10 シャンパンはオレにまかせろ

2002.1


 カウントダウンというのは、なぜか盛り上がる。2001年を迎えるカウントダウンは、渋谷で死者まで出たが、ちょうどあの時、我が家でもカウントダウンをやっていた。

 普段は家内と二人の我が家も、正月ともなれば、親族うち揃い、紅白などを肴に飲んだくれているのだが、その年はいつになく多く、十人以上も集まっていた。

 たまたま貰い物のシャンパンがあったので、年明けと同時に開けようということになった。じゃあオレにまかせろ、ちゃんと時計をみてろよなんて言って、シャンパンのボトルを抱いて、開ける体勢にはいったが、ふと、ちゃんとふたが開くのだろうかと心配になった。妙にコルクがきついような気がする。あと20秒……15秒……といったあたりで、念のために、少し緩めておいたほうがいいだろうと思って、軽くコルクのふたを押し上げた。

 突然、ポンッ!と大きな音がした。カウントダウンはまだ続いている。あーあ、フライングだあ、と一斉のため息。しまった、緩めるんじゃなかった、と後悔してもどうにもならない。開いたシャンパンは元には戻らぬ。

 あれから1年。今年は汚名返上とばかり気合いを入れた。たまたまあったシャンパン、なんていういい加減さがそもそもの間違いだったのだ。今度はわざわざイタリア製のヤツを買った。

 今年は去年はいなかった「嫁」というものまでいる。おとうさんとしては、一世一代の大仕事である。紅白も終わった。シャンパンが首尾よく開いたら、すぐに外へ出なさい、ヨコハマの港の船の汽笛が聞こえるよ。東京生まれの「嫁」には是非とも聞かせねばならないハマの音だ。

 いよいよカウントダウン開始。10、9、8……。今度は絶対コルクに触らないぞ。3、2、1。ヨシッ、ここだ。思い切りコルクを押し上げた。ところが、どういうわけか、今度は頑として開かない。テレビではゴーンと鐘の音。開けましておめでとうございますの声。でも、フタは開かない。1分たっても開かない。

 なんだあ、開かないジャン……、みんなは外に汽笛を聞きに出ていってしまった。残されたぼくはウンウンうなりながら、コルクと悪戦苦闘。しばらくして寒い寒いなんて言いながらドヤドヤと戻ってきた連中は、なんだまだ開かないの? なんて言ってる。こりゃペンチであけなきゃだめかなあと思っているうち、ようやく、ポンと開いた。

 後の祭りならぬ、後のシャンパン。大間抜けである。

 来年はイタリア製のはやめよう。




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