28 可哀想なレーザーディスク

2002.5


 とうとうパイオニアのLDプレーヤーが生産中止となった。これで、LDプレーヤーは完全に滅びることになった。新聞によれば、LDソフトはすでに3億枚以上出回っているそうだ。その3億枚のLDが、いずれすべて見ることができなくなるということだ。

 考えてみれば恐ろしい話である。

 LDを知らない人もいるだろうから、簡単にいうと、パイオニアが開発した「レーザーディスク」を省略してLDと呼ぶ。CDと同じように銀色の円盤だが、大きさは昔のLPレコードとまったく同じ大きさである。これに、映画などを記録したものがLDソフトであって、ビデオソフトよりは格段に映像は美しいし、保存性も優れているから、映画好きなどにはたまらない魅力をもった製品で、ぼくもかなりの枚数を買って持っている。といっても、たかだか50枚程にすぎないわけだが、俳優の竹中直人などは、映画が好きで何千枚というLDソフトを持っていると聞いたことがある。

 それがなんで滅びるはめになったかというと、一つは稼ぎ頭であった「レーザーカラオケ」が「通信カラオケ」にとってかわられたことと、そして致命的なのがDVDの登場。LDはあくまで再生オンリーだったが、DVDは録画もできるようになってきて、LDにとどめをさした。

 LDよりもはるかに歴史の古いLPレコードは、CDの台頭によって息の根を止められたかにみえたが、音質が柔らかいとか、雰囲気がたまらないとかいうファンが結構いるものだから、LPプレーヤーはいまだに生産が細々と続いている。それなのに、LDプレーヤーはとうとう全面生産中止となってしまったのである。

 ここら辺に、現代のデジタル技術文明の危うさがはっきりと見てとれる。DVDとLDの差は、性能の差でしかない。LDはDVDの前では誇れるものがほとんどないのだ。これがLPレコードだと、黒い円盤に掘り込まれた溝やら、ターンテーブルで回る風情やらといったアナログ的な魅力がある。LDはといえば、せいぜい「大きくてキレイ」というぐらい。かつてはやはりLDのほうが画質が上だという声もあったけれど、DVDがどんどん進化し、おまけに録画までできるとなると、もうどうしようもないのである。

 デジタル技術は古いものを無価値にしてしまう。なんて可哀想なLD。古くても価値のなくならないものは、アナログ的なものしかないということを、せめて心にとどめて供養としたい。






Home | Index | back | Next