16 無茶苦茶

2002.3


 バツイチで二人の子連れの男とつき合っている女が、父親に結婚の許しを果たしてもらうことができるでしょうか、しかも彼女と彼は、すでに彼女の実家で同棲状態にあるのです、さあこれから彼は彼女の父親に会いに鹿児島へ行こうというのです。

 とあるテレビ番組。何のことやらさっぱりわからない。彼女の実家で同棲状態にある男が、どうして彼女の父親と初対面なのかと、誰だって思うだろう。問題は、「実家」ということばの使い方にある。「実家」というのは、結婚した女の親の家のことをいうのではなかったか。それなのにこのナレーションでは、「自宅」の意味で「実家」ということばを使ってしまっているのだ。

 なにもこれは珍しいことではなく、かなり前から、学生などが、最近実家に戻ってなくてなんてことを言い、おいおいお前は結婚してるのかと思わず言いたくなる場面も結構あったわけだが、その場合は「生家」の意味で使っているわけだから、まあ間違いではない。ただ、ぼくなんかの感覚からいうと、男が「実家」なんて言葉は使うのには違和感がある。「実家に帰らせていただきます。」というせりふは、やはり女の切り札だろう。男がやたら実家を連発するのは何だか女々しい感じがする。まして、彼女の実家で同棲状態なら、彼女の親と同居状態に決まってる。

 そのテレビをみた翌日の朝のラジオ。「妻のキツイ一言」の特集。全国の恐妻家のみなさんのお便りをご紹介、である。「私が疲れて仕事から帰ってくると、妻がひとこと。あーあ、帰ってきちゃった! なんでそんなこと言うんだというと、だってあんたが帰ってくると狭い部屋がますます狭くなるんだもん。」などなど。結構おもしろい。山田邦子も林家タイヘーも大受けである。では、お天気です。キャスターの○○さん、ああ、○○さんもそのうち恐妻家になりますね、その素質十分。なんてタイヘーのほうだったかが言う。

 うん? ○○さんって男なのか? と思うと、女の○○さんが登場して、私は恐妻家にはなりませんよー、なんて言ってる。もう、ほんとに無茶苦茶だ。言葉をなめてる。恐妻家の女なんているわけがないじゃないか。なんてブツブツ言っていると、○○さんの実況、えーここは下町、谷中の商店街です。この辺はギュッと商店街が並んでいます。それをいうならギッシリだろう。ギュッと並んでどうするんだ、と車を運転しながら罵倒する。危なくってしょうがない。


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