33 ビバ! ロナウジーニョ!

2002.6


 六月二十九日、土曜日。家に帰ってパソコンに向かっていると、このところ色々あってお疲れ気味の家内が帰ってきて、お花を送らなければならないんだけど、疲れたなあ、どうしようと言ってゴロゴロしている。知人がエステのお店を開店するのでそのお祝いだという。開店はあさってという。それじゃ行こうよ、車でいけばすぐじゃない。そうねえ、じゃ、行こうか。ということで、三時頃家を出た。

 ぼくらが目指したのは、我が家から車で五分ほどの所にある横浜プリンスホテルの大駐車場の一角にあるフラワーショップである。

 来てみると、何やらただならぬ雰囲気。ホテルの入り口に続く坂道にはぎっしり人が並び、それを整理する警官まで出ている。

 さては、ワールドカップのチームがここに泊まっているんだな。どこだろう、ドイツか? ブラジルか? 横浜国際総合競技場での決勝戦は明日。ここは横浜の中心から外れているから、騒ぎを避けるにはいい所なのだが、それでも噂を聞きつけてこれだけの人だかり。実は日本代表チームもここに泊まったのだが、その時はせいぜい五十人位が集まっただけだったらしい。

 駐車場に車をとめると、一目散にホテルの入り口に向かった。警官に「誰が来るんですか。」と聞くと、「ブラジル選手が、練習に行くんです。」という答え。おお、何という幸運。

 入り口にバスが止まっている。選手が続々乗り込んでいるらしい。その度に歓声があがる。ぼくらは背が低いので、なかなか見えない。するとバスの後ろの方の窓が開いて、一人の選手が頭をなでて見せている。豆つぶほどに見えるその坊主頭に、三角形の髪の毛。「ロナウド! ロナウド!」と中学生らしき男の子がドラ声で絶叫する。彼氏に肩車してもらっている彼女もいる。

 ブラジルのテレビ局の人が、最前列のブラジル人らしき女性にマイクとカメラを向けている。その女性の後ろにいたぼくは思わず「ピース!」をしそうになるのをやっとのことでこらえる。

 十五分程して、五台の白バイと一台のパトカーに先導されて、バスが走り出した。あっという間に目の前を通過。ロナウドは向こう側だから見えない。しかし、一人の男の顔が開いた窓からはっきりこちらを見た。おお、ロナウジーニョ! すごいじゃないか。ロナウジーニョがこっちを見たぞ。

 もうあたりはほとんど中津江村の住民状態。ぼくらミーハー夫婦も、訳も分からず懸命にロナウジーニョに手を振っていたのだった。




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