61 お湯かけて
2003.1
「ばや」っていうのは「希望の終助詞」だぞ。いい加減に覚えなさい。「東京へ行かばや」といったら「東京へ行きたい」という意味だ。未然形に接続するから、これもよく覚えておくんだよ、いいかい? と口を酸っぱくして言いながら、つまらなさそうな生徒の顔を見ると、つい横道にそれてしまう。
「ばや」っていうとさあ、オレなんかはすぐに、「ぱやっ。ぱや、ぱやっ……」っていうのが口をついてしまうのね。恥ずかしいからちょっとしかメロディーを付けない。だから、生徒はぽかんとしている。(そういえば、友達の後ろからちょっとちょっとと言って振り向かせ、何? って聞かれたら、「ぽかーん」っていう遊びがあったんじゃないだろうか。)
で、ぽかんとした生徒に、ほら、最近やってるだろ? 「お湯かけ〜て、お湯かけ〜て、スープパスタなの」ってCM、というと、ああ知ってる知ってると半分ぐらいがうなずく。あれは、パロディーなんだぞ、あれには元歌があるんだから、間違えるなよ。あれはね「追いかけ〜て、追いかけ〜て、すがりつっきったいの〜」というんだ。ザッピーナツの歌なんだけど、知ってるか?
そんなの知ってるわけないが、ときどき知っているものもいる。ついでに言っておくけど、「ザ・ピーナッツ」じゃなくって「ザッピーナツ」だからな、間違えるなよと、これは正しくないことなので、口には出しては言わない。
それにしても「お湯かけ〜て」のCMにはびっくりした。頭のいいヤツがいるものである。とてもこんなもじりは考えつかない。つくづくCM業界の層の厚さを感じてしまう。
CMになるとチャンネルを変えてしまうとか、CMが嫌いだからNHKしか見ないとかいう人がいるけれど、そういう人の気が知れない。テレビは何といってもCMが面白い。何度見ても笑い転げるものから、何度見ても罵倒せずにいられないものまで、その面白さは格別だ。
「どーしてみなさんポリデントなんですか?」というCM。おばあさんが「さっぱりします〜」と答える。その発音が面白くて、その度にマネしている。マネしないではいられないのだ。そのあと、オジイサンが答える。「家内にもすすめています」。このアクセントがおかしい。これもマネする。次に、すすめられた「家内」とおぼしきおばあさんが舌をぺろりとだして笑う。その舌が妙に生々しくて気持ち悪いので、「舌を出すな」と罵倒する。20秒で十分楽しい。
【おまけ】http://www.fukuchan.ac/music/j-sengo1/koinofuga.html
を開いてみてください。「恋のフーガ」をカラオケで歌えます。
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