73 聞くまえに調べよ
2010.12
ネット時代である。何か分からないことがあると、近頃の人間はすぐにネット検索をする。それでも分からないことがあると、「質問」を投稿する。すると、たいていは誰かがその質問に丁寧に答えて、ベストアンサーなどという印がついたりする。ずいぶん便利な世の中になったものだが、しかし、分からないとすぐにネットに質問を投稿するっていうのは、安易すぎはしないだろうか。だいぶ前のエッセイで「かしら」の意味を質問した人のことを書いたが、とにかくこういう人が多すぎる。
かくいうぼくも、先日、「若いツバメ」の語源が分からなくて、ネット検索のお世話になったばかりだから、「安易すぎないか」もないもんなのだが、しかし、少なくともぼくはまず辞書を調べた。まずは辞書を調べ、それでも分からなければ百科事典を調べ、それでも分からなかったらネット検索というのが、ものの順序ではないか。などというのは、あまりに時代遅れなのだろうか。
もっとも、テレビなどを見ていて、疑問に思うことがよくあって、そういうときに辞書も百科事典もちっとも役に立たないということはある。
ぼくなどの場合だと、俳優や女優に関してで、いったいこの人は何歳で、どういう経歴なのだろうという疑問がいつも生じる。こういうときは、すぐに手元のiPadでネット検索する。
すると、『ゲゲゲの女房』で水木しげる役をやった向井理が、なんと横浜市の出身で、それも我が家からそう遠くないところにある氷取沢高校の出身であることがわかったりして、とても楽しい。
先日などは、イトーヨーカ堂で買い物をしているとき、化粧品売り場のポスターの女の子に引き込まれてしまい、なんてきれいな子なんだ、これは沢尻エリカ以来の衝撃的美人だなどと思い、その化粧品のサイトを必死になって探し当てたところ、何のことはない、そのポスターの女の子は沢尻エリカ本人だということが分かって、再度衝撃を受けたりもした。
だから、ネットで検索すること自体は、決して悪いこととは思わない。
しかしである。言葉の意味が分からなかったら、まず辞書である。ネット上にも多くの辞書があるが、それらといい加減な個人的な意見とが混在している。若い人はまず信頼できる辞書を手元に置いて、労を惜しまずページをめくり(電子辞書でもいいけれど)、きちんとした言葉の意味を確認することを怠ってはならないだろう。