48 微熱中年

1999.1


 だいたい何度ぐらい熱があると、学校や会社を休んだりするものなんだろうか。

 昔勤めていた学校では、40度の熱があっても、授業は絶対休まないという英語の先生もいた。いかにも熱がありそうな顔をしているので「熱あるんじゃないの?」と聞くと、「多分あると思います。」と答えたりする人もいる。いずれも理解に苦しむ。

 40度の熱で授業が出来るなどということは論外だが、「多分」と言って済ませるというのも信じられない。多分などと言う前に、ぼくなら最低でも3回は体温計で計っている。家内などは、「そんなに何回も計ったって、意味ないわよ。」と言うが、計らずにはいられない。意味の問題じゃないのである。

 微熱というのは何度ぐらいのことを言うか、ということを先日ラジオでやっていて興味があったのだが、それによると、なんと微熱とは7度台の熱をいうのだそうだ。ちなみに、中熱が8度台、高熱は9度以上のことだという。高熱はわかるが、7度9分が微熱というのは何とも納得がいかない。

 ぼくの場合は、いわゆる平熱が5度台であるせいか、もう6度台が微熱である。7度台はまあ、中熱。8度以上は高熱に決まっている。何だか寒気がすると思って熱を計り、6度5分だったら、「あっ、熱っぽい」と判断するのである。6度7分だったらかなりやばい。7度あったら、完全な病気である。

 そういう判断のもとに「今日は、熱が7度もあるから、休もうかなあ」と言うと、「7度なんて熱じゃないわよ。行きなさいよ。」という家内の反応が返ってくる。7度ぐらいの熱で休むなんてだらしない、と家内は思うわけである。そういわれると、我ながら自分が情けない男に思えてくるのだが、しかし、今は7度でも学校に行って8度に上がったらどうするんだという恐怖が先に立つ。それこそ高熱じゃないか。そういう葛藤は家内には金輪際理解されない。

 もっとも、熱を出すことが少ない上に、不思議なことに熱が出るのは決まって長期休暇だったり、授業のない日だったりするから、熱のために授業がつぶれたということは、この10年間でもほんの2〜3日しかない。先日も「高熱」を発して4日も学校を休んだが、3学期の高校3年担当なので、授業はつぶれなかった。「授業孝行」ということかもしれないが、ぼくにとっては、そして多分生徒にとっても、「うまみ」のない話である。