38 原因究明

2002.8


 天井からつるした長い角材が途中で折れそうになっているので、その角材の折れそうになった所に別の木をあてて、釘を打ち、補強しようとするのだが、どうしてもうまくいかないという夢を見て、目覚めてからもその「うまくいかない」感じが鮮明に残っていて、実際その日は、何をやっても思いどおりにことが運ばず、なんだか苛立たしい気分のまま一日を終えた。

 角材が途中から折れそうになっているという場面は、どうも芝居の舞台らしかった。学校で演劇部の顧問をしているせいか、よく芝居の夢を見る。それもたいていは、うまくいかない芝居の夢である。自分が役者で、もう幕が開くというのに全然セリフを覚えていないというタイプの夢が一番多い。お客がどんどん帰ってしまうというのも結構ある。芝居ではないが、教師をしているので、授業の夢も多いが、いちばん参ったのは、授業中に生徒が一人二人と教室から出て行ってしまい、たまりかねて「出ていかないでくれ!」と絶叫する夢だった。

 今度の角材の場合は、「裏方系」の夢かもしれない。折れかかった角材に、別の角材をあてがって補強しようとするわけだが、適当な長さの角材がない。短すぎたり、薄すぎたり、切ろうとすると切れなかったり。そのノコギリがまたやたらと切れ味が悪い。やっとのことで、材木が見つかっても、こんどはちょうどいい釘がない。先がつぶれていたり、短すぎたり、長すぎたり、細すぎたり、太すぎたり。

 ああ、もうどうしようもないという気分のまま目が覚めて、その気分が尾を引いたと、さっきは書いたけれど、実際は、「うまくいかないなあ」という気分で寝たので、そういう夢を見たのだろう。

 それにしても、何で「天井からつるした角材が折れそうになっている」のだろうか。何で「補強しようとするができない」のだろうか。夢判断なら簡単かもしれない。

 自分が「高い」と思っていたことが「危うい」と感じ、それを「とり繕おうとする」が、結局「できない」ということか。ひょっとすると「天井からつるした角材」とは、高いところにあるもの、つまりぼくの「頭」かもしれない。なんだ、それなら「頭が悪いのをどうすることもできない」という夢じゃないか。

 そう言えば、その日の前日、今福龍太という人の本を読んだ。彼はぼくの中学高校の後輩にあたるのだが、その膨大な知識を背景にした知的できらびやかな文章に圧倒された。どうも原因はそれらしい。


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