95 ちょっとだけテッチャン 

2012.10.13


 去年高知へ行ったとき、義母の希望で、新幹線は疲れるから寝台車で行きたいということで「サンライズ瀬戸」で行ったのだが、思いのほか車体の振動が激しくて義母も結局寝られなかったということだったので、今年は新幹線と土讃線を乗り継いで行った。「のぞみ」は、こんなに速かったっけというぐらい速くて、新横浜から岡山まで3時間しかかからなかったし、振動も少なく、とても楽だったと義母も喜んでいた。

 ところが、岡山から高知行きの特急「南風」に乗り込み、動き出して数分で、え、こんなにうるさかったっけ? と思うほどディーゼルエンジンの音がひどかった。義母は、耳が悪くてうるさいのは苦手なので、耳栓をしていたが、それでも、スピードをあげるたびに、ものすごいエンジン音である。比べてみてもしょうがないが、改めて電気自動車の静かさを実感した。

 音も音なのだが、それ以上にびっくりしたのは、電車のスピードである。だいたいディーゼルカーなんて、上り坂になると、とたんにスピードダウンして、思わず「ガンバレ」なんて言いたくなるほどだったと記憶しているのだが、岡山から瀬戸大橋にかかるまでの平坦なところなど、京急も真っ青ってな感じでガンガンとばす。しかも、ちょっとしたカーブにさしかかると、妙な遠心力を感じる。なんだか、モノレールに乗っているような感覚だ。

 瀬戸大橋を渡り、四国に入り、いよいよ四国山地にさしかかり、登りの勾配が急になっても、全然スピードが落ちない。右へ左へとカーブもグイグイ回り、エンジンも全開でぶっ飛ばす。え〜? 土讃線ってこんな感じだったかなあと、去年のことを思い返せば、あのときは大雨で、瀬戸大橋あたりからすでに速度規制がかかっていたようだし、四国山中はもうノロノロもいいとこで最後は運行停止となったわけで、こんなスピードはもちろん出ていなかった。これって、ひょっとして、振り子車両? と思ったあたりは、ちょっとだけテッチャンのぼくだけのことはある。

 振り子車両というのは、カーブでもスピードをあまり落とさずに走れるようにするために、カーブにくると車体を傾けるようになっている車両だというぐらいの知識はあるのだが、それにしても、気持ち悪くなるほどの車体の傾きである。めったに乗り物酔いしないぼくでも、もうちょっとで酔いそうになったのだから、義母が酔ってしまったのも致し方のないことだった。

 今年は雨も降らずにちゃんと走ってくれてよかったけれど、これではまた来年の三回忌が思いやられる。といって、飛行機はぼくはダメだし、義母も嫌だといっている。まったく高知というところはいいところだが、行くには大変なところである。

 家に帰ってこの車両のことを調べてみると、この「南風」は、2000系気動車というJR四国の自慢の車両だということがわかった。この記事には「乗り心地の改善を図る制御付自然振り子が採用された。」とあるけれど、「改善」は図られているのかもしれないが、気持ち悪くなったことは事実で、「改善」が図られる前の車両のことを思うとぞっとする。


ぼくの乗った2000系気動車「南風」
wikipediaの記事


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