守護聖対抗大運動会・その1「開会式〜徒競争」




■佳月より、はじめに。
このお話は拙作「クラスがえ」の設定に基づき、「ビタァ・スヰート・チョコレイト」のマコトさんが書いて下さった作品です。有無を言わさず奪ってきました(笑)。
このよくわかんない組み分けの運動会に至った、アホな経緯は「クラスがえ」をお読みいただくとわかりやすいかもしれませんが、とくに必須の内容ではございません。

それでは、以下よりマコトさんの作品となります。ごゆっくりお楽しみくださいv




チーム分けは以下の通りです。
        金組      黒組
      ジュリアス   レオナード
      フランシス   クラヴィス
      ランディ    ユーイ
      ティムカ    リュミエール
      オスカー    チャーリー
      マルセル    セイラン
      エルンスト   ゼフェル
      メル      オリヴィエ
      ヴィクトール  ルヴァ

◇◆◇◆◇


「ったく、行きがかり上仕方ないとはいえ、マジで運動会やるハメになるとは思わなかったぜ。」
アルカディア特設陸上競技場のフィールドで、アリオスはエンジュ相手に本音を吐いていた。
「乗りかかった船です。ここは最後まで見届けることとしましょうよ・・・」
エンジュもため息をつきながら、アリオスを宥めた。
事の発端は、ジュリアスがクラヴィスの態度に憤慨して小言を言った、と、ただそれだけの、いつものことだったのだ。
しかしそれがあらぬ方向へ転がっていき、最終的には気の合う同士で組替えをしたらどうか、というハナシにまで発展した。
だが、その組替えには思わぬ落とし穴があり・・・

まぁとにかく、先日のチーム分けは、守護聖対抗大運動会の組分けでした、と、まずエンジュが告げに言った先を間違えた。
レオナードあたりからにしておけばいいものを、真っ先にジュリアスに伝えたものだから、
「そうか。心得た。で、開催日はいつなのだ?種目などは決まったのか?
決まっていなかったら、一度聖獣の聖地からも守護聖たちを呼び、全員で種目についての協議をするのが民主的であると思うのだが。」
などと一気にハナシが具体化してしまった。
仕方なく、エンジュはその足で聖獣の聖地のまとめ役、影の首座とまで言われているヴィクトールを訪ね、
種目決定会議の日程をまず決めることになってしまったのだ。
それ以降、話がとんとん拍子に進み、今日のこのめでたい日(?)を迎える運びとなった。
エンジュと、そして先ほど愚痴を吐き出していたアリオスは、競技の見届け人という名の進行役兼トラブルシュータを仰せつかった。
「あ〜あ、いっそのこと仕事がトラブりゃよかったのによ。こんな面倒な役目よりよっぽどマシだぜ。」
というアリオス同様、熱でも出てくれないか、と消極的にこの運動会への不参加を願っていたエンジュは、自分の健康な体を呪った。

「ただでさえも、個性的で、ええっと、その、少しばかりわがままでマイペースな部分が多々ある守護聖の皆様が、団体競技を伴う対抗戦で勝負するなんて・・・
いったい、どんなトラブルが起こるか想像しただけで怖くなります!!
その進行役を・・・しかも、わが道を行く度では守護聖様方を上回る勢いのアリオスさんと一緒になんて・・・
無理です、私にはできません!!」
両宇宙の女王と補佐官が集まるお茶会に呼ばれ、迷惑この上ないこの重要な任務を仰せつかった時の自分の心よりの反論を、エンジュはこの場でも再度叫びだしたい勢いで思い出していた。
しかし、もう賽は投げられた。
やるしかないよね・・・

「宣誓!!」
「われわれ選手一同は」
「スポーツマンシップにのっとり」
「正々堂々と」
「時には反則もするかもしれねぇけど」
「なにっ、それはスポーツマンの風下にもおけぬ!!」
「するかもしれねぇけど、しねぇかもしれねぇだろ?」
「うぬ、ではしないほうで頼むぞ。」
「出来る限りな。」
「うむ。仕切りなおしだ、正々堂々と」
「戦うことを誓うぜぇ!」
「選手代表、金色こんじき騎士団・ジュリアス!!」
「なんだそれ、聴いてねぇぞ!?」
「今考えたのだ。なかなかよいチーム名であろう?」
「うっ・・・そんなら俺んとこはブラックトルネードだ!!」
「よかろう、選手代表、金色騎士団・ジュリアス!!」
「ブラックトルネード・レオナード!!」

おかしな選手宣誓をする、両チームのキャプテン(らしい)ジュリアスとレオナードの後姿を見ながら、エンジュは覚悟を決めていた。
その、握った拳は、確かに熱かった・・・

その後、ヴィクトールの指導による王立派遣軍式準備体操を終えて、競技開始。

第一種目は、サクリア対抗徒競争。
両チームの同じサクリアを司る守護聖のガチンコ100メートル徒競争である。
第一レースは地の守護聖対決。
レオナードチーム(以下黒組)のルヴァに対し、ジュリアスチーム(以下金組)のヴィクトールは
「ハンデ50メートル差し上げても・・・」
と苦笑いしていた通り、見た目にもわかるほど手加減して走っていたのだが、
30メートル以上の差をつけゴールイン!!
そして、ゴール後に
「なぜ手を抜いたのだ、あれではルヴァにも失礼にあたる!!」
とジュリアスに大目玉をくらっていた・・・

続いて夢の守護聖対決。
黒組オリヴィエは、7センチのピンヒールで大地を蹴って激走し、メルに大差をつけてゴールイン。
そのままロッカールームまでウィニングランをしていってしまったところをみると、
どうやら真剣に走りすぎて化粧が落ちてしまったらしい・・・

三レース目は鋼の守護聖対決。
年齢からいって、勝てる相手ではないはずの黒組ゼフェル相手に金組エルンストは大健闘。
(どうやら、好むと好まざるとに関わらず、レオナードに鍛えられた、というのが真相らしいが)
ゴール手前までいい勝負をしていたが、
「いいぞ、エルンストさん!!機械オタクのゼフェルなんかに負けるな〜!!」
というランディの余計な応援がゼフェルの耳に入り、闘志を燃やしてしまい、
ゴール寸前でものすごいスパートを見せたゼフェルが先にゴールイン。
この先、因縁の対決になりそうな、神風VS神鋼。
エンジュの頭は早くも痛くなり始めていた。

第四レースは緑の守護聖対決。
「熱くなることが格好いいなんて僕には到底思えないんだけど。」
と言っていた通り、黒組セイランはゆっくりと優雅に100メートルを歩ききった。
それでもゴールで待っていたメルと喜び合う金組マルセルの無邪気さが、
なんとか無気力傾向に傾こうとしている流れを押しとどめてくれた。

第五レース、炎の守護聖対決。
オトナ気ない二人による対決は、先ほどのレースと打って変わって熱い戦いになったが
金組オスカーがゴールテープを切る時にポーズを決めようとした一瞬のスキに、
黒組チャーリーがほんの少し早くゴールインしてしまった。
当然オスカーにはジュリアスの雷が待っていたが、
「早く走るにはこれが一番でっせ!」
と、チャーリーが身につけていた「地下足袋」を
「あんたまた、そんな格好悪いもんを堂々と履いてっ!!
恥ずかしいから早く履き替えてきなっ!!」
などと、オリヴィエにこっぴどく責められる一幕もあった。

第六レース、水の守護聖対決。
「よろしくお願い致します、リュミエール様。」
「ええ、ティムカ、お手柔らかに。」
と、優美に微笑んでいた黒組リュミエールだったが、
スタートのピストルの音と共に雄雄しいアスリートに変身。
金組ティムカに大差をつけて、先にゴールした。

第七レース、風の守護聖対決。
実力が高い位置で拮抗していて、この種目一番の注目レースとなる風の守護聖対決。
黒組ユーイはあせるあまり二度もフライングして進行役のエンジュをやきもきとさせる。
普通であれば相手が二回もフライングすれば、メンタルな部分から調子を崩しそうなものだが、
そういったものとは無縁の金組ランディ、ある意味すごいと言えよう・・・
いいレースとなったが、ストライドの差がモノをいって、ランディがユーイを下した。

第八レース、闇の守護聖対決。
これは全レース中、一番読めない対戦であったのだが、
30メートルを過ぎたあたりで、金組フランシスの呼吸器系統に明らかに異変が起き、
ドクターストップがかかったため、最後まで走り(?)ぬいた黒組クラヴィスが
勝利を収めた。
これ以降、フランシスは、酸素吸入をしながら参加することに。

最終レースは首座の守護聖対決。
長い髪を一つに結わえ、金色に輝く鉢巻をキリリと締めたジュリアスと、
執務じゃねぇから、とばかりに金色に輝く無精ひげを生やしっぱなしのレオナード。
どちらも、ランニングに短パンという陸上選手のいでたちが強烈に似合わなかった。
見た目はレオナードの方が速そうだったが、実際走ってみると、
日ごろの不摂生が祟ってか、予想外にスピードが出ない。
一方のジュリアスは、乗馬で鍛えた足腰と
「何人たりともこの神鳥の首座の守護聖ジュリアスの前を走るものはゆるすまじ!」
という異様なまでの信念で走りぬき、勝利を収めた。

全レースとも勝者に5ポイントが計上される。
第一種目を終え、金組25点、黒組20点、金組が5点のリード。

守護聖対抗大運動会は、まだ始まったばかり・・・

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