69 天水桶の快感 

2012.5.5


 庭の改造をしたときに、庭師に天水桶を作りたいんだけどと話したところ、ちょうど家に天草で買った大きな水瓶があるから、それを使ったらどうかという話があり、さっそく設置してもらった。

 なんで急に天水桶なのかというと、やはり災害時の水をどう確保するかということを常々考えているなかで、ふと、どんなに備蓄していても、使ってしまえばおしまいだ。下手をすると給水車が何日も来ないという事態だって考えられる。そんなとき、降った雨をためておければ、結構いいんじゃないかと思ったわけだ。

 最初考えたのは、大きなポリバケツを置いて、屋根から降りてきている樋を途中で切って流しこめばいいんじゃないかということだったが、樋を素人が切ったりすると、へんてこなことになって、みっともないのも嫌だなあと、ためらっていたのだ。しかし、本職がやってくれるならそれに越したことはない。しかもポリバケツじゃなくて、水瓶だ。

 その水瓶は、天草で、100年ぐらい前に作られて、実際に水瓶として使われてきたものらしい。ドラム缶ほどの大きさで、陶器製。年代物の渋い茶色をしていて、実に趣深い。(写真はこちら

 これを家のわきに置いて、樋を途中から切って、水が入るようにしてくれた。出来上がってから、数日後に、パラパラと雨が降った。すると、ピシャピシャと音を立てて、水がたまり始めた。水琴窟ではないが、何だかいい音である。しかし、雨が少なかったので、下の方に10センチほどたまっただけだった。何だか頼りない。こんなんで、役に立つのだろうかと思っていると、更に数日後に、夜中にかなりの雨が降った。翌朝、ワクワクしながら、見に行くと、何ともう満杯で水はあふれて瓶の縁を流れ落ちている。これもまたなんともいい感じ。すっかり魅了された。

 晴れているときは、この水をジョウロに汲んで、庭に水やりができる。こんなに簡単に満杯になるのなら、災害時だってきっと大活躍するだろう。何より、タダというのがいい。今まで、雨水なんて、ただ流れていってしまうだけのものだったのが、瓶に満々とたまっていて、それを使うことができる。どうして今までこれを作らなかったのだろう。

 ネットなどで見ると、最近は結構この天水桶がはやりらしい。ホームセンターなんかでも、木の樽のようなものやら、プラスチックのやらいろいろ売っているが、結構高い。そういうのは、蛇口がついていたりするが、この蛇口も何にもない、ただの瓶が最高だと、すっかり悦に入っている昨今である。


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