48 肖像権

2002.10


 なんでもすぐ金儲けのたねにするヤツがいて、例の「たまちゃん」騒動が横浜に飛び火して、いまだ収まらないのをいいことに、「たまちゃんグッズ」を全国発売する会社があるという。携帯のストラップで、起きてるたまちゃんと寝ているたまちゃんの二種類。そんなことはどうでもいいが、それを知らせる新聞記事に「肖像権も問題にならないので、商品化はすぐにできる」という談話が載っていたのには、ちょっとびっくりした。

 どこかの海から流れ着いたただのアザラシごときに「肖像権」などないことは当たり前のことなのに、わざわざ「肖像権の問題はない」と言うということは、いちおう「肖像権問題」が議論されたということを意味する。議論はあったのだが、「問題なし」となったということなのだろう。

 銀座のカラスの携帯ストラップを販売しようとしたとしても、だれもカラスの肖像権など問題にしやしない。それが「たまちゃん」だと問題になるのはなぜだろうか。

 「たまちゃん」はもう単なる「アゴヒゲアザラシ」ではないということだ。だれがつけたかしらないが、安易ながらも「たまちゃん」という名前を与えられ、マスコミによって商品化された「アイドル動物」なのだ。「アイドル動物」の映像は視聴率を稼げるから金になるわけだ。テレビはその「アイドル動物」を肖像権を考えずに映像として垂れ流し続けることができた。

 考えてみればうまい話である。かわいい動物でもそれが誰かが所有するペットなら、放映料をとられる。野生動物なら誰も文句はいわない。だからこそ、宮城県に現れた「ワモンアザラシ」は、「ウタちゃん」とすぐに名付けられ、「アイドル化=商品化」されたのだ。もっともこっちはあっという間に消えたようだが。

 マスコミにとっての商品とは、視聴率がとれるモノのことだ。先日ノーベル賞を受賞した小柴さんより、一日遅れて受賞した田中さんのほうが「商品価値」は高かった。何しろ相手は無名のサラリーマン。彼が「変人」と呼ばれていたことを知るやいなや、「変人田中」の製造にマスコミは躍起となった。田中さんのオカアサンに向かって、「やっぱりお子さんは変人でしたか?」と失礼千万なことを大声で聞く安藤優子なんかに比べると、「タマちゃん」には肖像権はないだろうねなんて議論したらしい携帯ストラップ業者のほうがよほど人間らしい感性に溢れているように感じられるというのも妙な話である。


Home | Index | back | Next