1998年8月中旬


<8月11日・火>
◇ 起床して昼過ぎに渋谷へGO! 途中とり・みき特集の「TVBros.」をゲット。全作品リストを見ると、遅ればせのファンとして、普通に入手できるものは全部購入していることを確認して、まあ納得。渋谷では、鉄人・坂井宏行の店なぞに足を運んで、ランチを喰う。昼間からワインなぞ3杯ほど。

△ 白金台の某所でプールなど。一泳ぎした後、プールサイドで「たそがれに還る」(光瀬龍、角川春樹事務所 760円)を手にぐっすりと眠ってしまう。

○ 映画「Kino!」の試写に京橋に出かける。この作品、CMプランナー、佐藤雅彦氏の映画監督デビュー作のである。この人の超短編集「クリック」を読んだ人なら分かると思うが、この映画もああいう独特のユーモアのあるエピソード6つをつなぎ合わせた超短編オムニバスである。この秋になんとか公開して(配給はまだ未定!)、来年春にはビデオ発売という流れなんだそうである。
 
 なんというかコンセプトの人の作品なので、「映画とりたいぜ」といってついつい恥ずかしいこと(むやみにパンする。感動的な(はずの)ラストに延々と主題歌をかけてみる。etc)をしてしまう異業種監督と比べたら、はるかに抑制の利いている作品であった。フィックスで長回しの画面が多いのも、映画的である。また、氏のCMはテンポよくコンパクトに進行するが、こちらはもっとゆっくりと流れるように進行するのも、CMと映画では別のリズムを作ろうとしているということなんだろう。そういう意味では、手慣れた人ならもっとテンポよく編集するところをわざと長めにしているように見受けられる部分もあった。全体の雰囲気はセサミストリートの中の短編といった雰囲気といえば一番通じやすいかなあ。それから、音楽は陽気で楽しかった。

 これが映画か、といわれれば?なのだが、佐藤雅彦がスクリーンで見ることを前提に製作した映像作品としては、ちゃんと水準の上に出ている。北野武の「その男、凶暴につき」を始めてみたときは、その荒削りさと彼なりの映画への主張の強さに、「まるで学生の撮影した映画だなあ」と思った。その感触はこの「kino!」にもはっきりとある。次をつくる機会があるのなら、その先へと歩みをすすめてもらいたいものである。

一応、いいところばっかり書いたので、課題を2点。@長編の物語を演出できるかどうか。これがないと商業映画として成立しにくいだろう。A@にも関連するのだが、役者をどうしても記号として扱いがちである。(スコーンのCM2本を見比べてもわかるとおり)。役者のカラダをどこかで拒否しているように見える。「Kino!」ではそれがある程度新鮮なのだが、映画の魅力の何割かは役者の立ち居振る舞いであるのも確実なこと。そのギャップをどう埋めるかである。

○ 目黒の鉄板焼き屋で夕メシ。 

○ 「Cの福音」(楡周平、宝島社 600円)を読了。面白い。情緒に欠けるタイプの”物語”(というのはドラマらしいドラマはない、と同義である)なので、読後感には一種独特のものがある。内面を描かないことでハードボイルドになっている、というべきか。ともかく、アイデア以外の部分でどう読ませてくれる作家なのか、という点はこれ以降の作品を読んでから判断するつもり。


<8月12日・水>
◇ 午後から渋谷で「L.A.コンフィデンシャル」を見る。映画館のある9階から階段で6階まで人が並ぶなど、ものすごく混んでいたが、係員の誘導がわりと丁寧で混乱はない。

○ 「L.A.コンフィデンシャル」は傑作である。久々にスキのない映画を見たなあというのが実感である。こういう映画で役者をほめてしまうとどうしても「味がある」とか、そういう紋切り型の表現になってしまうのだが、とりあえず役者についてはそうとしか言いようがないし、複雑なエピソードをすごくわかりやすく説明しているシナリオにも感服。一筋縄ではいかない正義というものを描いている点で現代的な作品であると思う。 

△ 映画の後カラオケ行って、それから新幹線に飛び乗り静岡県藤枝市へ帰省。車中で「たそがれに還る」読了。カタストロフを避けられないというラストがが、今さらながらに”新鮮”である。細かなガジェットが、いかにもSFである。 続けて「この人の閾(いき)」(保坂和志、新潮社 400円)を読み始める。 すげいおもしろいのでいす、と、いまさらながらシマリス(ぼのぼの、の)になってしまう。実家でワイン。そして、結婚する気があるのか、と十字砲火。めずらしく正面突破を試みる。


<8月13日・木>
◇ お坊さんがきて読経。「この人の閾(いき)」を読了する。また、ルパン三世についていろいろ考えてしまった。

○ どうやら、休みの前半でとばしすぎたツケがまわってきたらしく、結構疲れ気味である。夜は、父親とワインを飲んで午後10時には墜落睡眠。


<8月14日・金>
△ 午前中は父親が購入したという、DVDの性能試験(笑い)。「コンタクト」のメイキング(これはすごく面白い)を見たり、「レオン 完全版」の日本語吹き替えキャスト(大塚明夫と久川綾だった。うーん、ちょっと違うんだよなあ)を確認したり。しかし、いつの間にこんなにたくさんソフトを揃えたんだ? すでに二〇枚もあるとは。
 「コンタクト」の冒頭のシーンで、宇宙が子どもの瞳の中になるシーンでは、子役の目そのものまでCGで描かれていたことを知ってビックリ。

○ やはりLDに比べて、発色はいいように思う。LDとちゃんと見比べたわけではないが、「アマデウス」では衣裳のいろのニュアンスがかなり出ていると感じた。今回は液晶プロジェクターで見たのだが、ブラウン管で見ればもっとクリアになっているのではないだろうか。まあ、もともとソフトが優秀という可能性もじゅうぶんあるのだが、ハリウッド系の名画を中心にコレクションするのであれば、(つまりそれは、ウチの父親の購入の主軸である)、LDよりいいかもしれない。
 ちなみにこの間、聞きかじったLDの劣化について、父に教えていたら、ショックを受けていた。 

◇ 夕食は妹夫婦のオゴリで、特上寿司。うーん、豪勢である。ごちそうさま。寿司とワインで軽く準備をしたところで、ファミリーカラオケにレッツゴー。カラオケでは妹の旦那さまが、布袋寅泰なぞを歌ってけっこういい味だしていた。ボクが歌った曲は、だいたい相変わらず。

○ 帰宅してさらにワイン。明日仕事に(しぶしぶ?)いかなくてはならない妹の旦那はちょっと飲んだ後去りがたそうに、寝床へ。ボクと父は雑談しているウチに、白熱してしまい、午前3時半お互いがわかりえあないということを共通認識するに至った。


<8月15日・土>
◇ 静岡で家族で昼食。それから、新幹線で東京へ向かう。疲れがたまっているらしく、新幹線でイヤな汗をかきながら眠る。巣鴨に到着して、さらに眠って回復につとめる。晩飯はカレー。ほとんど飲酒しないめずらしい展開。

○ とはいうもののビデオで「クレヨンしんちゃん スペシャル」「空の大怪獣 ラドン」「じゃりん子チエ」を見る。「クレしん」はテレビスペシャルの内容なので、まあまあ。とにもかくにも、みさえは可愛い。
「ラドン」は、福岡が襲撃されるミニチュアシーンのデキが素晴らしかった。ここのところ、天災映画(ディザスタームービー)としての怪獣映画について考えたくてこのあたりの作品をみているのだ。「チエ」は山本二三氏の木造家屋の質感を再現した美術に圧倒される。最初は原作のイメージを守るために、わざとマンガ的なショットの積み重ねがいくつかあるのだが、中盤以降はほとんどそういう時間と空間の流れを無視した演出はなくなる。最初見始めたときは昔の印象と違って、あまりにマンガチックだと思ったのだが、それはわざとだったんだなあ。

△ 力つきて眠る。 


<8月16日・日>
◇ 鬼のように疲れているようで、朝食を食べた後、こんこんと夜7時まで寝てしまう。それから晩飯を食べて、再び眠る。でも「キングコング対ゴジラ」は見る。うん、うわさに違わぬおもしろさ。ドラマと特撮がちゃんと融合している。それから「ザ・シンプソンズ」も見る。で寝る。


<8月17日・月>
◇ 「原子怪獣あらわる!」(ナイトストーカーズ編著、フットワーク出版社 1300円)。USゴジラ便乗本といってしまえばそれだけ。アメリカ版の紆余曲折が大量引用してあって、それが読めるのがポイントか。個人的には、全ゴジラ映画についての架空ディベートはちょっと面白かったけれど、内容的にはちょっと薄いかもしれない。最後の座談会も、楽しそうで面白いけれど、本書のサブタイである「日本特撮ソフトの未来」は大仰すぎる。

◇ 「季節の記憶」(保阪和志、講談社 1600円)をほぼ読了。長いぶんだけ「この人の閾」のようなキレ味はない。けれどそのぶん登場人物の多彩さが魅力である。
 「予言の心理学 世紀末を科学する」(菊地聡、KKベストセラーズ 1505円)。ほぼ読了。まっとうな「予言」批判本。興味深いのは、心理学を疑似科学としていること。「超科学をきる」でも同様であったが、治療には有効な「仮説」だが科学的ではない、という指摘は、以前から聞いたことはあったが、あたらめて丁寧に説明を読むと新鮮であった。

△ やはり疲れ気味なので、「Lain」を見てさっさと眠る。


<8月18日・火>
◇ 仕事の1日。相変わらず眠いが、体調は悪くない感じ。それでも、さっさと週末になることを望んでいるのだった。血糖値が低いのかなあ。


<8月19日・水>
◇ 仕事の一日。会社で人事異動。いまの仕事をどう引き継ごう?。


<8月20日・木>
◇ マンガ「神童」(さそうあきら、双葉社 552円)1−3巻を読む。うーん、連載時におれは、ほとんど4巻分しか読んでいなかったようだ。これだけの助走があると知っていたら、もっと評価が違っていたのに。ええ、我が身の不明を今、恥じている最中です。
 まあ、実際に音楽やっている人からみたら、あり得ないエピソードが多いとか指摘されそうだけれど、さそうあきらの話術にけれんがないのが、それをだいぶ「リアルっぽく」みせているのだった。

○ マンガ「総理を殺せ」(森高夕次、阿萬和俊 小学館 486円)を読む。タイムスリップして、あの’95年に到着するという設定に、キングのデッド・ゾーンを掛け合わせたようなアイデアが秀逸。果たしてどんなラストを迎えるのか? ともかく風呂敷の広げ方はサイコーにスリリングで、これを薦めてくれた人に感謝。やはり自分の身の回りのマンガを読んでいるだけでは、意外な傑作はなかなか探しきれないからなあ。 

△ やっと週末で現実逃避ができるかと思うと、楽しい象。


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