73 やっぱり変だろうか 

2012.5.28


 どうにも理解できないことが近ごろ多い。

 その第一が、何かというと、人が大勢わんさか集まるということだ。東京スカイツリーの開業当日だけで、20万人を上回る人がやってきたと聞くと言葉を失う。どこからどうやって集まってくるのだろうか。まあ、全国各地から、あるいはひょっとしたら海外からも、やってくるのだろうとは思うけれど、物好きだなあと感心してしまう。

 というより、あんなに高いところにのぼって、怖くないのだろうかというのが一番の感想なのだ。幸い、じゃなかった、不幸にも、開業当日は悪天候で、展望デッキからの眺めはほとんど雲ばかりだったらしいけど、そのかわり、人気を集めたのが、床がガラスになっていて真下が見えるという場所だったのだというから驚く。ぼくなら、間違いなく、そんなところを覗いたら気絶する。テレビで、下の覗いている人を見ただけで、足もとがむずむずして、気持ち悪くなりそうだ。

 そういえば、フランスには、床もガラス張りの観覧車があるということを聞いて、悪趣味だなあと思っていたら、どこか日本でもそういう観覧車ができたと聞いた。もっとも、スカイダイビングだの、バンジージャンプなんて世にもオソロシイ代物を金を払ってまでやる人間がいるのだから、床下がガラスの観覧車だろうが、スカイツリーの覗き部屋(じゃないか)だろうが、そんなものは屁でもないということだろう。

 スカイツリーは、去年、孫の七五三で東京の本所教会(カトリック教会でも七五三をやるのです)に行ったとき、すぐ近くに見えて、そのあまりのバカでかさ、バカ高さに驚愕したのだが、あれは、どう考えても、異常な建物である。見るだけでも気持ち悪い。テレビなんかでは、スゴイスゴイと興奮している人間しか出てこないが、あれを見て気持ち悪くなったという人間がひとりぐらい出てきてもよさそうなものだ。

 人間の感覚は、結局は動物の感覚だから、自然界のものに対してしか本当は適合しないのではなかろうか。自然界にないものは、人間の感覚はたぶん受け付けないようにできているに違いない。しかし、慣れという現象があって、それが人間の本来の感覚を麻痺させてしまうのだ。

 新幹線がホームを通過していく速さだってほんとうは気持ち悪いし、ましてバカでかい飛行機が「ゆっくり」そらに上昇していく様は、アホウドリが離陸するのとはまったく違った気持ち悪さがある。

 スカイツリーに話をもどせば、ぼくがもっと分からないのは、これだけ世の中が、地震だ、原発だと大騒ぎしているのに、どうしてあんな高いところに自ら進んでのぼる気になる人間が、一日に20万人もいるのだろうか、ということだ。直下型地震ではなくても、震度4程度の地震でも、スカイツリーの展望デッキは相当揺れるだろう。ぼくなんかは、それを想像しただけで、ゼッタイのぼりたくない! って思ってしまうのだが、そんなこと関係ないと思っているのだろうか。

 実際、関係ないんだろう。スカイツリーの展望デッキで地震に遭う確率なんて、交通事故に遭う確率よりも低いのかもしれない。そんなこと気にして、ゼッタイのぼりたくない! なんて言ってるぼくのほうが、多分、変なんだろう。

 変ついでに書くけれど、B級グルメの会場に何万人と集まるのも理解できない。いくら全国からご当地グルメが集まっているといっても、結局食べられるのは2、3種類だろう。残りの何十種類を食べられなかったということが、残念じゃないのだろうか。ぼくだったら、あれも食べたかった、あれも食べ残したって思って、一生後悔するに決まってる。だから行かないのだが、これもやっぱり変だろうか。


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