寂然法門百首 8
2019.6.14
入苫蔔林不臭余香
春の夜の闇はいかにとたづねきてたゞこの花の香をのみぞかぐ
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【題出典】
若人入苫蔔林不嗅余香。誰復楽二乗功徳。
若し人苫蔔林に入らば、余香を嗅がず。誰か復た二乗の功徳を楽(ねが)わん。
【歌の通釈】
春の夜の闇はどうだと尋ねて来て、ただ梅の花の香りばかりを嗅ぐよ。(維摩の室に見舞いに行くと、ただ仏法の香りばかりがしたよ。)
【考】
維摩の室を尋ねると仏の功徳のみを聞く。これを、春の夜の闇で梅の香ばかりを嗅ぐという古歌の心より詠んだ。(中略)春の夜の闇の奥に、梅の香りとともに維摩居士が現れる。
(以上、『全釈』による)