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僕は図書館にすわって詩人の作品を読んでいる。広間には多くの人がすわっているが、ほとんどそれを感じさせないほど静かである。だれも本に読みふけっている。ときどきここかしこでページを繰る人が、夢から夢へと移るときに寝がえりをするように身動きするのみである。ああ、読書をしている人々に囲まれているのは、なんと快いことだろう。

 


 

ライナー・マリア・リルケ「マルテの手記」望月市恵訳・岩波文庫


 

 

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