10 教師の服装

1998.5


  教師の服装というのは難しい。少し前だったか、どこかの県で、教師の制服を支給するとかいうことがあって、だいぶ議論になったような気がするが、その後どうなったか、とんと報道がない。生徒の制服についての校則の厳しさはいつも話題になるが、教師の方はたまにそういう報道があっても、まあこんなものだ。

 教師というと、ジャージのイメージがあるが、どうして教師はジャージが好きなのか?ぼくが思うに、ジャージ姿は身を粉にして働いてますよというアピールなのではないか。その証拠に、たまに、ぼくなどでも必要があってジャージ姿になることがあるが、たいてい生徒は「お、先生、やる気だしてますね。」みたいなことを言う。

 都立高校に勤めていたころ、タートルネックのセーターの上にジャケットなどを着ていくと、同僚の教師から、「だめじゃない、私服なんて着て」と嫌味を言われたものだ。で、今の勤務校に移ったとき、毎日ネクタイを締めて行ったら、同僚の教師から「銀行員みたいですね。」とからかわれた。銀行員ほどの給料をもらってないのに、銀行員みたいだと言われるのも心外だから、すぐにやめた。

 ところが、だんだん年をとってくるに従い、着るものが難しくなった。ネクタイ姿でないとすると、着るものがどうもない。柄もののシャツなどを着ると、いかにも野暮ったい中年のオジサンが趣味で講師をしているみたいな雰囲気になる。それで何年かネクタイで通したが、これも何だか窮屈で、何かないかなあと思っていたところ、スタンドカラーのシャツに行き着いた。はじめ遊び着として買ったものだが、そうそう遊びにいくわけでもないので、もったいないから学校へ着ていってみた。

 似合うねだの、お洒落だねだのと言ってくれる生徒や、同僚もあったりするので、よし、当分はこれでいくかと思っている。ちょっとしたことが、日々の暮らしを明るくする。苦しい日々には、服装が支えになることだってあるのだ。