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美こそ、本物の神秘であり、魂の神秘よりはるかに興味をそそるものだ。若い娘の顔の美しさは完璧なもののように見えるが、この完璧さはみずからに自足することなく、人に呼びかけ、約束をかわし──その約束を守らない。その背後には神の手がある。神の手か、じつは悪魔の手か、それは分からない。二十歳の若者は、そんなことを分かろう思うこと自体をばかにしている。ただひとつ確かなのは、永遠なるものは、魂である以上に肉体だということだ。

 


 

クリスティアン・ボバン「いと低きもの 小説・聖フランチェスコの生涯」中条省平訳・平凡社


 

 

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