91 クールビズ

2005.7


 いわゆる「クールビズ」なるものが提唱されて、国の偉い方々がこぞって(でもないが)ノーネクタイ姿でテレビに出るようになった。それがお世辞にも「似合っている」とはいえない「なんか変」な姿なので、ファッションにうるさい女性の評論家などは「やっぱりネクタイというのは男にとっては有り難いファッションアイテムだ」というようなことを新聞にも書いたりするものだから、もともとファッションに自信のない男どもは、「やっぱり、かっこ悪いか。」と思ってしまって、せっかくの地球温暖化対策もこのままでは台無しになりかねない情勢である。

 地球温暖化はほんとうに人類の存亡にかかわる重大問題なのだという認識があれば、少しぐらい男たちがかっこ悪かろうとそんなことはどうでもいいはずで、そういう認識のない女性の「ファッションチェック」ほど罪深いものはない。そういうチェックにいちいちビクビクして本当に大事な問題を忘れてしまう男どももだらしない限りだ。

 職場の効き過ぎの冷房の中で悩む女性は、たとえ上司が噴飯モノの「クールビズ」で会社にやってきても、影でヒソヒソ「何あれ。センスわるい。」なんて陰口をたたくべきではない。南の国では、島が沈没してしまいそうなのだ。アルプスでは氷河が溶け出しているのだ。センスどころではない。たとえ部長がステテコで夕涼みしていても、笑うべきではないのだ。それよりも、女性の目を気にして、「やっぱりネクタイだ。」と頑固にファッションのポリシーを守ろうとするオヤジどもにこそ鉄槌をくだすべきなのだ。

 と息巻いてはみたものの、ノーネクタイのオヤジがテレビに氾濫するのを見るにつけても、絶望的な気分になってしまうのも事実である。ファッションにばかりうるさい女たちにも腹がたつが、あまりにもみっともないオヤジどもも腹立たしい。といって、いかにもデパートで女房や店員の口車にのって買わされたとしか思えないヘンテコな「カジュアルファッション」に身を包んで、「どうだこれがクールビズだぜ。」と、やにさがっているオヤジをみると、幕府の犬め、少しは権力に抵抗しろよ、恥ずかしくないのか、と言いたくなる。

 ところで、ぼくはもう何年も前からネクタイをやめて、スタンドカラーを仕事着として着てきた。最近、生徒に「お、クールビズですね。」と言われて、「ふざけるな! 前からこうじゃないか!」と言い返してしまった。難しい年頃です。


Home | Index | Back | Next