先にも紹介したように、歩幅を短く、ゆっくりとしたペースで歩くのが基本です。登りでも下りでも、フラットな路面を普通に歩くときの半分ほどの歩幅で、肌にうっすらと汗をかく程度のペースが目安です。
シューレース(靴紐)は、登りの際はあまり締めすぎないように、ややゆったりめに結びます。逆に、下りでは、どうしても靴の中でつま先側に足が寄りすぎる形になりやすいのできつめに締めるようにするのがコツです。といっても、むやみに締めあげると、血行を阻害してマメや靴擦れあるいは凍傷などの原因となるので、適当な加減にすることが大切です。ウェアの項でも、レイヤードをこまめに調節することが大切だと書きましたが、シューレースの結び加減も、状況に合わせて微調整を繰り返すのがアウトドアでの歩行のセオリーです。
登山靴や軽登山靴を履いている人で、余ったシューレースを足首に巻き付けている人を見かけますが、これは、血行と足首の動きを阻害するのでやめましょう。もちろんシューズのアッパーを傷つけて、シューズの寿命を短くすることにもなります。シューレースが長すぎたら、適当な長さにカットして使いましょう。ちなみにカットした端がほつれないようにビニールテープを巻いたり、火で炙って末端処理を行っておくといいでしょう。
●追記
一口にゆっくり歩くといっても、人それぞれで差があります。ソロの場合なら、自分でもっとも息があがらない楽なペースで歩けばいいでしょう。パーティを組んでいる場合は、メンバーの中でもっとも体力がない人のペースに合わせるのがポイントです。といっても、歩くペースが極端に遅くなってしまうような場合は、ペースの速い人にとっては、逆に疲労が増す原因になります。そんなときは、ゆっくりめのパーティと早めのパーティに分け、大休止のときに全体のペースを調整するようにするといいでしょう。
また、歩き始めは、急に体に負荷がかかるため、かなり苦しく感じますが、20分も経つと循環器が定常状態に落ち着いて楽になるものです。最初のうちは、苦しくても休みたい気持ちをぐっとこらえるのがポイントです。出だしで弱音を吐いてすぐに休憩してしまうと、休憩癖がついて、後のペースががっくりと落ちてしまうことになります。
ガレ場とは、岩屑などが堆積した足場の悪い場所のことです。とくにガレ場の斜面を歩く際には、浮き石を踏んだり、落石をおこさないように注意することが大切です。浮き石とは、岩のエッジに引っかかったり緩い地盤に不安定に載っている石のことで、不用意に足を載せると石ごと滑り落ちたり、あるいは落石を誘発する原因となってしまいます。ガレ場で、浮石を踏まないコツは、よく足場を見極め、踏みだした足には一気に体重をのせないで、ゆっくり重心移動するようにすることです。
また、あやまって落石をおこしたときは、急いで下にいる人に向かって叫び、危険を知らせましょう。登山では、そんな場合「ロック!!」と大声で叫ぶことになっています。
●追記
トレッキングの行程の中でガレ場があるなら、ジョギングシューズのような軽い靴ではなく、足首まで保護するブーツタイプの靴を履いたほうがいいでしょう。ソールは、不安定な地面でもしっかりとフリクション(摩擦)の効くビブラムのようなブロックソールが安心できます。ぼくは、そんなシチュエーションが多く想定されるようなコースを行く場合には、爪先に安全靴のような補強が入った、ビブラムソールのワークブーツを使います。これは深さ8インチで、くるぶしはもちろん足首もしっかりとガードし、小石なども入りにくく、ハードな状況では理想的なブーツです。ちなみに、ICI石井スポーツのオーダーメイドで4万円近くしましたが、20年近く愛用して、まだまだ現役です。