15 辛口ラモス

1998.6


 ワールドカップの日本対クロアチア戦。サッカーにそれほど興味があるわけではないが、やはり見てしまった。案の定というか、やっぱりねというか、なんかそんな感じで、結局負けてしまった。

 地上波のNHKでは、ラモスが解説をしていたのだが、彼のちっともはしゃがない、どちらかというと暗い表情の解説がうっとおしくて、試合がおわるまでは衛星放送の方を主として見ていたのだが、試合が終わったあと、地上波の方にチャンネルを変えたところ、ラモスがものすごく怒っていた。何人かの選手が、ちゃんとやってないというのだ。

 ぼくはサッカーを見慣れていないから、全員懸命のプレーをしていると思って見ていた。第一、ワールドカップまで出かけていって、全力を尽くさない選手なんているはずがないと頭から思いこんでいたのだ。しかし、ラモスはカンカンだった。女性のアナウンサーが困って、「では全国のサポーターの皆さんに感想を聞いてみましょう。」ということで、カメラは全国の様々な場所に集まって応援していたサポーターを映し出した。すると、そこにいたのは、敗戦を悲しむどころか、テレビに映ったということではしゃぎまわるガキの群だった。そして次ぎにラモスの表情。白けているというのはあのことだろう。「みんな、何とか逃げ場を探しているんですよね。今度勝てばいいと。でも、今度勝ったってしょうがないじゃないか。」ラモスは言い放った。

 ラモスの頭にあったのは、勝つことだけだった。だから負けたとき、徹底的に批判した。全力を尽くしていないのだと批判した。サポーターは、もちろん勝つことを願った。しかし、本当は、自分たちが騒げればそれでよかったのだ。勝てなかったけど、1点しか入れられなかったなんてよくやったよ、今度頑張ればいいよ。そうみんな言っていた。ラモスだけは、それを許そうとしなかった。お祭り騒ぎの中で、そんなラモスの辛口の批評が強く心に残った。