78 ネンショウケー

2003.5


 CMにもいろいろあるが、中には一度聞いたら忘れられず、そのフレーズが何かというと口をついて出てくるのがある。CM作家としては冥利につきるのだろうが、こちらとしては結構迷惑だったりする。

 最近の極めつけは、何と言っても「ネンショーケー、ネンショーケー、アーミノ式」という、あれだろう。最初のバージョンでは、駅のホームで女の子がいきなり回転し始める。頭の位置をまったく変えずにその場で風車のように回る。歌は「こんな運動しなくても」と歌い、「アミノ式」を飲めば十分体内の脂肪は燃焼するよ、と訴える。「しなくてもどころじゃない、できっこないよ」と誰でも思うだろう。そこがねらいのCM。

 第2のバージョンは予想を遙かに超えたものすごいものだった。垂直に突っ立った鉄棒に、ネクタイ姿の男が飛びついたかと思うと、両手で鉄棒を持ち、足を斜め上に突き上げ、その足の伸縮の反動で(?)そのまま鉄棒を尺取り虫みたいに登っていってしまう。とても人間業ではないが、コンピューターの合成でもなさそうだ。「ほんとにやってるんだ」という話もどこかで聞いた。ここでも「こんな運動しなくても」と歌う。「できるわけねーだろ!」と怒ればCM作者の思うつぼだ。

 こうした運動のイメージと同時に印象的なのが歌のメロディーだ。

 先日ぼくのクラスの生徒が、「er」の発音を習ったばかりとみえて、その発音だけでこの「アミノ式」の歌を合唱しながら教室の掃除をしていた。「あ・あ・あー、あ・あ・あー、あーああああー」とでも表記するしかないが、この「あ」はもちろん、日本語の「あ」の発音ではなく、「あ」と「え」の中間のような例の音である。この音で8人ほどで合唱するのだから、放課後の教室はまるで動物園のアシカの檻状態。

 それ以来、ぼくの頭の中でも、しきりに「ネンショーケー、ネンショーケー、アーミノ式」のメロディーが鳴り響くようになってしまった。しかしこのメロディー、なんでこんなに耳に残るのだろう、と考えているうちに、ふとこれはディズニーの「ミッキーマウスマーチ」のメロディーに似ているということに気づいた。似ているどころではない、リズム(?)が異なるだけでまったく同じではないか。

 盗作問題にもなっていないところからみると、これはきっと「ミッキーマウスマーチ」そのものをアレンジしたものに違いない。だからまたこんなにも頭に響いてしまうのだろう。困ったCMである。

●おまけ:「ミッキーマウスマーチ」はこちらでちょっとだけ聞けます。

http://www.din.or.jp/~mercury/m_merch.htm


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