7.「彼女の記憶」
<記録映像> 1999 06 26 21:34
「うー。この部屋酒臭いわー。あかんー。うちはもう帰るー」
「保科さん、転がっててもだめだってば。ほら。立ってよー」
「うー。あかりんの鬼ー」
「もう、しょーがないなー。ほら、お部屋に行こうよ。ね」
「うー」
『早送り』
<記録映像> 1999 06 26 21:47
「わははははは。マルチ、良いではないか。良いではないか。もう一度見せてくれって。わはははは」
「だだ、だめですよ浩之さんー。ですからそこは、あの、あまりお見せしてはいけないと研究所のみなさんに言われてますしー」
「良いではないか。良いではないか。……お? これはなにかなー?」
「ひ、引っ張らないでくださいー。あ、はうぅぅ……」
「Stop! それまでヨ! 二人だけで楽しんでは、ズルイのデース」
「や。これは別にそんな……。って、レミィおい! それ、良く見たらバーボンじゃねーか! そんなもんグイグイ飲ってたのかおめーは! おいおい、強い酒だろう、それ!?」
「No plobrem! I`m nova! HA-HA!」
「うわ。こいつ、最初全然飲んでなかったから油断したぜ。ビールはダメだけど日本酒なら、ってタイプだったのか。この場合洋酒だけど」
「うわあ。お一人で三本も! すごいですー」
「ヒロユキもどう? おいしいヨ!」
「や。俺はもう十分酔ってるしー」
「NoNo! 遠慮しないで。ホラ♪」
「って、おい、まさかお前……」
「(んー♪)」
「う、うわあ。そんな、口移しで! すごいですぅー……」
「うへらぱー」
「ひ、浩之さんっ! そんなほとんど直角に倒れてしまって、平気なんですかっ!? あわわわわ……。目線がっ!」
「Yes! サスガ浩之! いい飲みっぷりね! 続きまして……、Go!」
「ああっ!? 倒れたところへ、のし掛かるようにして、さらにっ!?」
「(んー♪ んー♪)」
「けめれぽー」
「んふふー♪ まだまだなのデース」
「あ、あ、あ、お二人ともそんな、わ、若い二人が誰にも止められない行為を……。あ、あわわわわわ。わ、わたし、わたっ。はううう〜〜……」
ぷしゅー。
『SYSTEM DOWNに伴い録画終了』
『オーバーヒートが発生した模様です。各部点検後に再起動が行われます。再起動が行われない場合はクルスガワ・総合アフターサービスセンターに……』
無音の、部屋。
「残念ながら」
とっとと片づけをはじめながら、じーさんが淡々と言う。
「骸骨は映っておりませんでしたな」
……いや。
骸骨は映っていた。電源の落とされた黒い画面に映る、部屋の後ろの様子。何対もの、虚ろで極低温に冷ややかな眼差しをこちらに向けながら、ひっそりと影のようにのように立つ人々。それはまるで……。
――ああ、骸骨の群れだ――
弁明さえ許されぬ重い沈黙の中で、冷や汗すら凍りつかせて、俺はただ立ちつくし……。
「浩之ちゃん、ちょっと」
モニタの中央で、最近髪型変えた骸骨が手招きしている。
――ああ、死に神の手招きだ――
「京極夏彦風にしてもダメ」
にこやかに笑うその顔を見ながら、俺の中にはほとんど死の予感に近いものが広がっていった……。
BAD END(※「痕」のエンディングの音楽とかBGMに)
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