17 あたたかい、あたたかい。

2007.12


 暑さに弱く、寒さにも弱いのは昔からのことだが、とりわけ近ごろでは寒さが身にこたえるようになった。「老骨」という言葉が、やけに身近に感じられたりもする。「老骨」というのは、何も骨が年とったということではなくて、単に「年老いた体」を意味するに過ぎないが、「骨」は、「肉のない骨」を思わせるから、余計うそ寒い響きがある。

 それでも今までは、肌着としては、シャツの下に白い普通の綿の半袖、下の方はこれも白い綿の股引を定番として頑張ってきた。けれども、あまりに寒い寒いというぼくに、家内が、こういうのもあるわよと、イトーヨーカドーのチラシを見せてくれた。「ウォームビズ」ということで、ぴっちりとした長袖の下着と、タイツみたいな股引(?)で、色も、白・グレー・黒とそろっている。いったいどういうものかと好奇心にかられて、さっそく店におもむき、手にとってみた。

 素材は何だか知らないが、とにかくやわらかくて、あたたかそうだ。しかも生地は薄い。しかし値段をみてびっくり。上も下も、2800円前後。下着となれば、それぞれ1枚ずつというわけにはいかないから、大変な出費となる。しかし家内は、女性の下着なんかは結構高いものだから、いいんじゃないのという。そうか、女というものは、下着ごときに数千円を惜しげもなく払うものなのかと思いつつ、それなら試してみようと、上下3着ずつ買った。落語のCDなんかなら数万円もするセットものをすぐに買ってしまうのに、下着ごときに1万数千円を払うと思うと頭がクラクラしたが、まあこれは小遣いからの出費ではないからいいかと目をつぶる。

 さて、着心地、はき心地はどうかというと、これは素晴らしい。今までの寒さがうそのようだ。これなら暖房費も節約になる。なるほど「ウォームビズ」である。

 思えば、その昔、ぼくは大変な厚着だった。家の造りや暖房の事情が今とはまったく違っていたとはいえ、シャツの下の下着は最低でも2枚、その上にシャツ、その上にチョッキ(ベストのこと)、その上にセーター、そしてその上にジャケットなどの上着という感じ。下はどうかというと、パンツ(ブリーフやトランクスのこと)の上に、股引を2枚重ねてはいていた。それもラクダの股引だったと思う。

 結婚してから、そういう厚着は家内から禁止され、人並みの薄着になったが、しかし、寄る年波には勝てない。何はともあれ、あたたかいに越したことはない。


Home | Index | Back | Next