54 何色なの?

2004.10


 体育祭とか運動会とかいうと、たいていは赤組と白組の対抗となるが、勤務校では各学年4クラスなので、縦割りで4色対抗となる。数年前からその色別に、生徒がデザインしたTシャツを着るようになった。もともとは、ある学年の体育祭実行委員の生徒の発案だったのだが、作ってみると、それまでのハチマキよりは数段目立つし、きれいなので、毎年クラスごとの色別Tシャツを作ってきた。

 色は、昔から赤・青・黄・緑、あるいは赤・青・白・緑ぐらいと相場は決まっていたのだが、毎年同じでは芸がないということだったのだろうか、今年の実行委員会は、赤・青・ピンク・紫という「革新」を行った。男子がピンクのTシャツかよと思ったが、まあ好きにするさと思っていたら、そのできあがったピンクのTシャツが、ごく薄いピンクだったので、思わず「何だかナースの服みたいだなあ。」と言ったら、生徒の顰蹙をかってしまった。

 体育祭の前日、色別の応援団の応援合戦のリハーサルを見ていたら、紫組の応援団が、「紫と言えばー?」「おばあちゃんの髪の毛!」「紫と言えばー?」「みんなの好きなキャベツー!」なんて叫んでいる。こういうのはたいてい三ついうものだから、三つ目は何かと待っていたら、それで終わってしまった。「何だ、もう一ついえばいいのに。オハギー! とかさ。」と呟くと、横にいた教師が、「オハギが何で紫なんですか?」って言う。「だって、そうだろ? アンコは紫じゃないの。」「紫なわけないでしょ。茶色ですよ。」「何言ってんの! アンコが茶色なんて! キタナラシイ。第一アズキ色っていうだろ。」「それはその言葉に惑わされているんですよ。アズキはアズキ色でも、アンコになると茶色に変わるんです。少なくとも、ぼくが食べてきた東京、下町のアンコは茶色でした。」敵は、一歩も引かない。

 家に帰って家内に聞いたら、「黒!」。「まあ、そういうのもあるけど、じゃあ、茶色か紫かって聞かれたら、どっち?」「それなら紫かな。」どうだ、やっぱりオレが正しいんだ、と溜飲を下げた。

 翌日しつこくその話題を引っ張っていたら、うんざりした顔で「そんなに言うなら、色の専門家の美術の先生に聞けばいいでしょ。」と厄介払いするように言う教師がいるので、美術教師に「アンコって何色?」って聞くと、即座に「茶色」との返答。いったい、アンコって何色?


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