25 モモレンジャーの中身

2002.5


 デパートの屋上での「ゴレンジャーショウ」が終わって子供をトイレに連れていったら、「大」の中から「今日は疲れたなあ」という声が聞こえてきて、ドアが開いたらそこから「モモレンジャー」が出てきたんだって。しかも仮面をとった「モモレンジャー」はいい歳したオジサンでね、それを見てモモレンジャーのファンだった子供はショックを受けちゃって、それから登校拒否状態になってしまった。この場合、子供の親は「モモレンジャー」のオジサンに損害賠償を求めることができるかっていう話があって、どうも「できる」らしいけど、たいした額にはならないらしいよと、最近同居するようになった次男夫婦と飲んでいたとき、次男が言った。

 そういえば、この次男が生まれる前、まだ1歳ぐらいだった長男を連れて、近くのフジスーパーの屋上に「ゴレンジャーショウ」を見にいったことがある。仮設舞台に登場してきたのは、ゴレンジャーではなく、敵の悪いやつらの一団。彼らは突然舞台から降りてきて、次々と観客の子供を捕まえて舞台に連行。司会のお姉さんがいう。「さあ、大変だわ。みんなでゴレンジャーを呼びましょう。」するとかわいい声の合唱で「ゴレンジャー!」となるはずだった。

 ところがお姉さんの言葉が終わらないうちに、突然肩車していた長男が火がついたように泣き出した。「イヤダ、イヤダ!コワイ!カエル!」と言って泣く。「ばかだなあ、今ゴレンジャーが来て助けてくれるところじゃないか。」とか言ってみても全然泣きやまない。しかも泣いているのはうちの子供だけだ。このままここに留まると、状況を妙にリアルにしてしまうので、泣き叫ぶ子供を抱いてそそくさとその場を後にしたのだった。

 オニイサンは、そんなこと本気にするなんて、バカだったのか、それとも感受性が豊かだったのかねえ。それにしてもだれも泣くヤツなんか他にいなかったんだから、恥ずかしかったなあ。しかし、モモレンジャーの中身ってほんとに「オジサン」なのか?

 そう言いながら、内心、五十歳の大台にとっくにのっかているこのぼくもかなりのショックを感じていた。

 ゴレンジャーが「キグルミ」であることぐらいもちろん知っているが、モモレンジャーの中身はかわいい女の子だとばかり思っていた。それを疑ったことなんかなかった。あの色っぽい仕草を、オジサンがやっていたというのか。やはり大ショックである。

 ぼくも登校拒否になってしまいそうだ。



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