68 200年

2005.1


 うちのお墓は、横浜の日野公園墓地内にある。日野公園墓地といえば、美空ひばりの墓地があることで、その道の人には有名である。だいぶ離れてはいるが、同じ敷地内にあるというのは、まことに光栄という他はない。同じ敷地といえば、うちのお墓のほんのすぐそばに、松山家というお墓があるが、映画監督の松山善三家のお墓だと父から聞いたような気がするが、真偽は定かではない。

 さてそのうちのお墓も、亡くなった父が墓石を新しくしてから、かれこれ30年近くもたち、御影石の墓石はきれいなのだが、周辺部の石が大谷石なので、いたみがひどく、その上去年の台風で卒塔婆立てが割れてしまった。そんなわけで、母の強い希望で、知り合いの石屋さんに頼んで全面リニューアルすることになった。墓石はそのままにして、あとは全部石を取り替えるということになり、金額も相当なものになるが、母の決意は堅い。

 お墓を直すということになると、「お浄め」の儀式が必要だそうで、母と家内とでその儀式をしてきた。お坊さんは呼ばずに石屋さんの指示に従って簡単にしたのだが、墓の四隅に、お米と塩とを盛り、酒を注いだ。後はお線香をあげて、お祈りするだけ。

 そのあと石屋さんは、いろいろと詳しく工事の説明をしてくれた。大谷石だと柔らかいのでどうしても崩れてしまいますが、今度は御影石だから丈夫です。だいたい200年は持ちますと胸をはった。

 200年もったってねえ、と後で家内とため息ついた。200年というと、由宇君(孫の名前です)の何代後になるんだろう。30年周期でいったって、6代目か7代目になるよ。ぼくなんか、知ってるのはひい爺さんの世代までだからなあ。だいたい200年後なんて世の中どうなっているんだろうか……。

 考えれば考えるほど、不思議な気分になる。うちのお墓に入っているのは、ぼくの祖父・祖母・父・叔父(幼くして亡くなった父の二人の弟)だけだ。その前の人は入っていない。では、その人たちのお墓は、今どうなっているのだろうか。どこかの「先祖代々の墓」に入っているのだろうか。そういえば、祖父が長男だったかどうかさえ、ぼくははっきりとは知らないのだ。いいかげんなものだ。

 そもそもカトリックのぼくら夫婦が、この仏式のお墓に入れるのだろうか。そんなことさえ曖昧である。でもなんとかなると思っている。いいかげんな性格は、たぶんぼくの子孫にも受けつがれているだろうから。


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