなり、自然の生態系及び人類に悪影響を及ぼすおそれがあることを憂慮し…
IPCCは、第1次報告書で人為的地球温暖化を推測し、その2年後、気候変動枠組条約に人為的地球温暖化を記載させることに成功したのです。ですから、IPCCは何がなんでも人為的地球温暖化を主張し続けなければならないのです。つまり、人為的地球温暖化は、気候変動枠組条約の締約国に対するIPCCの「気候変動の公約<climate change commitment>」なのです。

気候変動枠組条約には、世界中のほとんど全ての国が加盟していますので、世界中の国々はIPCCの公約に従う義務<commitment>があります。温暖化の科学者は国から研究費をもらっていますので、温暖化の科学者の責務<commitment>は、IPCCの「気候変動の公約」を支持する、データを集めたり、理論を考えたり、シミュレーションを行うことです。その成果を集大成したものがIPCCの報告書なのです。

IPCCの「気候変動の公約」が、本物の科学に裏付けられたものであるかどうかは、(訳注11)以降をお読みいただき、ご判断いただければと思います。仮に、IPCCの「気候変動の公約」が本物の科学に裏付けられたものでないとしても、IPCCの「気候変動の公約」すなわち人為的地球温暖化は、気候変動枠組条約の前文に記載されていることであり、政治的にも法的にも正しいことなので、政治家も官僚も科学者も粛々と地球温暖化関連の予算を使い続けることになるわけです。











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