74 コタツの惨劇

2010.12


 冬はコタツに入ってテレビというのがやはり極楽である。しかしここにも予期せぬ危険が潜んでいる。

 先週の金曜日の夜、いつものようにコタツに入って横になってテレビを見ているうちに、ウトウトと眠ってしまった。しばらくして目が覚めて、ちょっと寝返りを打ったところ、目に激痛が走った。スワ何事! と思って飛び起きたが、どうやら自分の左手の小指が、ぼくの左目の目尻のあたりの白目の部分を突いてしまったらしい。あまりの痛さに、とにかく冷やさねばと、タオルを探して水につけたりしながらギャアギャア騒いでいるところへ、家内が風呂からあがってきて、この惨状に呆れかえっていたが、とにかく痛みはなかなか引かない。

 ああこれじゃあ、相当出血しているなあと思って鏡を見ると、目尻のあたりの白目はかなり赤くなっているが、想像したほどでもなかったので、ひと安心しているうちに、冷やしたせいか痛みも引いたので、その晩は寝た。

 翌朝、鏡を見てびっくり仰天。左目が、目尻といわず、目頭の方の白目まで真っ赤である。ほとんど白目が消失している。痛みはまったくないが、これは誰が見てもギョッとする状態だ。こんな目で学校へ行くと、また生徒がいろいろ聞いてくるだろうなあと思って憂鬱だったが、いい歳してそんなことで休むわけにもいかないから、シブシブ学校へ行った。

 案の定、職員室で会う教師たちが、まず驚いて、どうしたの? って聞いてくる。いや〜、寝っ転がってテレビを見ていたら寝ちゃってさあ、起きぬけに指が目に入っちゃったんだと、まことにトンマな説明をすると、気の毒そうな呆れたような、変な顔と声で、笑うとも笑わぬともつかぬ挨拶を返してきた。

 教室に行くと、さっそく目ざとく見つける生徒がいて、「あ、目が真っ赤だ。」なんていうから、正直者のぼくとしてはまたトンマな説明をすると、生徒の方は遠慮なく大笑い。まあ、受けたことはちょっと嬉しい。

 それから数日たっても、なかなか赤目は治らなかったが、ちょうど折も折、海老蔵が謝罪の記者会見をした。何と、左目が真っ赤だ。殴られて出血したのだろう。でもぼくの赤目よりきりっとしていてカッコイイ。腐っても鯛(海老?)といったところだろうか。

 翌日学校へ行くと、さっそく仲間の教員がすっ飛んできて、海老蔵も赤かったねえと言ってきた。そうだろう、これからは、ヨウゾウではなくエビゾウと呼んでくれたまえと言っておいた。


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