守護聖対抗大運動会・その2「障害物競走」




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チーム分けは以下の通りです。
        金組      黒組
      ジュリアス   レオナード
      フランシス   クラヴィス
      ランディ    ユーイ
      ティムカ    リュミエール
      オスカー    チャーリー
      マルセル    セイラン
      エルンスト   ゼフェル
      メル      オリヴィエ
      ヴィクトール  ルヴァ

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今回は、レオナード率いる(率いる?)ブラックトルネード(以下黒組)の選手ベンチにお邪魔してお送り致します。

とりあえず首座の守護聖として、黒組の代表におさまっているレオナードであったが、実質このチームを統率しているのは・・・
「次の競技は障害物レース、3人出さなあきまへんで!?」
あっ、いや、このヒトじゃなくて。
「う〜〜ん、3人かぁ・・・
そうだねぇ、障害物といえば、小回りが効く方がいいかもしれないねぇ・・・
だからまずゼフェルにユーイは決定だね、。で、あと一人は・・・」
そう、このヒト。
神鳥にこの人ありと謳われた名参謀、オリヴィエである。
「クラヴィス・・・そう、クラヴィスで行こう!!」
「ええ〜っ、クラヴィス様・・・でっか?」
「そう。この競技だけじゃないよ。私は決めた。
これからありとあらゆる競技にクラヴィスを出場させる!!」
「そ、それはネタ元への配慮・・・とかそ〜ゆ〜もんなんでっか?」
「違うよ、私は今日のクラヴィスを見てなにか、こう、感じるものがあったんだよ!!
きっと何かをしでかしてくれる、そんな気がしてたまらないんだよ〜!!」
オリヴィエはそうは言うのだが、チャーリーはじめ、まわりで聞いている者は一様に「???」という反応ではあった。そんな中、セイランだけが冷静な口調で、
「それって、クラヴィス様しかこのユニフォームがお似合いじゃない、って理由からくるものじゃないの?」
と、その理由を分析してみせた。
なるほど、黒組のユニフォームは、よくぞまぁこれほどまでに・・・としか表現できそうにないくらい、見事なカラスの濡れ羽色、あるいは吸い込まれそうな深い闇を表現したような、なんていうか、
とにかく、これぞ「黒」という「黒」のランニングと短パンなのである。
明るい緑の芝生、そして競技場の赤茶色、相手チームの光り輝く金色のユニフォーム。
その中で果てしなく浮いている「漆黒」。
そのうえ、
「俺のイメージだったら黒地に金色だろうけどよぉ、金じゃむこうのエライさんとかぶっちまうよな。
だから、あのヒトの一番苦手な配色を選んで注文しといたぜ!」
とレオナードが言うとおり、紫水晶の色をしたテープが襟、袖、パンツの裾を彩り、
背中には各々のネームが、同じ色でプリントされていた。
結果、このユニフォームがお似合いなのは、注文したレオナード本人でもなく、美を司るオリヴィエでもなく、クラヴィスただ一人となってしまったのだ。
「あ〜、セイラン、それは正しい見方かもしれませんねぇ。
でも、オリヴィエの直感にかけてみるのもよいかもしれませんよ。
クラヴィスが・・・承知すれば、ですけどね?」
ルヴァが優しい助け舟を出し、クラヴィスも
「別に。かまわぬ・・・」
と了承したので、黒組はクラヴィスの全種目出場が早くも決まってしまった。
「まぁ、全部出れば何か一つくらいは役に立てることがあるかもしれない、
という可能性は捨てがたいしね。」
負けずに皮肉を吐いたセイランが、リュミエールの凍てつくような視線を感じていたか否かは、本人しか知らないと思うけれどね・・・

「むむむ。相手チームの人選もまたこっちより更に訳わかんないね?」
スタート地点に並んだ6人の選手を目にして、オリヴィエがつぶやいた。
ユーイ・ゼフェル・クラヴィスの3人が挟んでいるのは、エルンスト、メル、そしてオスカーの3人だった。
「うっわ〜、6人揃うとすごい絵ヅラだなぁ、壮観だぜ!!」
とレオナードは笑っているが、理由が読めない3人だけに、不気味である。
黒組ベンチには、いや〜〜なかんじの緊張感が漂った。

ピストルの合図で一斉にスタート!!
まず最初の関門は、お約束の平均台である。
「おおっ、さすが早ぇなぁ、若いのは!!オヤヂ組もがんばれよ〜っ!!」
と声援を送るレオナード、あんたに言われたくない、という感じではあるが。
ユーイ、ゼフェル、そして裸足のメルが楽々と通過し、続いてオスカーも余裕を持ってクリア。
エルンストは覚束ない足元で何度か落ちながら必死でクリアするが、クラヴィスはその隣でやる気がなさそうに、しかし案外しっかりした足取りで第一関門を突破した。

その頃には、すでにトップ集団の三人は、多少苦労しながらも、第二関門の網くぐりを終えて、三番目の飴探しに挑戦していた。
大柄なオスカーが網くぐりに苦労している間に、後から来たエルンスト、なんとこれをすごいスピードで器用にくぐりぬけ、オスカーをぬいてクリア!!
「わわっ、エルンストにあんな特技があったなんて知りまへんでしたで、こらびっくり!!」
「なるほどねぇ、このために起用されたエルンストだったわけか・・・」
と、オリヴィエも納得。
大方、筋肉フェチのヴィクトールがデータから選んだ、といったところが真相なんだろうけれど。
クラヴィスは、大きな体で、しかしこれも柔軟に、可もなく不可もなく、といった風情でクリアした。
この時点での順位は、ユーイ、ゼフェル、メル、エルンスト、クラヴィス、そしてオスカー。

第三関門は飴探し。
小麦粉の入ったバットの中から、手を使わずに口だけで飴を探すという、例のアレである。
トップ集団の三人が案外苦労している間にやってきたエルンスト、勢いよくバットの中に顔をつっこんで、そして
「ああ〜、エルンスト、メガネが真っ白です〜、これでは大変ですねぇ。」
ルヴァが言うとあまり大変には聞こえないが、実際エルンストの身になってみればたまったものではない。
プチパニック状態である。
そのうちに先頭集団が、ゼフェル、メル、ユーイの順番で抜けて行き、
「何やあの速さっ!!オスカー様、速すぎるで!!」
「餅は餅屋ですね、チャーリー。普段唇を使い慣れている人は、やはり違うのでしょう・・・」
うっすら怒りスジを立てながらのリュミエールの感想どおり、オスカーはすごい速さで飴探しをクリア。
結局エルンストが飴を見つけてメガネについた小麦粉を払い終わった時には、クラヴィスも第四関門のスケボーに挑戦していた。

普段から遊び慣れているゼフェル、身体能力が全般的に高いユーイ、そして裸足という特徴を
最大限に生かしたメルの順で、まぁ順当に第四関門を抜けていく。
続くオスカーがギャラリーにサービスしているタイムロスの間に、クラヴィスも抜けて行く。
結局オスカーが最後の関門に辿り着いたのは、エルンストより後であった。
「あれ、ベンチに帰ったら、最愛の上司のお小言がさっそく待っているね、ククク・・・」
セイランならずとも、クスリと笑いたくはなる、お約束がすぎるオスカーである。

さて、最終関門は、所謂パン食い競争である。
高い位置にぶら下がったパンを、ジャンプして、手を使わずにくわえてゲットして、走って、ゴール!!となる訳だが。
小柄なゼフェルとユーイ、そして八重歯が邪魔になってどうにもうまくくわえられないメルが四苦八苦していたが、そこに・・・
「ああっ、クラヴィス様っ!!クラヴィス様がっ!!」
リュミエールが興奮して叫んだのも無理はない。
後から来たクラヴィス、悠然とパンの真下まで歩くと、軽く背伸びをしてパンをゲットして、そのまま決勝地点までゆっくり歩いて、一番でゴールしてしまった。
「畜生〜!!クラヴィスの野郎、少し背が高いからって人を馬鹿にしやがって!」
同じチームのはずだが、ゼフェルの悔しがり方は尋常ではなかった。
別にクラヴィスにしてみれば、ゼフェルを馬鹿にしている気など毛頭なく、
ましてや勝つ気などまったくなかったのであるが、いろいろな状況が重なり、無欲の勝利を収めた。
二位は、クラヴィスに抜かれたことなどまるで意に介さずに、自分のペースでパンをゲットしたオスカーが続いた。
四位以下、メル、エルンスト、そしてゼフェルは怒れば怒るほどコントロールが定まらずに最後までパンをゲットすることが出来ず、最後にゴールとなった。

一位を示す赤いリボンを胸につけて、クラヴィスがベンチに帰ると、リュミエールが
「クラヴィス様、先ほどのレースは素晴らしかったです!!お疲れではないですか?
特製ハーブティでごゆっくり休憩なさいませんか!?」
と、いささか興奮気味で出迎えた。
「休むヒマはないよ、次の種目にも出てもらうからね、クラヴィス!!」
鬼監督・オリヴィエは、でも、クラヴィスの起用があたり、嬉しそうではあった。

一位に10点、二位に5点、三位に3点が加算される。
第二種目を終わって、金組28点、黒組35点、黒組7点のリード。
勝負の行方は、まだ見えない・・・

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