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セミの羽根のように透きとおった涼しげな黒の羽織を、するりとぬぐと、まっ白な薩摩上布。キリリと貝の口に結んだ角帯がまた結構なもの。博多でなし、斜子(ななこ)でなし、一体何という布地なのだろう。真田織にちょっと似た感じで、ざっくりとした感触がいかにも志ん生好みである。そこへ無造作にさしこんだ煙草入れ……。思わず、ああいい衣装(なり)だと見とれてしまった。

 


 

江國滋『落語手帖』ちくま文庫


 

 

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